セットポジション殿堂
野村克也 | 農山貴祥 | (チェンジ)

農山貴祥

02/10/23作成
13/12/15更新

◆私はこういうタイプの選手が嫌いではないので…。


◇8者連続奪三振

01年大学選手権の1回戦だった。5回表に一死走者なしで左打席に入った東亜大の農山は、カウント2−1と追い込まれた4球目以降、実に11本のファウルを打って、17球目をレフトのライン際に運んだ。1打席でファウル11本は私にとってのタイ記録であり、相手投手に投げさせた17球は新記録になる。

01/06/13(神宮)  大学選手権1回戦 2日目第4試合 16:58〜
東亜大 503 02 0 =10 ○小森
福島大 100 000 0 =1 ●尾形  (7回コールド)

「殿堂」を安売りするつもりはない。いくら新記録といっても、そう簡単には選べない。それに、大差がついたあとだったから、勝敗に直結したり影響したりする場面ではなかったというのもマイナス要素だ。

実は01年の大学選手権では、もう1つの「マイ記録」が生まれていた。優勝した東海大に2回戦で立ちふさがった愛知学院大のサウスポーが記録したものだ。5回途中から登板して、8者連続の奪三振だった。しかも、打者10人を「完全」に封じた。

 回 打順 位置 打者 左右 アウト走者  カウント     結果
5ウ 7番(左)長谷川L 2死走者なし BSBBKK   三振
6ウ 8番(二)古賀 L 無死走者なし BSBFS    三振
   9番(三)栗原 R 1死走者なし BBSFK    三振
   1番(遊)平野 L 2死走者なし SBFFS    三振
7ウ 2番 左 中島 R 無死走者なし FBSFBFFK 三振
   3番(一)平間 L 1死走者なし SFS      三振
   4番(捕)小田島R 2死走者なし SBSS     三振
8ウ 5番(中)橋本 R 無死走者なし BFBFFFK  三振
   6番 打 渡辺 R 1死走者なし SBSBH    投ゴ
   7番 打 鞘師 R 2死走者なし BH       遊邪

▲「S」は見逃しストライク、「K」は空振り、「F」はファウル、「B」はボール、「H」はインプレイの打球です。

◇2度目

東亜大と愛知学院大は、翌年の1回戦で対戦した。愛院大の先発投手は筒井。8者連続奪三振の投手だ。東亜大はこの筒井を5回途中でマウンドからひきずり降ろした。それはけっして派手なKO劇ではなかった。

02/06/12(神宮) 大学選手権1回戦 2日目第2試合 11:19〜
東亜大 001 00 002 =3 ○米沢
愛知学院大 000 000 000 =0 ●筒井−高峰

1年前と同じ5回表、1年前と同じ一死走者なしの場面で、農山が打席に入る。2−0と簡単に追い込まれた。3球目以降、農山は筒井から11本のファウルを打った。1年前と同じ本数だ。投げさせた球数も1年前と同じ17球だった。農山は四球を選んで一塁に歩いた。

筒井は次打者にも四球を与え、右打者を迎えるところでマウンドを降りた。貿易センタービルに1機目が衝突しただけでは、偶発的事故か意図的なテロか即座には断定しかねる。だが、時間を置かずに2機目が突っ込んだとき、それが偶然であるとは誰も思わなかったはずだ。

▲この稿は02年に書きました。前年に起きた「9.11」同時多発テロのことです。まあ、「テロ」ではあったのでしょうが…。

1度だけなら、たまたま偶然のめぐり合わせかもしれない。だが、2度重なると無視できない。私が1991年から2001年までに見た「レコード対象ゲーム」1431試合では、92,778打数で9,803四球、1,596死球、3,766犠打、767犠飛であり、打撃妨害出塁が22回ある。

レコード対象外の試合を加えれば、悠に11万打席を超えるはずだ。1打席にファウルを11本打ったのを見たのは3回目だが、農山が2回だ。1打席で17球投げさせたのは農山1人なのだ(2回目)。11万打席で2回しか起こっていないことを、2回とも同じ選手がやったのだ。

◇異様な数字

何をためらうことがあるだろうか。これでも「殿堂」に選ばないなら、かえって私の記録マニアとしてのセンスが疑われることになる。家に帰った私は、前年の大会パンフを取り出した。調べたいことがあったからだ。

大学選手権のパンフには、春のリーグ戦の個人成績が載っている。試合中、農山の記録を見て「なんだ、これは!」と思っていたのだ。大学のリーグ戦は1シーズン当たり10試合強だ。1シーズンだけでは判断できない。それこそたまたま偶然の産物だったりもする。

大学選手権1回戦の東亜大のスタメン9人について、大会パンフに記載されている春のリーグ戦の個人成績を抜き出してみた。農山の異様な数字に気づいてもらえるはずだ。

東亜大のスタメン
01年春 試合 打数 得点 安打 HR 打点 盗塁 四球 02年春 試合 打数 安打 HR 打点 盗塁 四球
(右)中東
(左)小橋
(捕)谷
(遊)澄川
(指)福家
(三)河野
(一)森重
(二)農山
(中)山下
11
11
11
11

11
11
10
11
40
40
39
36

31
30
20
27





11

12
10
14
11
13



15

10
















14











10

10

13
(右)中東
(一)河野
(捕)谷
(遊)澄川
(指)田沢
(中)富浦
(左)南口
(三)日野原
(二)農山
11
11
10
11
11
11
10
11
11
36
35
33
36
35
33
28
36
22
16
11
10
10

13












12


11










11




10


13

▲同パンフには「死球」の項目がありませんので、「四球」の項目は「死球」を含む「四死球」の意味だと思われます。私は、2文字分のスペースしかないときは「四死」を使っています。もっとも、このパンフでは「試合数」や「本塁打」が3文字表記ですが…。
▲01年のパンフには「得点」の項目がありますが、02年のパンフにはありません。私の無意識による脱落ではありませんので、念のため。

01年春のヒットは3本にすぎない。レギュラーとしてはあまりにも物足りない数字だろう。だが、01年は10試合で13個の四球、02年も11試合で13個の四球を得ている。したがって、出塁数(率)で考えれば、十分にレギュラーたりうるのだ。

四球の多い打者

一般的に四球の多い打者は、強打者であることが多い。たとえ意図的に勝負を避けなくても、厳しいコースを突いて結果的に四球になっても仕方がないという配球もあるだろうからだ。01年のプロ野球で両リーグの四球数上位10人の打者をリストアップしてみた。

▼『ベースボール・レコード・ブック』2002年版(ベースボールマガジン社)から作成しました。こちらの「四球」は額面どおりです。つまり、故意四球は含みますが、死球は含みません。当たり前です。

四球数上位10人(01年プロ野球)
パリーグ セリーグ
打者 所属 試合 打数 安打 HR 四球 打率 打者 所属 試合 打数 安打 HR 四球 打率
ボーリック
中村紀洋
カブレラ
ローズ
マクレーン

Bu

Bu
132
140
139
140
135
452
525
514
550
481
126
168
145
180
119
31
46
49
55
39
107
104
84
83
78
.279
.320
.282
.327
.247
金本知憲
松井秀喜
ペタジーニ
江藤 智
清原和博




140
140
138
134
134
472
481
463
485
467
148
160
149
138
139
25
36
39
30
29
128
120
120
73
65
.314
.333
.322
.285
.298
パルデス
小坂 誠
大島公一
吉岡雄二
谷 佳知


BW
Bu
BW
137
140
122
127
136
526
657
414
456
547
163
144
109
121
178
21


26
13
77
77
75
66
65
.310
.262
.263
.265
.325
谷繁元信
木村拓也
小川博文
金城龍彦
福留孝介
YB

YB
YB
137
137
131
138
120
447
551
420
480
375
117
145
111
130
94
20

15

15
65
61
57
56
56
.262
.263
.264
.271
.251

こうしてみると、四球の多い打者というのは、勝負を避けられがちな長距離打者か(谷繁は打順の要素もあるだろう)、塁に出てから勝負するタイプの選手ということになるのだろう。

さて、大学野球ではどうなのだろうか。01年と02年の大学選手権パンフから、春のリーグ戦で10四球以上だった打者をピックアップしてみた。

▼「打順&ポジション」欄の算用数字は打順、漢数字がポジションです。打順もポジションも固定的なものではありませんが、当該年度の大学選手権で最初に見た試合のものを掲げました。大学選手権で見られなかったチームについては、当該年度の春季リーグ戦で見たときの打順とポジションです。

10四球以上の打者(01年大学選手権出場選手)
01年 02年
選手 所属 試-球 打順&ポジション 選手 所属 試-球 打順&ポジション

大須賀
熊田
遠藤
高橋史
東北福祉大
東北福祉大
福島大
福島大
創価大
11-13
11-10
12-13
13-14
12-11
2三 (6/13対九州国際大)
3遊 (6/13対九州国際大)
4捕 (6/13対東亜大)
3三 (6/13対東亜大)
1遊 (6/16対京都学園大)
名和
高橋
宗像
阿久津
斎藤
北海道大
石巻専修大
石巻専修大
上武大
上武大
10-10
11-11
11-11
7-10
12-10
4遊 (6/13対福井工業大)
4捕 (6/13対九州国際大)
8左 (6/13対九州国際大)
1中 (6/12対龍谷大)
4左 (6/12対龍谷大)
高橋光
多井
平野
栗原
平山
創価大
法政大
東海大
東海大
愛知学院大
12-11
12-10
11-12
11-11
10-12
6一 (6/16対京都学園大)
3左 (6/17対広島経済大)
1遊 (6/17対愛知学院大)
9三 (6/17対愛知学院大)
4三 (6/13対奈良産業大)
鞘師
大松
岡本武
小田
衣川
東海大
東海大
関東学院大
愛知学院大
岐阜聖徳大
11-13
11-12
10-11
11-10
10-10
3中 (4/20対筑波大)
4右 (4/20対筑波大)
2遊 (6/11対四国学院大)
5一 (6/12対東亜大)
4捕 (6/12対九州共立大)
平林

足立
農山
澄川
奈良産業大
京都学園大
京都学園大
東亜大
東亜大
10-10
13-10
13-14
10-13
11-10
6三 (6/13対愛知学院大)
4左 (6/16対創価大)
1中 (6/16対創価大)
8二 (6/13対福島大)
4遊 (6/13対福島大)
川原
戸田
坂本
農山
中東
龍谷大
奈良産業大
奈良産業大
東亜大
東亜大
11-12
14-13
13-14
11-13
11-11
1中 (6/12対上武大)
1中 (4/05対大阪大)

9二 (6/12対愛知学院大)
1右 (6/12対愛知学院大)
河野
山下
山中
枦山
藤原
東亜大
四国学院大
四国学院大
九州国際大
九州国際大
11-10
12-15
12-13
11-12
10-11
6三 (6/13対福島大)
1遊 (6/13対岐阜聖徳大)
5左 (6/13対岐阜聖徳大)
6二 (6/13対東北福祉大)
5指 (6/13対東北福祉大)
富浦 東亜大 11-10 6中 (6/12対愛知学院大)
大西
岩切
福岡工業大
崇城大
10-11
17-11
4三 (6/12対上武大)
3二 (6/15対横浜商科大)

これを打順別・ポジション別に見ると、次のようになる。打順別では1番と4番に集中している。下位を打つ農山が上のリストに2度登場する特異さがわかろうというものだ。誰もがホームランバッターである必要はない。下位打者には下位打者の役割がある。

打順とポジション
打順別 ポジション別
1番
2番
3番
4番
5番
6番
7番
8番
9番
8人
2人
5人
10人
3人
5人
0人
2人
2人
捕 手
一塁手
二塁手
三塁手
遊撃手
左翼手
中堅手
右翼手
指名打者
3人
2人
4人
7人
7人
5人
6人
2人
1人

典型

農山は東亜大の野球スタイルを具現化した選手だったのだろう。03年大学選手権で、私は東亜大の試合を1試合だけ見た。

03/06/14(神宮) 大学選手権 2回戦 5日目第2試合 11:40〜14:39
東亜大 001 100 004 =6 ○竹林
上武大 000 001 000 =1 ●菊地−川崎−蓮見−山下

両チームのファウルの数は次のとおりだ。東亜大は打者48人で47本、1人当たり0.98本だ。上武大は1人当たり0.61本だから、その差は歴然としている。

東亜と上武のファウル数
東亜大(47本/48人) 上武大(19本/31人)
1表 2表 3表 4表 5表 6表 7表 8表 9表 1ウ 2ウ 3ウ 4ウ 5ウ 6ウ 7ウ 8ウ 9ウ





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1番
2番
3番
4番
5番
6番
7番
8番
9番



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10 10

▲1回表東亜大の3番打者には打撃妨害の打球を含みます。また、 4回裏上武大の4番打者の打席では一塁走者が盗塁死となりチェンジです。

いかに私が記録マニアといえども、1試合のファウルの数を数えることはあまりない。だが、「石川」のページでは延長18回打者53人を送った青学大のファウルの数を集計している。44本だから、1人当たり0.83本だ。

ためしに、ほかのチームについても、ざっくり数えてみた。1試合当たり20本前後が標準だと思われる。打者1人当たりにすれば、0.5〜0.7本といったところだろうか。

1打席当たりのファウル数
年月日 勝ちチーム 1打席当たりのファウル 負けチーム 1打席当たりのファウル
03/06/10
03/06/10
03/06/10
03/06/14
03/06/14
日本文理大
愛知大
早稲田大
札幌大
九州共立大
0.71本(29本/41人)
0.53本(21本/40人)
0.50本(18本/36人)
0.39本(15本/38人)
0.51本(21本/41人)
仏教大
近大工学部
旭川大
流通経済大
金沢学院大
0.64本(23本/36人)
0.49本(17本/35人)
0.83本(20本/24人)
0.55本(17本/31人)
0.41本(14本/34人)

03年パンフに記載された東亜大の野手登録17人は、左打ちが5人、両打ちが8人で、右打ちはわずかに4人(そのうち2人は捕手登録)しかいない。まあ、パンフで両打ちになっていても、実際には純粋なスイッチヒッターばかりではないけれども…。

上武大戦で東亜大が放った13本のヒットのうち10本はセンターから右方向だった。内野安打も5本あった。卒業した農山の精神が今も息づいていると言うより、もともとこういうチームカラーだから農山が輝いたと考えるほうがより適切なのかもしれない。

観戦試合打撃成績(所属はすべて東亜大)

観戦試合打撃成績
年月日等 スコア アウト走者 投手 カウント 結果
01/06/13
対福島大
8番二塁
1表
3表
5表
7表
4対0
5対1
8対1
10対1
無死満塁
1死2・3塁
1死(なし)
2死1・2塁
尾形R
尾形R
尾形R
尾形R
BBBSSK

SFFFBFFFFFFFBFH
SH
三振
右飛
左安(次打者のとき二盗)
左邪
01/06/17
対創価大
8番二塁
3表
5表
7表
9表
0対0
2対1
2対2
3対2
無死1塁
1死(なし)
2死1塁
2死1塁
森川L
森川L
森川L
森川L
1BH
SH
BBSSH
1S1
左安
投ゴ
遊ゴ
三ゴ
02/06/12
対愛院大
9番二塁
3表
5表
7表
9表
0対0
1対0
1対0
3対0
無死1塁
1死(なし)
2死(なし)
2死1塁
筒井L
筒井L
高峰R
高峰R
SH
SSFBFFFFFBFFFBFFB
SSBH
BBS
三ギ
四球
三ゴ
三振

▲カウント欄のはバント、はバスター、はエンドラン、「1」は一塁への牽制球です。
▲創価大戦の第1打席では、2球目前の牽制球で一塁走者が誘い出されて盗塁死しています(1-3-6)。


◆残念ながら、東亜大が所属する中国地区大学リーグの連盟パンフには、前季個人成績が載っていないそうです。ネット上で検索しても、ほかのシーズンの打撃成績は出てきませんでした。もっとも、かりに○打数○安打という個人成績を探し出したとしても、リーグ戦でもファウルで粘ったあげくに四球を得ていたのではないかという疑問を解決することはできません。まあ、そう考えるのが自然でしょうが…。

◆いわゆる「松坂世代」に属する農山ですが、高校2年の秋は、PL学園に府大会準々決勝で9回サヨナラ負け(0対1)しています。高校3年(1998年)夏の北大阪大会でも延長11回の末、準々決勝で敗れています。当時は、キャプテンで1番ショートだったようです。

98年高校選手権北大阪予選準々決勝
桜宮高 011 000 205 02 =11
大阪学院大高 001 410 201 00 =9

「最多ファウルは11本」のページに、私が見た試合で1打席に6本以上のファウルを打った打者のリストを掲げてあります。

★07/10/23校正チェック済、ケなし、順OK
★08/02/18HTML文法チェック済(エラーなし)



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