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カウント0−3でのバントの構え

01/05/28作成
13/12/14更新


バントの構えは有効か?

ボールカウントが0−3になったとき、高校野球では走者の有無にかかわらず、打者がバントの構えをすることがよくある。大学野球でもときおり見かけるし、社会人野球でもたまにあるが、プロ野球ではまず見られない光景だ。

私の守備範囲で言えば、リトルシニアや女子軟式でも比較的よく見られる。少年野球ではかなり多いらしい。この場合、打者にはバントの意思はない(はずだ)。ピッチャーを動揺させて四球を得ようとする意図であろうと思われる。

このようなポーズは無意味なのではないかというのが今回のテーマだ。もちろん、バットを出すことによってキャッチャーの視界からボールが消えて、結果的にパスボールを誘うという効果があることは否定できない。したがって、走者がいる場合には、0−3からのバントの構えがまったく無意味だと決めつけることはできないと思われる。

だが、走者なしのケースでのバントの構えは攻撃側にとって不利益にしか作用しないのではないだろうか。いくつかのケースを想定してみよう。まず、二死走者なしの場面でボールカウントが0−3になったとしよう。打者がバントの構えをしてくれるのなら、ピッチャーとしては安心してストライクを放り込めばよい。

かりにセーフティバントが決まったとしても、バントの打球ならまず長打にはならない。結果は四球と同じなのだ。実は0−3後の出塁率は8割に及ぶのだ(後述)。バントヒットで一塁に行かせるだけなら、まあ予定どおりだ。

バスターに切り替えられて長打を浴びることもあるだろうけれども、その可能性は無視できるほど小さい。バッテリーとの心理的な駆け引きという点では、打者が打席を外して素振りでもして、甘い球なら0−3でも打ちにいくという態度を見せたほうがより効果的だろう。むしろ、そのほうが期待する結果(四球)が得られやすいのではないか、と思われる。

バントの構えで動揺する程度のピッチャーなら、わざわざそんなことをしなくても打ち崩せるだろう。かりにサインが「待て」だったとしても、バントの構えはあまり必要ないと思われる(ただし、三塁手との関係もあるので、試合の序盤ならバントの構えがまったく無意味だとは思わない)。

検証

次に、同点の中盤、一死一塁でボールカウント0−3になったとしよう。この場合でも状況はあまり変わらない。守備側としては、打者が実際にバントしてくれて、送りバントが成立するならアウトを1つ稼げるのだ。

それなら、喜んでバントしてもらえばいい。かりにヒットになったとしても結果は四球を与えたのと同じことだ。このケースでもピッチャーは安心してストライクをとりに行ける。

結局、どうしてもバントされたくない場面というのは、同点の9回裏無死二塁のような特殊なケースに限られるのではないだろうか。

以上、もしカウントが0−3になって、打者がバントの構えを見せるなら、ピッチャーは何も考えずにストライクを投げればいいのだ。たとえ1球であろうと、そういう余裕を与えてしまうことになるバントのポーズに私はあまり感心できない。

それでは、数字で検証していこう。今回、集計対象としたのは次のとおりだ。

まず、0−3後の4球目にバントの構えをした打者はどの程度いるのだろうか。

0−3後のバントの割合
種別 カウント
0−3
(a)
バント
の構え
(b)
割合
(b/a)
備考
プロ 229 3.5%  8例中4例はもともと送りバントのケース
大学 435 35 8.0%  35例中15例はもともと送りバントのケース
高校 397 59 14.9%  59例中22例はもともと送りバントのケース

上の表で示したように、やはり高校ではよく見られるが、大学になると少なくなり、プロ野球ではレアケースと言える。

プロの実例

数の少ないプロ野球のケースについて実例を列挙しよう。「投球」の赤字はバント、青字はバスターをあらわす。

プロの実例
事例 年月日 スコア アウト/走者 打順/打者/所属 投球 結果 投手/所属 備考
【A】 92/04/05 7ウ 2−2 無死1塁 2番/角富/S BBBS 左飛 猪俣/T 5球目はバスターエンドラン
【B】 92/04/15 5ウ 0−4 無死(なし) 2番/前田/G BBB 四球 永野/M
【C】 92/06/02 1ウ 0−0 無死(なし) 2番/羽生田/L BB 一ゴ 佐々木/S
【D】 92/07/04 7ウ 0−2 無死1・2塁 3番/藤島/F BBBB 四球 北原/L
【E】 92/07/04 3ウ 0−2 無死1塁 9番/佐藤兼/M BBBSH 投ギ 高村/Bu
【F】 92/07/11 2表 0−0 無死(なし) 6番/松元秀/S BBBFB 四球 小川/M
【G】 92/08/08 3表 0−0 無死1塁 3番/藤島/F BB 四球 牛島/M
【H】 92/08/09 6ウ 3−0 無死1・2塁 9番/藤原/Bu BBBB 四球 足立/C
【I】 92/04/26 4ウ 2−0 無死(なし) 8番/大宮/L BB 四球 伊良部/M
【J】 92/05/02 1ウ 0−0 無死1塁 2番/平野/L BBB 四球 タネル/H 初球に盗塁成功

▲B…ボール、S…見逃しストライク、F…ファウル、H…インプレイの打球

【A】から【H】までが0−3後の4球目にバントの構えを見せたケースだ。【A】【D】【E】【H】の4例は、もともとが送りバントのケースだった。【C】と【F】は両チーム得点なしの序盤だから、先に述べたようにバントの構えが無意味だとは思わない。

【G】は両者の中間に位置するケースなので、高校野球チックなバントの構えは【B】だけだと言っていい。まあ、ファームの場合は必ずしもチームの勝利優先というわけではないだろうから、それが悪いと言いたいのではない。

いずれにせよ、プロとくに「1軍」の場合、0−3後の4球目に打者がバントの構えを見せることはきわめてまれである。そして8例のうち6例はストライクが入っている。四球狙いでバントの構えをしてもその効果は期待できない。

その程度で制球を乱すようなら最初からプロにはなっていないだろう。だから、バッターもバントの構えなどしないのだろう。

【I】の大宮は0−2からの3球目にバントの構えをしている。当時38歳の大宮が本当にセーフティバントを試みるつもりだったとも思えない。ベテラン選手のしたたかさを感じさせる。

【J】の平野はバントで有名だったけれども、0−3となった4球目にはバントの構えをとっていない。私の記入漏れなのかもしれないが、こういうケースにこそ「プロ」を感じるではないか(実際にはアマでも見られる)。

▲私がバントの構えをチェックするようになったのは92年からです。(A)の角の5球目は「AB△」と記入してあります。今ならこれは「バントエンドランの打球」の意味ですが、バントの打球がレフトに飛ぶとも思えませんし、バスターエンドランだろうと思われます。
▲当時はまだバスターとバントを区別せず、とりあえずバントの構えを見せたら「B」を記入していたのでしょう。なお、角の当該打席は当時の『日刊スポーツ』で確認してもレフトフライです。

0−3で本当にバントした選手

さて、集計対象のなかにカウント0−3後の4球目を実際にバントした打者はいるだろうか。すでに見たようにプロではいない。ちょっと意外だが、大学で1例、高校で2例、0−3後の4球目のバントがあった。結果はセーフティバント失敗(ピッチャーゴロ)、ファウル、送りバント成功だ。

0−3後の4球目にバントの構えをしたケースは大学と高校で合わせて94例だから、大雑把に30人に1人ぐらいは実際にバントすることもあるわけだ。

96年7月14日の高校野球選手権大会神奈川予選では、ノーアウト走者なしの場面で相武台高の2番打者がセーフティバントを試みている。8回表で3点リードの状況だった。メモを残していないので、どういうバントだったかわからないのが残念だが、ピッチャーが処理して一塁手に送球している。

ファウルの事例は、96年4月10日の関甲新学生リーグで、4回表に新潟大が2点差に詰めた直後の9番打者だった。一死一塁で相手は関東学園大だ。バッターは初球からバントの構えをしていた。4球目はバントファウル、5球目がバント見逃しのストライク、6球目は外れて結果的には四球だった。

送りバント成功の事例は、97年8月14日の高校野球選手権大会2回戦、敦賀気比高の6番打者だ(対倉敷商戦)。8回裏のリードを4点に広げた直後の無死一・二塁だった(4試合日の第3試合でスコアカードの字が眠っている。ボールカウントは正確ではないかもしれない。なお、犠打成立は『輝け!甲子園の星』のテーブルで確認済み)。

いずれにせよ、守備側としては四球を与えるよりバントのほうがいい。実際、相武台の場合はアウトをとっているのだ。新潟大のケースでは、かりに送りバント成功でも二死二塁であり、両チームの力関係からして、次打者にシングルヒットが出て1点差に迫られたとしてもあまり影響はない(最終的には7回コールドだった)。

むしろ四球で走者が溜まってしまうことを警戒すべきだ。敦賀気比のケースでは、送りバント成功で一死二・三塁になったが、後続を打ちとったので追加点は与えなかった。やはりピッチャーはストライクを投げればいいのだ。

0−3後の4球目のボール比率

それでは、0−3後の4球目に打者がバントの構えをした場合としなかった場合で、ストライク/ボールの比率には差異が生じるのだろうか。

ストライクかボールか
バントの構えあり バントの構えなし
大学
435例
ボール17、ストライク17、ファウル1
 (ボールの比率48.6%=17/35)
ボール174、死球1、ストライク208、空振り4、ファウル5、打球8
 (ボールの比率43.8%=175/400)
高校
397例
ボール34、ストライク23、打球2
 (ボールの比率57.6%=34/59)  
ボール155、ストライク175、空振り2、ファウル2、打球4
 (ボールの比率45.9%=155/338)

実に意外なのだが、どうやらバントの構えはボールを誘うようである。大学でも高校でもバントの構えをしたときのほうが、ボールの比率が高い(ただし、高校より大学のほうがその差は接近している)。私はてっきり逆の結果が出ると思っていた。

バントの構えをしないときのほうがピッチャーは投げづらいように感じるのだが、どうもそうではないらしい(まあ、サンプルが少ないけれども…)。結局、一定の効果があるから、0−3後にバントの構えをする打者がいるということなのだろう。

効果のありそうな投手に対してやるのかもしれない。だとしたら、ピッチャーは怒れ。「どうせバントはしてこない(するのは30人に1人)、かりにバントされても四球よりまし、だからズバッとストライクを投げ込め」、守備側の監督やキャッチャーはそう思っているのだから(たぶん)。

松坂のケース

ちょうど集計対象に入っていたので、松坂大輔のケースを紹介しておこう。松坂は横浜高2年のとき、春の関東大会1回戦で藤代紫水高と対戦した(97年5月17日)。この試合では、カウント0−3の場面が次のように4回あった(高校時代の松坂をほかに2試合見ているが、0−3はない)。

松坂の場合(1)
アウト/走者 打者/左右 投球 結果
4ウ
7ウ
7ウ
8ウ
無死(なし)
無死(なし)
1死(なし)
無死(なし)
4番打者R
7番打者R
8番打者R
1番打者R
BBBSH
BBBSSS
BBBSFK
BBBSB
中安
三振
三振
四球

▲B…ボール、S…見逃しストライク、K…空振り、F…ファウル、H…インプレイの打球

ついでに、中学時代にさかのぼってみよう。95年8月12日のリトルシニア選手権準々決勝だ(対中本牧シニア)。

松坂の場合(2)
アウト/走者 打者/左右 投球 結果 備考
1ウ
3ウ
無死1・3塁
無死2塁
3番打者R
5番打者R
BBBSB
BBBB
四球
四球
5球目は一塁走者とのエンドラン
4球目に二塁走者が三盗

藤代紫水戦でも中本牧戦でも、打者はバントの構えは見せていないが、松坂は6例中5例で4球目にストライクをとっている。ストレートの四球は後にバッテリーを組む小山に与えたものだけだ。大学でも高校でも(シニアでも)、0−3からはそう簡単に打ってこないからだ。

上の集計をもとに0−3後の4球目を打者がスイング(空振りとファウルを含む)した割合を算出すると、次のようになる。

大学 4.1%(18/435)
高校 2.5%(10/397)

つまり、0−3ならバントの構えの有無にかかわらず、松坂のようにストライクをとりに行くべきなのだ。どうせ9割以上はウエイティングに決まっている。まして、バントの構えをしてくれたら長打はないのだ。

0−3後の打率と出塁率

私としてはカウント0−3でも簡単に歩かせてほしくはないのだが、不用意にストライクを投げると「待ってました」とばかりに行かれることもある。最後に、0−3になったあとの打率と出塁率を求めておこう。

打率と出塁率
種別 打率 出塁率 打者 打数 安打 2B 3B HR 犠打 四球 死球 凡退 備考
プロ .375 .776 229 80 30 146 50 盗塁死による打席未了1あり
大学 .261 .810 435 111 29 318 82 凡退には犠飛1、失策1を含む
高校 .412 .855 397 97 40 11 293 57 凡退には犠飛1、失策4、野選1を含む

0−3が1−3になっても、まだバッターには余裕があるのだから、打率が通常より高くなるのは当然のことだ(大学野球で.261なら高いほうだ)。出塁率に関しては、予想どおり高校>大学>プロの順に並んだ。ついでに、分母を打者、分子を四球として「四球率」を求めてみよう。

プロ 63.8%(146/229)
大学 73.1%(318/435)
高校 73.8%(293/397)

プロの場合、敬遠の四球がアマチュアより多いはずだが、それでも0−3から簡単には四球を与えていない。229例のサンプルには15例の敬遠が含まれているので、これを除いて四球率を再計算すると、61.2%(131/214)になる。

実際には、敬遠の意図がうかがえるけれども敬遠とは記録されない四球もかなりあるから、プロの場合にはカウント0−3になっても、四球になる割合は5割を少し超える程度ということになるだろう。

これに対して、大学や高校では0−3が7割以上の割合で四球に直結している。0−3で踏ん張れるかどうか、どうせ4球目は振ってこないと割り切って考えることができるなら、残りは2球だけの勝負になる。

2球でツーアウト

01年秋の首都大学リーグ、東海大対城西大の2回戦は延長17回だった。城西大の攻撃に「3球でチェンジ」のイニングがあった。この「3球でチェンジ」については、98年7月発行の『スコアシート便り』10号で次のように取り上げたことがある。

<略>2球でツーアウトになり「3球でチェンジ」にリーチがかかったイニングは、調べてみると過去に78例あります。イニング別では1回が4例、2回が3例、3回が8例、4回が13例、5回が10例、6回が13例、7回が11例、8回と9回が8例ずつです。やはり試合の序盤ではこういう攻撃は仕掛けにくいようです。
 「2球でツーアウト」後に打席に入った78人のバッターのうち、ファーストストライクを見送った打者は70.5%に当たる55人でした。比較のために、今年見た試合の中から任意に選んだ10試合について、ファーストストライクを見逃したか、またはスイングした(空振り、ファウル、インプレイの打球)かを調べて<略>710人のうち、ファーストストライクを見送ったのは51.7%に当たる367人でした。「2球でツーアウト」のあと打席に立つ3人目の打者は、そう簡単には早打ちに出ないということになります。
 「3球でチェンジ」になった3人目の打者には高田と北村が含まれていますが、彼らはキャッチャーとしての経験上、「この場面では簡単には打ってこないとバッテリーは考えるだろう、それなら逆に初球こそが狙い目だ」と踏んだのかもしれません。サッカーがボール支配率を争う競技ではないのと同様に、野球も球数や安打数を競うスポーツではありません。こういう場面で初球に手を出すことは必ずしも悪いことではないと私は考えています。

城西大も3アウト目の打者はキャッチャーだった。忘れていたものを思い出させてもらった。このテーマは「再処理」の価値がある。いつになるかかなり先の話になりそうだが、忘れないために書きとめておく。私は実戦的な記録マニアでありたいと思っている。

▲この種の集計は、Web上で検索しても出てこないと思われます。誰も扱っていないテーマでしょうが、どうぞ先んじていただいて結構です。お互いにいい検証になりますから、大いに歓迎します。


◆ロス五輪で全日本のコーチ、ソウル五輪では監督を務めた鈴木義信氏が、その著書のなかで次のように述べているのを見つけました。

鈴木義信『強いチームの用兵と戦略』中経出版、97ページ

場面、それも打者にもよるが、0−3から打つことは、決して悪いことではない。全日本ではかえって奨励したこともあったし、「待て」のときは必ずサインを出した。ボールカウント0−3から変化球でストライクのとれるピッチャーは一流と言ってよい。ほとんどがストレートである。そのことを頭に入れて、「外角、ベルトの高さだったら打つ」といったように、要はどのような意図をもって投手のどの球に狙いをつけるかということである。その判断が妥当である以上、私は結果は問わなかった。

◆この考え方には私も同意できます。と言うより、0−3であまり縛りを入れてほしくないと思っています。より率直に言えば、0−3から打ってくるチームは私好みです。そういう意味での好きなチームが何チームかありますが、得意げに固有名詞を掲げるほど野暮ではありません。マニアにはマニアなりの仁義があります。対戦相手になるかもしれない誰かの目に触れる可能性があるとすれば、ここから先に踏み込むのはタブーだと思っています。

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