◆00年に作成したページです。サンプルに用いたデータも90年代のものです。
一般的には、左打者は左投手を苦手にすると言われている。たとえば、左打者の松井(元G)に対して、試合終盤の勝負どころで左投手のワンポイント・リリーフが起用されるのはごくありふれたことだった。
「左対左」は、高校野球でも通用するのだろうか。高校生の場合は、右打者であっても左投手にあまり慣れていないから、左投手が有利であるという人もいる。はたして本当だろうか。
しかし、こんなことは厳密には確かめようがない。なぜなら、持ち球が同じで、ストレートの球速も変化球のキレも同じで、左右対称という点を除けばフォームも同じという投手が存在しないからだ。かといって、このページを2段落で終わらせるわけにはいかない。悪あがきだとわかっていても、とりあえずはやってみよう。
まず、私が95年から97年までに見た高校野球145試合について、右対右、右対左、左対右、左対左の打率を求めてみたら、次のようになった。
| 右打者 | 左打者 | |
|---|---|---|
| 右投手 | 4954打数 1324安打 打率.267 |
1954打数 586安打 打率.300 |
| 左投手 | 1673打数 446安打 打率.267 |
580打数 147安打 打率.253 |
右投手は左打者が苦手、左投手は右打者が苦手らしい。打者の側からみると、右打者は左右どちらもイーブン、左打者は左投手が苦手のようだ。とはいえ、これだけで断定的に語ることは、早計ではないかと思われる。
なぜなら、集計対象のなかには、右投手が完投して(あるいは右投手のみの継投で)、なおかつ相手チームの打線はオール右打者だったという試合もある。右投手の対右打者被打率と対左打者被打率とを比較するためには、このような試合は除いたほうがいいだろう。そこで、集計対象145試合について、さらに細かく分類してみた。
右投手が投げて、相手方チームの左右両方の打者と対戦(両方に打数が記録される場合のみ、以下同じ)したケースは、145試合290例のうち220例あった。単純に足し算すると次のようになる。
| 右投手対右打者 | 4449打数 | 1196安打 | 打率.269 |
| 右投手対左打者 | 1954打数 | 586安打 | 打率.300 |
サンプル数もある程度確保されており、打率に関しては3分1厘の差がついているので、高校野球においても右投手に対しては左打者のほうが有利であると結論づけていいのではないかと思われる。
左投手が登板して、相手方チームの左右両方の打者と対戦したケースは、145試合290例のうち96例あった。
| 左投手対右打者 | 1589打数 | 427安打 | 打率.269 |
| 左投手対左打者 | 577打数 | 147安打 | 打率.255 |
もう少しサンプルを揃えたい気もするが、やはり左投手に対しては左打者のほうが不利だと言えそうだ。すくなくとも、左対左はバッターに不利だとする一般論を覆す数字にはなっていない。
左右両方の投手が登板して、右打者と対戦したケースは、145試合290例のうち57例あった。
| 右投手対右打者 | 681打数 | 200安打 | 打率.294 |
| 左投手対右打者 | 600打数 | 194安打 | 打率.323 |
高校野球の場合、左右の投手の継投はそう多くはない。ただし、左のワンポイントが起用されることも滅多にない。右が先発で左がリリーフするか、逆に左が先発してリリーフした右が最後まで投げきるというパターンが多い。
その意味では比較に適している。数字のうえでは、右打者は右投手より左投手に強い。したがって、冒頭の「高校生は左投手に慣れていない」説には、疑問を抱かざるを得ない。むろん、個々の事例はあるだろうが、一般論としては「高校生は左投手に慣れていない」説を退けていいようにも思われる。
左右両方の投手が登板して、左打者と対戦したケースは、145試合290例のうち45例あった。
| 右投手対左打者 | 336打数 | 111安打 | 打率.330 |
| 左投手対左打者 | 180打数 | 47安打 | 打率.261 |
サンプルが少なくて申し訳ないが、打率では大差がついているので、やはり左打者は左投手に弱いと言えるだろう。左対左を意識しているとみられる継投策も何試合かあったので、主な事例を紹介しておこう。
▼打順の左側のRまたはLは打者の左右を示します。それ以外のRまたはLは、当該打者の打席で登板していた投手の左右を示します。なお、2番手投手に対して赤字を用いています。
| 95/11/03(県営大宮)秋季関東大会1回戦 | |
| 宇都宮南 | 000 020 020 =4 |
| 横浜 | 000 000 023x =5 |
【宇都宮南】 回123456789 L1番 R R R R L L2番 R R R R L L3番 R R R RL R4番 R R R R L5番 R RR R R6番 R R R R R7番 R R R R R8番 R R R R R9番 R R RR
横浜は9回表から先発の右投手に代えて、背番号10 の左投手をマウンドに送った(8回裏にはピッチャーに 打順が回っていないので、純粋な投手の交代)。9回表の宇都宮南は、ちょうど左が3人続く打順だった。 リリーフした左投手は、三振、セカンドゴロ、三振で 3者凡退に仕留めた。
| 96/05/19(天台)春季関東大会2回戦 | |
| 桐生第一 | 010 102 100 1 =6 |
| 八千代松陰 | 000 001 301 0 =5 |
【八千代松陰】 回12345678910 R1番 L L LLR R2番 L L LL R R3番 L L LL R L4番 L L LL L R5番 L L LR L R6番 L LLR L R7番 L L LR L R8番 L L LR L L9番 L L LR R−− L
八千代松陰は4番と9番が左打者だった。桐生第一の先発左腕は、7回裏に4番の左打者にタイムリーを浴びて一塁に退き、右投手がマウンドに上がった。リリーフした右投手は、9回裏の3番打者まで打者8人に投げて、4番の左打者を迎えた場面で、再び先発の左投手と交代した。
2番手の右投手は交代直後に押し出し四球を与え、9回に再登板した左投手はワイルドピッチで同点にされているので、結果的には成功した継投とは言い難いが、左対左を念頭に置いた継投だろう。
| 97/10/25(皇子山)秋季近畿大会2回戦 | |
| 高田商 | 000 000 001 =1 |
| 報徳学園 | 000 201 11X =5 |
【報徳学園】 回12345678 R1番 R R R R R2番 R R R R L3番 R RR L R4番 R R RR R5番 R R R R R6番 R R R R R7番 RR R R R8番 RR R R R9番 RR RR
報徳学園は3番打者だけが左打者だった。高田商の先発は右投手だ。3点差で迎えた7回裏は、9番セカンドゴロ、1番センターオーバーの二塁打、2番センターフライだった。二死二塁で3番の左打者に対して、高田商は一塁に入っていた背番号10の左投手をマウンドに送った(四球)。
続く4番の右打者に対しては、先発の右投手を再び登板させた(タイムリー)。結果は裏目に出たが、やはり左対左を意識したワンポイント継投と思われる。
| 97/11/02(大和)秋季関東大会1回戦 | |
| 葛生 | 012 00 =3 |
| 吉田 | 1153 0X =19 |
【吉田】 回1 234 R1番 LLRL R2番 LLRL R3番 LLRL L4番 LLLL R5番 LRLL R6番 LRL L R7番 LRL L R8番 L RLL R9番 L RL
吉田は4番打者を除いて、右打者が並んでいた。葛生の先発は左投手だ。1回裏、2番打者の送りバント以外にアウトはなく、打者一巡後の4番の左打者まで先発の左投手が投げ続けた。
吉田の4番は、1回裏の第2打席で2点タイムリー二塁打を放ち、10点目が入ったところで、セカンドの選手(右投げ)がリリーフ登板した。先発の左投手は2回裏に再登板するが、それは4番の左打者を 迎えたときだった。
このように、左打者に対して左投手をぶつけるという起用法は、その成否はともかく高校野球でも現実におこなわれている。ただし、左対左が投手優位だというのは、あくまでも一般論であって、常に通用するわけでもない。
たとえば、吉年滝徳(関西→96年C2位、左投げ)の場合は、右の表のように、すくなくとも私が見た試合に関しては、下位打線も含めた左打者に、よく打たれていた。まあ、たった3試合分のデータにすぎないけれども…。
| 95/04/02 対報徳学園 |
95/04/03 対日南学園 |
95/08/07 対仙台育英 |
|||
| 1番R 2番R 3番L 4番R 5番R 6番R 7番R 8番− L R 9番L |
3−0 3−0 3−2 4−1 3−0 3−0 4−0 − 3−1 1−0 3−1 |
1番L 2番R 3番R 4番L 5番R 6番R 7番R 8番L R 9番R |
4−1 4−0 4−0 2−0 3−0 3−2 4−0 2−1 1−1 2−0 |
1番R 2番R 3番R 4番R R 5番R 6番R 7番L R 8番R R 9番R |
4−1 3−2 4−3 3−0 1−0 3−0 4−1 2−1 3−2 1−0 2−0 3−0 |
▲表の右側の数字は、「打数−安打」です。
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