セットポジションルール
ボールデッド時の空過 | 場内アナウンス | 打順間違いミスい事件

場内アナウンスの妙

01/02/22作成
14/01/15更新

◆このページの(主な)更新履歴は次のとおりです。ファイル名は変えていません。

◆BCは「ですます体」でしたので、これを改めたうえで再構成しました。なお、当サイトでは、高校生の実名掲載は原則として控える旨の「実名掲載規準」を定めていますが、このページで名前を伏せると、ただでさえややこしい話に輪をかけることになってしまいますので、例外的に実名としています。


うんぽう

スコアをつけながら野球を見ていた私は、プロからアマへと徐々にテリトリーを広げていった。プロ野球では、場内アナウンスが聞こえたときに視線をグラウンドに戻せばよかった。場内アナウンスがあるまでボールデッドだと考えていても、それほど大けがをすることはなかった。

同じ調子でアマの試合を見ていると、初球を見逃してしまうことが多い。つまり、アマチュアでは場内アナウンスのあとで打者が打席に入るとは限らない。場内アナウンスを待たずに試合はどんどん進んでしまうのだ(それが悪いと言っているのではない)。

だから、打者のアナウンスを聞いて顔を上げたら、もう初球を投げ終えたあとだったということを何度か経験した。それどころか、場内アナウンスが遅れた結果、アナウンス抜きで打者が打撃を完了したりすることもある。これが試合の途中ならまだいい。

高校野球の01年某県秋季大会1回戦、5回表二死走者なしで背番号10が代打に出た。代打のアナウンスが入らないまま、2球目を打ってセカンドフライに倒れた。5回コールドの最後の打者だった。両チームの選手は淡々と整列を始めた。もう打者のアナウンスなどできない。

試合終了後、私はしばらく電光掲示のスコアボードをにらめっこしていたのだが、とうとう選手名は表示されなかった。選手名が記載されているパンフもない。結局、ナゾの最終打者となった。

また、アマの場合には、いたって真面目な場内アナウンスなのにスタンドの大爆笑を誘うことがある。

2番渡辺に代わりまして、ヒンチヒッターうんぽう。バッターはうんぽう、愛工大名電高校、背番号22。

92年、川崎球場の社会人野球だった。3月初旬のまだ冷たい風の中で、閑散としたスタンドが大いに沸いた。なぜなら、「」が「」に聞こえたからだ。すかさずスタンドから「うんこー、頑張れよー」の声援があった。残念ながら、雲宝は三振に倒れたけれど…。

大学野球や社会人野球では、背番号の前に出身高校(大学)のアナウンスが入る。固有名詞の読み方は簡単ではない。「鹿屋中央高」を「かや…」、「八代東高」を「やしろ…」、愛知県の「新城東高」を「しんじょう…」と読んだアナウンスを聞いたことがある。

いたち

名前の読み誤りも、アマチュアではよくある話であって、甲子園の高校野球でも審判を務めている東京六大学の唄野(ばいの)さんは、大学選手権のとき「うたの」と呼ばれていた。まあ、この程度なら誰もが気づくわけではないだろう。

直接聞いたわけではないけれども、「いたち事件」はきっと爆笑の世界だったはずだ。東京六大学の試合で、法大の伊達昌司が、「いたち」とアナウンスされたことがあったそうだ。テニスの伊達公子がまだ現役だった頃のことだと思うのだが…。

▲伊達昌司はプロ実働5年で12勝7敗9セーブです。2013年現在、都立高校で社会科教員(野球部の監督)をしているようです。クルム伊達公子は1996年に引退し、2008年に現役復帰しています。この稿を書いた直後に「クルム」がつくようになりました。

場内アナウンスではないけれども、駒大野球部の創部50周年パーティーのとき、上茂雄(93年のキャプテン)は司会者に「うえ様」と呼ばれたそうだ。その話を聞いて、私は昔のスコアブックをめくってみた。案の定、「ウエ」とフリガナが振ってある試合が見つかった。

私は、漢字だけでは名前の読み方が難しいとき(「こたに」「ふるたに」「ふるや」のようなケースを含む)、場内アナウンスで聞こえたようにフリガナを振っておくという習性を持っていた。おそらく、その試合のアナウンスは「かみ」ではなく「うえ」だったのだろう。

03年大学選手権の準決勝、日本文理大と東北福祉大の試合では、おおむね次のようなアナウンスがあった。

日本福祉大学、先ほどの回に代打いたしました斎藤君、そのままレフトに入ります。7番レフト斎藤君、前橋工業高校、背番号8。

大学選手権に出てくる心配はしなくてもいいけれど、たしかに日本福祉大は実在するし、野球部もある。その試合のアナウンス担当は、日本福祉大も所属している愛知リーグの女子マネだった。同情の余地はある。通常、「福祉」と「文理」で区別するので、気づいた観客は少なかったかもしれない。

01年社会人の某大会ではこんなこともあった。私には「代走・上村」という球審の声が聞こえた。ところが、場内アナウンスは「ピンチランナー真熊、背番号29」なのだ。スコアボードも「R真熊」だった。双眼鏡で代走の選手の背番号を確認すると、「28」だった。

スコアボードは、あとでひっそりと「上村」に変わった。訂正のアナウンスはなかった(まあ、タイミング的に無理だったろう)。母音だけなら、上村は「UA」であり、真熊は「AUA」だ。そのうえ、背番号も紛らわしい。これも同情の余地はある。

盗塁死でチェンジ

ところで、プロ野球の場合、打順の誤りはまず起こり得ない。なぜなら、プロ野球では、たとえば「4番センター松井」という場内アナウンスに促されるようにして、打者が打席に入るからだ。

打撃順に誤りがあった場合の取り扱いに関して、『公認野球規則』では6ページに渡って記述されている。「どうせ、こんなことは起こるはずがない」と勝手に決め込んでいた私は、真剣に読んでいなかった。

97/11/15(神宮第二) 神宮大会1回戦
沖縄水産高 301 103 000 =8
仙台育英高 020 00 010 =3

6対2で迎えた6回裏二死二・三塁で、沖縄水産の6番打者に代打が送られた。代打の渡慶次は期待にこたえてライト前ヒットを放ち、2人の走者を迎え入れた。7番・宮城の2球目に渡慶次は二盗を試みたが失敗した。これでスリーアウトだ。その裏、沖水の守備が大きく入れ替わった。

打順 スタメン 6回表  6回ウ
1番 6稲嶺  6稲嶺  6稲嶺
2番 4許田  4許田  4許田
3番 9大城  9大城 →3大城
4番 8糸数  8糸数  8糸数
5番 1宮里  1宮里 →9宮里
6番 7米須 →H渡慶次→7渡慶次
7番 3宮城  3宮城 →1新垣
8番 2玉城  2玉城 →2狩俣
9番 5仲村渠 5仲村渠 5仲村渠

まず、代打の渡慶次がそのまま6番でレフトに入った。そして、バッテリーが交代した。キャッチャーは玉城に代わって狩俣だ(8番)、ピッチャーには宮里に代わって新垣が入った。宮里はライトに回り、ライトの大城がファーストに回った。退いたのはファーストの宮城だ。リリーフに立った新垣は6回裏の仙台育英の攻撃を3者三振に封じた。

6回表は、渡慶次の盗塁死でチェンジになったので、7番打者だった宮城の打撃は完了していない。だから、7回表の沖水の攻撃は、7番の打順に入った新垣から始まらなければならない。選手交代のときの場内アナウンスは「7番ピッチャー・新垣、8番キャッチャー・狩俣」だった。スコアボードもそうなっている。

7番打者は?

ところが、7回表の先頭打者として右打席に入っているのは、背番号11の選手だった。背番号10の新垣ではないのだ。人のいい(?)私は、6回裏開始時の場内アナウンスとスコアボードが両方とも間違ったのだろうと解釈した。新規に交代した選手は、新垣と狩俣の2人だ。7番が狩俣で、8番が新垣なら別に不都合はない。

初球は見逃しのストライクだった。修正ペンを取り出す余裕はなかったので、新垣と狩俣を←→で結んで、当座をしのぐことにした。あとで、落ち着いてから書き直せばいいという判断だ。2球目を待っているとき、ネクストバッターズ・サークルの選手が視界に入った。

次打者席の選手は長身の選手だが、新垣ではない。背番号は5だ。ということは、9番打者の仲村渠(なかんだかり)だ。だとすると、場内アナウンスやスコアボードの誤りではなく、打順そのものの間違いということになる。7番の新垣を飛ばして8番の狩俣が打席に入っているわけだ。

狩俣は4球目を打って、ライトフライに倒れた。狩俣のあとに打席に入ったのは仲村渠だった。細かいルールについては、すでに触れている(「打順間違いミスい事件」)ので、そちらを参照してほしい。狩俣がアウトになったこともあって、とくに仙台育英サイドからのアピールはなかった。

仲村渠は初球を打ってサードライナーに倒れた。この時点で、仙台育英のアピール権が消滅して、7番の打順飛ばしが成立した。したがって、この試合の沖縄水産はチームとしては45打席なのに、1番打者には6打席目が回った。

高校野球の地方大会の場内アナウンスは、だいたい女子生徒が務めている。当番校が男子校の場合、必然的に男子生徒によるアナウンスになるはずだが、私自身はまだ高校野球では聞いたことがない。かつて敷島で見た関甲新学生リーグでは場内アナウンスは男子学生だった。社会人のマイナー大会でもときどきある。 

むろん、一部のプロで聞かされるようなDJ調ではなく、きわめてオーソドックスなものだ。意外と違和感はない。「場内アナウンス=女性」という固定的な役割分担には、あまりこだわらなくてもいいのではないかと思うこともある。日本のプロ野球でいわゆるウグイス嬢が登場するのは戦後間もなくのことだという。戦前のアマについては定かではないが、時代からして女性だったとは思えない。

打順飛ばしの成立

まあ、それは置くとしても、このときの神宮大会の場内アナウンスには、かなりのキャリアが感じられた(センバツと選手権の本大会、それに神宮大会は高校生ではない)。6回表終了時の選手交代のアナウンスは、だいたい次のようになるはずだ。

沖縄水産高校、選手の交代ならびにシートの変更をお知らせいたします。さきほどの回に代打いたしました渡慶次君がそのまま入りレフト、7番宮城君に代わりまして新垣君がピッチャー、8番玉城君に代わりまして狩俣君が入りキャッチャー、ピッチャーの宮里君がライト、ライトの大城君がファーストに入ります。3番ファースト大城君。5番ライト宮里君。6番レフト渡慶次君、背番号15。7番ピッチャー新垣君、背番号10。8番キャッチャー狩俣君、背番号11。

どうせ(と言っては失礼かもしれないが)、その大会だけ当番が割り当てられる高校生に、この長文がスラスラ言えるはずがない。いくら定型化されているといっても、よどみなくアナウンスするにはそれなりの経験が必要だ。フラストレーションは感じなかった。

だが、この試合の「打順飛ばし」の場面では、場内アナウンスがワンテンポ遅れた。狩俣が打席に入ったあとで、「狩俣君」の場内アナウンスが流れた(「8番キャッチャー狩俣君」だったか「バッターは狩俣君」だったかは定かではない)。

「7回の表、沖縄水産高校の攻撃は…」という枕詞があったかどうかも記憶にないし、投球前だったか投球後だったかも覚えていない。ただ、このときの場内アナウンスが少し慌てているように聞こえたことだけは覚えている。タイミングが遅れたのも、慌てていたのも、けっして彼女の怠慢によるものではない(はずだ)。

不幸にも彼女は、8番打者であるはずの狩俣が打席に入ろうとしていることに気づいてしまったのだ。私と同じように、選手交代時の伝達ミスを疑ったかもしれない。確認しようとするうちに、タイミングを逃してしまったものと思われる。おそらくは確かめてみても、7番は新垣で8番が狩俣だったのだろう。

だが、打席に入ったのは紛れもなく狩俣なのだ。その発見が動揺となって自信のない声になったのだろうと私は想像している。沖縄水産の「打順飛ばし」が成立したのは、彼女の功績が大きい。

ルール上、審判は打順の誤りに気づいても「何人にも注意を喚起してはならない」(6・07原注)と定められている。公式記録員も「その事実について告げたり、注意を促したりしてはならない」(10・01(b)(5))と規定されている。場内アナウンスに関する規定は『公認野球規則』にはない。

立法の精神に鑑みるなら、アナウンスによって打順の誤りを示唆するのは、いかにもまずかろうと思われる。実際、打席に向かう選手の背番号を確認してからアナウンスせよという指示が出ている団体もあるようだ。

もし、彼女が機械的に「7回の表、沖縄水産高校の攻撃は7番ピッチャー新垣君、背番号10」とアナウンスしていたら、当の狩俣をはじめ、沖水サイドが気づく可能性がある。「打順飛ばし」にはならなかったかもしれない。

◆日本ソフトボール協会『競技者必携2006』には、「打順間違いに気づいても、審判・記録から交代の連絡があるまで、打順表に記載されたとおりに放送する」と記述されています(125ページ)。まあ、それも考え方かもしれませんが…。

泣きっ面に蜂

スコアをつける者にとって、もっとも迷惑なのは多量の選手交代だ。私は“同時多発テロ”と呼んでいる。このときの命綱となるのがパンフとアナウンスだ。時機を得た適切なアナウンスは、ゲームへの集中を深める要素の1つでもある。交代選手がわからずにイラついていたら、ゲームどころではなくなってしまう。

97年4月20日に見た北東北大学リーグで、空恐ろしい選手交代があった。6回裏、富士大は打者11人で8点を奪って15点差をつけた。直後の守備で、代打に起用された選手がマスクをかぶっていること、ピッチャーが交代していることに私は気づいていた。

もう7回表の攻撃が始まったのに、なかなかアナウンスがない。それもそのはず、6回裏の代打を含めて、富士大の守備はなんと8人の選手が入れ替わっていたのだった。

打順 6回表 6回裏 7回表
1番 三#10     →三#8
2番 二#4      →二#2
3番 中#28     →中#25
4番 指#23→走#31
5番 左#24     →左#27
6番 右#29     →右#26
7番 一#7
8番 捕#22→打#20→捕
9番 遊#5      →遊#9
P  投#12     →投#11

ちなみに、7回表の盛岡大の攻撃は、5人の打者のうち3人が代打であり、残りの2人も6回裏から守備について初めて打席に立つ選手だった。つまり、この回は実に8人の野手と5人の打者の背番号・出身高校がアナウンスされたのだ。てんやわんやの大騒ぎにしかならない。

しかも、7回コールドの最後のイニングだった。スコアボードは電光式ではなかったし、もともと背番号しか表示されていなかった。対応できるはずもない。パンフの背番号は空欄が多いだけでなく違っていたりした。「泣きっ面に蜂」とはこのことだろう。選手交代を深追いした私は3球ほど見逃した。

このときの経験から、私はゲーム優先を心がけている。場内アナウンスなしの試合で、外野手がひっそりと代わったりしたら、まず対応できない。攻守交代のたびに、守備についた全選手の背番号を確認することは不可能ではないが、そんなことをしていたら、試合を追うことができなくなるからだ。

選手交代のアナウンス

以下は、アナウンス担当者へのお願い?だ。マニュアルが悪いというつもりはないけれど、マニュアルに縛られる必要もないのだ。

高校野球や大学野球のアナウンスでもっとも混乱が生じやすいのは、複数選手が交代し守備位置の変更があったときだ。選手交代のアナウンスは、基本的には次のような「4部構成」となっている。

  1. 冒頭でどちらのチームの交代なのかを示す
  2. 次に、選手の交代なのか、守備位置の変更なのかを予告する
  3. 選手の交代なら何番の誰に代わって誰が入るのか、シートの変更なら何番の誰がどのポジションに入るかをアナウンスする
  4. 最後に、交代のあった選手の打順、選手名、背番号をつけ加えて確認を促す

この原則に従えば、代打のときは次のようになる。

**高校代打のお知らせをいたします8番P君に代わりましてピンチヒッターQ君バッターはQ君、背番号**

実際、高校野球では、このような原則どおりのアナウンスを聞くことが多いが、(a)(b)は省略されても構わない。つまり、次のような単純なアナウンスでいいのだ。

8番P君に代わりましてピンチヒッターQ君バッターはQ君、背番号**

なぜなら、代打や代走の場合、攻撃チームの選手交代であることは一目瞭然だからだ。守備側のチームは代打や代走を出せない。わざわざ、わかりきっている(a)(b)を言ってもらわなくても構わない。「4部構成」の中で、もっとも肝心なものは(c)なのだ。その次は(d)だ。

マニュアルに忠実になりすぎて、(a)(b)でつかえてしまった結果、肝心の(c)が聞きとれなくなることもある。一番じれったいケースは、(c)を言う前に、何度も「失礼しました」が繰り返されることだ。

だから、代打や代走のアナウンスで余裕がないときは、思い切って(a)(b)を省略したほうがよい。「完璧は良好の敵」という言葉がある。「完璧」(abcd)である必要はない。この場合には「良好」(cd)で十分なのだ。

守備側の選手交代

さて、攻撃側の交代は比較的シンプルだが、守備の交代では面倒なときもある。守備側の選手交代(またはシート変更)のアナウンスには、4種の基本パターンがある。まず、もっとも単純なケースはこうだ。

(1) 8番セカンドPがQに交代したとき

**高校選手の交代をお知らせしますセカンドのP君に代わりましてQ君が入ります8番セカンドQ君、背番号*

お知らせいたします」が言いにくいなら、「お知らせします」でいい。

次は、攻撃時からの継続パターンだ。高校では指名打者がないので、代打や代走が起用された回が終わると、必ず守備側のアナウンスが必要になる。

(2) 8番セカンドPに代打Qが出て、次の守備で代打のQがセカンドに入ったとき

**高校さきほどの回に代打しましたQ君がそのままセカンドに入ります8番セカンドQ君、背番号**

さきほどの回に代打しましたQ君が…」の部分は、「代打のQ君がそのままセカンドに入ります」でもよい。帰りの挨拶が「ごきげんよう」になる女子高なら話は別だろうが、普通の高校生が日常会話で「さきほど」を使うとは思えない。使いなれない言葉でトチるぐらいなら、最初から使わない勇気も、ときには必要なことだ。繰り返すが、「完璧は良好の敵」なのだ。

ところで、このケースは実際には「選手の交代をお知らせします」との前振りが入ることが多い。だが、選手が代わったのは代打に起用されたときであって、その代打が守備につくときには「選手の交代」はしていないのだ。「シートの変更をお知らせします」とのアナウンスを聞いたこともあるが、代打や代走がシートと言えるのどうかという疑問もある。

「選手の交代」でも「シートの変更」でも違和感が残る。それなら、いっそ4部構成の(b)を省略して3部構成でアナウンスしたほうがよくないだろうか。つまり、「選手の交代をお知らせします」も「シートの変更をお知らせします」も入れないで、「守ります**高校、先ほどの回に…」とすればいいのではないだろうか。

さて、(2)の変形パターンはこうなる。これは「選手の交代」だ。

(3) 8番セカンドPに代打Qが出て、次の守備でRがセカンドに入ったとき

**高校選手の交代をお知らせしますさきほどの回に代打しましたQ君に代わりまして、R君が入ります8番セカンドR君、背番号**

選手交代ではなく、守備位置だけが入れ替わることもある。

(4) 8番セカンドPがライトに、9番ライトSがセカンドに入れ替わるとき

**高校シートの変更をお知らせしますセカンドのP君がライト、ライトのS君がセカンドに回ります8番ライトP君、9番セカンドS君

難しく思える複数選手の交代も、元をたどれば(1)(2)(3)(4)の組み合わせにすぎない。

応用編

比較的簡単な(1)と(4)の組み合わせは次のようになる。

(1+4) 8番セカンドPに代わってQがライトに入り、9番ライトSがセカンドに入るとき

**高校選手の交代ならびにシートの変更をお知らせしますセカンドのP君に代わりましてQ君がライト、ライトのS君がセカンドに入ります8番ライトQ君、背番号*。9番セカンドS君

次は(2)と(4)の組み合わせだ。

(2+4) 8番セカンドPの代打Qがライトに入り、9番ライトSがセカンドに入るとき

**高校選手の交代ならびにシートの変更をお知らせしますさきほどの回に代打しましたQ君がライト、ライトのS君がセカンドに入ります8番ライトQ君、背番号**。9番セカンドS君

(3)と(4)の組み合わせは次のとおりだ。

(3+4) 8番セカンドPの代打Qに代わってRがライトに入り、9番ライトSがセカンドに入るとき

**高校選手の交代をならびにシートの変更をお知らせしますさきほどの回に代打しましたQ君に代わりましてR君が入りライト、ライトのS君がセカンドに回ります8番ライトR君、背番号**。9番セカンドS君

(1+4)(2+4)(3+4)では、S君は守備位置が変わるだけだ。QやRは、新規の選手交代となる。したがって、(b)で「選手の交代」と「シートの変更」なんですよと前置きすることになる。この2つは「ならびに」でつなぐのが望ましい。

ときおり「および」や「また」を聞くことがある。間違いではないけれども、すくなくとも私にはちょっと違和感がある。「ならびに」は、場内アナウンスらしく聞こえる定型句なのかもしれない。

また、シート変更のときは、「入ります」より「回ります」のほうが、シート変更だということを強調することができる。まあ、無理に区別する必要はない。「完璧は良好の敵」だからだ。場内アナウンスは100点満点でなくてもいい。

センテンスは短く

続いて、(1)と(1)の組み合わせだ。

(1+1) 8番セカンドPがQに、9番ライトSがTに交代したとき

**高校選手の交代をお知らせしますセカンドのP君に代わりましてQ君、ライトのS君に代わりましてT君が入ります8番セカンドQ君、背番号*。9番ライトT君、背番号*

(2)と(2)の組み合わせもある。

(2+2) 8番セカンドPの代打Qがセカンドに、9番ライトSの代打Tがライトに入ったとき

**高校シートの変更をお知らせしますさきほどの回に代打しましたQ君がそのまま入りセカンド、同じくさきほど代打しましたT君がそのままライトに入ります8番セカンドQ君、背番号*。9番ライトU君、背番号*

(3)と(3)の組み合わせはやや複雑だ。次のようになる。

(3+3) 8番セカンドPの代打Qに代わってRがセカンドに、9番ライトSの代打Tに代わってUがライトに入ったとき

**高校選手の交代をお知らせしますさきほどの回に代打しましたQ君に代わりましてR君が入りセカンド、同じくさきほど代打しましたT君に代わりましてU君がライトに入ります8番セカンドR君、背番号*。9番ライトU君、背番号*

これがとっさに出ないなら、センテンスを切って分割すればいい。「代打のQ君に代わりましてR君がセカンド入ります。代打のT君に代わりましてU君がライトに入ります」。これで十分なのだ。 

分割しない場合は、「R君がセカンドに入り、…」ではなく、「R君が入りセカンド、…」と語順を入れ替えて、ポジションや名前で止めたほうが美しく聞こえる。

「そのまま」

(1)と(2)の組み合わせもある。

(1+2) 8番セカンドPがQに交代して、9番ライトSの代打Tがライトに入るとき

**高校選手の交代をお知らせしますさきほどの回に代打しましたT君がそのまま入りライト、セカンドのP君に代わりましてQ君が入ります8番セカンドQ君、背番号*。9番ライトT君、背番号*

代打や代走の起用があったときは、その選手を先に言うほうがなめらかだ。もちろん、分割して「セカンドのP君に代わりましてQ君が入ります。代打のT君がそのままライトに入ります」でも悪くはない。危ない橋を渡らずに、短いセンテンスに分割するのは初歩的なテクニックだ。「完璧は良好の敵」だからだ。

代打・代走の選手が、退いた同じ打順の選手のポジションを引き継ぐときは、「そのまま」が使われる。球審はよく「代打がそのままライト」と言っているはずだ。これは一種の業界用語だから、無理に使わなくてもいいけれども、使ってもらったほうが嬉しい。

次は(1)と(3)の組み合わせだ。

(1+3) 8番セカンドPがQに交代して、9番ライトSの代打Tに代わってUがライトに入るとき

**高校選手の交代をお知らせしますさきほどの回に代打いたしましたT君に代わりましてU君が入りライト、セカンドのP君に代わりましてQ君が入ります8番セカンドQ君、背番号*。9番ライトU君、背番号*

このように長いセンテンスにするなら、(1+2)と同様に、代打が起用された打順の選手を先に言うことが望ましい。分割するなら、とくに先後を気にする必要はない。

(2)と(3)の組み合わせは次のようになる。

(2+3) 8番セカンドPの代打Qがセカンドに入り、9番ライトSの代打Tに代わってUがライトに入るとき

**高校選手の交代ならびに守備の変更をお知らせしますさきほどの回に代打しましたQ君がそのまま入りセカンド、同じく代打しましたT君に代わりましてU君がライトに入ります8番セカンドQ君、背番号*。9番ライトU君、背番号*

このケースでは、とりわけ「そのまま」が生きてくる。もちろん、この場合も分割して短いセンテンスをつないでいい。無理して長くする必要はない。「代打のQ君がそのままセカンドに入ります。代打のT君に代わりましてU君がライトに入ります」。これで不都合はない。

やっかいなケース

(4)と(4)の組み合わせも高校野球ではよくあることだ。

(4+4) 5番ピッチャーVがライト、8番セカンドPがピッチャー、9番ライトSがセカンドに入れ替わるとき

**高校シートの変更をお知らせしますピッチャーのV君がライト、ライトのS君がセカンド、セカンドのP君がピッチャーに回ります5番ライトV君、8番ピッチャーP君、9番セカンドS君

(4)と(4)の組み合わせのとき、普通の審判なら、「ピッチャーがライト、ライトがセカンド、セカンドがピッチャー」という具合に、「しりとり」遊びのような言い方をする。これは脱落を防ぐための知恵であり、もし最初と最後が一致しないなら、何かが抜けているわけだ。

(c)は「しりとり」順が好ましいけれども、打順表を見ながらのアナウンスでは、打撃順で「ピッチャーがライト、セカンドがピッチャー、ライトがセカンド」となることもある。まあ、どちらでも構わない。混乱しないなら、それでもよい。

96年の高校野球選手権大会1回戦で、近江高校はセンターがセカンド、セカンドがショート、ショートがピッチャー、ピッチャーがファースト、ファーストがレフト、レフトがセンター、という具合に6人の選手の守備位置を変えた。しかも、これが何度も繰り返された。高校野球特有の難問だ。

近江高校の選手交代
打順 スタメン 4回裏
1番打者
5回裏
3番打者
5回裏
9番打者
6回裏
1番打者
6回裏
3番打者
1番
2番
3番
4番
5番
6番
7番
8番
9番








→二
→遊
→投
→左

→中


→一
→中
→二
→遊
→一

→左


→投
→二
→遊
→投
→左

→中


→一
→中
→二
→遊
→一

→左


→投
→二
→遊
→投


→中


×
→左

私はまだ聞いたことはないけれども、このように規模の大きいシート変更(選手交代)のケースでは、「○○高校に大幅なシートの変更がありますので、1番から改めてご紹介いたします」という形でアナウンスせよとのマニュアルもあるようだ。

つまり、交代した選手だけでなく、交代していない選手も含めて9人全員をアナウンスしてしまおうということのようだ。なるほど、そのほうが混乱せずにすむのかもしれない。先に掲げた富士大のようなケースなら、誰が誰に代わったとやるより、そのマニュアルのように「1番から改めて」のほうがやりやすいかもしれない。

語尾こそ明瞭に

「4人目のあと1人、10人目のあと1球」のページでも書いたことだが、もっとも不愉快に感じられるアナウンスは、間違ったあとで笑っていることだ。

語尾の不明瞭さも歓迎されない。地方球場に行ったときのイントネーションの違いで聞きとりにくいのは仕方のないことだろうし、「1」と「8」も難しいところだろう。「*番ショート、**君、背番号」までは聞こえるのに、肝心の何番かが聞き取れないアナウンスも比較的よくある。

私(たち)が聞きたいのは「背番号」という言葉ではなく、そのあとの番号そのものなのだ。「背番号」という言葉だけが聞こえてきても何の役にも立たない。また、2桁の背番号のとき、10の位の「じゅう」は聞こえるのに、1の位が聞こえないことも少なくない。

「語尾こそ明瞭に」を心がけてほしいものだ。20番台や30番台の背番号が多くなる大学野球で頻繁にあることだったりするのだが…。

ところで、高校野球の場合、県によってアナウンスの内容が微妙に異なる。大切なことは何なのか、あわただしいときに何を省略してもいいのか、参考になるかもしれない。まあ、東京の場合は、これ以上省略できない。

選手紹介のアナウンス比較
都県 選手名 学年 出身中学 背番号
東京 姓のみ なし なし あり
埼玉 姓のみ なし あり あり
千葉 姓のみ なし あり あり
神奈川 フルネーム あり あり あり

▲01年選手権予選および秋季大会でチェックしました。大会や回戦によって、多少の差異があるのかもしれません。なお、01年秋季関東大会(栃木開催)は東京スタイルでしたが、02年春季関東大会(群馬開催)は選手名がフルネームで学年と出身中学のアナウンスはありませんでした。
「お情け無用」「海抜200mの浜風」のページでも、高校野球における場内アナウンスの地域差に触れました。

ノーヒットノーラン

中学生の硬式野球(7イニング制)を見ていたら、あるチームの投手が1四球のみで完封した。つまりノーヒットノーランだ。試合終了後、「ご覧いただきましたように、ただいまの試合は○対○で○○が勝ちました」という型どおりのアナウンスに続いて、別の人物の声で「○○投手はノーヒットノーランです。投球内容は打者22人、投球数83、三振9…」という放送があった。

ちょっと違和感があった。プロはともかく、アマではこの放送は珍しいのではないか。私が最初に見たノーヒットノーランは91年のイースタンの試合だった。今野隆裕がファイターズ戦で達成した。球場はロッテ浦和だったから、ホームチームの投手だったが、ノーヒットノーランである旨のアナウンスはなかった。

10年以上前の話だが、確信をもってそういう放送がなかったと言い切れる。なぜなら、本当にノーヒットノーランなのか、私が間違ってヒットを見過ごしたのではないかと確かめに行ったことを覚えているからだ。2度目は東都の入れ替え戦だった。記憶はあまり定かではないけれども、このときもそういうアナウンスはなかった(はずだ)。

3度目はパリーグの試合だったし、本拠地球場だったから、待ってましたとばかりに「西崎幸広投手、ノーヒットノーランでございます」と来た。スコアボードにもデカデカとその旨が表示された。もちろんヒーローインタビューもあった。

さて、その中学生の試合で負けたチームは三塁側だった。その日の最後の試合だった。行ったことのある人にはわかるだろうけれど、江戸川球場のスタンドから最寄りの地下鉄東西線西葛西駅に向かうには、道路に出るより敷地内の三塁側選手出入口の前を通るのが近道だ。私はいつもそうしている。もともとそんなに広いスペースではない。

ちょうど最悪のタイミングだった。泣いている選手たちに向かって、監督が「お前たちはよくやった」と声をかけているところだった。こういうときに、すました顔で通り過ぎるのは辛いものだ。負けたチームに追い打ちをかけるようなアナウンスが、はたして必要なのだろうか。異論もあるだろうけれど、私は「余計なお世話」だったと思っている。

もちろん、プロならそういうアナウンスがあってもいい。だが、これは中学生なのだ。快記録に高ぶって思わずマイクを握ってしまったのかもしれないけれども、敗者に対する配慮も忘れてほしくない(自戒を込めて)。

02年の愛知大学リーグ開幕戦は延長10回でノーヒットノーランが成立したが、試合終了後のアナウンスはいたってノーマルなものだった。ノーヒットノーランである旨のアナウンスはなかった。07年には島根県の高校野球でノーヒットノーランを見たが、やはりアナウンスはなかった。アマチュアの場合、それでいいのではないかと私は思っている。

江戸川球場からの帰りに、電車の中で私はスコアブックを広げて投球数を数えてみた。85球だった。まあ、なんだかんだ言いながらも、しっかり「83球」だけメモしていた私も私だ。


イチローの時代に愛知県で場内アナウンスをされていた方よりメールを頂戴しました。一番嫌だったアナウンスは「後攻の国府(こう)高校」だったそうです。「こーこーの、こうこーこー」とアナウンスするのがコツだそうです。なお、当サイトには「涙声のアナウンス」というページもあります。また、02年春の愛知大学リーグ開幕戦、延長10回ノーヒットノーランについては、「浅き夢見し」のページをどうぞ。

◆00年代中盤までWeb上での場内アナウンスについての情報量は少なく、このページはアナウンス担当の当事者によく読まれていたようです。09年2月には次のようなメールを頂戴しました。自分の言葉が届いていると実感できるメールでした。ありがとうございました。

「完璧」でなくていい、というお言葉とても気持ちが楽になりました。
本当に緊張するんです。
一度に5〜6人守備、選手交代するのでパニックです。
でもこちらを読んで、分かりやすくアナウンスしよう、と思いました。

◆長らく放置している間にご質問をいただいていました。12/10/10付のフォームメールです。

私は人手の足りないときアナウンスにかりだされるのですが、何せマネージャーもやっていなくて、野球のことは詳しくわからないままやらせていただいている状態です。やる以上はちゃんとやらねばという思いがあるのですが、選手の交代などあると、もうわけがわからなくなり、非常に困っております。
こちらのホームページを拝見させていただき、教えていただきたいことがあるのですが、守備側の選手交代の(4)のシートの変更でシートが入れ替わるとき打順もあべこべになるのですね?
すみません!!本当に素人なので。。アドバイスいただけると幸いです。

守備位置の変更があったときは、若い打順の選手を先に言うことになります。打順はその試合を通じて固定されます。ルール上、打順が動くことはありません。

外部リンクです。
E-Joy!野球場内アナウンス
 「アナウンスマニュアル」、「選手・守備変更アナウンス具体例」のほかに「発声練習」のページもあります。少年野球ですが、実際にアナウンスを担当されている方によるサイトです。サイト名のイージョイは“本人も楽しみながら、上手い・良いアナウンスを”という意味だそうです。13年5月にサイト名とURLを変更されています。(06/02/15通知済、14/01/11変更)

◆事実誤認、変換ミス、リンク切れ等にお気づきの際は、お手数ですが、「4代目んだ」(代打がそのまま守備につくときの場内アナウンス)または「メールのページ」からご一報いただけると幸いです。ご意見やご感想もブログ「んだ」で承ります。

★07/01/27校正チェック済、ケなし、順OK
★07/12/16HTML文法チェック済(エラーなし)



検索リンクポリシールール|次へ:打順間違いミスい事件|作成順:遠来のお客様たち