セットポジションルール
ボークのペナルティ | 空過 | 場内アナウンスの妙

ボールデッド時の空過

01/07/27作成
13/12/15更新

◆いわゆる「ベースの踏み忘れ」のことを、規則では「空過」と呼びます。ボールデッドで安全進塁権が与えられた(打者)走者は、踏み直しに戻ることができるでしょうか?


エンタイトル・ツーベース

01年7月、高校野球の関東某県予選1回戦を見に行った。1点差を追う5回裏の攻撃、一死無走者の場面で、3番打者の打球はレフトポール際でワンバウンドして外野スタンドに入った。エンタイトル・ツーベースになる。

スタンドに入った打球を見届けて、私が打者走者に目を移すと、彼は一・二塁間から一塁ベースに戻りかけていた。一塁の塁審は戻ってくる走者に対して、二塁を指さした。まあ、よくある出来事だ。その走者は、(今にして思うと)ちょっと怪訝そうな態度で二塁に向かったが、そのときは別に不自然には思わなかった。

プレイは再開された。ピッチャーは次打者に投球せず、一塁に送球した。ボールを持った一塁手がベースを踏むと、一塁の塁審は高々と右手を上げた。

攻撃チームのベンチサイドは一塁側だった。アウトが宣告されたので、二塁に進んでいた走者はベンチに帰る途中で一塁塁審に何か話しかけた。一塁塁審はそれを制してタイムをとり、ほかの審判を集めた。

一塁側のスタンドからは、「なんでアウトなんだ。ちゃんと説明しろ!」というかなり大きな声が飛んだ。まあ、まず間違いなく空過によるアピールアウトだろう。その点だけなら、(私は)いちいち説明してもらわなくてもよい。

協議の結果、改めてアウトが宣告されたが、それでも走者や一塁コーチが審判に食い下がるようなシーンがあった。ただし、きわめて紳士的なものであり、別にしつこくはなかった。

場内説明はなかったので詳しいことはわからない。ここから先は、すべて私の想像でしかない。だから、事実とは異なるかもしれない。ただ、こういうことは十分に考えられるだろうな、という世界だ。

ベースの踏み忘れ

一塁におけるアピールプレイでアウトになったということは、おそらくはベースの踏み忘れが原因であろうと思われる。ほかに適切な理由が見当たらないので、まず間違いはないだろう。

打者走者が一塁に戻ろうとしたのは、単純に打球の行方を見失ってしまったからだろうか? だとすれば、そのまま進んで二塁にとどまるはずだ。ファウルなら二塁から直接打席に向かえばよい。一塁に戻ろうとしたのだから、目的はやはり一塁ベースだったののではないだろうか。

彼が塁の空過を自覚しており、ベースを踏み直すために一塁に戻ろうとしたのだとすれば、話がずいぶん違ってくる。踏み直そうとしたのだと考えると、二塁を指示されたときのちょっと不安げな様子も、アウトを宣告されたあとの不満げな態度も、すべてが合理的に説明できるのだ。

塁の空過でアピールアウトを宣告したあと、わざわざほかの審判を集める必要があるだろうか。当該審判の責任でジャッジを下せばいいのであって、かりに見ていなかったとしたら、あんなに高々と右手を上げられないのではないかと思えてしまう。この試合では、ほかにもアピールプレイがすくなくとも3回あった。いちいち集まったりはしなかった。

私は次のように推理するのだ。

●一塁塁審は塁の空過を見ていた。
●打者走者には空過の自覚があった(あるいは一塁コーチが教えたかもしれない)。
●だから、ボールデッドを幸いに一塁ベースを踏み直そうとして戻りかけた。
●そこに一塁塁審が二塁を指示した。
●打者走者は「踏んでいないけど、いいのかなあ」と不安に襲われながらも、審判の指示に従って一塁を踏み直すことなく二塁に進んだ。

私の推理が正しいなら、走者にはやはり釈然としないものが残るだろう。二塁を指示したその審判によってアピールアウトが宣告されたのだ。「自分はベースを踏み直そうとした。それをさえぎるように二塁を指示したのは誰なんだ」ぐらいのことは言いたくなるだろう。

ボールデッドのときの踏み直し

さて、ルールを確認しておこう。

08年版 『公認野球規則』

7・10 次の場合、アピールがあれば、走者はアウトとなる。
 <略>
 (b) ボールインプレイのとき、走者が進塁または逆走に際して各塁に触れ損ねたとき、その塁を踏み直す前に、身体あるいは触れ損ねた塁に触球された場合。(7・02参照) 
 【付記】 塁を空過した走者は、 
 (1) 後位の走者が得点してしまえば、その空過した塁を踏み直すことは許されない。
 (2) ボールデッドのもとでは、空過した塁の次の塁に達すれば、その空過した塁を踏み直すことは許されない。
  【原注】 例――打者が競技場の外へ本塁打を打つか、スタンドに入る二塁打を打って、一塁を空過した(ボールデッド)。――打者は二塁に触れる前ならば、誤りを正すために一塁に帰ることはできる。しかし、二塁に触れてしまうと、一塁に戻ることはできない。守備側がアピールすれば、一塁でアウトが宣告される。 <略>

▲06年版まで「さいして」でしたが、07年版から「際して」と漢字表記されています。

ちょうど例に示された状況と同じだ。打者はまだ二塁に達しないうちに一塁に引き返そうとしていた。ボールデッドであっても、二塁に達する前なら空過した一塁を踏み直すことはできる。

私がこの走者だったとしたら、やはり審判の指示に従ったような気がする。まして、高校野球における審判とは「神聖不可侵」ですらある。あえて審判に逆らって、一塁ベースを踏み直したりはしないだろう。

私が一塁の塁審だったとしたら、走者が一塁に戻ったあとで、二塁を指示しただろう。空過に気づいていたのなら、そうする。一塁に戻ろうとする走者に二塁を指示しておいて、あとからアウトを宣告するのは、言葉は悪いけれども、詐欺の見本のようなものだ。おそらく、このときの審判も次回からはそうするだろう。

私が一塁手だったとしたら(空過に気づいていたら)、走者とすれ違うときに「エンタイトルだよ」とひとりごとを言うだろう。別に露骨に二塁を指さしたりはしないだろうけれど、走者に聞こえるようなひとりごとを言いたくはなる。

ところで、このときの次打者はランニングホームランを打った。あのアピールアウトがなければ、逆転ホームランだったわけだ。まあ、最終的には3点差で負けたから、試合への影響はなかったと言えるかもしれない。

あれから数年が過ぎた。早すぎた指示をたぶん後悔しているはずの当該審判の心の痛みに、アピールアウトを宣告された走者は気づいてくれただろうか。


◆このファイル(josi02iya.html)の主な更新履歴は次のとおりです。実際のファイル作成日は00/08/27ですが、頁頭で示す作成日は01/07/27としました。
 00/08/27:【A】「オブストラクションと移動ベース」の標題でUP
 01/07/27:【B】「エンタイトル・ツーベース」などを追加(現在のこのページ)
 02/08/19:【C】「02年決勝」などを追加
 08/02/24:BとC+Aに2分割。Bは「ボールデッド時の空過」に改題(このファイル)。C+Aは「ゲッツーのとれるチーム」として新規ファイル(josi09heisatu.html)を作成。

◆事実誤認、変換ミス、リンク切れ等にお気づきの際は、お手数ですが「3代目んだ」(ボールデッド時の空過)または「メールのページ」からご一報いただけると幸いです。なお、「書庫・東雲」(奪われぬもの)では、“疑惑のホイッスル”で退場処分を受けたラグビー選手がその審判のことをどう思っているのかという部分を引用してあります。

★08/02/24校正チェック済、ケなし、順OK
★08/02/24HTML文法チェック済(エラーなし)



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