◆打順間違いについては、かなり込み入ったややこしい話であることをお断りします(ごく普通の野球ファンの方にはキャンセルをおすすめします、という意味です)。チャレンジしてみたい方だけどうぞ。
◆06年秋の愛知大学リーグで、処置に困惑するやっかいな(面白い?)事件が起きたようですので追加しました。
7回裏、専大の攻撃は6番レフト佐竹から始まった。
| 00/09/27 (神宮第二) 東都2部 秋季第4週 3日目 10:30〜13:21 | ||
| 国士舘大 | 000 200 001 =3 | 平井−野沢−近沢−○平野 |
| 専 修 大 | 000 000 020 =2 | 酒井−●小西 |
佐竹はレフト前ヒットで一塁に出て、代走に土山が起用された。7番サード本永はピッチャー前の送りバント、土山が二塁に進んだ。このあと、8番キャッチャー土井に対しては中平が、9番ショート松元に対しては八木が代打に起用され、いずれも空振り三振に倒れた。
6番 佐竹 左前打(代走・土山) 7番 本永 投前バント 8番 (土井の代打)中平 三振 9番 (松元の代打)八木 三振
8回表の国士舘大の攻撃が始まる前に、おおむね次のような場内アナウンスが流れた。
専修大学、選手の交代をお知らせいたします。先ほどの回に代走いたしました土山君がそのまま入りレフト、代打いたしました中平君に代わりまして中村君が入りショート、同じく代打いたしました八木君に代わりまして阿部君が入りキャッチャー。
6番レフト土山君、暁星国際高校、背番号28。8番ショート中村君、藤嶺藤沢高校、背番号38。9番キャッチャー阿部君、専大北上高校、背番号21。以上のように交代いたします。
結局、7回表から8回表にかけて、専大の3選手が交代したわけだ。私は、場内アナウンスを聞いて、スコアカードに交代選手を書きとめていた。ところが、スコアボードでは8番がキャッチャー阿部で、9番がショート中村だったのだ。
| 打順 | 7表 | 7ウ | 8表 | |
| 場内 放送 |
スコア ボード |
|||
| 6番 | 7佐竹 | R土山 | 7土山 | 7土山 |
| 8番 | 2土井 | H中平 | 6中村 | 2阿部 |
| 9番 | 6松元 | H八木 | 2阿部 | 6中村 |
どちらが正しいのか、スタンドで見ているだけの私にはわからない。代走から引き続き守備についた土山は6番に固定されるけれども、新たに交代した8番と9番の打順を指定する権限は、第一義的には専大の監督にあるからだ。『公認野球規則』には、次のような定めがある。
08年版 『公認野球規則』
3・03 <略>守備側チームのプレーヤーが2人以上同時に代わって出場したときは、その代わって出場したプレーヤーが守備位置につく前に、監督はただちにそのプレーヤーの打撃順を球審に示し、球審はこれを公式記録員に通告する。
この通告がなかったときは、球審は、代わって出場したプレーヤーの打撃順を指定する権限を持つ。
▲06年版まで「直ちに」でしたが、07年版では「ただちに」になりました。実は、規則書の中には、「直ちに」と「ただちに」が混在していました。市販化の結果、その不細工さを指摘されたのでしょう。
「8番・中村、9番・阿部」でもいいし、「8番・阿部、9番・中村」もあり得る。私は、とりあえず場内アナウンスとスコアボードに食い違いがあることをメモしておいた。
9回裏が因縁の8番打者からの攻撃だった。右打席には背番号21が入る。キャッチャーの阿部だ。もし、場内アナウンスが正しかったのだとすれば、打順間違いとなるわけだ。かりに阿部が出塁しても、守備側が時機を逸せずにアピールすれば、8番中村がアウトを宣告されて、阿部の出塁はなかったことになる。
08年版 『公認野球規則』
6・07 打撃順に誤りがあった場合。
(a) 打順表に記載されている打者が、その番のときに打たないで、番でない打者(不正位打者)が打撃を完了した(走者となるか、アウトとなった)後、相手方がこの誤りを発見してアピールすれば、正位打者はアウトを宣告される。
ただし、不正位打者の打撃完了前ならば、正位打者は、不正位打者の得たストライクおよびボールのカウントを受け継いで、これに代わって打撃につくことはさしつかえない。
(b) 不正位打者が打撃を完了したときに、守備側チームが“投手の投球”前に球審にアピールすれば、球審は、
(1) 正位打者にアウトを宣告する。
(2) 不正位打者の打球によるものか、または不正位打者が安打、失策、四死球、その他で一塁に進んだことに起因した、すべての進塁および得点を無効とする。
【付記】 走者が、不正位打者の打撃中に盗塁、ボーク、暴投、捕逸などで進塁することは、正規の進塁とみなされる。
【注1】 本条(b)(c)(d)項でいう“投手の投球”とは、投手が次に面した打者(いずれのチームの打者かを問わない)へ1球を投じた場合はもちろん、たとえ投球しなくても、その前にプレイをしたり、プレイを企てた場合も含まれる。
ただし、アピールのための送球などは、ここでいう“プレイ”に含まれない。
【注2】 <略>
(c) 不正位打者が打撃を完了した後、“投手の投球”前にアピールがなかった場合には、不正位打者は正位打者として認められ、試合はそのまま続けられる。
(d) (1) 正位打者が、打撃順の誤りを発見されてアウトの宣告を受けた場合には、その正位打者の次の打順の打者が正規の次打者となる。
(2) 不正位打者が“投手の投球”前にアピールがなかったために、正位打者と認められた場合には、この正位化された不正位打者の次に位する打者が正規の次打者となる。不正位打者の打撃行為が正当化されれば、ただちに、打順はその正位化された不正位打者の次の打者に回ってくる。
【原注】 審判員は、不正位打者がバッタースボックスに立っても、何人にも注意を喚起してはならない。各チームの監督、プレーヤーの不断の注意があってはじめて、本条の適用が可能となる。
▲07年版では(b)(2)の「及び」が「および」に改められています。なお、(a)の「および」は06年以前も「および」でした。はい。
逆に、スコアボードが正しいのなら、別に問題はない。そこに「8回の裏、専修大学の攻撃は8番ショート中村君」という場内アナウンスが聞こえた。アナウンスの係員にもとまどいがあったのかもしれない。アナウンスのタイミングが少し遅れた。ピッチャーがモーションに入ったあとだった。
ボールの判定をして、球審が動いた。まず本部席へ行き、次いで一塁側の専大ベンチに行った。その後、球審は三塁側の国士舘大ベンチに行って、さらに場内説明をした。
「球審の**です。私は8番中村君と聞いていましたが、スコアボードが間違っていましたので、今の投球をノーカウントとして、正規の打者で再開します」という趣旨の説明だった。さて、この処置は適切と言えるだろうか?
6・07【原注】では、審判は打順の誤りに気づいてもそのまま流しておいて、守備側のアピールを待つように規定されている。つまり、この試合の球審は、当該規則を無視して専大ベンチに向かったことになる。この球審の行為を正当化できる規則は見当たらない。
08年版 『公認野球規則』
9・01 審判員の資格と権限
(c) 審判員は、本規則に明確に規定されていない事項に関しては、自己の裁量に基づいて、裁定を下す権能が与えられている。
9・01(c)は「本規則に明確に規定されていない事項」についてのものであって、今回のケースは「明確に規定」されているのだ。
この試合の球審は疑いの余地なくこれらのルールを知っていただろう。それでも一塁ベンチにお伺いを立てたのは、ここまま打順間違いを流して、アピールによってアウトを宣告しなければならない事態を避けたかったのではないか、と私は想像する。
この場合、スコアボードが間違っていたから、専大サイドはスコアボードを根拠に打順間違いではないことを主張するかもしれない。場内アナウンスは消えてしまうが、スコアボードは残る。だが、スコアボードが正しいという保証などない。
球審にはスコアボードを隅々まで管理する義務はない(はずだ)。スコアボードの間違いは球審の責任ではない。それでも、球審が一塁側ベンチに行ったのは、選手交代後の打順を自分が聞き違えたかもしれないという不安がよぎったからではないだろうか。
監督は「8番・阿部、9番・中村」と伝え、球審が「8番・中村、9番・阿部」と聞き違えていた場合、ルールどおりに阿部の出塁を無効として中村にアウトを宣告されては、専大ベンチとすれば納得できない。なにしろ1点を追う9回裏の攻撃なのだ。
しかもスコアボードは「8番・阿部、9番・中村」だ。そこで、球審は「超法規的措置」として専大ベンチに確認に向かった。さらに球審は「超法規的措置」を重ねる。プレイがかけられたあとの正規の投球であったにもかかわらず、打順間違いで打席に入った阿部への初球(ボール)を「ノーカウント」扱いにしたのだ。
これらの「超法規的措置」は、トラブルを未然に回避することには成功したけれども、規則違反であることには変わりはない。とはいえ、現実問題としては円満な解決方法だったと言っていいのではないかと思われる。
ちなみに、公式記録員は、打順間違いに気づいても自分の胸の中にしまっておけというルールになっている。
08年版 『公認野球規則』
10・01 公式記録員
(b)(4) 記録員は、たとえプレーヤーが打順を誤っていても、審判員または両チームの如何なる人にも、その事実について告げたり、注意を促したりしてはならない。
▲07年版まで10.01(b)(5)でしたが、08年版で(4)が(1)に統合されたことにより、(4)に繰り上がっています。
いったい、「伝言ゲーム」のどこで行き違いが生じたのだろう。
【1】 専大の監督が言い間違えた
【2】 球審が聞き間違えた(あるいは言い間違えた)
【3】 場内アナウンスの係員が聞き間違えた
【4】 記録員が聞き間違えた(あるいは言い間違えた)
【5】 スコアボードの係員が聞き間違えた
専大サイドは8番に阿部を送っているわけだから、「8番・阿部、9番・中村」のつもりだっただろう。「8番・中村、9番・阿部」のつもりがあるなら、確認ぐらいはしてもいい。真意が「8番・阿部、9番・中村」だったとしても、表意は「8番・中村、9番・阿部」だった可能性はある。【1】の可能性は排除できない。
【2】の可能性もある。一般的には守備位置を引き継ぐ形の選手交代が多い。だから、球審としては念を押す慎重さがあってもよかったのかもしれない。ただ、私はこの試合の球審を責めるつもりはない。すくなくとも事後対応に非はない。
場内説明のマイクも自ら握っている。東都のほかに東京六大学や大学選手権では、球審が場内説明することがあるけれども、ほかの大学リーグや社会人では、混乱したケースでも観客は無視されるのが常だ(この点では、リトルシニアのほうがまだ親切だ)。
【4】や【5】の可能性はあるが、【3】の可能性はまずない。球審は「8番・中村、9番・阿部」だと思っているのだし、場内アナウンスは一貫して「8番・中村、9番・阿部」だった。
ただし、阿部が打席に入っているのに、「8番・中村」のアナウンスを流すことがはたして妥当なのかどうかという議論はあるだろう。なぜなら、国士舘大には不正位打者をアピールする権利があるわけで、「8番・中村」のアナウンスはそれを損なう行為だからだ。→「場内アナウンスの妙」
総合的に勘案すると、この「伝言ゲーム」では、やはり【5】で齟齬が生じたのだろう。専大サイドは、スコアボードが「8番・阿部、9番・中村」になっているので、それに従ったものと思われる。
ところで、打順間違いによって試合が中断しているとき、二塁の塁審はセンターの選手と談笑していた(ように見えた)。おそらく彼は何が原因で試合が中断しているのかさえ把握していなかっただろう。本来、球審とともに事態の解決にあたらなければならない立場だというのに、である。『公認野球規則』にはこうある。
08年版 『公認野球規則』
審判員に対する一般指示【原注】
審判員は、競技場においては、プレーヤーと私語を交わすことなく、またコーチスボックスの中に入ったり、任務中のコーチに話しかけるようなことをしてはならない。<略>
塁審の3人は学生審判だった。まさか野球部以外の学生が審判を務めるわけでもないだろう。『東都スポーツ』00年春季号によれば、2部の試合の塁審は1部校の学生が担当することになっている。
実は初回から気になっていたのだ。もちろん、選手交代は球審の任務だろうけれど、この日の打順間違いは、球審への負担があまりにも大きかったことが原因の1つだろうと思われるからだ。
01年のリトルシニア選手権で打順間違いと思われるケースを見た。中学生の名前を出すほど悪趣味ではないので、背番号で示す。
3回表の攻撃のとき、ヒットで出塁した3番打者に対して背番号17の選手が代走に起用された。7番打者に対しては、背番号15の選手が代打に起用された。その裏、代走に出た背番号17はそのままライトの守備についた。代打の背番号15に代わって、背番号10の選手がマウンドに上がる。
打順 守 背番号 結果 備考 3ウの守備
2番 二 #4 遊直 1死走者なし
3番 右 #9 中安 1死1塁(代走#17) #17はライト
4番 左 #7 二ゴ 2死2塁
5番 捕 #2 中安 #17生還、送球の間に打者は2塁へ
6番 三 #5 右安 2死1・3塁
7番 投 #11 −− −−
代打 #15 遊飛 (2球目の二盗が失策を誘って#2生還)、チェンジ #10が投手
この場合は、先の東都のケースとは異なり、新規の交代は1人だけだ。背番号17は、3番打者の代走だから3番に入らなければならない。背番号10は7番の代打に代わって投手に入るのだから7番以外の打順はあり得ない。
5回表の攻撃は私のスコアブックでは次のとおりだ。
打順 守 背番号 結果 備考
2番 二 #4 遊ゴ 1死走者なし
3番 右 #17 二ゴ 2死走者なし
4番 左 #7 中飛 チェンジ
5回裏の守備でシートの変更があった。7番に入った背番号10のピッチャーはライトに回り、背番号17のライトに代わって背番号18がピッチャーに入った。ここでも新規の選手交代は1人だけだから、打順は固定されるはずだ。
打順 交代前 交代後
3番 右#17→投#18
7番 投#10→右#10
私が「異変」に気づいたのは6回表の攻撃だった。二死走者なしで7番打者の打順だった。ピッチャーが1球目を投げたあと、ふと打者の背番号を見ると「18」ではないか。本来、ライトに回った背番号10の打席のはずだ。
スコアボードには選手名は出ないから(シート番号も出ない)、確認しようにも確認できるものは何もない。場内アナウンスはあるが、もう聞き流したあとだ。背番号18は3球で三振に倒れたあと、スパイクを履き替えて(神宮は人工芝)マウンドに向かった。6回表の攻撃は次のとおりだ。
打順 守 背番号 結果 備考 5番 捕 #4 右飛 1死走者なし 6番 三 #17 二ゴ 2死走者なし 3番 投 #18 三振 チェンジ
私は背番号18がマウンドで投球練習を始めたのを確かめてから、近くの席でスコアをつけていた別のチームの関係者と思われる人のところへ行った。ほかに確認するすべはないのだ。赤の他人だろうが、聞かないわけにはいかない。選手交代に関して食い違いはなかった。
スコアボードに選手名が出ない試合は、場内アナウンスを頼りに選手の名前を書き込むことになる。追いつけない場合は、背番号と守備位置だけ書いておいて、名前はあとからパンフで確認すればいい。最悪、守備位置は双眼鏡で背番号を確認すればいいのだ。だから、最優先は背番号だ。
試合途中での選手交代も、頼りになるものは場内アナウンスしかない。もっとも審判の声が聞こえるときは、そのほうが早い。どうせ複数選手の交代やシートの変更があると、場内アナウンスはドタバタするに決まっているからだ。自分でできることは、さっさと解決したほうがいい。
ちなみに、3段ぐらい前の席でスコアをつけていたよそのチームの関係者は、7番のところで背番号18が打席に入ったことには気づいていなかったようだ。まあ、気づかないほうがしあわせだっただろう。目ざといことは、ときに(いつも?)不幸だったりもする。
私と彼のスコアブックは3回表の代走と代打、それに3回裏と5回裏の守備の変更に関して、食い違いはなかった。ソースは場内アナウンスだが、先の東都のケースと異なり、同時に2人の新しい選手が出場したわけではないので、打順が入れ違ってしまうことはあり得ない。
5回表の3番打者のとき、私が背番号をチェックしたかどうかは、今となっては定かではない。もしかすると、5回表の時点で(最初の?)「打順間違い」が成立していたのかもしれない。
さて、シニアのケースでは、5番と6番が凡退したあとの6回表二死走者なしで、3番打者が打席に入って凡退した。守備側からのアピールはなかった。この場合、7回表の先頭打者は誰になるのだろうか?
私は7回表先頭打者に対する初球が投じられるまで、未確定状態が続くと誤解していた。7回表は8番の背番号3が打席に入った。初球を打ってセンターフライだった。この時点で8番打者が正位打者として認められるものと解釈していた。
けれども、そうではないようだ。このケースでは、6回裏の相手チームの先頭打者に第1球が投じられるまで、アピール権が残るようだ。6・07(b)【注1】に「いずれのチームの打者かを問わない」の文言が明記されているからだ。
▲1984年までのルールでは「イニングの表または裏が終わったときのアピールの時期に関しては7.10を適用する」との文言が【注1】にあったそうです。
実際にはアピールがなく6回裏も終了したので、7回表が始まる時点では、6回表の打順間違いは正当化されていたのだ。つまり、6回表は3番打者で終了したので、7回表の先頭打者は4番の背番号7でなければならなかったわけだ。
ということは、7回表先頭打者でセンターフライに倒れた背番号3の8番打者も打順間違いということになる。背番号3の次に打席に入ったのは、背番号8の9番打者だった。アピールはなかったので、背番号8への第1球が投じられた時点で、第1アウトとなった8番打者の打撃が正当化されたことになる。
打順 守 背番号 結果 備考 8番 一 #3 中飛 1死走者なし 9番 中 #8 三振 2死走者なし 1番 遊 #6 中安 2死1塁(初球に二盗、5球目に三盗成功) 2番 二 #4 四球 2死1・3塁(初球に二盗成功) 3番 投 #18 −− 代打 #1 二ゴ チェンジ
いずれにしても、ややこしいことこのうえない話であって、できれば2度と経験したくないと思っている。
『公認野球規則』には、「打撃順に誤りがあったときの記録法」も載っている。最後のほうはほとんど投げやりになっているのが面白い。
08年版 『公認野球規則』
10・03 公式記録の報告書の作成
(d) 打撃順に誤りがあったときの記録法
打順を誤った打者が、その誤りを指摘されないまま打撃を完了してアウトになった後に、アピールが成立して正位打者がアウトの宣告を受けたときには、不正位打者のアウトの状態をそのまま正位打者に記録する。たとえば、不正位打者Aが遊ゴロで一塁にアウトになった後、アピールによって正位打者Bがアウトになれば、Bは遊ゴロして一塁にアウトになったものと記録する。
【注1】 <略>
不正位打者が走者となって出塁した後アピールがあって、正位打者がアウトの宣告を受けたときは、捕手に刺殺を与え、正位打者には打数1を記録する。したがって、不正位打者がセーフとなった記録は抹消する。
数人の打者が、続けざまに打順を誤ったために打順が乱れた場合は、各プレイが行なわれたままを記録する。
【注2】 たとえば、1番の打順に2番が打って三振、次に1番が中飛で二死、3番を抜かして4番、5番と続いて、安打を放ったときの記録法は、1番の二死と2番の一死とアウトの順は前後するが、そのままその打者のところへ記録し、抜かされた3番をとばしたまま4番、5番と記録する。したがって、3番の打数は1つ少なくなるのは当然である。
▲06年版まで接続詞としての「従って」と「したがって」が混在していましたが、07年版から「したがって」に統一されました。また、08年版では従来の「抹殺」が「抹消」に改められ、「まま」のあとの読点が消えています。
06年秋の愛知大学リーグ1部で、代打を起用されて退いたはずの選手が「再出場」する事件があったそうだ。
『中日新聞』06/09/04
名城大−愛大で、愛大が打順を間違えたまま試合が進行する珍事があった。
8回、先頭の9番Aの代打Bが右前打後、ベンチに下がったはずのAが打席へ。その後、打順が繰り下がったまま正規の4番打者まで進んだ。ここで名城大が抗議し、愛大は5番打者を飛ばして6番打者のCを打席に入れ、正しい打順に戻った。
公認野球規則は、打順を間違えた不正打者に抗議があれば正規の打者がアウトになる、としているが、名城大からAの打席の後にアピールはなかった。D主審は「抗議がなかったため打撃は成立した」と判断。5番打者が打席に立つ前の抗議の時点で本来の打順に戻した。
愛知学生野球連盟は、打撃記録を、正規の打順に振り替えて公式記録としたため、4番打者Eの打った適時二塁打が、打席に入っていない5番打者Fに記録された。
▲記事に掲載されていた選手名と審判名は引用者である私の判断でA〜Fに置き換えました。なお、「愛知学生野球連盟」は実在しません。中日新聞社が春と秋のリーグ戦を後援しているのは「愛知大学野球連盟」主催のリーグ戦です。また、『中日スポーツ』によれば、9番打者Aは監督から交代を言われておらず、スコアボードの打順を示す赤ランプが8番打者のところについていたので、何も疑わずに打席に入ったそうです。ちなみに、名城大のアピールは4番打者の打席途中だったとのことです。
さて、この記事の見出しは「打順間違えたまま試合進む」となっており、『中日スポーツ』も「珍事!! ズレた打順で3点」となっているそうだ。だが、これは「打順間違い」ではない。Aはすでに退いた選手であって、もはや9番打者ではないからだ。Aは(結果的に)「再出場」しているのだ。Aが打席に入ることは「許されない」。
たとえば、9番の代打Bの次に6番Cが打席に入ることは「許される」。この場合の「許される」とは、アピールがあればペナルティが待っているけれども、審判はCが打席に入るのを止めることができないという意味だ。前述したように、規則6・07【原注】は「何人にも注意を喚起してはならない」と定めている。
しかしながら、代打を送られて退いた選手が「再出場」しようとするなら、審判はこれを止めなければならない。もし審判が見過ごしていて、記録員が気づいたなら、記録員は審判に助言する義務がある。「再出場」を認める規定は、野球のルールにはないのだ。もっとも、「再出場」違反に対するペナルティが定められているわけではないので、話は俄然やっかいになってくる。
ルールに明文規定がない以上、前述した9・01(c)の黄金条項の出番となる。登録外選手の出場は(実際には)審判マターではない。審判は連盟(大会)本部に委ねればよい。だが、「再出場」に気づかなかったのは当該審判の責任であって、これは紛れもなく審判マターだ。
▲07年2月に、このようなケース(再出場)は没収試合として処置せよとのアマ規則委員会の通達が出ていますのでご注意ください。
上の記事には「5番打者を飛ばして6番打者のCを打席に入れ、正しい打順に戻った」とあるけれども、打順は「正しい」のだ。最初から「打順の間違い」など生じてない。ただ、出てはならない選手が打席に入り、打撃を完了してしまっただけのことだ。したがって、5番を飛ばしたからといって、「正しい」状態に戻るわけではない。
●9番Aに代打Bが起用された
→Bは9番打者である。
●退いたはずのAが打席に立った
→Aは「再出場」している。
●1番打者が打席に入った。
→ここは議論の余地がある。
(ア)「再出場」のAを「打順の誤り」として(9番打者が2度続けて打席に入ったと)考えるのなら、1番打者に1球目が投じられた時点で、Aの打席は正当化される。この瞬間に「打順の誤り」は解消されている。9番の次に1番が入り、以後、2番から4番まで順番に打席に立ったのだから、アピールの時点では「打順の誤り」などない。
(イ)Aは「再出場」の選手であって、そもそも打順はないと考えるなら、9番の代打Bの次は1番であり、その次は2番だから、2番が本来の打者である。
結局、(ア)の「打順の誤り」として考えるのなら、5番打者を飛ばす理由はない。(イ)で考えるなら、最初から「打順の誤り」ではない。ただ、この問題は黄金条項に基づいて処理するしかなく、その場合、やはり「打順の誤り」に準じるのがもっとも妥当と思われる。次のような処理をするしかないだろう。
●Aの打席中に、審判がAは退いた選手であることに気づいた(その指摘を受けた)場合
→6・07に準じて、それまでのカウントを引き継がせて正規の打者を入れる。
●Aの打席完了直後に、Aが退いた選手であることに気づいた(その指摘を受けた)場合
→6・07に準じて、本来の打者をアウトにする。
●4番打者まで試合が進んで、4番打者の打席途中で守備側からアピールを受けた場合
→6・07に準じて、Aの打撃を含めてすべてを正当化させる。
どっちにしても、5番打者を飛ばす合理的な理由が見当たらない。まあ、黄金条項の適用だから、その場で両チームが了解したのなら、それでいい話ではある。いまさら蒸し返すようなことではない。
| 06/09/03(瑞穂) 愛知リーグ秋季第1週2日目第2試合 | ||
| 名城大 | 041 200 000 =7 | ○杉本 |
| 愛知大 | 000 100 030 =4 | ●金丸−山平−服部−野中−金古 |
ただし、納得しかねるのは、4番打者の2点タイムリー二塁打が打席に入っていない5番打者に記録されたという点だ。6・07に準じて処理するなら、4番打者の打撃はやはり4番打者に記録すべきだろう。Aの「再出場」を認めてしまった事実を、記録から隠蔽すべきではないと私は考えるからだ。
◆ファイル名になごりがありますが、このページはもともと「大学野球」のカテゴリーに入れていました。ただ単に東都つながりという理由だけで「ボールデッド時のアピール」の項をこのページに加えていましたが、中身をすっきりさせるために08/03/20付で『公認野球規則』のページに移しました。
◆以下、当サイト内の関連ページです。
・敬遠のとき、投手がボックスの外に立っているキャッチャーに対して投球すると、ボークになります。→「西*」
・「レフェリーとアンパイア」は何が違い、どう使い分けられているのでしょうか? クリアに解明できたとは思いませんが、そのナゾに迫りました。
・ビデオ判定の是非やプロ審判の選手時代の成績について。→「浅き夢見し」
◆事実誤認、変換ミス、数値の誤り、リンク切れなどにお気づきの際は、お手数ですが「3代目んだ」(打順間違い)または「メールのページ」からご指摘いただけると幸いです。
★07/04/19校正チェック済、ケなし、順OK
★08/02/21HTML文法チェック済(エラーなし)
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