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キャッチャーが退くとき

02/07/09作成
13/12/19更新

◆捕手の交代は投手の交代以上に気をつかうものかもしれません。どこを探してもそう簡単には見つからないきわめて貴重なデータだと思われますが…。


扇の要

よくキャッチャーは扇の要にたとえられる。ピッチャーに次いで大切なポジションであることに議論の余地はない。登板しないこともあるエースよりも、ほぼ毎試合出場する捕手のほうが、チームとしては重要な存在だと言っても別におかしくはないだろう。

スタメン捕手が退くことは、チームにとっての痛手に違いない。不慮のアクシデントの場合はもちろんのことだし、ビハインドを背負っているため仕方なく捕手に代打を起用する戦術的交代も、避けられるものなら避けたいに違いない。

94年から01年まで、私が見た大学野球344試合について、スタメン捕手が何回に退き、そのとき何点差だったか調べてみた。

スタメン捕手の交代時期
点差↓ 2回 3回 4回 5回 6回 7回 8回 9回 延長 合計
+4 16
+3
+2
+1
12
−1 11 25
−2 24
−3 17
−4 10 17 42
合計 10 30 37 53 148

▲ 344試合688チーム中540チームは、捕手がフル出場していますので、148チーム分の集計です。
▲「点差」は、捕手交代のあったチームから見たものです。「+4」 や 「−4」 には 5点差以上を含みます。
▲たとえば8回裏の攻撃時に捕手に対して代打・代走が起用された場合、9回表に新たな捕手が守備につくわけですが、8回裏の時点で先発捕手は試合から退いていますので、「8回」でカウントしています。

リードしていたチームが捕手を代えたのは28例ある。そのうち16例が4点差以上のリードの場面で代えている。多くは地方リーグでのコールド確実というケースだ。

逆に、ビハインドを背負ったチームが捕手を代えたのは108例にのぼる。リードされて終盤に入れば、8番や9番の下位を打つ捕手に代打を使わざるを得ない。強打の捕手が出塁しても、同点の走者なら代走を使いたくなる。後手を踏んで追いかける立場にある以上、打力や走力に欠ける選手を退けるのは当然のことだ。

同点時の捕手交代

同点で捕手を代えたケースは全部で12例ある。そのうち2例を紹介しよう。

96/04/27(神宮) 東京六大学リーグ春季第3週初日第1試合
明治大 070 200 002 =11 川上−○津野−佐藤敦
早稲田大 320 004 00 =10 三沢−関−桜井−●村上−近藤

川上憲伸と三沢興一の先発で始まった試合は序盤から荒れた。7回裏無死二塁で、早大のキャッチャー・西牧は送りバント。ダッシュしてきたファーストが処理したが、一塁カバーが不在で内野安打になった(一・三塁)。

この場面で、早大は西牧に代走を送った。結果的に1点は勝ち越すが、9回に逆転された。もし西牧のバントがヒットにならず、普通に一塁アウトだったらと考えると、なかなか微妙なところだ。

荒れた展開だったし、無死一・三塁の一塁走者への代走起用なので、ゲッツーを恐れたのではなく、2点目を奪いにいった積極策だと思われる。

96/09/28(神宮) 東京六大学リーグ秋季第3週初日第1試合
立教大 000 00 000 =1 水谷−木下−●樋渡
早稲田大 000 000 002x=2 三沢−○桜井

両チーム無得点で迎えた5回表、立教大は先頭の早川が四球で出塁した。三沢の牽制悪送球で早川は三塁に進み、一死後、8番キャッチャーに対して代打・山本が起用された。

山本はスクイズを決めて立教が先制したが、この虎の子の1点を守り切ることはできず、9回にサヨナラ負けを喫した。仕掛けどころが早過ぎたという見方もあるだろうが、両チームの戦力差からしてギャンブルは責められない。

このほか、次のような事例がある。

同点時の捕手交代(上述の2例以外)
年月日 球場 チーム 交代時の
スコア
状況 交代の態様 その回
の得点
対戦相手・結果
94/09/03 神宮 駒沢大 2対2 9表 2死2・3塁 代打(中飛) 0点 日大に10回サヨナラ負け
94/11/05 神宮 名城大 5対5 8ウ 1死2塁 代打(ギ野) 4点 福井工大に勝ち
95/10/01 川崎 東海大 2対2 9ウ 1死2塁 代打(三ゴ) 0点 城西大に11回サヨナラ勝ち
95/10/15 瑞穂 愛知工大 3対3 12ウ 無死(なし) 代打(一ゴ) 0点 愛知大と12回引き分け
96/10/13 西京極 同志社大 0対0 7表 守備から 7回裏2点先制、立命館大に勝ち
96/10/23 横浜 神奈川大 8対8 9ウ 無死1・2塁 1走に代走 2点 神奈川工大に9回サヨナラ勝ち
97/09/13 神宮 早稲田大 2対2 10ウ 無死1塁 1走に代走 1点 立教大に10回サヨナラ勝ち
99/11/10 神宮 順天堂大 4対4 8表 1死2塁 代打(二安) 0点 拓殖大と15回引き分け
01/05/13 太田 白鴎大 6対6 10ウ 無死(なし) 代打(四球) 1点 山梨学院大に10回サヨナラ勝ち
01/06/05 神宮 明治大 3対3 11表 守備から 立教大に11回サヨナラ勝ち

上の2試合と合わせて12例になるが、守備の交代が2例あるので、同点の場面でキャッチャーに代打あるいは代走を出したケースは10例ということになる。そのうちの6例で得点が入っており、4例は決勝点に結びついている。同点時の捕手への代打・代走は、リスクを背負ってのギャンブルだ。その試合のヤマでもある。

リード時の捕手交代

リードしているチームが捕手を代えたケースは、すでに見たように28例ある。大半は大量リード時の余裕の交代であり、下級生の控え捕手に実戦経験を積ませようという意図があるものと思われる。

1点リードでの捕手の交代は5例にすぎない。交代後に逆転された2試合を紹介しよう。

96/08/27(神宮) 東都大学リーグ新人戦準決勝第2試合
青山学院大 000 000 00 002 =4 柳沢−○岡崎
亜細亜大 100 000 001 000 =2 佐藤−●尾崎

1点リードで9回表を迎えて、亜大はキャッチャーを代えた。7回から登板の尾崎は3イニング目になる。四球と内野ゴロで一死二塁のピンチを迎え、3連打で逆転された。その裏、亜大はいったん同点に追いつくが、延長12回で敗れた。

01/06/05(神宮) 東京六大学リーグ新人戦準決勝第2試合
立教大 100 200 00 00 =3 白木−平山−徳−西川−●三村
明治大 020 000 100 01x=4 小山−長谷川−○佐藤

7回表の一死一塁で立教はキャッチャーに代打を送った。新人戦特有の予定された選手交代ではないかと思われる。この代打はそのままキャッチャーに入ったが、その裏には同点にされて、最後はサヨナラ負けした。

ほかの3例は次のとおりだ。

リードしているチームの捕手交代(上述の2例以外)
事例 年月日 球場 チーム 交代 結果 相手
【A】 94/11/03 神宮 法政大 9表にバッテリーを交代 9表に1点奪われて引き分け 慶応大
【B】 95/03/19 横浜 関東学院大 7表にバッテリーを交代 そのまま逃げ切り 東海大
【C】 97/05/11 川崎 日本体育大 7表にバッテリーを交代 8表に逆転されるも9回サヨナラ勝ち 東海大

こちらの3例は、投手とセットで捕手も代えたものだ。1点リードでの捕手交代は2勝2敗1分けであり、2勝のうちの【C】は1度は逆転されたことを考えると、僅差のリードで捕手を代えるのは、やはり「ご法度」だと言えそうだ。

イニングスコアを掲げた先の2試合と【A】は新人戦であり、【B】は練習試合だ。勝敗にはさほどこだわりのないゲームだから、できることなのだろう。

実は、リード時の捕手交代28例のなかには、捕手の交代のあとに逆転負けを喫したという事例はわずかに3例しかない。すでに示した1点差の2例のほかには、8回裏から交代して8点差を逆転された「思い出づくりの結末」のケースがあるだけだ。

このときもバッテリーの交代だった。ここでは重複を避けるが、残り2イニングで8点差、優勝にも入れ替え戦にも関係のないいわば消化試合の「最終戦」だったので、必ずしも石橋を叩けとは言い切れないだろう。

ビハインド時の捕手交代(1)

ビハインド時の捕手の交代は珍しくない(108例)。だが、捕手交代後に逆転勝ちしたケースとなると、そう多くはない。わずかに9例だ。ということは、リードされているチームがキャッチャーを代えるのは、9割方負けを覚悟したときの最後の悪あがきなのかもしれない。

まずは5例を示そう。

94/09/06(神宮第二) 東都大学リーグ2部秋季第1週2日目第2試合
国学院大 010 000 420 =7 浅見−岡崎−○宮田
立正大 001 01 300 =5 西口−安藤−●辻

国学院大は6回裏の守備からバッテリーを代えた。7回表に西口文也をKOして逆転、その裏同点に追いつかれたあと、宮田が打者7人をパーフェクト・リリーフして、立正大の反撃をかわした。

ちなみに、94年秋は東都が指名打者制を採用した最初のシーズンだったが、代打起用の関係で、国学の指名打者は7回裏からセカンドに回り、9回表には宮田に打席が回ってきた(3球三振)。

94/10/16(平塚) 首都大学リーグ秋季第6週2日目第1試合
筑波大 000 100 000 =1 浦上義−伊与田−●浦上裕
帝京大 000 000 00x=2 ○立石

9回裏、一死一・二塁で帝京大は9番・キャッチャーに代打を起用、これが的中してライト前ヒットで満塁とし、サヨナラにつなげた。

95/10/18(神宮第二) 東都大学リーグ2部秋季第7週 3日目
東京農業大 001 11 100 =4 ●吉本
中央大 000 220 01X =5 鈴木−○林

1点先制された中大は、4回表の守備から捕手を代えた。代わった荒井は4回裏に逆転の犠牲フライを打った。もつれた試合は8回裏、4番・堀田一郎の決勝タイムリーで中大がものにした。

01/04/17(神宮第二) 東都大学リーグ2部春季第2週2日目第2試合
専修大 000 000 02 1 =3 上間−山根−○伊藤−加納
国士舘大 000 101 000 0 =2 木城−●近沢−秋葉

2点を追いかける専大は8回表、キャッチャーに代打・田山を起用したが実らなかった。しかし、9回に同点に追いつき、10回には田山が死球で出塁したあと、8回裏からマスクをかぶっていた阿部が送りバントを決め、さらに田山が三盗して、勝ち越し点のお膳立てをした。

01/09/22(神宮) 東京六大学リーグ秋季第3週初日第2試合
立教大 000 000 00 =3 多田野−○鶴井−小林
早稲田大 000 000 200 =2 ●和田

2点を追う立教は、9回表にキャッチャー・和田がレフトフェンス直撃のタイムリーを放って、1点差に詰め寄った。一塁止まりだった和田には代走を起用、ヒットとエラーで一死満塁として、代打の連続タイムリーで逆転した。

◇ビハインド時の捕手交代(2)

1割程度の可能性しかなくても、1日に2度見られることもある。

96/06/12(神宮) 大学選手権2回戦5日目第1試合
大阪教育大 012 000 02 0 =5 谷川−●野上
青森大 001 102 001 1x=6 中村−本間−大竹−○滝城

青森大は1点ビハインドの9回表にバッテリーを代えた。二死二・三塁のピンチをしのいだあとの9回裏は、連続四球を足がかりに同点に追いついた。

10回裏、二死一塁でキャッチャーの小野に打順が回ってきた。カウント2−1からの4球目に一塁走者が二盗を決めた。続く5球目、小野の打球はセンターの頭上を超えた。追い込まれたあとの盗塁で得点圏に走者が進んだ直後の鮮やかなサヨナラだった。

実は、8回裏はキャッチャーの打順で攻撃が終わっている。もし、小野が打力を買われていたら、8回に代打で起用されて、そのまま守備につくのが自然だ。そういう意味では、ベンチとしても意外な結末だったのかもしれない。

96/06/12(神宮) 大学選手権2回戦5日目第2試合
札幌大 000 011 000 0 =2 樫山−太田−●由利
東北福祉大 100 000 10 1x=3 山岡−鎌倉−○渡辺

東北福祉大は7回裏、キャッチャーに代走を起用した。8回表から4番ファースト・小野公誠がマスクをかぶった。8回裏に小野のタイムリーで追いつき、延長10回には小野のサヨナラアーチで決着をつけた。

2試合続けて延長10回サヨナラ、しかもサヨナラ打は同姓の小野、それも途中交代のキャッチャーだから、いくら偶然としても、できすぎた話だ。

◇ビハインド時の捕手交代(3)

捕手の交代が投手(あるいはチーム)に好影響を与えたのではないかと思われるケースもある。

97/10/12(平塚) 首都大学リーグ秋季第5週2日目第2試合
東海大 001 20 000 2 =5 平野−●海老沢
日本体育大 001 000 002 3x=6 ○小枝

日体大は2点ビハインドの6回表にキャッチャーを代えた。5回まで計9人の走者(毎回)を背負っていた先発の小枝は、キャッチャーが代わった6回から9回までの4イニングでは1安打を許しただけだった。

日体大は9回裏の二死無走者から、7番岩田がヒット、8番のキャッチャー・浅野も続き、土壇場で同点に追いついた。ところが、10回表には再び2点差をつけられる。

10回裏、1点差に詰め寄り、一死二・三塁の場面で、浅野に打席が回る。フルカウントからの6球目はサードのグラブを弾き、2人の走者が生還した。逆転サヨナラタイムリーは、途中交代のキャッチャーによるものだった。

01/06/16(神宮) 大学選手権1回戦4日目第2試合
広島経済大 105 004 100 =11 渡辺−成瀬−○河村
東農大生産学部 423 10 000 =10 松田−●今井−小森

5回表が終わった時点で試合開始からすでに2時間7分を経過していた。いったんは同点に追いつきながら4点を追いかける苦しい展開を強いられていた広島経済大は、5回裏の守備からキャッチャーが交代した。

5回裏、東農大生産の先頭打者はショートゴロ・エラーで出塁した。2回にも二盗を決めているこの選手は、次打者の初球に盗塁を試みた。代わったばかりのキャッチャー・花崎がこの走者を刺して、試合の流れが一変することになる。アップ・テンポにもなった。

5回裏を3人で片付けた広経大は、6回表にエラーと2四球でつかんだ一死満塁から犠牲フライと3ランで同点に追いついた。7回には先頭打者四球のあと、3連続バント(犠打エラー、犠打、犠打野選)で勝ち越した。これが決勝点だった。

東農大生産の攻撃を4回までと5回以降に分けてくらべてみよう。その違いは歴然としているのだ。

東農大生産学部の攻撃内容
打者 安打 三振 四死 得点 盗塁 備考
4回まで 28 10 10 ボーク2 3番手・河村は3回途中から登板
5回以降 16 盗塁死1

花崎は2回戦の対法政大戦では先発で起用され、二盗を2度阻止した(許盗塁は0)。

ほかにも、青学対創価の延長18回引き分けの試合では、8回裏に代打・本多が同点アーチを放っているが、本多はキャッチャーに対する代打だった。(→「26イニング目の日没コールド」


◆実は、このページは花崎のことを取り上げたくて、01年秋から準備していたものです。よくもまあ、ここまで引っ張ったものだとわれながら感心(?)します。

◆当サイトはインフォメーションを供給するサイトではありません。1年前に見た試合をこっそり出せるのは、1年たっても古びない性質のものだからです。まあ、あまり誰も扱いそうにないという変な(?)自信も ありましたが…。

◆どのレベルのサンプルをとるかで、数字が若干変わってくるかもしれません。 今回のサンプルについては「観戦試合内訳」をご参照ください。

◆事実誤認、数値の誤り、変換ミス、リンク切れ等にお気づきの際は、お手数ですが「メールのページ」からご一報いただけると幸いです。このページに対応するブログ「んだ」のエントリーは(今のところ)ありません。

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