◆女子軟式選手権では、「サドンデス・ルール」が採用されています。このルールは、大会あるいは連盟規定として、さまざまなバリエーションが存在します。文中では小出しにしていますので、頁末にまとめておきました。
シドニー五輪でマイナー競技だったソフトボールが一躍脚光を浴びた。100円ショップで買ったという「金メダル」がいい。あの「金メダル」をあらかじめ用意していた周到さには脱帽だ。
ソフトボールではタイブレーク制(01年から「タイブレーカー」と呼ぶようになったそうだ。シドニー・オリンピックの時点では「タイブレーク」だった)が採用されていたけれども、女子軟式選手権にはサドンデス・ルールがある。規定のイニングまたは時間を経過して同点の場合は、一死満塁で任意の打順から攻撃するという特別ルールだ。
いわゆる草野球でも「サドンデス」という呼称が一般的だと思われるが、あまり適当な呼称ではないだろう。普通の延長戦がある種の「サドンデス」だからだ。まあ、それは置くとして、このサドンデス方式は、97年のイースタン・トーナメントでも採用されていた。8回裏が終わったとき、9回終了でなお同点の場合はサドンデス方式で決着をつける旨の場内アナウンスがあった。
| 97/03/29(鎌ケ谷) イースタン・トーナメント2回戦 | ||
| ジャイアンツ | 002 110 000 =4 | 趙−小原沢−●三沢 |
| ファイターズ | 100 300 004x =8 | 桜井−川辺−○山原 |
あいにく私のスコアカードには、「9回打ち切り。同点の場合は状況設定エキストラ・イニング」というメモしか残っていない。怠慢だ。こんなメモでは役に立たない。どういう状況設定なのか、が肝心だというのに…。なお、「サドンデス」という言葉は使われていなかったはずだ。
◆03年6月20日付『日刊スポーツ』9面(東京)に、次のような記事がありました。打順が継続か任意かは、わかりません。
プロ野球では99年の「イースタン・リーグトーナメントひたちなか大会」で、9回引き分けの場合は「状況設定攻撃制度」(無死二、三塁)を導入したが、該当試合はなかった。
珍しいものはやはり見ておきたい。9回表は山原和敏がジャイアンツ打線を三者凡退におさえた。あとは9回裏だけだ。9回裏のマウンドには三沢興一が上がった。バントヒット、犠打野選、敬遠で無死満塁になったあと、4番の西浦克拓が三沢の8球目をレフトスタンド芝生席に叩き込んだ。
怖いもの見たさのサドンデスはあえなくお預けになった。トーナメント大会ではこういう特別ルールがもっと広く採用されてもいいのではないか、と私は思っている。とりあえず、私が見たサドンデスの試合を全部紹介しよう。
最初に見たのは97年だった。いつからサドンデス・ルールが採用されたのか知らないけれども、この試合のときは当事者もよく理解していないように見受けられた。私も初めてのことだったので、とまどいがある。先攻のアドバンスは、1番打者が打席に入った。9番打者が一塁走者、8番打者が二塁走者、7番打者が三塁走者だ。
| 97/08/10(江戸川) 2回戦 | サドンデス | ||
| 愛知アドバンス | 420 10 =7 | (9番で終了)1番から…右飛、死球1、死球1、遊ゴ | 2 |
| 大阪ディアズ | 113 02 =7 | (7番で終了)3番から…右安1、四球1、中安1 | 3x |
悩んでいても仕方がないので、9番打者の一塁の欄、8番打者の一塁と二塁の欄、7番打者の一塁・二塁・三塁の欄に、それぞれ○印を記入し、6番打者をアウトにした。「これで、あとは普通にやれる」と、のんきに構えていたら、死球押し出しで得点が入ったときに頭を抱え込むことになった。
私は自責点に●、非自責点に○を使っている。この場合、死球押し出しで生還した走者は、ピッチャーが自らの責任で出したランナーではないから○にした。打者には打点をつけた。この辺はまあ、妥当なところだろうし、大方は意見が一致するものと思われる。
それでは、押し出しで生還した三塁走者に対して、個人記録としての「得点」を与えていいものだろうか。三塁打を放ったバッターに代走が出て、その選手が生還すれば、代走には得点が記録される。同じ理屈なら、三塁走者に得点を与えてもおかしくはない。
もし、プロ野球でサドンデス制を導入する場合、個人記録にどう反映させるのか(あるいはさせないのか)という問題が生じるだろう。とりわけ連続記録に関しては、十分な吟味が必要ではないかと思われる。
たとえば、連続試合得点のかかっている選手が、サドンデスのイニングに得点した場合、これを連続試合記録に算入するのかしないのか、かなりデリケートな判断を求められることになりそうだ。
さて、後攻のディアズは3番打者を「先頭打者」として打席に送った。2点を追うのだから二塁走者が同点のランナーになる。おそらくはチームのなかでも足が速いであろう1番打者を二塁走者にあてはめて、そこから逆算するとこの打順になったと私は解釈した。実は、それは私の深読みで、本当のところは志願の「先頭打者」だったらしい。
試合終了後の場内放送は「ご覧のように10対9で大阪ディアズが勝ちました」と言っていた。どうやらサドンデスの得点は通算するようだ。しかし、サッカーの場合は1対1でPK戦に入って、PK戦が5対4で決着したときは、最終スコアを6対5とは言わない。無理に加算する必要はないと判断して、私は通算しなかった。
なお、あとでわかったことだが、ソフトボールのタイブレーカーの場合はそのようにルール化されているし、全日本軟式野球連盟には「特別延長戦で勝敗が決した場合は、合計得点とする」との規定があり、「4−3(特)」という具合に例示されている。まあ、「特」がつくなら、辛うじて理解の範囲内だ。
2度目のサドンデスは、2年後だった。
| 99/08/07(臨海) 1回戦 | サドンデス | ||
| ストレイシープ | 400 10 =5 | (7番で終了)9番から…遊ゴ、三飛 | 0 |
| ブレインズ | 050 00 =5 | (8番で終了)9番から…二安1 | 1x |
先攻のストレイシープは、9番打者を「先頭打者」にした。この打者は途中出場で、まだ打席には入っていなかった。だから、そういう配慮があったのかもしれない。対するブレインズは、前のイニングを引き継いで9番打者を「先頭打者」として送った。実はこの選手も途中出場で、まだ打席には入っていなかった。
ただ「任意の打順から」という部分はまだ浸透していなかったらしくて、自分から打席に向かった。審判から聞かされベンチを振り返ったところで、「そのままでいいよ」という監督(選手兼任)の声に促されてボックスに入り、それに合わせてランナーが散った経緯がある。これもある種の「志願の先頭打者」と言えるかもしれない。
3度目は、その2日後だった。
| 99/08/09(江戸川) 準決勝 | サドンデス | ||
| ドリームウイングス | 000 010 0 =1 | (8番で終了) 2番から…遊ゴ1、四球、二邪 | 1 |
| オール兵庫 | 000 100 0 =1 | (2番で終了) 4番から…三振、三ゴ | 0 |
守備側が一死満塁をしのぐための理想は、内野ゴロを打たせてホーム・ゲッツーを奪うことだ。これなら、1人打ち取ればチェンジになるからだ。実際、無死満塁が無得点に終わるケースでは、ホーム・ゲッツーが絡んでいることが多い。
先攻のドリームウイングスは、「先頭打者」がショートゴロを打った。ショートから本塁に送球された。これで、三塁走者は封殺されてツーアウトだ。オール兵庫は守備側の「理想」を現実のものにするために、キャッチャーが一塁に転送した。
一塁でのアウトが完成すれば、ホーム・ゲッツーが成立して、打者1人だけでサドンデスのイニングを終わらせることができる。だが、ファーストミットからボールがこぼれた。二塁走者は三塁を回っていた。「守備側の理想」を逆手にとったとも言える二塁走者(あるいは三塁コーチ)の判断が、一塁手のバックホームをかわして決勝点をもたらした。
本塁、一塁、そして本塁。スコアラー泣かせの連続プレイだが、私には余裕があった。なぜなら、5回の1点も同じパターンだったからだ。5回表、1点を追うドリームウイングスは一死満塁のチャンスを迎えていた。打者はセカンドゴロを打った。
セカンドから本塁に送球されてツーアウト、キャッチャーはやはり一塁転送でホーム・ゲッツーを狙った。送球が高かった。一塁手はジャンプして捕ったので、ベースから足が離れた。一塁塁審のジャッジがワンテンポ遅れた。
一塁手が審判のジャッジを待ったことが本塁への返球を遅らせた。三塁を回っていた二塁走者が同点のホームを踏んだ。というわけで、次のプレイがあることは織り込み済みだったので、サドンデスのときも別に慌てずにすんだ。
4回目のサドンデスは、00年だった。
| 00/08/14(江戸川) 準決勝 | サドンデス | ||
| 愛知アドバンス | 000 200 =2 | (3番で終了)3番から…投ゴ1 | 1 |
| 札幌シェールズ | 000 110 =2 | (8番で終了)3番から…左飛、三振 | 0 |
先攻のアドバンスは3番打者を「先頭打者」に据えた。ボールが2つ先行して、カウントは0−2になった。バッテリーとすれば、満塁だから0−3にはしたくない。ストライクが来る確率は高い。しかけどころのこのカウントで、私が息を殺したとき走者が動いた。スクイズか?
と思ったら、なんとランエンドヒットだった。ピッチャーゴロだが、三塁走者はもう本塁の間近だ。いまさら本塁に投げても、とても間に合わない。打球を処理したピッチャーは一塁に送球した。私には免疫がある。これは「ツーラン・スクイズ」ならぬ「ツーラン・ランエンドヒット」だ。
このクラスのチームなら、もはや予定調和の世界だ。案の定、二塁走者は三塁を回っていた。さすがに準決勝だ。守備側にとっても予定調和の世界だっただろう。2人目がホームを突いてくることに対しての備えはあったはずだ。一塁手は落ちついて本塁に返してタッチアウトをとり、1点だけにおさえた。
ボールは1−3−2と渡っている。連続したプレイであり、最初のアウトの刺殺者である一塁手が次のアウトの補殺者になっているから、これはダブルプレイだ。ただ、二塁走者は三塁に達したあとにアウトになったから、併殺打ではない。したがって、打者には打点がつく。ダブルプレイで打点がつくという記録マニアにとっては嬉しいプレイでもあった。
トーナメント大会では、原則として引き分けはありえない(決勝なら両チーム優勝ということもあるだろうが…)。日程に余裕がないときは、悠長に再試合などやれない。私が理想とするサスペンデッドも、現実問題としては無理があることが多い。
「サドンデス」は、野球のことは野球で決着をつけるという点で、「ジャンケン」や「くじ引き」より、はるかに納得できる制度だ。当事者にとってもそうだろうし、見ている側も同じだ。上の4試合は、いずれもサドンデス1イニングで決着がついた。
なお、全日本軟式野球連盟には、少年・学童の部の場合、8回以降は「特別延長戦」とする規定があるようだ。継続打順で無死満塁から始めることになっているらしい。ソフトボールのタイブレーカーは無死二塁(打順は継続)で始まるが、すくなくとも野球の場合、無死二塁では1イニングだけでは決着しない可能性が高い。
無死満塁で始めると、時間ばかり余分にかかることになりかねない。状況設定としては一死満塁が妥当だと思われる(一死一・三塁もいいかもしれない)。前述のようにホーム・ゲッツーで終わることもあるし、長打が出れば走者一掃だ。得点がバラつきやすいのは、やはり一死満塁だろう。
なお、マスターズリーグの初年度(2001−02年)には、9回で同点の場合は「一死二・三塁で1番打者から」という「促進ルール」が採用されていたようだ。ただし、公式記録は9回までとされ、初年度限りで制度自体が廃止されている。
| 大会 | 名称 | 適用 | 状況設定 | 打順 | 記録 |
| 女子軟式選手権 | サドンデス | 8回から(時間制併用) | 1死満塁 | 任意 | 通算? |
| ソフトボール | タイブレーカー | 8回から | 無死2塁 | 継続 | 通算 |
| 全軟連(少年&学童) | 特別延長戦 | 8回から10回まで (10回で同点なら抽選) ※ローカルルールあり |
無死満塁 | 継続 | 通算? |
| 99年イースタン・トーナメント | 状況設定攻撃制度 | 10回から | 無死2・3塁 | ? | 9回まで? |
| マスターズリーグ初年度 (01-02年) |
促進ルール | 10回から | 1死2・3塁 | 1番打者から | 9回まで |
| 日本野球連盟 (都市対抗と日本選手権は03年 から、他の大会は04年から) |
タイブレーク | 13回から(時間制併用) ※大会規定による |
1死満塁 | 継続 | 通算 |
◆野球のルールは、もともとアメリカのプロ野球を前提にしてつくられています。選手数が少ないアマチュアで、ましてトーナメント形式の場合、「1967年日本楽器」や「元気があれば、何でもできる?」のようなことがあると、次の試合に影響してしまいます。「再試合かサスペンデッドか」という議論には、サドンデスを選択肢に加えるべきです。ただし、私は日本野球連盟の「タイブレーク記録処理に異議あり!」の立場です。
◆サドンデスの場合、後攻が有利なのではないかという指摘があるかもしれません。私が集めている範囲のデータでは、この場合の後攻有利説は否定できます(「後攻は有利なのか?」)。また、私がこれまでに見た無死満塁無得点の事例(9イニング硬式のみ)は、「大須賀」のページで一覧にしてあります。
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