セットポジションルール
指名打者ルール | 没収試合 | ソフトボールのルール(1)

没収試合でいいのか?

07/09/22作成
13/12/15更新

◆04年以降の大学野球では、登録外選手の出場で没収試合となるケースが相次いでいます。背番号や名前の書き間違いという「うっかりミス」は、本当に「没収試合」に匹敵するほどの重罪なのでしょうか? 遺失物横領に対して死刑を執行するようなものだと私は考えています。


◇開幕日の没収試合(07年)

次のような記事がある。まだ最近の話だ。いろいろな意味で、まさしく「痛いニュース」だ。

http://tohoku.nikkansports.com/news/p-tn-tp0-20070902-250446.html

<仙台6大学野球秋季リーグ:仙台大9−0東北工大>
◇1日◇第1節初日◇仙台市・東北福祉大野球場
 開幕日にハプニングが起こった。東北工大が仙台大戦で背番号登録ミスのため、リーグ史上2度目の没収試合になった。初回裏2死、試合前のメンバー表交換で背番号43だった3番指名打者・阿部塁(2年=宮城・古川工)が背番号3のユニホームで出場。野球規則により、仙台大が記録上9−0で勝った。試合時間わずか13分。仙台大エース斎藤光英(4年=福島・相馬)は、10球で勝利投手になった。
 東北工大の阿部が渋々と打席に立った直後、球審が大きく両手を交差させた。観客も仙台大ナインも何が起こったのか理解できなかったが、すでに東北工大ベンチは覚悟していた。
 05年秋の宮城教育大−東北工大2回戦以来の没収試合。前回は宮城教育大の登録外選手起用で白星を得たが、今回は逆の立場に立たされた。小幡早苗監督(58)は「気付いたのは試合開始後。私の確認ミスです。(没収試合になることを)選手には攻撃開始時に伝えていました。リーグにも仙台大さんにも迷惑を掛けてしまった」と謝罪した。
 阿部の背番号は、7月下旬の選手登録締め切り時に今春の43を申請。今大会パンフレットにも掲載された。だがその後、阿部はチーム内の了解を得て背番号3で練習試合に出場。新背番号だと思い込んでいたが、この日の出場選手名簿に、マネジャーが背番号43を記載した。試合開始直後に大会事務局に報告。ユニホームを着替えれば事なきを得たが、大学に置いたままで間に合わなかった。さらに、打席に立つまで代打を送れない指名打者の立場も不運だった
 2番打者までは二塁ゴロと空振り三振。わずか13分で試合は終わった。昨秋、最優秀新人賞と指名打者賞を獲得した阿部は「前の打者まで見ていてつらかった。自分の責任なのでバットでチームの勝利を導きたい」と明日3日の2戦目に気持ちを切り替えた。

記事には「打席に立つまで代打を送れない指名打者の立場も不運だった」とある。これは野球規則6・10の「試合開始前に交換された打順表に記載された指名打者は、相手チームの先発投手に対して、少なくとも1度は、打撃を完了しなければ交代できない」のことを指しているものと思われる。

そのセンテンスだけ読むなら「正しい」理解だろう。ただし、断じて「聡明」ではない。規則6・10には、ちゃんと指名打者が消滅するパターンが例示されているのだ。

背番号を間違っていた阿部が打席に立った時点で「登録外選手の出場」=「没収試合」となる規定だったらしい。東北工大が試合開始直後に気づいていたのなら、阿部の第1打席で投手を打席に送れば、没収試合を免れることができる。もちろん交代した阿部は試合には出られないし、その試合では指名打者を使えなくなるが、それだけのことだ。

指名打者ルールの解釈

まあ、ルール解釈上の問題はあるだろう。第1打席完了を義務づけた規定と指名打者消滅の規定は、どちらが優先するのかという問題だ。つまり、次の2つの考え方が対立することになる。(参考:6・10の規則全文

【甲】指名打者の第1打席が完了しない限り、指名打者消滅の規定によっても指名打者は試合から退くことはできない。
【乙】指名打者に打順が回る前に指名打者が消滅した以上、指名打者の第1打席完了義務は免除される。

では、【甲】説を検討してみよう。初回表の守備で先発投手Aが打ち込まれたので、ベンチはAをライトに回してBをリリーフに送ったとする。この場合、Aは指名打者の打順に入り、リリーフしたBは退いたライトCの打順に入る。指名打者Dは打席を完了しないまま交代することになるが、この交代は規則違反だろうか?

また、初回表の守備で正捕手Eがケガをして担架で退場したとしよう。打力を買われて指名打者に起用されていたFがマスクをかぶると、その瞬間に指名打者は消滅するので、退いたEの打順に投手が入ることになる。この交代は規則違反になるだろうか? もし、Fも初回表にケガで交代したら、Fは打席に立たないまま退くことになる。さあ、どうする?

もっと単純に考えればよい。初回表の先頭打者が頭部への死球を受けて前日からの遺恨が爆発、両チーム入り乱れての乱闘があったとしよう。このとき、もっとも派手に暴れ回ったのが後攻チームの指名打者だったとする。もし、指名打者の第1打席完了義務が最優先されるなら、審判はこの選手を退場処分にできないことになる。

ということで、【甲】説は弱い。実際のところ、パリーグでは【乙】説の解釈をとっているようだ(複数のルートでそう聞いているが、直接確認したわけではない)。もちろん、仙台六大学が【甲】説で運用しているなら話は別だが、そんな記事はどこにもない。東北工大には没収試合を回避する手段があったのだ。

だが、これは問題の本質ではない。その程度のことなら、わざわざ私が1ページ費やす必要などない。知恵の回らない者が不利益を被ったとしても、それこそ自己責任というものだろう。たかが背番号の記入ミスをなぜ没収試合にしなけれならないのか、という点こそが問題なのだ。些細な記入ミスを針小棒大に突っつき回すことは試合をやるより面白いことなのか、と私は問いたいのだ。

http://www.sanspo.com/tohoku/top/th200709/th2007090202.html

仙台六大学野球連盟の申し合わせ事項には、選手がメンバー表と異なる背番号で出場した場合、没収試合になるとしている。出場前に気づいて交代すれば、没収試合にはならない。だが、今回は対象選手が指名打者のため、出場前に気づいても公認野球規則6・10により交代できなかったため、最初の打席に立った時点で没収試合となった。

サンスポ東北版によれば、どうやら「申し合わせ事項」が元凶であるらしい。ならば、この「申し合わせ事項」を変えればよい。

高校野球特別規則

さて、日本高等学校野球連盟では次のような「高校野球特別規則」が定められている。

http://www.jhbf.or.jp/rule/specialrule/08.html

8.オーダー用紙の取り扱いについて
オーダー用紙の誤記に関する事例の取り扱いを次の通りとする。
(注)登録選手とは、当該大会に選手登録された選手をいう。
  オーダー用紙とは、当日ベンチ入りする選手すべてを記載したもの。
<ケース1>
試合前のオーダー用紙交換時点で大会本部の登録原簿照合により誤記に気付いた場合。
 (処置)
出場選手、控え選手を問わず、氏名、背番号の誤記を発見した場合、注意を与えて書き改めさせ、罰則は適用しない。登録原簿以外の選手が記載されていても同様の取り扱いとする。
<ケース2>
オーダー用紙交換終了後、試合開始までに誤記が判明した場合。
 (処置)
誤記に関する訂正は認められない。登録原簿通り記載された選手しか出場資格はないが、チーム自体の没収試合とはしない。
<ケース3>
試合中に誤記が判明した場合。
 (処置1)
登録選手間の背番号の付け間違いは、判明した時点で正しく改めさせ、罰則は適用しない。
 (処置2)
登録外選手が判明したときは、実際に試合に出場する前であれば、その選手の出場を差し止め、チーム自体の没収試合とはしない。(代打などの通告を本部で原簿照合して判明したときなど)
 (処置3)
登録外選手が試合に出場、これがプレイ後判明したときは、大会規定により試合中であれば没収試合とし、試合後であればそのチームの勝利を取り消し、相手チームに勝利を与える。

大学野球の場合、個々のリーグでこれに準じた内規を持っているのだろう。仙台六大学の場合には、それが「申し合わせ事項」とやらになるわけだ。東北工大の事例を「高校野球特別規則」に当てはめてみよう。今回は<ケース3>に該当する。おそらく背番号3は春のリーグ戦で引退した4年生選手だろうから、東北工大の「背番号3」は空き番号になっていたのだろう。

「登録選手間の背番号の付け間違い」なら、2人がユニフォームを交換すれば済む。だが、「43」の選手はいない。ユニフォームを交換できる相手がいない。だから(処置1)をとれず、(処置2)をとろうにも誰も指名打者ルールを十分に把握しておらず、交代できないと信じ込んでいたために(処置3)になったのだろう。

東北工大には背番号「43」の選手は阿部以外いないはずだ。メンバー表交換で背番号「43」だった阿部が、実際には背番号「3」をつけていたとしても、誰が迷惑するというのだろうか。たとえ試合開始後であっても、単純なミスなら試合出場を認めていいのではないか。「誤記に関する訂正は認められない」を杓子定規に適用することに何の利益があるのだろうか。

まあ、背番号「43」のうち「4」だけ手頃な布で縫い合わせて隠してしまえばよかったのに、と思わなくもないのだが…。

日本野球連盟の通達

ところで、社会人野球では、06年春に福岡で登録外選手の試合出場による没収試合が2試合あった。06年3月25日の春季大会1回戦、ドカベン香川監督率いる福岡美咲ブラッサムズは沖データ・コンピュータ教育学院戦の4回裏、出場登録していない元マリーンズの市場孝之を代打に送り、没収試合になっている。

また、5月9日の九州大会では、逆に沖DC学院が未登録選手を代打に送って没収試合になっている。これを受けて、06年8月24日付で日本野球連盟は次のような通達を出している。

http://www.jaba.or.jp/other_speed_tu_06824.htm (08/03/17現在、削除されています)

没収試合の取扱について
九州の大会で登録外の選手が試合に出場し、没収試合が適用されたケースが2件発生した。規則審判委員会において、登録外選手が試合に偶々出た場合、没収試合にすることが果たして適切かどうか問題提起があった。
かかる問題が起きないよう予防策としてまず各団体とも選手登録表を球審および控審判員が所持することを義務付けることとした。
一方このようなケースまで没収試合とするには無理があると考えられること、および没収試合の規則に該当しない限り没収試合は極力避けるのが望ましいことから、「登録外の選手が出場した場合の取り扱いについて」アマ規則委員会で内規として追加することを含め検討することとした。

この感覚が正常というものだ。『公認野球規則』の没収試合に関する規定を見るがいい。もともと「登録外選手の出場は没収試合になる」などという規定はないのだ。それは、アマの各団体が勝手につくっただけのことだ。

「連盟に競技者登録されているが、その試合の出場登録から漏れているケース」はおろか、「背番号の書き間違い」まで一律に「登録外選手」として扱い「没収試合」にするのが本当に適切だと言えるだろうか。そんな裁定を下すセンスが私にはまったく理解できない。

実は、先の「高校野球特別規則」は、07年2月13日付でアマ規則委が各団体宛に出した通達にほぼ丸ごと掲載されている。

1916年の「試合規則」

それでは、アマチュアの団体はなぜ登録外選手の試合出場を没収試合とする規定を定めているのだろうか。答えは容易に想像がつく。かつて学籍のない選手をいわば「助っ人」として試合に駆り出していた過去があるからだ。ましてや高校生の大会に大学生が出るのは、いかにもまずい。そんなことをやったら、没収試合でも仕方がないし、それ以上の処分も当然だ。

第2回全国中等学校野球優勝大会(今の高校野球選手権大会)の開幕当日、大阪朝日新聞に掲載された「試合規則」を見てほしい。

1916(大正5)年8月16日付 『大阪朝日新聞』

1、審判は最終とす
2、審判員は大阪朝日新聞社選択の任に当るものとす
3、参加チームは在校生徒に限る、若し之に違反せる事を発見する時は、直(ただち)に試合を中止し該チームを除外すると同時に、相手方に勝利を与ふ、又優勝せるチームに不正行為ありたると発見したる時は、其勝利を取消し其相手チームに優勝権を与ふ
4、試合番組は抽選を以て定む
5、組合せの都合上、最初一勝戦の際破れたる6チーム中より抽籤を以て2チームを選び之を一勝者として対戦せしめ二勝者を定む
6、出場選手は必ずユニフォーム着用の上試合開始予定時刻より少なくとも30分前に来場すべし
7、来場せるチームは必ず練習開始前各自ライン・アップを本部へ持参する事
8、選手席及攻守の選択はライン・アップを本部へ持参の際抽籤に依つて決す
9、プレーヤースベンチに着席する者は選手11名と監督教師1名に限る
10、試合用球は美満津及び山本の製作に係る荒目縫試合用2号ボールとし投手の要求に応じて何れかを使用せしむ
11、試合は凡(すべ)て朝日新聞社編野球年鑑記載最新野球規則によりて行ふものとす
12、審判員の宣告に対する抗議は、投手が次の投球を為す以前に提出せざるべからず、若し之を為さざる時は無効とす

▲旧字体は新字体に改め、漢数字は適宜算用数字に改めています。また、原文はルビが振られています。2カ所だけ()内に反映させました。8が「及」、10が「及び」になっているのは私の転記ミスではありません。「該チーム」もそのままです。なお、第1回大会の「試合規則」は1915年8月11日付『大阪朝日』に掲載されていますが、「在校生徒に限る」との文言はありません。

ちゃんと登録外選手に関する規定があるし、「相手方に勝利を与ふ」になっている。いわば90年前からの「負の遺産」なのだ。これをありがたく崇め奉ることはいいとしても、拡大解釈する必要があるだろうか? アマで背番号が定着するのは1950年代だ。背番号が違っていたとしても、登録した選手なら、出場を認めて差し支えないのではないか。

最近の没収試合

とくに大学野球では、この数年やけに没収試合が目につくようになった。

大学野球の没収試合(04年以降で私が把握したもの)
年月日 リーグ/大会 負けチーム 勝ちチーム 理由
04/05/08 関西学生 関西大 同志社大 登録外選手の試合出場
04/10/14 東京新1部 東京学芸大 杏林大 登録外選手の試合出場
05/09/22 阪神1部 関西外語大 天理大 スタメン指名打者の遅刻
05/09/18 仙台六大学 宮城教育大 東北工業大 登録外選手の試合出場
06/04/24 千葉県2部 帝京平成大 千葉大 指名打者違反
06/09/07 京滋1部 京都学園大 花園大 背番号の誤記(のちに再試合)
06/10/09 北東北入替戦 青森中央学院大 八戸工業大 登録外選手の試合出場
06/10/22 九州大学選手権 九州共立大 日本文理大 特別コーチの指導
07/04/07 北陸1部 富山国際大 北陸大 登録外選手の試合出場?
07/04/14 愛知4部 愛知学泉大 名古屋市立大
07/09/01 仙台六大学 東北工業大 仙台大 登録外選手の試合出場
07/09/15 千葉県2部 千葉商科大 千葉工業大 登録外選手の試合出場
07/09/22 北陸2部 金沢工業大 石川工業高専
07/09/29 北陸1部 北陸大 富山国際大 登録外選手の試合出場?
07/09/29 北陸2部 金沢大 福井大 登録外選手の試合出場?

「登録外選手の試合出場」は03年以前も同じような頻度であったはずだと私は思っている。すくなくともネットがなかった時代には、地方リーグの結果をその日のうちに知ることはできなかった。大規模図書館で地方紙をチェックするという習慣を持つごく一握りのファンだけが地方リーグの結果を知っていた。

地方リーグで没収試合があったからといって、いちいち全国紙の記事にはならない。ネットで速報されるからこそ、私の網にかかるようになったことは間違いない。同時に、「登録外選手の試合出場は没収試合」という認識が広まったことが、あきれた連鎖につながっているのではないだろうか。つまり、それ以前は没収試合とせず内々に処理されていたのではないかと思われる。

今回の仙台六大学のように詳細が報道されることは珍しい。原因がわかれば、対策も立てられるのだ。今回の場合は、「申し合わせ事項」そのものが厳しすぎる。交換したメンバー表に記載した背番号がそれほど絶対視されるなら、ベンチの壁から飛び出していた釘にユニフォームをひっかけて破いてしまった選手は出場できなくなるのではないか?

それでは、詳細がわかっている没収試合を検討してみよう。他人の身に起きたことは、いつか自分の身にも降りかかってくるかもしれないのだ。相手のチームで起こったことは、いずれ自分のチームにも訪れるかもしれない。沖データも東北工大も、没収試合の勝者となり、そして敗者となった。

スタメン指名打者が遅刻して没収試合になった阪神リーグの件を、もし東北工大が知っていたら、投手を打席に送れば無理に指名打者を出さなくてもいいことに気づいたかもしれないのだ。他人の失敗に学べば、自分が失敗しなくて済む(かもしれない)。

関西大(04年)

登録外選手の試合出場による没収試合ブーム?のさきがけとなったのは、04年春の関西学生リーグだった。名門リーグだけに、報道量は多かった。今でもWeb上に残っている。

http://www.nikkansports.com/ns/baseball/amateur/p-bb-tp5-040509-0005.html

 8日に滋賀・皇子山で行われた関西学生野球春季リーグの関大−同大1回戦で、関大がこの試合でベンチ入り登録されていない選手を出場させたため、リーグの申し合わせ事項により没収試合となり、9−0で同大の勝ちになった。リーグ戦での没収試合は、82年の新リーグ発足後初。
 関大は0−1の8回表1死一塁で、日浅衛内野手(2年=今治西)を代打(結果は三振)に出した。この時点で、控え審判が日浅の名前が25人のベンチ入り登録メンバーにないことに気づき、関大の攻撃終了後に球審に報告。責任審判の赤井淳二二塁塁審が関大ベンチに行き、高岡淳監督(39)に没収試合になることを告げた。
 高岡監督によると、この日の登録メンバーについては前日7日の練習終了後、自ら口頭でマネジャーに伝えたが、記入ミスで日浅の名前がないまま提出されたという。高岡監督は「言葉にしようがない。明日(9日の2回戦)に向けて気持ちを切り替えるといっても…」と沈痛な表情だった。
 同連盟の判断で、個人成績は登録外選手を出した8回表1死まで認められ、同大・染田賢作投手(4年=郡山)の完封結果も参考記録ながら残る。同大の吉川博敏監督(49)も「こんな経験は初めて」と話した。

ここで言う控え審判とは、予備(スペア)の審判のことではなく、提訴が認められないアマの試合で規則適用の誤りに関する紛争解決の権限を与えられたレフェリーとしての審判のことを指す。

ベンチは日浅を出場登録したと思っていたが、実際には登録されていなかったというわけだ。これはチーム側で気をつけてもらうしかない。試合ごとにベンチ入り登録するのだろうから、運営者サイドではチェックできないことだ。

プロ野球のようにベンチ内のホワイトボードにその日の登録選手の名前を書き込んでけば、選手が誰でも確認できるだろう。それよりも、監督がメンバー表を示しながら選手交代を告げる形にすれば未登録選手は出たくても出られない。

赤べこ(07年)

07年6月の社会人野球クラブ選手権東北予選では、岩手21赤べこ軍団が「没収」されている。

http://www.iwate-np.co.jp/sports/2007sports/m06/spo0706232.html

 第32回全日本クラブ野球選手権大会東北予選は22日、仙台市のフルキャストスタジアム宮城などで6試合を行い、2連覇を狙った本県第1代表の岩手21赤べこ軍団は、準々決勝で登録されていない選手を起用したため没収試合となり、昨年8強入りしている全国大会出場を逃した。
 岩手21赤べこ軍団は、4強に与えられる全日本クラブ選手権(9月・グッドウィルドーム)の出場権を懸け、郡山クラブと対戦。序盤から投打に圧倒し4回までに14−0とリード。しかし、5回に代打で出場した選手が大会登録メンバーに入っておらず、規定により没収試合のため0−9で負けとなった。第2回東日本クラブカップ(8月、札幌市)出場をかける敗者復活戦に回る。
 同選手は5月の県予選では選手登録されていたが、チームが東北予選前に誤って名簿から抹消したという。
 同チームは俳優の宇梶剛士さんが総監督を務める。監督の元プロ野球西武の羽生田忠克氏は「こちらのミス。全国大会を目標にやってきたので非常に残念。選手に申し訳ない」と落胆していた。

赤べこは代打に起用された選手をベンチ入り登録していたが、大会前に提出した出場選手登録に漏れていたということだろう。それなら、試合開始前に運営者側がチェックすれば「没収試合」は防げたはずだ。

07年2月13日付アマ規則委の通達は次のようなものだ。結局、赤べこのケースは主催者側がやるべきことを怠っただけのことだ。

http://www.jaba.or.jp/gaiyou/gijiroku/houkoku/2007/bossyujiai_0113.pdf

 没収試合は、規則3.18 [注一]にも記載のとおり、審判員がとるべき最後の手段であって安易に適用される性質のものではなく、大会主催者および当該チームが十分注意をすればかかる事態は避けられるはずです。
 ついては、没収試合の防止に向けて、大会主催者がとるべき行動ならびにアマチュア野球としていかなる場合に没収試合とするのか、当委員会の決定事項を下記しますので、各団体にて徹底のほどよろしくお願いします。
(1)大会主催者が試合前に実施すべき事項
 ○1 選手登録原簿(当該大会に登録された選手名簿)と、当日の試合にベンチ入りするメンバー表との照合を試合前に必ず実施すること
 ○2 メンバー表は、自チーム用、両チーム交換用、球審用、大会本部用、放送席用、公式記録員用、控審判用およびその他必要な部数を作成すること
 ○3 メンバー表には、スターティングメンバーだけでなく、当該試合にベンチ入りする登録選手はすべてフルネームで記入すること
 ○4 この決定事項は試合会場に常置し、トラブルがあった場合の対応に活用すること
(2)想定される事態
 ○1 登録原簿とメンバー表記載の選手名の違い(登録変更)
 ○2 選手名と背番号の不一致
 ○3 同姓の選手の識別が不明確(名前漏れ)
 ○4 メンバー表への守備位置のダブり記載
 ○5 登録外選手がベンチ入りまたは出場
 ○6 打順誤り(規則6.07 のとおり)
 ○7 本来退いたはずの選手(たとえば代打を出された)が再び出場してしまった
 上記○1○5および○7について対応を以下のとおりとする。
ケース1 試合前のメンバー表交換時点で大会本部の登録原簿照合により誤記に気付いた場合
(処置)出場選手、控選手を問わず、氏名、背番号の誤記を発見した場合、注意を与えて書き直させる。罰則は適用しない。登録原簿以外の選手が記載されていた場合も同様とする。また、守備位置のダブり記載や同姓で二人を区別する頭文字あるいは名前をつけないで記載したような場合も同様である。
ケース2 メンバー表交換終了後、試合開始までに誤記が判明した場合
(処置)誤記に関する訂正は認められない。登録原簿に記載された選手しか出場資格はない。チーム自体の没収試合とはしない。
ケース3 試合中に誤記が判明した場合
(処置1 )登録選手間の背番号の付け間違いは、判明した時点で正しく改めさせ、罰則は適用しない。
(処置2 )登録外選手が判明したときは、実際に試合に出場する前であれば、その選手の出場を差し止め、ベンチから退去させ、チーム自体の没収試合とはしない。(代打などの通告を本部で原簿照合して判明したときなど)
(処置3 )登録外選手が試合に出場、これがプレイ後判明したときは、大会規定により試合中であれば没収試合とし、試合後であればそのチームの勝利を取り消し、相手チームに勝利を与える。
以上のとおり、アマチュア野球では、前記(1)の手続きを励行するとともに、没収試合とするケースは、規則4.15 記載の場合に加え、
 (1)登録外選手(上記(2)の○5○7が該当)が試合に出場した場合
 (2)主催者または各団体が特に定めた場合
に原則限ることとしますので徹底のほどよろしくお願いいたします。没収試合は、規則3.18【注1】にも記載のとおり、審判員がとるべき最後の手段であって、安易に適用される性質のものではなく、大会主催者および当該チームが充分注意をすればかかる事態は避けられるはずです。

○1○2…は原文では円内数字(丸数字)です。機種(環境)依存文字ですので、当サイトではこのように処理しています。(1)の○1と○2は句点で終わっていますが、○3と○4に句点がないのは、私が忘れたのでなく原文にないからです。

誤って登録した(しなかった)赤べこにはもちろん非がある。だから、試合の勝敗という点では赤べこの負けでも仕方がないかもしれない。だが、観客に対して責任を負うのはチェックを怠った主催者側だ。おそらくこの試合は無料試合だろうが、有料試合でこれをやったら確実に「金返せ」の話になるだろう。

青森中央学院大(06年)

たとえば、06年夏の高校野球の決勝再試合で、「斎藤佑樹」と書くべきメンバー表に「斉頭祐毅」と書いてしまったとしよう。ベンチ入り登録されなかった(ことになる)ハンカチ王子が、初回表先頭打者に1球投げたら没収試合とするのだろうか。そういうことにしかならないはずだが、本当にそんなことができるのか。

さあ、いよいよ決勝再試合の開始です。球審の右手が上がってサイレンが鳴り響く中、斎藤投手が第1球を投げました。ストライク! おっと、ここでタイムです。駒大苫小牧のキャプテンが球審に駆け寄ってなにごとが話しています。あっ、球審が本部席に向かいました。 <略> どうやら、没収試合の裁定が下されたようです。それではみなさん、さようなら。

こんなバカバカしいことになりかねないわけだ。ちなみに、Googleでフレーズ検索すると、次のようになる(07/09/17現在)。

"斎藤佑樹" の検索結果 約 628,000 件
"斉藤佑樹" の検索結果  約 81,100 件
"斎藤祐樹" の検索結果  約 50,600 件
"斉藤祐樹" の検索結果  約 50,500 件

実際に、単なる名前の書き間違いを「架空選手の登録」扱いされた事例があるのだ。「私たちはアホです」というプラカードを掲げているようなものだろう。

http://hochi.yomiuri.co.jp/baseball/ama/news/20061010-OHT1T00054.htm (07/09/22現在、削除されています)

 北東北大学野球秋季リーグの1、2部入れ替え戦で、青森中央学院大が思わぬ珍事で1部昇格を逃した。
 先勝して迎えた第2戦も9回表まで8−6とリード。その裏、昇格まであと1イニングのところで八戸工大の反撃に遭い、エースの沼田郁弥(3年)を投入した。ところがメンバー表に記入されていたのは「沼上」。単なる書き間違いで、架空の選手が登録されていたのだ。誰もが認めるケアレスミスだが、1球投げたところで相手の抗議を受けた連盟が協議の結果、規則を順守。登録外選手出場のため没収試合となった。
 沼田は続く第3戦に先発。0−0の延長11回に力尽き、2失点で敗退。八戸工大の1部残留が決まった。

これを「規則を順守」などと言うのは、石部金吉鉄兜様だけだ。名前が1字違うだけで、マウンドに上がったのは沼田本人だ。沼田は学籍のない選手ではないのだし、連盟への登録もされているのだ。ただ、その日のメンバー表が「沼上」になっていただけだ。青森中央学院大に「沼上」もいるとは思えない。これも主催者側がチェックすれば気づくことだろう。

再発防止は簡単に思いつく。プロ野球で試合前に交換されるメンバー表は2種類ある。1つは、スタメン選手が記載されたもので、もちろん選手名は手書きになる。もう1つは、当日のベンチ入り選手を示すもので、支配下登録選手全員の名前と背番号が印刷された用紙に○印をつける形になっている。○をつけるだけだから、選手名を書き間違えることは絶対に起こらない。

おそらく、北東北の入れ替え戦では、高校野球のようにスタメン選手と控えのベンチ入り選手を1枚の用紙に記入して、試合前に交換していたのだろう。だから名前の記入ミスが起こるのだ。

こうしろ!

アホを繰り返さないために発展的な話をしよう。先のアマ規則委の通達では再発防止の役には立たないからだ。まず、大学野球のリーグ戦の場合だ。

●メンバー表交換は、連盟登録全選手記載のもの(A)とスタメン選手記載のもの(B)の2通を交換する。
●リーグ戦開幕前に背番号を付してAを連盟事務局に提出する。
●当日のベンチ入り選手はAの背番号欄に○印をつけて示す。
●当日のスタメンはBに手書きで記入する(同姓選手がいない限り、フルネームである必要はない)。
●試合開始前に控え審判がBのスタメン10人(または9人)がAに記載されている選手であることをチェックし、疑義のあるときは当該チームに確認し、誤りがあるときは訂正させる。
(●試合開始後の選手交代は監督と球審がメンバー表を確認しながらおこなう)

次に、トーナメント大会の場合だ。社会人野球や高校野球はこっちになる。

●メンバー表交換は、大会出場登録選手記載のもの(A)とスタメン選手記載のもの(B)の2通を交換する。
●大会前に背番号を付してAを連盟事務局に提出する。
●当日のベンチ入り選手はAの背番号欄に○印をつけて示す(通常、全員に○をつけることになる)。
●当日のスタメンはBに手書きで記入する(同姓選手がいない限り、フルネームである必要はない)。
●試合開始前に控え審判がBのスタメン10人(または9人)がAに記載されている選手であることをチェックし、疑義のあるときは当該チームに確認し、誤りがあるときは訂正させる。
(●試合開始後の選手交代は監督と球審がメンバー表を確認しながらおこなう)

要は、事前に提出したAをコピーしておけばいいわけで、これだけで名前や背番号の記入ミスは起こらなくなるのだ。通達は「注意をすればかかる事態は避けられる」と能天気に指摘しているが、注意してもミスは起こる。投げ損ないや打ち損じを含めればミスのない試合などない。

足りないのは注意ではない。知恵が足りないだけだ。ミスが起こらないようなシステムにしてしまえばいいのだ。それでも関西大のようなミスは起こり得るが、これは原点に戻るしかない。メンバー表を確認しながら交代通告をおこなえば、登録外選手は出られないのだ。時間は少々かかるかもしれないが、これほど没収試合が多発するなら、やむを得ないことだろう。

横浜金港クラブ(08年)

3月もまだ半ばだというのに、早々とやってくれたようだ。

http://www.mainichi.jp/area/kanagawa/archive/news/2008/03/15/20080315ddlk14050077000c.html

横浜金港クは四日市が無失点と好投。だが、3−0でリードして迎えた九回裏、交代して左翼の守備についた選手が試合当日の選手登録名簿に記入されていないことが発覚。大会本部が制止したが、すでに相模原クの先頭打者に初球が投じられ、死球を与えて一塁に進んでいた。本部は登録外選手を起用した状態でプレーが始まったと判断、没収試合とした。規則により、9−0で相模原クが勝利した。

『毎日新聞』神奈川版には「決勝は横浜金港クラブに野球規則違反があったため、没収試合で相模原クラブが勝ち」とも記されているが、『公認野球規則』には登録外選手の出場を没収試合とする規定はない。先に示したアマ規則委の通達でも「大会規定により没収試合」としか述べていない。そんな大会規定があるのかどうかは確認できないけれど…。

さて、どうやら横浜金港クラブのケースは、大会への出場登録はされていたが当日のベンチ入りメンバーに書き忘れてしまったようだ。アマ通達で言う試合前の照合をしたところで、こうしたケースには対応できない。

私はすでに「こうしろ!」を提示している。監督がメンバー表を示しながら交代通告すればよいのだ。本来はメンバー表を確認したあとで交代を告げに出ていくべきだろうが、それができないのだから、メンバー表を持って球審に示すように慣習化すればよい。

実は、私は登録外選手の投手交代が告げられて、相手チームから指摘があり、大会本部の指示を待つために試合が中断したというケースにめぐりあったことがある。その選手も大会への登録はされていたが、当該試合のメンバー表からは漏れてしまっていたようだ。

結局、その投手は登板せず、プレイがかけられる前だったことから没収試合にもならなかった。そして、指摘したチームは見事に逆転勝ちした。それは私が見た女子軟式の試合のなかでも、楽に5本の指に入るようなナイスゲームだった。

アマ通達による現行規定では、登録外選手が交代出場しようとしたとき、相手チームは交代後に投手が1球投げてから指摘すれば没収試合で自動的に勝ちになる。プレイ再開前に素早く(正直に)指摘すると、交代は認められず試合は続行される。気づいても(わざと)黙っていて、あとで指摘したほうが「お得」なのだ。アマ各団体がいつも強調する“フェア”の精神とやらは、その程度のものなのだろうか?


「神宮大会はこうしろ!」「ポストシーズンゲームはこうしろ!」に続くシリーズ?第3弾のつもりです。まあ、神宮大会はおおむね「こう」なりましたが…。

◆事実誤認、変換ミス、リンク切れ等にお気づきの際は、「3代目んだ」(没収試合)または「メールのページ」からご一報いただけると幸いです。通常、新しいページを作成したら「んだ」でお知らせすることにしていますが、このページは06年から作成を予告していました。すでに「んだ」(没収試合)のエントリーはかなりのボリュームになっています。必要と思われる部分を除いて重複を避けましたので、興味のある方はどうぞ。「3代目んだ」(没収試合の個人記録)もあります。

★07/09/22校正チェック済、ケなし、順OK
★08/03/19HTML文法チェック済(エラーなし)



検索リンクポリシールール|次へ:ソフトボールのルール(1)|作成順:内***