セットポジション殿堂
村*** | 内*** | 石川雅規

内***

07/11/04分割
13/12/15更新

◆実はリクエスト?に応じていただいたプレイでした。その節はありがとうございました。四球はインプレイであって、打者には二塁を奪う権利があります。なお、このページはもともと「村***」のページに収めていましたが、1ページ1テーマの原則に反しますので、07/11/04に分割しました。


四球はインプレイ

女子の軟式野球は、年に1度しか見られない(最近はまったく見ていない)。99年にも織姫はいた。8月7日の1回戦(江戸川臨海)、同点で迎えた4回裏だった。内*は一死一塁で打席に入った。

初球はバントの構えから見送ってボール、この間に一塁走者はすかさず二盗を決めた。2球目は空振り、走者は三塁に走り、連続盗塁に成功した。どうやら、バントの構えも空振りも、盗塁をアシストするためのものだったようだ。カウント1−1からボールが3球続いた。四球だ。

左打席の内*はゆっくりではなく、かといって全力でもなく、80%ぐらいの速度で一塁に向かった。ベースの手前でスリーフットラインの外側にふくらんだ。内*はベースを回って二塁を狙う構えを見せたが、それ以上は走らず一塁ベースに引き返した。

二遊間の選手は必ずしもベースカバーを意識していたとは言えなかった。「行けばいいのに」と私は思った。イニングはまだ4回だが、7イニング制で時間制併用ルールだから、9イニング換算すると、もう7回ぐらいの見当だ。同点だから、次の1点は勝ち越し点になる。

走者は三塁に進んでいたのだから、内*がセカンドに走って、意表を突かれたキャッチャーが慌てて二塁に悪送球でもしようものなら、三塁走者をホームに迎え入れることができる。逆に守備側が冷静な判断をすれば、無理な二塁送球は避けるだろう。一死二・三塁の形が作れるわけだ。

つい忘れてしまいがちだが、死球はボールデッドで、四球はインプレイだ。したがって、四球によって一塁への安全進塁権を与えられた打者走者は、アウトを賭して二塁またはそれ以上の進塁を試みてよい。実際、四球目の投球が暴投や捕逸となった結果、打者走者が一気に二塁に進むというケースは何度も見たことがある。

だが、一般的には四球の場合は、打者走者は一塁にゆっくり走る。あるいは歩く。プロ野球なら、一塁に達したところで、おもむろにタイムを要求して、肘あてなどの防具をコーチに渡す。タイムがかけられれば、ボールデッドだから、そこから先は何も起こりようがない。

昔のプロ野球では、四球を得て一塁にゆっくりと向かった打者走者が、ベースの手前で突然速度を上げて二塁を陥れるというプレイがあったそうだが、今どき、そういう期待はまず持てない。

ただし、アマチュア野球ではチャンスはある。遊撃手が屈伸運動をしていたり、タイムをかけずにピッチャーのほうに駆け寄ったり、というシーンをときどき見かける。知識としては「四球で二塁に進んでもよい」というのは頭にある。とはいえ、現実にはなかなか二塁をうかがう選手はいない。

だから、私自身もどうせ一塁止まりだと決めつけてしまって、グラウンドから目を離してスコアカードに書き込んでしまうことも少なくない。たとえポーズだけであっても、二塁へ行くぞという姿勢を見せてくれたことに対して、私はいいものを見たという気分になっていた。

回った!

翌日の2回戦、そのチームは比較的楽に試合を進めていた。4点リードの2回裏、二死二・三塁で内*に打席が回ってきた。3球目のワイルドピッチで三塁走者は生還、二塁走者は三塁に進んだ。

打者走者が四球で二塁に行くための前提条件は、一塁と二塁に走者がいないことだ(一塁走者が三塁まで行ってくれれば、打者走者も二塁に行けるが…)。二死二・三塁のままでは、通常は二塁には行けない。状況が変わってチャンスが訪れたのだ。フルカウントからの6球目が外れた。四球だ。

キャッチャーは正規に捕球した。別に後逸もしなかったし、ファンブルもしていない。ここを見逃したら一生後悔するかもしれない場面が、いよいよ迫ってきたのだ。彼女は前日同様80%ぐらいの速度で一塁に向かった。けっして全力ではなかったが、大きなステップでラインの外側にふくらんだ。

なにせ「きのうの今日」だ。まして同じ選手なのだ。私には余裕があった。これから起こるかもしれないプレイに対する万全の備えがあった。グラウンドから目を離さなかった。内*がバットを置いて一塁に向かったときから、二遊間の位置にもキャッチャーにも十分に注意を払っていた。嬉しいことに誰もがまったく無防備だった。

期待どおり、内*は一塁を回って二塁に向かった。キャッチャーが内*の走塁に気づいたが、ベースカバーがいないので二塁には投げられない。二遊間は唖然として立ちつくすのみだった。まさかフォアボールで二塁に走る選手がいるとは思っていなかっただろう。

キャッチャーは仕方なく三塁走者に視線を移して、それからピッチャーにボールを返した。ちなみに、四球で二塁を陥れたこの選手こそ、05年の1回戦でレフトゴロに倒れた打者でもある。よほど相性がいい?らしい。

控えめに計算しても私は05年までに12万打席見ているはずなのだ。その中で、四球を得た打者が暴投や捕逸が絡まずに二塁を陥れたのは1人だけだ。レフトゴロで一塁アウトになったのも1人だけだ。それが同一人物とは天文学的な奇遇さとしか言いようがない。

今だから書けること

このプレイを見たのは99年だ。もう時効だろうから、そろそろ告白しておこう。実は、このプレイは私がけしかけたものだった。女子軟式選手権は32チームのトーナメントだ。初日は8チームずつ4会場に分かれる。第1試合の勝者は第2試合の勝者と、第3試合の勝者は第4試合の勝者と翌日の2回戦で対戦し、その勝者同士が準決勝進出をかけて対戦する。

A──┐
   ├─┐
B──┘ │
     ├─┐
C──┐ │ │
   ├─┘ │
D──┘   │
       ├
E──┐   │
   ├─┐ │
F──┘ │ │
     ├─┘
G──┐ │
   ├─┘
H──┘

要は同じブロックの8チームが集結しているわけだ。偵察ぐらいは当然のことだろう。初日の試合が終わったあと、内*のチームの選手たちも私の前に座った。なにしろ、観客席のスペースはそんなにない。普通に声が届く範囲だった。私はスコアをつけているので、タイミングを見計らって声をかけた。

聞いてみると、何度かやったことがあるらしい(あとでわかったことだが、塁間距離の短いソフトでは比較的よくあるプレイらしい。内*は右投げ左打ちでありソフト経験者と思われる)。私は暴投や捕逸が絡まずに四球の打者走者が二塁を奪ったケースをまだ見たことがなかったので、素直にそう伝えた。

翌日の2回戦の場面では、ワイルドピッチで二死三塁になったところで、私は大いに期待したのだった。リードしているし、打ち頃の投球を見逃してくれたような気もしなくはない。私に「万全の備え」があっても、それは当然のことだった。

実はそのとき、私の右前方に記録員が座っていた。彼女は四球の時点でスコアブックに目を落とした。記録員が見逃さなくて済むように、私はちゃんと「行った!」と声を上げたのだった。演出者?としては、できるだけ多くの人に見てもらいたいではないか。


◆このページで私が伝えたいことは、第一義的には「こんなプレイがあった」ということです。「誰がやったか」は、当事者以外の人にとってはたいした意味はないはずです。

◆類似のプレイを 高校野球の01年秋季関東大会で見ました。二死三塁で四球をもらった打者が二塁をうかがい、一・二塁間でアウトになる間に、三塁走者が生還しました。→「縫い目の数だけ煩悩はある」
◆『ベースボール・マガジン』97年秋季号 (「盗塁・走塁」の特集号)で、元ホエールズの加藤博一が、四球で二塁を狙ったことがあると述懐しています(46ページ)。近藤貞夫監督の頃の 「スーパーカー・トリオ」の時代であろうと思われます。アウトになったそうですが…。
◆阪神タイガースのソロムコは、1960年のシーズンに「四球で二塁」を4度成功させているそうです(失敗が1度)。このプレイをどう記録するのか「四球で二塁へ、記録は?」のページもどうぞ。

◆事実誤認、数値の誤り、変換ミス、リンク切れ等にお気づきの際は、お手数ですが「3代目んだ」(四球で二塁へ)または「メールのページ」からご一報いただけると幸いです。

★08/05/26校正チェック済、ケなし、順OK
★08/01/07HTML文法チェック済(エラーなし)



検索リンクポリシー殿堂|次へ:石川雅規|作成順:「21世紀枠」の正体(東)