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再試合かサスペンデッドか

00/11/10作成
13/12/16更新

◆旧「延長規定とタイブレーク」は3分割しました。このページは旧「延長規定とタイブレーク」のファイル名を継承しています。(詳しくは頁末


「延長15回引き分け再試合制」

1999年12月、高野連全国理事会は延長18回制を15回制に改め、春秋の都道府県大会や地区大会では抽選も採用できる旨を決めた(2000年センバツから適用)。私は、これを「改悪」と考えている。

もともと、この「改悪」は、98年夏の準々決勝・横浜対PL学園の延長17回が契機になっている。そこで、98年選手権大会を振り返ってみよう。ベスト8校は次のように勝ち上がった。

98年夏8強の勝ち上がり
Rd 横浜 PL学園 明徳義塾 関大一 豊田大谷 浜田 京都成章 常総学院 横浜がもし
再試合なら
1回戦 【8/11】
6○1
柳ケ浦
【8/12】
6○2
八千代松陰
【8/6】
6○5
桐生第一
【8/9】
4○2
日本航空
【8/11】
6○4
東福岡
【8/7】
10○7
仙台
【8/11】
9回
2回戦 【8/16】
6○0
鹿児島実
【8/17】
2○1
岡山城東
【8/14】
7○2
金足農
【8/15】
4○3
尽誠学園
【8/16】
3○2
宇部商
【8/13】
5○2
新発田農
【8/15】
5○3
如水館
【8/13】
10○3
近江
【8/16】
9回
3回戦 【8/19】
5○0
星稜
【8/19】
5○1
佐賀学園
【8/18】
5○2
日南学園
【8/18】
12○1
滑川
【8/19】
7○6
智弁和歌山
【8/19】
3○2
帝京
【8/18】
5○1
桜美林
【8/18】
4○2
宇和島東
【8/19】
9回
準々決勝 【8/20】
9○7
PL学園
【8/20】
7●9
横浜
【8/20】
11○2
関大一
【8/20】
2●11
明徳義塾
【8/20】
4○3
浜田
【8/20】
3●4
豊田大谷
【8/20】
10○4
常総学院
【8/20】
4●10
京都成章
【8/20】
15回
(再試合) 【8/21】
9回
準決勝 【8/21】
7○6
明徳義塾
【8/21】
6●7
横浜
【8/21】
1●6
京都成章
【8/21】
6○1
豊田大谷
【8/22】
9回
決勝 【8/22】
3○0
京都成章
【8/22】
0●3
横浜
【8/23】
9回

表の右端を見てほしい。もし、あの延長17回が15回で打ち切られて再試合になっていたら、横浜(あるいはPL)が決勝まで進むと、実に5連戦(51イニング)を戦わなければならない。いったい、どこが「負担の軽減」になるのだろう。だいたい、トーナメント大会で引き分けの度にいちいち再試合をやる競技がほかにあるだろうか。

▲98年当時は準々決勝4試合を1日で済ませていました。03年から準々決勝は2試合ずつ2日に分ける日程が組まれています(03年は雨天順延が重なったため準々決勝4試合は同日)。

再々試合

03年の福井予選では、再試合も15回引き分けとなり、再々試合がおこなわれている。

03/07/21(福井県営) 高校選手権福井予選1回戦(3時間40分)
大野東高 000 040 000 010 000 =5
敦賀気比高 002 010 010 010 000 =5
03/07/22(福井県営) 再試合(3時間5分)
大野東高 000 003 000 000 000 =3
敦賀気比高 010 020 000 000 000 =3
03/07/24(福井県営) 再々試合(1時間57分)
大野東高 000 000 010 =1
敦賀気比高 202 002 00X =6

再試合と再々試合の間が1日空いているのは、雨で順延になったからだ。敦賀気比は、2回戦の羽水戦を5対4、準々決勝の藤島戦を12対0の5回コールドと勝ち進んだが、準決勝の福井戦は2対4で力尽きた。決勝に残った福井と福井商は2回戦からの登場だったので4試合しか戦っていないが、敦賀気比は6試合目を戦ったのだ。

18回を15回に短縮したときから、いつかはこんなことが起こると予想できたはずだ。15回制は、断じて「負担の軽減」にはならない。高校のセンバツと選手権大会で延長16回以上の試合は、次のように23試合ある。

25回 1933夏 準 中京商  1−0 明石中
19回 1926夏 Q 静岡中  6−5 前橋中
19回 1934春 2 享栄商  5−3 徳山商
18回 1940夏 1 日大三中 3−1 大分商
18回 1958夏 Q 徳島商  0△0 魚津
18回 1962春 Q 作新学院 0△0 八幡商
18回 1964夏 1 掛川西  0△0 八代東
18回 1969夏 決 松山商  0△0 三沢
18回 1979夏 3 箕島   4−3 星稜
17回 1954夏 Q 新宮   1−0 北海
17回 1978夏 1 仙台育英 1−0 高松商
17回 1990春 準 新田   4−3 北陽
17回 1998夏 Q 横浜   9−7 PL学園
16回 1920夏 準 慶応普通部4−3 松山商
16回 1958夏 3 高松商  1−0 水戸商
16回 1959春 2 県尼崎  7−4 苫小牧工
16回 1961春 Q 米子東  2−1 敦賀
16回 1962春 準 作新学院 3−2 松山商
16回 1962夏 1 滝川   5−3 佐賀商
16回 1963春 2 下関商  3−2 海南
16回 1974夏 2 東海大相模3−2 土浦日大
16回 1988春 準 宇和島東 5−4 桐蔭学園
16回 1991夏 3 松商学園 4−3 四日市工

このうち、18回までに決着したのは16試合だ。再試合の数がおよそ3倍に増えるという予測は十分に可能だったろう。

同点の場合

大会がトーナメントでおこなわれる以上、試合の白黒はつけなければならない。規定のイニングを終了して同点の場合はどうするか、私の知る範囲では次のような対応がある。

【1】再試合
【2】抽選
【3】ポイント制(ex.塁打数と盗塁数の和が多い方を勝者とする)
【4】「サドンデス」あるいは「タイブレーク」
【5】サスペンデッド

【1】については改めて説明する必要もないだろう。

【2】に関しては、15回引き分け再試合制と同時に高野連の特別規則に盛り込まれた。それによると、抽選は18通の封筒が用意されて、その中に1つだけ「当たりくじ」が入っているそうだ。試合終了時の出場選手計18人が1枚ずつくじをひくことになる。

選手自らその場で開封できるわけではなく、いったん審判が回収することになっている。要するに、「殊勲者」が誰なのかわからないようにしたいのだろう。

全日本軟式野球連盟の特別規則によれば、軟式野球(高校・大学は別組織)の抽選は、18通の封筒が用意され(○印と×印が各9枚)、先攻チームから交互に1通ずつ選び、○の多いほうを勝ちとするシステムのようだ。この場合も選手が自分で開封するわけではないようだ。

群馬県の高校野球(硬式)では地元新聞社が主催する7イニング制の1年生大会がある。03年5月に、私は準決勝を見に行った。その前日に延長9回引き分け抽選があったそうだ。見ていた人の話によれば、封筒ではなく箸のような棒が18本用意されて、6対3で樹徳が抽選勝ちしたということだった。どちらかと言うと、全軟連方式に近い。

抽選

私は1度だけ抽選を見たことがある。東京新大学野球連盟50周年記念トーナメントが02年秋のリーグ戦終了後に開催された。Dグループの決勝戦は延長10回で引き分けた。どうやら規定時間(3時間)を超えたためらしい。

02/11/23(庄和) 東京新大学 50周年 トーナメントDグループ決勝 12:38〜15:43
高千穂大 000 165 012 0 =15 *室−*木−△東*
東京国際大 005 051 013 0 =15 長*−*泰−尾*−△黒*

延長10回裏の東京国際大の攻撃は3者凡退で終了した。両チームの選手がホームプレートを挟んで整列する。決勝戦だから、両校優勝でも何の支障もないと思われるが、なぜか抽選がおこなわれた。当初、審判は2通の封筒しか用意していなかった。18通の準備が整ったのは、しばらくしてからだった。

通常、試合終了時の出場選手18人に抽選権があるはずだが、東京新大学ではDH制を採用しているため、ピッチャーか指名打者かで一悶着あったようだ。両チーム交互に1通ずつひき、各9通の封筒をチームごとに審判が回収した。開封はその場でおこなわれた。結果は6対3で、高千穂大の勝ちだった。ここでも全軟連方式が採用されたらしい。

球審が「ゲーム(セット)」を宣告したのは15:52だった。曇り空、日も暮れかけてきた寒い中で、わざわざ10分近くかけて抽選しなければならない理由があったのか、疑問に思わなくもない。優勝チームを決めた以上、表彰式でもやるつもりなのかと思ったら、「両チームの選手はグラウンド整備にご協力ください」のアナウンスで締められた。

ならば、ジャンケンでよかろう。ジャンケンなら9人の対戦でも10分はかからない。抽選に要した9分間は、はたして試合時間に含めてもいいのだろうか? 11月も下旬だ。秋はもう深く、球場の周囲の木々はすっかり色づいている。ナゾも深まる抽選だった。

◆02年の社会人あきる野市長杯準決勝第2試合、全調布対東京LBC戦は2対2で引き分けとなり、抽選がおこなわれたようです。監督同士のジャンケンをグーで勝ったLBCが、2通用意された封筒の1つを選び、「当たり」をひいたとのことです。
◆ソフトボールでも抽選が採用されるケースがあるそうですが、形式は必ずしも統一されていないようです。2通の封筒から各監督がひく場合と、18通の封筒から試合終了時の出場選手が各9通ひく場合(「当たり」は9通)とがあったそうです。

ポイント制

できれば、抽選やジャンケンは見合わせてほしい。草野球のジャンケンは、それはそれで盛り上がったりするものだが、見ている側の立場としては、野球のことはやはり野球という競技の枠の中で決着をつけてほしいものだ。

【3】は93年のセリーグ・トーナメントで採用されていた。

93/04/04(東京ドーム) セリーグ・トーナメント3位決定戦
スワローズ 100 002 000 0 =3 岡林−川崎−△山田
ジャイアンツ 010 200 000 0 =3 桑田−水野−△石毛

延長10回で引き分けたこの試合に引き続き、第2試合で決勝戦が予定されていたので、あらかじめ延長は10回で打ち切りとし、本塁打を4、三塁打を3、二塁打を2、単打と盗塁を1とする「ポイント制」で、勝者を決めることになっていた。3位決定戦だから、無理に勝敗を決する必要はないと思われるが…。

ポイント制
三塁打(3) 二塁打(2) 単打(1) 盗塁(1) ポイント
幸田 広沢克、古田、
金森
古田、金森、松元秀2、
飯田2、ハドラー2、池山
飯田 19=3+(2×3)+10
なし 原2、桑田、岡崎、
駒田、吉村
駒田2、川相、篠塚、岡崎 なし 17=(6×2)+5

スワローズは18塁打で1盗塁、ポイントは19だ。一方のジャイアンツは17塁打で盗塁はゼロ。したがって、ポイントで上回るスワローズが3位となった。

東京六大学(硬式)の新人戦でも、「延長12回で同点の場合、打ち切りとし、塁打数の多いチームが上位進出とする」との特別ルールがあるようだ。96年秋の準決勝・法大対早大戦と05年秋の1回戦・東大対慶大戦で適用されている。00年以降の神宮大会でも延長は15回までで打ち切りになり、同点の場合は塁打数で決まるようだ。

塁打数でいいのか?

このポイント制を検討してみよう。高校野球で採用する場合、延長規定としてはは今の15回でいいだろう。ただし、私には不満がある。前述のポイント制はソロホームラン(A)が4ポイントになる。

これに対して、先頭打者がファウルで粘ったあげくに四球で一塁に出て、リードを大きくとり何度も牽制球を投げさせた結果、悪送球を誘って二塁に進塁し、次打者のセカンドゴロで三塁を奪い、外野フライで生還(B)してもノーポイントだ。

しかし、野球という競技は(A)も(B)も等しく1点なのだ。たとえば、神宮第二球場のような狭い球場で、金属バットを使ってレフトポール際のフェンスぎりぎりに打ったホームランなど「ラッキー」以外の何ものでもない。

それがルールだから、得点を否定するつもりはないけれども、私はひと振りの(A)よりも、3人がかりの(B)に価値を求めたいと思っている。それなのに、(A)が4ポイントで(B)は0ポイントとあっては簡単には納得できない。

強いチームが勝つとは限らないのが野球という競技だ。長打は打てなくても、たたきつけるバッティングで内野安打あるいは進塁打を打ち、足を絡ませ相手のミスを誘って、守りを固めながら最後には競り勝つ。それが高校野球のあるべき姿だ、などと言うつもりはさらさらないけれども、そういうチームがあってもいいのだ。

ポイントの対象は、やはり安打や盗塁などに限られてくるだろう。ヒットかエラーかを判断する公式記録員の質も問われることになる。私は記録マニアだが、実はあまり表面的な記録を重視していない。

記録に残らないプレイにこそ価値があるのではないかとさえ思っている。だから、私は記録にあらわれないプレイをどうやって自分のスコアカードに残すか腐心している。そのために自分なりに試行錯誤してきた。これからもするだろう。

●いわゆる「送球の間の進塁」は、記録上は野手選択として処理される。これにはヒットや盗塁ほどの価値はないかもしれないとしても、まったくの無価値として評価していいのだろうか?
●誰が見ても明らかに野手のエラーが原因で出塁した打者がいたとしよう。しかし、エラーを誘発する打球を打ったという点では評価されてもいいのではないか?
●二死満塁で外野を抜けそうな打球を背走しながらジャンプして好捕した外野手がいたとしよう。このプレイは打点3に匹敵するプレイではないのだろうか?

したがって、ポイント制を導入しようとする場合、何に対してポイントを与えるのか、主催者の野球観が厳しく問われることになる。どんな形にしても必ず異論が出る(出す?)。もし、塁打数を基準にするなら、最終イニングの表が終わった時点で後攻チームの塁打数が先攻チームのそれを上回っていたら、裏の攻撃は意味のないものになってしまう。

サスペンデッド

【4】の「サドンデス」あるいは「タイブレーク」に関しては、「一死満塁の攻防」のページで具体例を述べているので、そちらを参照してほしい。

さて、続いて【5】のサスペンデッドを考えてみよう。サスペンデッド(一時停止)とは、たとえば延長15回で打ち切りになったら、日を改めて延長16回から試合を継続することだ。

【1】の再試合制の場合は、1回からの仕切り直しだから、最短でも9回までかかる。サスペンデッドは延長16回の1イニングだけで決着するかもしれない。選手への負担はサスペンデッドのほうが軽い。実は、私はこのサスペンデッドを理想とする。

もともと『公認野球規則』というより『オフィシャル・ベースボール・ルールズ』は、引き分けなど想定していない(厳密には「タイゲーム」がある)。延長規定や再試合規定は、連盟もしくは大会のローカルルールにすぎない。サスペンデッドで決着がつくまでやるというのが本来の姿なのだ。

サスペンデッドを採用する場合、選手の起用法が問題になる。再試合なら一度退いた選手も改めて出場できるが、サスペンデッドは続行試合だから再出場はできない。あらかじめサスペンデッドを想定した選手起用が求められるわけだ。

ベンチ入り選手数の関係もあるが、場合によってはソフトボールのような再出場規定を、サスペンデッドに限り採用する柔軟さも求められるのかもしれない。ソフトボールの再出場規定はおおむね次のようなものだ。

●再出場が認められるのはスタメンの選手に限られる。
●1人の選手につき、1回だけ再出場できる。
●自分の打順を受け継いだ選手と交代しなければならない。
●時期は任意。たとえば、9番セカンドAに代わって、3回表に代打Bが起用され、Bはそのままセカンドの守備につき、5回表にもう1度打席に立ってから、改めてAに代わってもよい。

長短

しかしまあ、理想ばかり唱えていても、話は進まない。サスペンデッドが適用されないのは、それなりの事情があるのだろう。現実的な解決策を探るしかない。それぞれの長短をおおざっぱにまとめてみた。

決着方法の長短
選手の負担 日程への影響 その他
【1】再試合 過酷な連戦を強いる 深刻な影響を及ぼす 日程が窮屈な大会では採用しづらい
【2】抽選 肉体的負担はない その日に必ず決着する 野球のことは野球で決着をつけてほしい
【3】ポイント制 肉体的負担はない その日に必ず決着する 何をポイントの基準にするか議論になる
【4】「サドンデス」 極端な負担はかからない その日に決着する(はず) 記録処理の問題が残る
【5】サスペンデッド 展開によっては、
負担は軽減されない
展開次第だが、
影響は比較的少ない
準決勝がサスペンデッドになって、続行試合が1イニングで
終わったら入場料はどうなる?さぞかしTV局も困るだろう。

【2】【3】【4】は、その日のうちに決着がつく。まあ、【2】に関してはあくまでも最後の手段だろう。サッカーのPK戦にしても、アイスホッケーのペナルティ・シュート戦にしても、その競技の枠の中で決着をつけようとしているわけだ。

くじ引きでは草野球のジャンケンと同じだ。草野球でもサドンデスを1イニング、それでも同点ならジャンケンというところもある。【2】や【3】より【4】のほうが望ましいことは言うまでもない。

【1】と【5】は基本的には翌日に決着する。日程上、再試合をやる余裕があるならサスペンデッドのほうがいい。そのようにして考えると、高校野球の場合は【4】と【5】の組み合わせが妥当ではなかろうか。

●延長規定は15回でよい。
●サスペンデッドを採用する。ただし最大6イニングとし、延長21回で打ち切る。以後は「サドンデス」とする。
続行試合予定日(翌日)に他の試合の予定がない場合はサスペンデッドとせず、15回で打ち切って「サドンデス」。
●春の県大会・地区大会などはサスペンデッドを適用せず、15回終了後「サドンデス」とする。
●決勝戦は再試合とする。

サスペンデッドの罠

06年の高校野球選手権大会決勝が再試合となったことで、再試合批判が渦巻いているようだ。ひととおり検索してみたが、的外れな議論も少なくない。決勝戦なのにサスペンデッドを適用せよと主張しているアホがこんなに多いとは意外だった。

ものの道理をわきまえない坊やが騒ぐだけならまだしも、いい大人まで一緒になっている。名前も聞いたことのないスポーツライターだけでなく、一応は名の知れた新聞記者までサスペンデッドを主張しているようだ。あきれた話だ。

決勝戦がサスペンデッドとなり、翌日におこなわれる続行試合が1イニングだけで決着したら、という想像力はないらしい。再開後4球で決着するかもしれないのだ。時間にすれば5分もかからずに終わってしまうことも可能性としてはあるわけだ。

たとえば、ボクシングでもメインのタイトルマッチが1ラウンドで終わってしまうことはあり得る。だが、必ず前座の試合が組まれているはずだ。それが興行というものだろう。だから、運営サイドとしては、サスペンデッドの続行試合だけを単独開催することはあり得ない。観客側からすれば、球場に着いたらもう試合は終わっていたということになりかねないのだ。

全日本軟式野球連盟では「特別継続試合」と呼ばれているサスペンデッドを採用している。「競技に関する連盟特別規則」には次のように定められている。

二、延長戦
1 一般
 9回を完了して同点の場合は、勝敗が決するまで延長戦を続ける。<略>
(1) その日の最終試合以前の試合が延長戦となって、<略>当日決着がつかない場合は、翌日の第1試合に先立って特別継続試合を行う。
(2) その日の最終試合が延長戦となったときは、時間の許す限り試合を続けるが、当日決着がつかない場合は、翌日第1試合に先立って特別継続試合を行う。
(3) 決勝戦が延長戦になって、当日決着がつかない場合は、“タイゲーム”で試合を終了し、原則として翌日再試合を行う。<略>

再試合だろうが、サスペンデッドの続行試合だろうが、両チームの選手・関係者や運営サイドは翌日に改めて集合しなければならない。5分で終わるかもしれない試合のためだけに、わざわざみんなが集まる必要はない。せっかく揃うのなら、改めて再試合をやればいい。

だから、興行でなくても、決勝に限ってはサスペンデッドより再試合のほうが座りがいい。現に、06年の高校軟式では西中国予選決勝がサスペンデッドではなく再試合になっている(高校軟式は15回でサスペンデッドが原則)。本大会決勝なら、18回までやって同点のときは両校優勝とする選択肢もあるだろう。

準決勝はどうするか?

49校出場で甲子園しか使わない高校選手権の場合、2回戦終了まで最短でも9日間かかる。そんな優雅な大会は他にないけれども、この日程なら、1回戦や2回戦が再試合になっても、さほど影響はない。しかし、日程が詰まる3回戦以降が再試合になると、再試合に勝ったとしてもハンディを背負うことになる。3回戦や準々決勝では、再試合とするよりサスペンデッドのほうがよい。

高校選手権でサスペンデッドを全面的に採用した場合、準々決勝1日目までの試合がサスペンデッドになっても、当初の日程は動かさなくてもよいわけだ。準々決勝2日目のA対Bの試合が15回でサスペンデッドになれば、翌日はその続行試合とABが絡まない準決勝1試合をおこなえばよい。

では、準決勝がサスペンデッドになったら、どうすればいいだろうか?

東高────┐
   準決勝├──┐
西高────┘  │
       決勝├─
南高────┐  │
   準決勝├──┘
北高────┘

東高と西高の第1試合はすんなり終わったが、南高と北高の第2試合がサスペンデッドになったとする。翌日は、南対北の続行試合だけをおこなうのか、それとも続行試合のあと引き続き決勝戦をおこなうのか、という選択を迫られる。短いイニングで終わるなら、決勝をやってもいいだろうが、続行試合が長引くようなら、決勝との同日開催は好ましくない。

続行試合が何イニングで決着するかわからない以上、同日開催は難しいわけだ。つまり、準決勝でもサスペンデッドは具合が悪いのだ。もし、サスペンデッドを採用するにしても、決勝と準決勝については別の何かを考えなければならない。現行の再試合を全面的にサスペンデッドに切り替えることはできない。

運営サイドがサスペンデッド導入に踏み切れないのは、こういう事情がある。たしかに、再試合は過酷な連戦を強いることになってしまうという深刻な問題を抱えている。だが、「再試合よりサスペンデッド」と言うだけでは、盲目的批判にすぎず有効な対案とはならない。それは解決策をひねり出すための入口でしかないからだ。

私の案では、準決勝は「続行試合予定日(翌日)に他の試合の予定がない場合」に該当するので、サスペンデッドではなくサドンデスとなる。決勝は再試合でもよいし、延長18回までやって両校優勝でもよいが、決勝戦のサドンデスは美しくない。

延長45回

ところで、軟式野球がスポーツ紙の1面を飾ったウソのような話がある。前代未聞にして空前絶後だろうが、45回までやればその価値はある。私はその新聞(『スポニチ』)を見たたしかな記憶がある。

83/09/20(県営水戸) 天皇賜杯全日本軟式野球大会決勝 8:50〜17:15(8時間19分=休憩6分)
ライト工業 000 000 000 000 000 000 000 000 000 000 000 010 000 000 001 = 2
田中病院 000 000 000 000 000 000 000 000 000 000 000 010 000 000 000 = 1

▲『野球界 魅惑の大記録』(ベースボール・マガジン社)の170〜171ページに、打者318人分のテーブルスコアが完全収録されています。両チームの総投球数は1029球だそうです。

この延長45回のあと、ボールを若干硬くすることで反発力を増すようにしたそうだ(05年までの軟式A号)。もっとも、軟式野球は今でもロースコアが多く、高校野球の2大会のように優雅な日程でもないことは当時と変わらない。現在の連盟規則でも、決勝戦の場合の延長規定は、事実上無制限になるようだ。


◆このページの(主な)更新履歴は次のとおりです。
 00/11/10-「延長15回引き分け再試合制について」の標題で「高校野球のページ」にUP。その後、数次の加筆。
 04/10/23-「延長規定とタイブレーク」に改題。「高校」から「こだわり」へ。
 05/03/25-「こだわり」から「ルール」へ
 07/03/03-3分割して「再試合かサスペンデッドか」に改題。「ルール」から「高校」へ。

◆旧「延長規定とタイブレーク」におさめていた項目のうち、社会人野球関係は「タイブレーク記録処理に異議あり!」のページに、トーナメント準決勝における20回以上の延長戦は「元気があれば、何でもできる」に移しました。なお、「1967年日本楽器」は同年都市対抗で8試合80イニングを戦っています。再試合は好ましいものではありません。
◆延長戦に入ったあとで3度追いついたチームがあります(「究極のシーソーゲーム」)。また、私は「サスペンデッドゲーム」を1度だけ見たことがあります。

外部リンクです。
激闘の記憶と栄光の記録
 高校野球の延長戦に関しては、「激闘・延長戦」のページをご覧ください。明石中対中京商の延長25回は有名ですが、地方予選でも延長25回があるようです。(04/02/03通知済)
TAKANOMA
 02年5月に有田で開かれたウエスタントーナメントでは、準決勝第1試合のC対H戦が4対4で9回引き分け、抽選になっています。スタンド観戦されていた管理人様によれば、9回終了時の両チームの野手9人ずつが、箱の中からボールを取る形での抽選だったそうです。おそらく「当たり」は9個だったのでしょう。(03/01/09許諾済)

◆事実誤認、変換ミス、数値の誤り、リンク切れ等にお気づきの際は、お手数ですが「3代目んだ」(延長規定)または「メールのページ」からご一報いただけると幸いです。また、神宮大会の高校の部の延長規定についてご存知の方は「3代目んだ」(神宮大会の延長規定)からご教示願えませんでしょうか。どこそこでこんなことを聞いたという話でも結構です。

★07/03/03校正チェック済、ケなし、順OK
★08/04/12HTML文法チェック済(エラーなし)



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