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死球と四球 | 併殺打≠併殺 | こんなとき(2)

併殺打≠併殺

08/06/09分割
13/12/14更新

◆「あまり野球に詳しくない方へ」のページに収めていた「併殺/併殺打」の項目(00/10/09「新聞はあてにならないことを示す極端な事例」として作成、05/07/24ページ削除に伴い「…詳しくない…」に移記)に、「こんなとき、どう記録しますか(2)」のページに収めていた「併殺1」(01/06/05追加)および「併殺2」(01/09/09追加)の項目を加えてリライトしました。


打撃記録と守備記録

「併殺打」と「併殺」はまぎらわしい。前者は打撃記録、後者は守備記録であり、必ずしも対になるものではない。

「併殺打」が記録され、「併殺」も記録されるケース

たとえば、一死一塁でサードゴロ、サードが二塁に送球して一塁走者をアウトにして、二塁から一塁への転送球で打者走者もアウトになった場合、打者に対しては「併殺打」が記録され、守備側には「併殺」が記録される(チームとして「併殺」1、個人としてはこのプレイに関与したサード、セカンド、ファーストに各1の「併殺」)。

なお、“打者が先にアウトになれば併殺打ではない”という考え方は誤りである。一死一塁でファーストゴロ、3−6−3の「併殺」の場合には、打者が走者より先にアウトになっているが、これは立派な「併殺打」だ。

「併殺打」は記録されないが、「併殺」が記録されるケース

これに対して、同じ一死一塁でセカンドライナー、一塁走者は飛び出してしまって塁に戻れず(リタッチを果たせず)アウトになった場合、打者には「併殺打」は記録されないが、守備側には「併殺」が記録される。

いわゆる“三振ゲッツー”の場合も同様だ。一死一塁でボールカウント2−1、次の投球を打者が空振りして、一塁走者が盗塁に失敗したというケースでは、打者に「併殺打」は記録されないが、守備側には「併殺」が記録されることになっている。

「併殺打」が記録されるのはゴロの場合だけだ。ライナーやフライを落球して、結果的に「併殺」が完成したとしても、打者には「併殺打」は記録されない。

「併殺打」は記録されるが、「併殺」は記録されないケース

一死一塁サードゴロで5−4−3とボールが渡り、一塁手がセカンドからの転送球を落球して打者がセーフになった場合には、一塁手に対して「失策」が、打者に対しては「併殺打」が記録される。守備側は現実にダブルプレイを完成できなかったので「併殺」は記録されない。次のような規定があるからだ。

08年版 『公認野球規則』

10・02(17)【注2】 打者が併殺打となるようなゴロを打ったとき、第1アウトが成立した後、第2アウトに対する送球を野手が捕え損じたためにその野手に失策が記録されたときのように、併殺が完成されなかった場合でも、その打者には併殺打を記録する。

このため、ごくまれに1イニング2「併殺打」ということもあるが、3アウトでチェンジになることから1イニング2「併殺」はあり得ない。

ありがちなミス

「併殺」は守備記録なので、1回表に「併殺」が成立すれば、そのときに守っていた後攻チームに「併殺」が記録されることになる。ところが、アマチュア野球を報じる新聞のボックススコアでは、攻撃チームの側にカウントされていることがよくある。

95/10/08(岩手県営) 高校秋季東北大会2回戦 2日目第1試合
学法石川高 000 625 010 =14 岩*−○渡*
光星学院高 240 401 000 =11 洗平竜−●真*−山*−児玉

この試合のボックススコアは、青森の地方紙である『東奥日報』と、福島のローカル紙である『福島民報』との間で、実に10カ所におよぶ食い違いがあった。規模の大きな大会では主催者側からプレス用にスコアのコピーが配布されるものだが、このときはそういう“サービス”はなかったものと思われる。

ボックススコアの派手な食い違い
両紙の相違点 東奥日報 福島民報
学法石川の併殺
光星学院の併殺
学法石川先発投手の奪三振数
学法石川2番手投手の奪三振数
学法石川2番手投手の与四死球
学法石川先発投手の失点
学法石川2番手投手の失点
光星学院先発投手の失点
光星学院2番手投手の失点
光星学院3番手投手の失点

この試合では、3回裏の光星学院高の攻撃でいわゆる「三振ゲッツー」、5回表の学法石川高の攻撃で4−6−3、7回裏の光星学院の攻撃で3−6−3のダブルプレイがあった。守備記録である「併殺」は、学法石川が「2」で、光星学院が「1」であるべきだ(「併殺打」は各1)。

おそらく『福島民報』の担当記者は、光星学院の攻撃中にダブルプレイが2度成立し、学法石川の攻撃中に1度成立したので、光星学院が「2」、学法石川を「1」としたものと思われる。この種の誤りは、93年から94年頃の『毎日新聞』都内版(主に社会人野球)でよく見かけた。他紙でも珍しいわけではない。

▲この試合で、光星学院の先発投手・洗平竜也(→東北福祉大→ドラゴンズ)は4回に6点を失い、5回先頭打者に四球を与えて降板しました。四球の走者は2番手投手が投げている間に生還しました。走者を出したのは洗平の責任ですから、洗平の失点は「7」になるはずです。
 ところが、『東奥日報』では洗平の失点が「6」になっています。同紙の担当記者は、「失点」とは誰が出した走者であるかを問わず、得点が入ったときに投げていた投手に記録されるという解釈をしていたものと思われます。→「表記規準」(失点)
 まあ、併殺打で打点がついていたり、押し出し四球で打点がついていなかったり、重盗失敗のときに盗塁が記録されていたり、この程度の誤りはアマチュア野球のボックススコアではよくあることです。主催新聞社と後援新聞社のボックススコアが違うこともありますし、ときには同じ新聞の東京版と大阪版で違っていることさえあります(すべて実話)。
 新聞記者さんは、たまたま野球の取材に来ているだけのことで、必ずしも野球(の記録)のスペシャリストではありません。

関連性とは?

さて、打撃記録としての「併殺打」は前述した例外的なケースを除いて比較的シンプルだ。だが、守備記録としての「併殺」には議論の余地があるのかもしれない。

一死一・二塁でサードゴロ。5−4−3と渡ったが、二塁封殺のみが成立して一塁はセーフだった(いわゆるゲッツー崩れ)。三塁に進んだ走者がベースを離れて三塁コーチと話し込んでいたところ、一塁手から返球を受けた投手が三塁に送球して、三塁走者はタッチアウトになった。どうやらタイムのかけ忘れであったらしい。

01年スポニチ大会で見た。ピッチャーはマウンド付近にいたが、まだ投球姿勢に入っていなかったので、私は、5−4−3−1−5の「併殺」を記録した。私は問題なく「併殺」だと思っていたが、ルールブックを読んでいるうちに、わからなくなった。例外規定である(当時の)10・12【注1】に該当するのかどうかだ。

08年版 『公認野球規則』

10・11 ボールが投手の手を離れてからボールデッドとなるまでか、あるいは、ボールが投手の手に戻って投手が次の投球姿勢に移るまでの間に、途中に失策またはミスプレイ(失策と記録されない)がなく、2人または3人のプレーヤーをアウトにした場合、このプレイ中に刺殺または補殺を記録した各野手には、ダブルプレイ、またはトリプルプレイに関与した旨が記録される。
 【原注】 ボールが投手の手に戻った後であっても、次の投球姿勢に移るまでに、アピールプレイによって先のアウトに引き続いてアウトが成立した場合も同様、ダブルプレイまたはトリプルプレイが成立したものとみなす。
 【注1】 定められた期間内に2つのアウトがあっても、双方のアウトに関連性がないときには、ダブルプレイとはしない。つまり、第1プレイの刺殺者が第2プレイの最初の補殺者とならない限り、ダブルプレイとはならない。トリプルプレイの場合も同様である。

▲この条項は07年まで10・12でした。08年から10・11に繰り上がり、同時に従来の【付記】が【原注】に改められています(内容は変わりません)。「投手が次の投球姿勢に移るまでの間」ですから、送りバント直後のいわゆる“隠し球”は(時間がかかっても)「併殺」が記録されることになります。また、打者の三振直後に捕手が離塁の大きい走者を投げる構えをしながら追い詰め、自分でタッチしたときも「併殺」です。

この場合には攻撃側に誤解があったにせよ、実際にはボールデッドになっておらず、投手は投球姿勢をとったわけでもないので、ダブルプレイの期間内であると判断した。「注」というのは、本文を理解しやすくするためにあるはずなのに、【注1】ではかえってわかりにくくなってしまう。

「関連性」とは何のことだろう。サードゴロによる一塁走者封殺の第1プレイと、一種のオーバーランとも言える第2プレイとの間には「関連性」があると言えばある、ないと言えばないような気になる。「つまり」以下が「関連性」の定義だとすれば、第1プレイの刺殺者である4は、第2プレイの最初の補殺者だ。「併殺」は成立する。

第1プレイ
┌─┐
補 刺
5−4−3−1−5
  補 補 補 刺
  └─────┘
   第2プレイ

▲「刺殺」や「補殺」などについては、「外野手守備成績」のページ中「守備記録」をご参照ください。

補殺が記録されないとき

「第1プレイの刺殺者が第2プレイの最初の補殺者とならない」「定められた期間内に2つのアウト」があるケースとは、どのような場合のことなのか、ちょっと想像しかねる。ひょっとすると、エラーが絡んだときのことを言っているのだろうか。ちなみに、補殺に関する条項は次のとおりだ。

08年版 『公認野球規則』

10・10 補殺(アシスト)の記録は、本条規定により、アウトに関与した野手に与えられる。
 (b) 次の場合には補殺を記録しない。
 (3) 野手の悪送球を利して、走者が次塁を奪おうと試み、続くプレイでアウトにされても、悪送球した野手には補殺は与えられない。
 あるプレイ中に、失策と記録されるかどうかに関係なく、ミスプレイがあり、それに続いてさらにプレイが行なわれても、そのミスプレイ後のプレイは新たなプレイとみなすべきで、ミスプレイをした野手は、改めて新たなプレイにたずさわらない限り、補殺の記録を得ることはできない。

▲10・10(b)(3)は07年まで10・11(d)でした。

標記ケースでは、守備側のミスプレイに乗じて走者が進塁を試みたわけではない。勝手に塁を離れただけだ。したがって、10・10(b)(3)には該当せず、4にも補殺が与えられるはずだ。4は「第2プレイの最初の補殺者」である。

のちに日比谷図書館で翌日付の『スポーツニッポン』を確認してみたが、やはり併殺が記録されているようだ。もっとも敗戦投手を間違っているようなボックススコアを信頼できるかどうかという問題はあるけれど…。

この試合は、9回表に4点差を逆転したチームが11対10で勝ちました。11点目の勝ち越しの走者は宮内でした。宮内は小野の代走であり、小野は小宮山が出した走者です(走者の入れ替わりはありません)。小宮山が敗戦投手のはずですが、なぜか『スポニチ』さんでは小宮山の前に投げた平野が敗戦投手になっていました。はい。

規則による刺殺

こんなケースもあった。

無死一塁でショートゴロ。6−6−3のゲッツーかと思われる打球だったが、6から3の送球が二塁に向かう一塁走者のヘルメットに当たり、二塁塁審が守備妨害を宣告した。

01年社会人日本選手権関東予選で見た。打球を処理したショートが自らセカンドベースに入って第1アウトが成立したのちに一塁に送球して、ボールは一塁走者のヘルメットに当たった。

二塁塁審はゲームを止めたが、一塁塁審は呼応せず、打者走者は一塁に残った。結局、4人の審判が集まった後に、打者走者に対してもアウトが宣告された。

打者に「併殺打」を記録することは、とくに問題はないだろうが、第2アウトが守備妨害によるものなので、守備記録としての「併殺」が成立するかどうか、ちょっと悩んだ。試合中に『公認野球規則』をめくってみて、次のような記述を見つけた。

08年版 『公認野球規則』

10・09 刺殺(プットアウト)の記録は、本条規定により、打者あるいは走者をアウトにした野手に与えられる。
 (c) 次の場合は、それぞれ規則による刺殺を記録する。(通常補殺は記録しないが、特殊の場合には、補殺も記録する
 (6) 走者が野手を妨害してアウトを宣告された場合――妨害された野手に刺殺を与える。
 ただし、野手が送球しようとしているときに妨害されれば、その送球を受けようとしていた野手に刺殺を与え、送球を妨げられた野手には補殺を与える。

▲この条項は07年まで10・10(b)(6)でした。なお、07年版では「補殺も記録する」の文言でした。

「野手が送球しようとしているとき」ではなく「野手の送球後」の妨害だったけれども、この但書きを類推解釈して対応することに何の不自然さも感じないので、第2アウトは遊撃手に補殺、一塁手に刺殺を与えて、守備側には「併殺」、打者には「併殺打」を記録した。


◆事実誤認、リンク切れ、変換ミスなどにお気づきの際は、お手数ですが「3代目んだ」(併殺打≠併殺)または「メールのページ」からご一報いただけると幸いです。

★08/06/09校正チェック済、ケなし、順OK
★08/06/09HTML文法チェック済(エラーなし)



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