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勝ち投手 | 盗塁時のスタート | 守備側無関心

盗塁?時のスタート

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13/12/14更新

◆旧「こんなとき、どう記録しますか?(1)」のページに収めていた「盗塁1」と「盗塁4」を独立させました。盗塁を記録するか、暴投または捕逸あるいは失策を記録するかは、走者のスタートの時期が問題になります。


盗塁か暴投か

走者一塁で左打者。走者は投球時にはスタートしていなかったが、投球が大きく三塁側(右打席)方向に外れたのを見て二塁に走り出した。キャッチャーはかろうじて捕球したものの、派手に体勢を崩しており、山なりに近い送球しかできず二塁は悠々セーフだった。

00年夏の高校野球予選(県営大宮)で見た。ネット裏が混んでいたので、この試合では三塁側に回って見ていた。ちょうど投球と一塁走者が重なる位置関係であり、スタートの時期はいやでも目に入った。また、キャッチャーは投球を確捕したが、とてもまともに送球できる体勢ではなかった。

08年版 『公認野球規則』

10・07(a) 走者が投手の投球に先立って、次塁に向かってスタートを起こしていたときは、たとえその投球が暴投または捕逸となっても、暴投または捕逸と記録しないで、その走者には盗塁を記録する。
 盗塁を企てた走者が暴投、捕逸のために余分の塁を進むか、他の走者が盗塁行為によらないで進塁した場合には、盗塁を企てた走者に盗塁を記録するとともに、暴投または捕逸もあわせて記録する。
 【注1】 次の場合、暴投または捕逸があっても、走者が投球に先立って盗塁を企てていれば、その走者には盗塁が記録される。
 ○1 打者への四球目のとき、打者の四球によって次塁を与えられなかった走者が、次塁に進むかあるいはそれ以上に進塁した場合。
 ○2 打者の三振目のとき、打者または走者の進塁に対して、暴投または捕逸が記録された場合。ただし、二死後、走者一塁、一・二塁、一・二・三塁のときの各走者の進塁、および走者一・三塁のときの一塁走者の進塁に対しては、盗塁は記録されない。
 【注2】 打者が捕手またはその他の野手に妨害されたときに、走者が盗塁を企てていたので、7・04(d)が適用されて次塁への進塁が許された場合、その走者には盗塁を記録する。

▲08年改正により旧10.08が繰り上げられて10.07になりました。なお、07年規則の10.08(a)には【注1】として本盗の場合の例外規定がありまし(→「飯田」)が、08年規則ではこの旧注1が削除され、旧注2と旧注3がそれぞれ繰り上がっています。
▲円内数字(丸数字)は環境依存文字(機種依存文字)ですので、当サイトにおいては○1、○2…と表記しています。

このように走者のスタートの時期が問題になるわけだが、「投球に先立って」の「投球」とは、どの時点なのだろう。

【ア】 リリースの瞬間
【イ】 投球が捕手(ホームプレート)に到達したとき

標記プレイの一塁走者は、投球が外角高めに大きく外れて(ピッチドアウトではなく、単純な投げ損ない)、捕手が対応できないだろうと見越してスタートを切った。つまり、スタートの時期は【ア】より遅く、【イ】より早かった。【ア】と解するなら暴投、【イ】と解するなら盗塁になるだろう。

これが捕逸か盗塁かの問題なら、100%【イ】を基準にすることになるはずだ。走者は、後逸あるいはファンブルを見てからスタートするのだから、当然のことだ。

これに対して、暴投の場合は、投球がホームプレートに到達する以前の段階で、明らかに捕手が捕れそうにないと判断できることもある。このような場合の走者の進塁が投手の責任であることに疑いの余地はない。そう考えると、「盗塁」を記録することにはためらいがあるのだ。

私自身は、このとき「暴投」を記録したが、はて?と考え込んでしまったのは、この走者がもし三塁まで達したらどうするかということだった。標記プレイでは、キャッチャーのミットに投球はおさまり、不十分な体勢ながらも二塁に送球できた。

もし捕手が後逸していれば、一塁走者は三塁を陥れたはずだ。スタート(の判断)が早かった分だけ、その可能性は高くなる。その場合には、おそらく二塁進塁に「盗塁」、三塁進塁に「暴投」を記録することになるだろう。いささか一貫性に欠けるかもしれないけれど…。

他の塁への牽制球でスタート

二死一・三塁。右投手が一塁に牽制球を投げた。三塁走者はこの一塁牽制球を見てスタートした。牽制球は一塁走者の足に当たって、ベースの前に転がった。一塁手が本塁に送球したがセーフだった。

00年の大学選手権で見たプレイだ。私は、一・三塁でピッチャーまたはキャッチャーが一塁に牽制球を入れると三塁走者を見て、三塁に牽制球を投げると一塁走者を見るようにこころがけている(一・二塁や二・三塁、満塁のときは、どの塁に投げられても先行走者を見ることにしている)。

「ボールから目を離すな」は野球の“イロハのイ”だろう。プレイヤーにとっても、おそらくはスコアラーにとっても同じことだ。ボールを見ないという私の行為は明らかに原則を逸脱しているので、この「こころがけ」はおすすめできることではない。端的に言えば、これが私の趣味ということになる。

TV中継では与えられた画面しか見ることができない。スタンド観戦では何を見て何を見ないか選ぶ権利がある。この権利の行使は自己責任だ。肝心のプレイを見損なうリスクを犯してでも、別のところを見るという選択もあり得るのだ。

この場面で、私は一塁牽制のボールを追わずに三塁を見た。三塁走者のスタートを確認して、一塁に目を移した。こぼれたボールを一塁手が拾い上げたところだった。

走者の足に当たったことはあとで聞いた。私が直接見ていたわけではない。また、私が一塁に視線を移した間に、三塁走者は一度ゆるめたか立ち止まったかしたのかもしれない。私にも目は2つあるけれど、右目で一塁を見て左目で三塁走者を見るという器用なことは残念ながらできない。

野選?

このプレイに対して、私はいったん「野選」を記録した。守備側が一塁走者とのプレイを選択した結果、三塁走者の進塁(得点)がもたらされたのだというジャッジだ。『公認野球規則』には次のような規定もある。

08年版 『公認野球規則』

2・28 FIELDER'S CHOICE 「フィールダースチョイス」(野手選択)
 <略>
 (b)ある走者が、盗塁や失策によらないで、他の走者をアウトにしようとする野手の他の塁への送球を利して進塁した場合
 <略>
 これらの打者走者または走者の進塁を記録上の用語として野手選択による進塁という。

10・07では「…野選…によらないで…」とあり、こちらでは「盗塁や失策によらないで」だから、男が「医学上、女でないもの」、女は「医学上、男でないもの」と定義している国語辞典のようなものだ。

ちなみに、神宮のスコアボードには「E1」が出たようだ。私は見ていないが、3人の証言がある。翌日の新聞でも投手の失策が記録されている。なお、この3人とは、走者が(悪送球より)先にスタートしていたのなら「盗塁」ということで意見の一致をみた。

類似のケースとしては、一・三塁からの重盗が考えられる。高校野球以下でよく見られるような一塁走者が二盗を試みて、塁間でわざと転んで(立ち止まって)キャッチャーの送球を誘い、この間に三塁走者を迎え入れるというケースだ。

一塁走者がアウトにならなければ、この場合の三塁走者には「盗塁」が記録されるのが常だ。私もそうしてきたし、たぶんこれからもそうするだろう。ただ、この場合は、攻撃側の行為(一塁走者のスタート)が先んじているが、標記のケースは守備側の行為(一塁への牽制球)に乗じて、攻撃側が仕掛けている。

もっとも、通常の「盗塁」も、打者への投球に乗じて、次塁を奪う行為だから、どちらが先んじたかを気にする必要はないということになるのだろう。

本当の本盗

辻発彦『プロ野球 勝つための頭脳プレー』(青春出版社)には、辻がサウスポー・前田幸長の一塁牽制球の間に、三塁からの「ホームスチール」に成功した旨の記述がある(67ページ)。一般的には、やはり「盗塁」なのだろう。もちろん、悪送球になったのを見てスタートすれば「失策」になるはずだ。

そうすると、同じ「本盗」でも、単独のホームスチールと、ほかの走者の援護を受けたホームスチールとの2種類があり、記録上はその区別がつかないということになる。

結局、私の「野選」説は、単独ホームスチールのみを本当の意味での「本盗」だと強調したいがための方便ということになるのかもしれない。まあ、「安打」もクリーンヒットばかりではないのだから、「盗塁」にもいろいろな盗塁があっていいのだろう。

牽制球を投げるのを見てスタートすれば「盗塁」だろうが、牽制球が悪送球になるのを見越してスタートした場合は、冒頭に示した事例と同じだ。微妙な判断を迫られるケースがないとは言えない。

さて、宇佐美徹也氏の著作に一・三塁からの重盗についての次のような記述があるのを見つけた。

宇佐美徹也 『プロ野球データブック』 (講談社文庫、606ページ)

 この戦法、今は全くすたれてしまったが、一リーグ時代から二リーグ制当初にかけては大流行、シーズンを平均して、70〜80回は行われ、一つの名物となっていた。
  <略>
 ことに本塁上にクロスシーンを生む、この一、三塁の重盗プレーは、突っこむ三塁走者も、二塁へ送球してその返球を待つ捕手も、1点を取るか取られるかの危険な賭けにあえて挑戦するわけだが、結果はともかく、ファンはこのスリルにプロ野球ならではの興奮を禁じ得なかったに違いない。こうした冒険プレーがふんだんに見られた昔の野球が懐かしい。

別に“神様”にたてつこうという悪意はないし、一・三塁からの重盗がスリリングであることも承知している。しかしながら、たとえばジョージ・F・ウィル『野球術』(文芸春秋)には、この状況での重盗への対処法が記載されているのだ(「守備術編」192ページ)。カル・リプケン・ジュニアの「一・三塁の局面で三塁走者がホームインできるとしたら、それはまず守備側のミスが原因でしょうね」という言葉さえ載っている。

一・三塁からの重盗は、今でもアマチュア野球ではしばしば見られる。大学や高校だけでなく、リトルシニアや女子軟式ならもっと多い。プロはもちろん、社会人でもトップクラスのチーム同士の対戦になると、そう簡単には見られない。

守備面でのレベルアップが、このプレイをプロ野球からすたれさせたのであって、「プロ野球ならでは」という宇佐美氏の認識は、プロの選手に対してあまりにも失礼なのではないかと、恐れながらも愚考する次第だ。

▲私がこれまでに見た本盗の一覧を「殿堂」の「飯田」のページにまとめました。宇佐美氏が懐かしんでいるのは、単に一・三塁からの重盗のことではなく、一・三塁からの重盗プラス二盗に成功した(元)一塁走者の三盗というプレイのことではないかとも思われますが、『…データブック』にはその言及がありません。

いろいろな解釈?

盗塁特集の『ベースボールマガジン』誌には宇佐美氏の次のような記述もある。

宇佐美徹也 「記録で見る「本盗」物語」 (『ベースボールマガジン』97年秋季号)

 さすがに米大リーグでは本盗が頻繁に行なわれている。1シーズンでは1912年のヤンキースが245盗塁中18回の本盗に成功したのが記録。1試合では3回が一番多い。個人では球聖タイ・カップの50回が最高だが、本盗についての解釈がいろいろあることからその数は35個、46個と変遷を重ね、87年に今の数に落ち着いた(A表参照)。

A表には50個が記載されている。私としては「解釈がいろいろある」というその中身こそ知りたいところだが、アメリカにも私のような議論をする者がいるということなのかもしれない。

そして、とっくに引退しているタイ・カップの盗塁数が、35→46→50と増えていったということは、本盗を狭義に解釈しようとする者が“負けた”ということなのだろう。同書には次のような記述もある。

同上

日本のプロ野球で本盗を最初に決めたのは36年4月30日、甲子園球場の対大東京戦で阪急の中村一雄。走者一、三塁でのダブルスチールに成功したものだ。単独本盗の第1号は同じ阪急の西村正夫(のち阪急監督)で同年7月13日の東京セネタース戦。野口明投手が一塁へ牽制したちょっとした間隙を縫い本塁を奪った。(投)−(一)−(捕)とボールが回るこのケース、単独本盗の形としては意外と多い。

私が見た標記のケースもボールは1-3-2と送られた。再度、“神様”に異議を申し立てるようで申し訳ないが、私はこれを「単独本盗」とは呼びたくないと考えている。


◆事実誤認、リンク切れ、変換ミスなどにお気づきの際は、お手数ですが「3代目んだ」(本当の本盗)または「メールのページ」からご一報いただけると幸いです。

★08/05/31校正チェック済、ケなし、順OK
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