92年の日本シリーズは、10月17日の第1戦と翌日の第2戦、10月25日の第6戦とその翌日の最終戦の合わせて4試合を見に行った。7試合のうち4試合が延長にもつれたシリーズだ。7回終了時点のスコアは同点が3試合、1点差が3試合、2点差が1試合だった。終盤に入ってもまだ試合の行方を読み切れない混沌としたゲームが続いた。
| Rd | 7回終了時のスコア | 最終スコアと責任投手 |
| 第1戦 | L3−3S(同点→) | ●鹿取L3−7S○岡林(延長12回) |
| 第2戦 | L2−0S(2点差→) | ○郭 L2−0S●荒木 |
| 第3戦 | L2−1S(1点差→) | ○石井L6−1S●石井 |
| 第4戦 | L1−0S(1点差→) | ○鹿取L1−0S●岡林 |
| 第5戦 | L6−6S(同点→) | ●潮崎L6−7S○伊東(延長10回) |
| 第6戦 | L6−7S(1点差→) | ●潮崎L7−8S○伊東(延長10回) |
| 第7戦 | L1−1S(同点→) | ○石井L2−1S○岡林(延長10回) |
さて、岡林はこのシリーズで3試合に登板した。30イニング430球で、被安打は22、四球は3(1つは敬遠)、失点6の自責5だ。防御率なら1.50になる。
| Rd | 勝敗 | 回数 | 打者 | 球数 | 安打 | 三振 | 四球 | 死球 | 失点 | 自責 |
| 第1戦 | 完投○ | 12 | 46 | 161 | 10 | 3 | 1 | 0 | 3 | 3 |
| 第4戦 | 完投● | 8 | 27 | 109 | 4 | 9 | 1 | 0 | 1 | 1 |
| 第7戦 | 完投● | 10 | 40 | 160 | 8 | 10 | 1 | 0 | 2 | 1 |
あいにく私が見たのは初戦と最終戦だけだが、その2試合はいずれも延長戦での完投だ。最終戦の延長10回表、一死三塁で打席には秋山幸二を迎えた。ボールが2球続いたあとの3球目は、ずいぶんタイミングの外れた空振りだった。
それが三味線だったとは言わないけれども、秋山は続く4球目をセンターに運んだ。犠牲フライで均衡は破れた。勝ち越し点を奪われた岡林は、427球目を投げるためにバックアップからマウンドに戻る。
その姿はけっして、うなだれたり、うつむいたりはしていなかった。判官びいきと言われようとも、「王者・西武」に挑んだ430球の熱投に対して、私は殿堂入りを認める。
日本シリーズで3試合以上完投した投手は、岡林以後にはいない。私が調べた限りでは、1964年のスタンカまでさかのぼらなければならなかった。
年 投手 所属 日本シリーズにおける完投試合
1954 杉下 茂 D ○第1戦(9回)、●第4戦(8回)、○第5戦(9回)、○第7戦(9回)
1958 稲尾和久 L ●第3戦(9回)、○第4戦(9回)、○第6戦(9回)、○第7戦(9回)
1964 スタンカ H ○第1戦(9回)、○第6戦(9回)、○第7戦(9回)
00年限りで引退した岡林の通算成績は登板175試合、53勝39敗12セーブ、防御率3.51だった。2001年版『ベースボール・レコード・ブック』で通算700イニング以上投げている投手をピックアップして、四球の割合を比較してみたら、もっともフォアボールの少ないピッチャーが岡林だった。
▼選手名は00年当時の登録名です。「与四球」には故意四球を含みますが、死球は含みません。「率」は、防御率と同様に計算した9イニング当たりの与四球率です。「割合」は、(与四球/打者)で求めた与四球の割合です。
投手 投球回数 打者数 与四球 率 割合 岡林 洋一 766 3190 166 1.95 5.20% 野村 弘樹 1453.2 6097 362 2.24 5.94% 斎藤 雅樹 2334 9362 577 2.22 6.16% 小宮山 悟 1878 7910 507 2.43 6.41% 山 本 昌 2029 8333 539 2.39 6.47% 桑田 真澄 2341 9677 627 2.41 6.48% ガルベス 751 3106 203 2.43 6.54% 薮 恵一 1244 5225 343 2.48 6.56% 佐々岡真司 1609.1 6656 437 2.44 6.57% 若田部健一 1021 4379 289 2.55 6.60% 川尻 哲郎 816 3426 228 2.51 6.65% 今中 慎二 1384.1 5763 400 2.60 6.94% 潮崎 哲也 1069.2 4386 305 2.57 6.95% 香田 勲夫 1063 4502 313 2.65 6.95% 斎藤 隆 1148.2 4774 338 2.65 7.08% 石井 貴 730.2 3123 227 2.80 7.27% 新谷 博 896 3752 275 2.76 7.33% 武田 一浩 1442.1 6139 450 2.81 7.33% 加藤 伸一 1459.1 6279 464 2.86 7.39% 槙原 寛己 2484.2 10334 773 2.80 7.48% 中込 伸 898.2 3809 291 2.91 7.64% 紀藤 真琴 1215.2 5153 395 2.92 7.67% 阿波野秀幸 1260 5316 410 2.93 7.71% 伊藤 敦規 957 4082 314 2.95 7.69% 川崎憲次郎 1409 5904 472 3.01 7.99% 投手 投球回数 打者数 与四球 率 割合 木村 恵二 709 3040 244 3.10 8.03% 三浦 大輔 1029.2 4318 347 3.03 8.04% 中山 裕章 954.1 4064 327 3.08 8.05% 木田 優夫 1016.1 4288 349 3.09 8.14% 野田 浩司 1614.1 6786 561 3.13 8.27% 星野 伸之 2602.1 10944 915 3.16 8.36% 西口 文也 969.1 4010 339 3.15 8.45% 西村 龍次 1226.2 5234 451 3.31 8.62% 黒木 知宏 1026 4281 374 3.28 8.74% 赤堀 元之 729 3034 267 3.29 8.80% 工藤 公康 2522.2 10410 926 3.30 8.90% 前田 幸長 1230 5269 476 3.48 9.03% 岩本ツトム 978 4188 382 3.52 9.12% 長富 浩志 1339 5681 526 3.54 9.26% 高村 祐 1103.1 4796 452 3.69 9.42% 吉田 豊彦 1363.1 5977 568 3.75 9.50% 野口 茂樹 856.1 3711 354 3.72 9.54% 湯舟 敏郎 1148.2 4985 479 3.75 9.61% 山崎慎太郎 1442 6291 607 3.79 9.65% 西崎 幸広 1973 8212 797 3.64 9.71% 河野 博文 1249.1 5353 593 4.27 11.08% 下柳 剛 705.2 3051 355 4.53 11.64% 小池 秀郎 807 3502 411 4.58 11.74% 石井 一久 1009.1 4290 530 4.73 12.35%
年月日 球場 種 相手 勝敗 投球回 打 球数 安 振 四 死 失 責
91/06/16 横浜 C W 中継○ 4 17 64 3 0 3 0 3 3
91/07/07 神宮 C D 完了○ 5.1 21 76 4 5 1 1 2 2
92/03/06 神宮 O F 先発 4 16 66 4 3 1 0 2 2
92/04/05 神宮 O T 先発 9 36 129 12 3 1 0 3 3
92/05/04 神宮 C W 完投○ 9 31 104 6 6 0 0 1 1
92/06/14 東京ドC G 先発● 4 24 106 9 2 3 0 6 6
92/08/06 神宮 C T 先発 3 17 64 8 2 1 0 5 5
92/10/17 神宮 J L 完投○ 12 46 161 10 3 1 0 3 3
92/10/26 神宮 J L 完投● 10 40 160 8 10 1 0 2 1
93/03/20 神宮 O Bu 完了△ 2 9 28 2 2 0 1 2 2
93/04/04 東京ドO G 先発 5 21 74 7 3 0 0 3 3
93/04/11 神宮 C C 先発● 7 27 90 3 4 3 0 2 0
93/09/26 神宮 C D 先発● 5.2 24 74 6 2 2 0 6 6
94/04/30 横浜 C YB 先発 7 29 98 9 4 0 0 2 2
94/06/11 神宮 C C 先発 5.1 25 85 10 3 0 0 5 5
94/07/03 神宮 C G 先発 7 29 83 8 2 1 1 3 3
95/08/27 神宮 C D 先発○ 8 31 99 6 4 1 0 3 3
◆岡林のプロ入りは91年でした。私がスコアをつけ始めたのと同じ年です。初年度は12勝12セーブでしたが、新人王の投票では10勝17セーブの森田幸一が118票、岡林は43票と意外な大差がつきました(「新人王になれない男たち」参照)。結局、タイトルには縁がありませんでした。
◆岡林は3完投した92年日本シリーズで敢闘賞を受賞しました。本人は投げませんでしたが、同年第6戦は「究極のシーソー・ゲーム」に詳述しました。また、当サイトにはその名も「日本シリーズの投手起用」というページもあります。
◆事実誤認、数値の誤り、変換ミス、リンク切れ等にお気づきの際は、お手数ですが「メールのページ」からご一報いただけると幸いです。このページに対応するブログ「んだ」のエントリーは(今のところ)ありません。
★07/09/18校正チェック済、ケなし、順OK
★06/04/09HTML文法チェック済(Google Analyticsのscriptエラー、96点)
検索|リンクポリシー|殿堂|次へ:深瀬猛|玉手箱:ソフトボールのルール(2)