◆守山市民球場は、ごくありふれた地方球場(社交辞令込み)でしたが、2試合見て、2試合ともナイスゲーム(社交辞令抜き)でした。
記録マニアである私は、いわゆる「キリ番」にあまり執着心がない。2000本安打は、1本1本のヒットの積み重ねであって、2000本目のヒットにだけとりわけ価値があるとは思っていないからだ。
高橋由伸が東京六大学のリーグ新記録となるホームランを打ったとき、たまたま私は見ていたけれども、それは私が見た彼のホームランのワン・オブ・ゼムにすぎず、もちろん彼が打ったホームランのごく一部にすぎないのであり、別に23本全部を見たわけではない以上、新記録の瞬間に立ち会えたという感慨はなかった。
行った球場の数がちょうど100で終わっていることについて、私は何か座り心地の悪いものを感じていた。選手生活の晩年を記録のために無理やり現役にしがみついているような、そんなイメージがあるからだ。できるだけ早く「101」にしたかった。
101球場目は滋賀県の守山市民球場だった。守山駅の3番乗り場からバスに乗って、守山中学校前のバス停で降りた。バスの車窓から見る風景は、市街地からやがて田園風景っぽい雰囲気に変化したけれども、大規模な公共施設や民家が点在して、ちょっと中途半端な感じだった。歩くには適さないかもしれない。
その日は社会人びわこ大会の2日目、1回戦1試合と2回戦2試合が組まれていた。私が球場に着いたのは、第1試合が終盤に入っていた10:30前だった。中に入ると、失望感が私を支配した。椅子がない。階段状のコンクリートむきだし球場だ。
とりあえず新聞を広げて、座布団を敷いた。アマチュア野球で2試合や3試合、あるいは4試合見るときは必需品と言っていい。別にそちら関係の病気でなくても、だ。
とくに遠征の際には新幹線や飛行機に長時間乗っている。座っているより立っているほうが楽なこともある。実際、この日の私はスタンドの人が少なかったせいもあって、たとえば二死一塁で左バッターという場面では、ライトポールとホームプレートの延長線上で立って見ていることが多かった。
二死一塁なら盗塁が考えられる。一塁ランナーのスタートを見るにはいい位置関係なのだ。打球は右方向に飛ぶ確率が高いから、セカンドの1歩目も見える(ただし、必ずバックネットの陰に入る必要がある。左打者のファウルが飛んで来やすい場所でもあるからだ)。
人口密度の低いスタンドで1人で見ているときは、そのときそのときの状況に応じて、席から離れて絶好のポジションを探すのも楽しいことだ。ついでに屈伸運動とかもできたりする。
「エコノミー症候群」を避けながら見ていた第2試合、5点差を追う全大津の9回表の攻撃は一死一塁だった。9番・秋月の打球はショートゴロ、6−4−3のダブルプレイでゲームセットかと思われた。
| 00/11/04(守山) びわこ大会2回戦2日目第2試合 11:01〜14:34 | ||
| 全大津野球団 | 030 020 005 04 =14 | ○武村 |
| 柵原クラブ | 133 110 100 00 =10 | 永安−●吉本−那須 |
併殺を焦ったのかもしれない。柵原クラブのショートが、セカンドベース方向にボールをこぼした。ボールを拾い上げたところがちょうどベースの上だったので、一塁走者は封殺された。
二死一塁だ。これが併殺を焦って二塁に悪送球したりすると、アウトカウントは増えないから、5点差でもいやな感じがする。しかしまあ、1つアウトが増えた(封殺が成立しているのでエラーは記録されない)。ゲッツーはとれなかったけれども、5点差で二死一塁だ。まさかここから何かが起こるとは思わなかった。
打順 打者 左右 アウト走者 カウント 結果
1番 戸田 R 2死1塁 KBH セカンド後方のテキサスヒット(一走は三進)
2番 藤田 R 2死1・3塁 SBBSBB 四球
3番 森 R 2死満塁 SBSH ライト前ヒット(得点2、一走は三進)
4番 木村 R 2死1・3塁 BBH センターへホームラン(得点3)
▲「S」は見逃し、「K」は空振り、「B」はボール、「H」はインプレイの打球です。
いやはや、9回二死一塁から5点差が同点になるものなのか。こういうことがあるから、野球を見るのはやめられない。途中で帰ったりなど、とんでもない話だ。「どうだ、サッカーファンよ。悔しいだろう」と言いたくなるのは、こういうときだ。
同点ホームランを打った木村は、5回にはセンターオーバーの三塁打も打っている。三塁打は結構きつい。パンフによれば木村は32歳、この試合の出場選手のなかでは最年長だ。80m全力疾走というのは、毎日練習しているわけではないだろうクラブチームの選手にとっては、かなりきついはずだ。体型からしても、同情したくなる。
感心するのは、その次の場面だ。三塁走者となった木村は、リードを大きくとって本盗のふりをして、バッテリーを牽制していた。ついさっき、息を切らせて足をもつれさせながら走ったばかりなのに…。「少し休んでいていいよ」と言いたくなるではないか。
守備のときもそうだったけれど(ファースト)、久々に「チームリーダー」を見たような気がした。私は木村に「大津の石毛」という称号を与えよう(土地柄ライオンズとは無縁ではない。行けばわかる)。
いい試合だっただけに残念なことがある。この日の守山市民球場のスコアボード(の操作)はひどかった。球審がボールカウントの訂正を要求したことが、9回までにすくなくとも5度あった。私が気づいていて、球審が気づかなかった(あるいは面倒に思ってそのまま流した?)ケースを含めると2桁に達する。
9回表、木村が同点3ランを放った直後、スコアボードには、しばらく「4」が入っていた。9回にきて同点と1点差ではえらい違いだ。前の回のカウントを消し忘れて、スコアボードがツーアウトのままで新しいイニングが始まったこともある。
ただし、場内アナウンスは非常に しっかりしていた。社会人野球は場内アナウンスでいらつくことはあまりない。なお、この試合で全大津のピッチャーは11回を被安打18で完投した。次の表は、これまで私が見た試合で16被安打以上の完投の事例だ(02年末現在)。完投勝利投手としては最多被安打ということになる。
| No. | 年月日 | 球場 | 大会 | 被安打 | 完投投手の所属チーム | スコア | 相手チーム |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| [01] [02] [03] [04] [05] [06] [07] [08] [09] [10] [11] |
97/06/02 93/07/18 00/11/04 96/07/14 92/08/11 01/07/13 01/10/06 92/07/26 94/08/09 95/07/19 96/03/05 |
広島 神宮 守山 秦野 甲子園 青葉の森 天台 神宮 甲子園 川崎 川崎 |
社会人都市対抗広島1次予選 高校選手権東東京予選 社会人びわこ大会 高校選手権神奈川予選 高校選手権 高校選手権千葉予選 高校秋季千葉県大会 高校選手権東東京予選 高校選手権 高校選手権神奈川予選 社会人練習試合 |
19 18 18 17 17 17 17 16 16 16 16 |
スポーツ医学専門学校 二松学舎大付高 全大津野球団 茅ケ崎高 長岡向陵高 八千代西高 拓大紅陵高 安田学園高 山陽高 神奈川大付高 NTT東京 |
3●17 7●13 14○10 9●12 0●11 9○6 2●10 5●11 3●6 1●16 13○11 |
リースキン広島(7回コールド) 日大一高 柵原クラブ(延長11回) 相武台高 星稜高 下総高 市船橋高(7回コールド) 帝京高 盛岡四高 県川崎高(6回コールド) 三菱重工横浜 |
さて、第2試合が長引いたので、照明設備のないこの球場での第3試合は、日没との戦いにもなった。
| 00/11/04(守山) びわこ大会2回戦 2日目第3試合 14:44〜16:47 | ||
| 大和高田クラブ | 200 000 2 =4 | ○山下 |
| 箕島球友会 | 001 100 0 =2 | ●万賀−金本 |
第2試合終了後、わずか10分で第3試合のプレイボールがかけられた。トイレに行って、サンドイッチをひと切れ頬ばって、それで終わりだ。時間が切迫しているのは私もわかっているから、別に驚きはしなかったが、インターバル10分は私の経験のなかではおそらく最短記録のはずだ。
困ったのは試合前のスタメンのアナウンスがなかったことだ。シートのアナウンスもない。スコアボードには選手名は出ない。打順のランプがつくだけだ。野手に関しては、打順のアナウンスで対応していけるのだが、投手は背番号とパンフで照らし合わせるしかない(DH制)。
幸いにも場内アナウンスは第2試合と同じ人だった(おそらく)。偵察要員が1人起用されていたが、1回表終了時にきちんとアナウンスをしてくれた。スコアボードに名前が出なくても、パンフがあって場内アナウンスがしっかりしていれば、スコアはつけられる。
4回裏が終了したとき、ちょうど16:00だった。この大会は3連休の3日間で終わらせなければならない。仕事があるから、いつまでも休んでいられない。翌日は準決勝と決勝だ。再試合などやっていられない。
6回表が終わったとき、私は近くにいた大和高田の関係者らしいおじさんに尋ねた。「もし同点で日没コールドなら、どうなるんですか?」
「再試合は無理ですよねえ」と水を向けると、「ジャンケンだろう」という答えがかえってきた。しばらくして、私のほうを振り返って「7回までだな」と聞かれた。「うーん、僕も7回だと思いますよ」と答えておいた。6回裏終了が16:30。いよいよ、ラストイニングだ。
7回表、先頭打者が四球で塁に出た。箕島のベンチから監督がマウンドに向かう。大和高田の9番・平山はバントファウルなどで2−1と追い込まれた。4球目のバスターエンドランが見事に的中、レフト線に落ちて一塁走者が勝ち越しのホームを踏んだ。
その後、投手交代があり、大和高田はスクイズでもう1点加えた。7回表終了16:42。7回裏の箕島の攻撃は10球3人で終わった。私たちの予想どおり、日没で7回コールドになった。残念ながらジャンケン(実際には抽選だろうと思われる)は見られなかった。
さて、守山市民球場は、皇子山や高砂や江戸川と同じようにバックネットと屋根が連結されている。したがって、ネット裏ではファウルボールの危険がない。安心して弁当も広げられる。
かつて私は西武球場で、手に持っていた紙コップのコーヒーを、スーツの袖に盛大にこぼしたことがある。後ろに飛んだファウルボールのリバウンドを避けようとしたからだ。まあ、そういうタイミングでコーヒーを飲もうとした私が素人さんだっただけの話だけれども…。
◆第2試合は全大津が9回表に5点差を同点に持ち込んだものでしたが、9回に5点差以上を同点または逆転した試合は、過去4試合しか見ていません。→「土壇場の逆転」
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