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タイブレーク記録処理に異議あり!

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13/12/19更新

◆このページは、北京五輪で導入される「タイブレーク」について述べたものではありません。類似の制度は、社会人野球が「タイブレーク」を導入する以前から、女子軟式選手権の「サドンデス」(大会規定)、ソフトボールの「タイブレーカー」(公式ルール)、全日本軟式野球連盟の「特別延長戦」(連盟特別規則)などがありました。状況設定等は微妙に異なります。「一死満塁の攻防」のページで、これらを比較してあります。


社会人野球の「タイブレーク」

03年の都市対抗本大会では、次のような「タイブレーク」が採用されることになった。

●延長12回終了時に試合時間が4時間を超えていれば、13回から「タイブレーク」。
●延長12回終了時に試合時間が4時間未満なら、4時間経過までは普通に延長戦を継続し、4時間を超えた次のイニングから「タイブレーク」。
●「タイブレーク」は一死満塁で継続打順(前の回に8番で終了していれば、一塁走者が8番、二塁走者が7番、三塁走者が6番で9番打者から。代走は可)。
●決勝戦には「タイブレーク」は適用しない。

◆タイブレークの採用は大会規定に委ねられており、04年以降は採用される大会が拡大しています。なお、大会規定により「12回」や「4時間」は変化します。

私が従来主張してきた内容とおおむね同一だが、記録の扱いに不満がある。ソフトボールのルールをそのまま持ち込んだものと思われる。

●「タイブレーク」の3走者については、投手の自責点としない。
●「タイブレーク」になれば、完全試合とは認めない。
●「タイブレーク」になっても、ノーヒットノーランは認める。
●3走者の出塁の記録は認めない。
●3走者の盗塁、盗塁刺、得点、残塁等は記録する。
●3走者が絡んだ打点、併殺打などはすべて記録する。

ソフトボールのルールは野球のルールを反面教師にしていると見られる部分が少なくない。ソフトのほうがすぐれている部分もたしかにある(→「ボークのペナルティ」「ソフトボールのルール」)。だが、「タイブレーク」(ソフトの現行ルールでは「タイブレーカー」)の記録上の扱いに関しては、私の理解の範疇を超える。

私なら、通常の延長戦の記録と「タイブレーク」の記録は別個に考えたい。サッカーのPK戦でゴールを決めても、「得点」としてはカウントされないはずだ。通常の延長戦が終了した時点でそのゲームはいわば「時間切れ引き分け」であり、抽選に代わるものとして「タイブレーク」があるのではないだろうか。

その記録を残すのは当然としても、通算して考える必要などない。「タイブレーク」でホームランが出ても、それは参考記録でよい。それに投球イニングについての定めがない。一死満塁を2者連続三振で切り抜けたら、2/3なのか? それとも1イニングなのか? まあ、常識的には前者だろうが…。

「投球イニングについての定めがな」かったのは、発表当時(03年6月)の話です。その後、2/3扱いが明記されています(頁末リンク参照)。他競技に学ぶのは大切なことでしょうが、それを無批判に持ち込むのは芸のない話です。まあ、芸が必要だとは思っておられないのでしょう。

極端なケースを想定してみよう。「タイブレーク」表の攻撃が無得点で、その裏から登板した投手が最初の打者にホームランを打たれたとする。この場合、「打者1、失点4」という従来なら絶対にあり得ない記録が残ることになる。こんな不細工な記録は願い下げだ。

また、「タイブレーク」の得点は通常の延長戦の得点と合算するものと思われるが、これも許しがたい話だ。確実に言えることは、ボックススコアが読めなくなるということだ。3走者の得点や残塁を記録すると、『公認野球規則』に定められた次の検算法も使えなくなる。

08年版 『公認野球規則』

10・03(c) ボックススコアの検算
 各チームの打数、四死球、犠牲バントおよび犠牲フライ、妨害(インターフェア)および走塁妨害(オブストラクション)による出塁数の合計と、そのチームの得点、残塁および相手チーム刺殺(プットアウト)の合計とが、ともに、そのチームの打者数と等しいかどうかを確かめ、その結果、それが一致しておれば各数字が正しいという証明になる。

▲06年版まで「及び」でしたが、07年版では「および」になっています。

異議あり!

そんなわけで、私は日本野球連盟に対して次のようなメールを送った。

送信日時=03/06/20 07:29 件名=「タイブレーク」について/(意見です)

ご担当者殿

「タイブレーク」採用とのことですが、私は従来よりWeb上においてこれを「ベターな制度」と主張しており、ソフトの無死二塁や軟式の無死満塁より「一死満塁が妥当」とも記述しております。
<URL略>
今回の改正内規おける6(1)項に関しては賛意を表するものですが、(2)項につき、どの程度の吟味がなされたのか疑問を感じます。

拝見する限り、ソフトボールのタイブレーカー(00年までタイブレーク、01年規則改正によりタイブレーカー)における記録法をそのまま準用したように思われます。

ソフトボールの規則は、タイブレーカーがあることを前提にして、ルール全体が成立しています。ご存知のとおり、ソフトと野球では、ルールが微妙に異なります。大きな相違点は再出場規定や指名選手(指名打者)ですが、細かい点では、出塁率の算出法、走者が打球に触れたときの記録なども異なるのです。あちらはあちらで整合性のあるルール作りのために、毎年のようにオフィシャルルール本体を改正しています。いわば、成熟の途上にあります。

『公認野球規則』にも「アマチュア内規」にも存在しない「タイブレーク」を持ち込んだわけですから、ソフトの記録法を準用した改正内規(2)のままでは齟齬が生じる点もあると私には思われるのです。

記録上の扱いについては、早急に最終決定する必要はないわけですから、プロ・アマを問わず、より記録に詳しい方を交えて、本大会までにさらに議論を重ねていただけるようお願いするものです。

「タイブレーク」の硬式野球公式戦での導入はおそらく初めてでしょう。これは、いずれ高校・大学にも波及する可能性があります。貴連盟の改正内規が前例になってしまう危険があるのです。そういう意味での責任は重いはずです。逆に言えば、変に先走るとハシゴを外されて赤っ恥をかくことにもなりかねません。まあ、熟慮の結果であれば、それはそれで結構なんですが…。

以上、貴連盟とは何の関わりもない私個人の意見に過ぎません。とくに返信を求めるものではありませんので、あしからず。

<署名略>

▲たぶん部外者からの反応としては、もっとも早かったのではないかと思われます。まあ、それに免じて「従来より」という重言は見逃してください…。

任意打順か継続打順か

「タイブレーク」には、継続打順と任意打順とがある。私は女子軟式で任意打順を、ソフトボールでは継続打順を見たことがある。都市対抗で採用されるのは継続打順だが、見る側の立場としては、任意打順のほうが面白い。肝心要の場面をいったい誰に託すのかという楽しみがあるからだ。

「タイブレーク」に関しては、将来、高校や大学においても採用される可能性がある(あくまでも可能性の問題)。その場合、すくなくとも高野連が任意打順を選ぶとは思えない。だから、アマ共通のルールとして定着させる可能性を探ろうとするなら、継続打順が「正解」なのかもしれない。

任意打順の場合、「通常の延長戦」と「タイブレーク」との間には、いささかの距離感がある。これに対して、継続打順では、「通常の延長戦」の続きとして「タイブレーク」がある。任意打順における延長12回の次は「タイブレーク」1イニング目だろうが、継続打順における延長12回の次は多少毛色の変わった延長13回ということになるだろうか。

そのように考えると、任意打順の「タイブレーク」は「抽選」の代用だが、継続打順の「タイブレーク」は「通常の延長戦」の枠の中にあるという考え方もできるのかもしれない。よって、記録の面でも、合算しようということなのだろう。

ということは、延長12回0対0の試合が4時間を経過しており、延長13回から「タイブレーク」に入って、3対2で決着すれば、通常どおりに得点は3対2、「タイブレーク」中に出たホームランも大会通算本塁打にカウントするのだろうし、「タイブレーク」中に全員安打が成立すれば、それも有効ということにしかならない。

継続打順を選択した時点で、話は終わっているのかもしれない。それが幅広く受け入れられるかどうかは別の問題だろうし、あとでハシゴを外されても受容するしかないだろう。03年6月20日付『日刊スポーツ』(東京)に、日本学生野球協会・長船常務理事の次のようなコメントが掲載されていた。

野球のルールを無視した改悪だ。公式記録として残るのも不可解。

まあ、社会人側と学生側の間に温度差があるのは承知しているけれども、ここまで石頭では救いようがない。私は、勝敗決着(次回戦進出チーム決定)方法としての「タイブレーク」導入には理解を示しているつもりだ。ただし、記録処理には同意できない。学生野球サイドの全面否定とはまったく立場が違う。

テニスとの相違

ルール改正はどの競技でもつきものだ。卓球は21ポイント先取制から11ポイント先取制に変わった。バスケのショットクロックも30秒から24秒になっている。このようなルール改正は、青い柔道着がそうであるように、おおむねTV放映の兼ね合いによるものだ。テニスに「タイブレーク」が導入されたのは、1970年前後と思われる。

試合時間がある程度読めなければTV放映には向かない。生中継しにくくなる。「タイブレーク」の導入は、単に試合時間を短縮しただけではない。テニスは基本的にトーナメントであることから、やはり長時間試合を戦った選手は次の試合では不利になるだろう。「タイブレーク」はこの問題を解消する効果もあった。

『エースをねらえ!』に描かれる「タイブレーク」は5ポイント先取制だった。ゲームカウントが6オールになったときはデュースとせず、第13ゲームで決着をつけるというものだ。この際の第13ゲームは4対4になってもデュースとならず、次の9ポイント目で必ず決着することから「9ポイントタイブレーク」制と呼ばれているようだ。

現在では、7ポイント先取制の「12ポイントタイブレーク」制がルール化されているようだ。タイブレークの第13ゲームが6対6となった場合はデュースとして、2ポイント差がつくまで続けられる。あっちが「9ポイント…」なら、こっちは「13ポイント…」だろうし、こっちが「12ポイント…」なら、あっちは「8ポイント…」ではないかと思うが、よその競技のことはどうでもいい。

さて、社会人野球のおける「タイブレーク」はソフトボールの「タイブレーカー」の猿真似だ。浅知恵と言ってもいい。「無死二塁」を「一死満塁」に置き換えただけで、記録に関しては、そっくりそのまま持ち込んでいる。「熟慮」したとは思えない。ちなみに、女子ソフトの日本リーグはスポニチが後援している。

テニスの「タイブレーク」とソフト(あるいは社会人野球)の「タイブレーク」は同じ性質のものだろうか? テニスにおける「タイブレーク」は、試合が必要以上に長引かないように、“ここでおしまい”の制限を加えただけのことだ。要するに、テニスの「タイブレーク」を野球やソフトに当てはめるなら、延長18回なり延長15回なりで打ち切ることに等しい。

これに対して、ソフトや社会人野球の「タイブレーク」は、得点しやすい状況をあらかじめ設定することで、短縮をはかろうとしている。テニスで言えば、シングルスなのにダブルスコートで試合をやるようなものだろう。同じ名称が使われており、目的(効果)も同じだが、テニスとソフトの「タイブレーク」はその性質において異なるものなのだ。

ソフトや社会人野球における「タイブレーク」は得点しやすい状況を設定するという点で、サッカーのPK戦と同じだ。だから、得点を通算してはならないのだ。もともとソフトが道を誤っただけのことだ。その誤った道を、後からホイホイついていったのが日本野球連盟ということになる。私はちゃんと忠告した。わざわざ朝の7時にメールを送っている。

規則によって状況を設定してしまうという点では、一死満塁で始めることと、ボールカウント2−3で始めることは、何の変わりもない。すくなくとも私は、1球だけで三振や四球を記録することにはためらいがある。そこまでやれば合算はできないだろう。アホはベンチにいるとは限らない。

(たぶん)硬式野球日本最長の延長戦

ところで、社会人野球では1959(昭和34)年京都大会で延長29回という試合がある。

59/05/02(西京極) 第13回全国選抜都市対抗野球京都大会1回戦 初日第1試合 試合時間 :6時間14分
日本新薬 100 000 000 000 000 000 000 000 000 01 =2 山城
倉敷レイヨン 001 000 000 000 000 000 000 000 000 00 =1 前川−栗本

翌日付『毎日新聞』には、「日本球界はじまって以来の延長新記録」とある。どこかに何かが埋もれている可能性もなくはないだろうが、硬式野球では今でも日本最長の延長戦であると思われる。

▲この試合のボックススコアは、03年版『日本野球連盟報』の「長い試合 ア・ラカルト」のページに掲載されているそうです。

社会人野球は02年から木製バットに戻った。このため、金属バット時代には考えられなかった延長戦が相次いでいる。02年は、静岡大会準決勝の一光対大阪ガス戦、岡山大会準決勝の日本IBM野洲対三菱重工広島戦が、それぞれ延長20回だった。03年スポニチ大会でも延長19回があった。

この対策として、社会人野球では「タイブレーク」の導入に踏み切ったわけだ。

都市対抗最長延長戦

都市対抗の最長延長戦は次の試合だ。

62/07/30(後楽園) 第33回都市対抗野球大会1回戦 3日目第3試合 試合時間 :5時間27分
電電近畿 000 000 000 000 000 000 000 0  =0 ●永易
ニッポンビール 000 000 000 000 000 000 000 1x =1 小川−五代−○角谷

8回までニッポンビールを無安打に抑えていた永易将之(のちに東映フライヤーズ、西鉄ライオンズ)は、延長17回裏、先頭打者に三塁打を浴びて、電電近畿は満塁策を選んだそうだ。無死満塁で迎えるバッターは電電東京から補強された太田誠(のちに駒大監督)。太田は浅いレフトフライに倒れて、続くバッターもスクイズ失敗(併殺)でニッポンビールはサヨナラのチャンスを逃した。

22回裏一死後、永易は270球目を外野スタンドに運ばれた。それは永易が打たれた6本目のヒットだった(四死球は11)。サヨナラアーチを打ったのは太田だ。


外部リンクです。
財団法人日本野球連盟
 タイブレーク規定は、「日本野球連盟内規」の「6」です。「タイブレーク適用時のボックススコア記入要領」もあります。03年都市対抗では適用事例はありませんでしたが、04年からタイブレーク規定が採用される大会が増え、同年4月の長野大会が初適用となりました(伏木海陸運送対フェデックス)。繰り返しますが、私はこれを不細工な記録だと考えています。(P未通知、03/06/20設定、04/10/24追加設定)
私を野球に連れてって!プロ野球考古学
 日本のプロ野球の最長延長戦は28回です。大リーグは25回、マイナーでは33回もあるそうです。日本新薬対倉敷レイヨン戦を含めて、「番外編〜延長戦あれこれ」のページをどうぞ。(03/03/16通知済)

◆このページは旧「延長規定とタイブレーク」から、社会人野球関係の項目を分割したものです。私は「タイブレーク」の導入に反対しているのではありません。記録処理が納得できないと言っているだけです。「タイブレーカー」が多い女子ソフトボールの日本リーグの投手成績は、野球の感覚では推し量ることができません。私はこれを体験済みですから反対しているのです。→「右投げ左打ちの世界」

◆1967年の都市対抗準決勝は3日がかりでした(→「1967年日本楽器」)。また、大学野球ではトーナメント準決勝が延長20回以上になり、勝ったチームが同日の決勝に臨んだケースが複数あります(→「元気があれば、何でもできる?」)。準決勝の場合、「サスペンデッドゲーム」にしたところで問題の解決にはなりませんし、再試合は最悪です(→「再試合かサスペンデッドか」)。「タイブレーク」自体は否定されるべきことではありません。

◆事実誤認、変換ミス、数値の誤り、リンク切れ等にお気づきの際は、お手数ですが「3代目んだ」(タイブレーク)または「メールのページ」からご一報いただけると幸いです。

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