宝運丸の関空連絡橋衝突

最大瞬間風速の2018年アメダス最大値は、9月4日13時38分に関空島で観測された58.1m/sです。ジェット燃料輸送船「宝雲丸」が走錨の末、関西空港連絡橋に衝突したのもほぼ同時刻です。

2018年台風21号は、9月4日火曜日の正午頃に阿南市付近に上陸、淡路島を経て、14時頃に神戸に再上陸し若狭湾へ抜けました。ほぼ進路予報どおりです。上陸時の中心気圧950hPaは1993年台風15号以来の25年ぶりでした。

JR西日本は3日正午前に4日午前10時をメドにした計画運休をリリースし、京阪神の主要な商業施設も3日のうちに4日の終日休業を発表していました。公立学校の休校やUSJの休業も前日のうちに決まっていました。

出勤したところで帰りの足は確保されていません。不要不急の外出を控えるように自宅待機とした一般企業も多かったわけです。大阪都心部の4日の昼間人口は1週間前の6割減だったとも報道されています(末尾外部リンク)。

220万戸にも及ぶ停電被害にくらべて、人的被害が死者13名にとどまったのは、強い警戒感の帰結だったのかもしれません。車を立体駐車場に預けたり、ベランダのものはすべて仕舞い込んだという話も聞いています。

さて、関空島の9月3日の最大瞬間風速は9.3m/sです。9月4日当日は朝7時50分まで5.1m/sが最大瞬間風速です。とりわけ未明の3時10分から4時10分までの時間帯は1.5m/sしかありません。

午前9時台にようやく最大瞬間風速が10m/sを超えますが、これは関空島では平常値の範囲内です。11時20分に初めて最大瞬間風速が20m/sに達し、12時40分に30m/sを超えています。足の早い台風でした。

13時20分以降の10分ごとの最大瞬間風速は、40.1m/s、52.5m/s、58.1m/s、57.1m/sと推移しています。午前中は主に東北東の風でしたが、台風が淡路島を通過し関空島に最接近すると風向きが変わります。

13時30分から14時にかけては南南西の風です。風向きの変化で横風を受けたのが走錨の出発点なのかもしれません。宝運丸は3日夜にジェット燃料を降ろして、4日は高石の製油所で積み込みの予定だったそうです。

高石は堺市浜寺地区の南に隣接する小さな市で、市域の約半分を占める埋立地にはガスタンクが林立しています。台風の日にジェット燃料の積み込みという屋外作業ができるはずがないことは想定できます。

宝運丸を所有する会社の社長は、「台風を想定した、できうる限りの対応をしていた」(末尾外部リンク)と主張しています。損害賠償の可能性があり海難審判を控えている当事者ですから、ある意味では当然の発言です。

船員の立場からこの主張を擁護する意見もありますが、私には違和感を拭えない部分が残ります。台風21号の最大瞬間風速は、神戸で41.8m/s、明石で31.6m/s、姫路で26.8m/s、小豆島の内海で20.8m/sです。

台風21号は早くから「今年最強」とアナウンスされていました。時速15ノットとしても1時間少々で明石海峡を抜けて播磨灘に出ることが可能です。危険が迫る大阪湾を脱出して姫路沖や小豆島まで退避する余裕は十分にありました。

瀬戸大橋でもトラックは横転していますので、播磨灘なら安全だったとは言えませんが、大阪湾よりはるかに危険度は少なかったわけです。並の台風であれば宝運丸の空港付近での錨泊は「最善」だったのかもしれません。

台風21号が並の台風でないことは最初からわかっていました。想定外をも想定すべきでした。暴風域から出ないまでも、危険半円を避けるという選択肢はあってもよかったのではないかと思われます。

西宮市の鳴尾川河口付近の動画です。流されているのは釣り船のようです。漂流物が堆積しているスロープの先が船着き場であろうと思われます。

【外部リンク】
NETIB-NEWS>【社長インタビュー】台風21号で関空連絡橋に激突した「宝運丸」船主~「閉じ込めの原因になった」と謝罪(前)
ライ麦畑で倒れ伏す>関空連絡橋に衝突した「宝運丸」船主、清水 満雄氏の弁明は船員から見れば妥当なものだ
気象庁>過去の気象データ検索>関空島 2018年9月4日(10分ごとの値)
ウェザーニューズ>9月4日、近畿地方に暴風や高潮をもたらした台風21号について
日本経済新聞>台風21号直撃時 大阪都心の昼間人口6割減

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