ウクライナの人口減少、原因は紛争か原発事故か

英語版Wikipediaに各国の年ごとの人口が掲載されていましたので、ウクライナとその隣国であるベラルーシ、ポーランド、ルーマニア、モルドバ(+トランスニストリア)、それにリトアニアの自然増減と社会増減をグラフ化してみました。

1981年以降を対象としています。自然増減の数値が記載されていただけで社会増減の数値はありませんので、前年人口との差から社会増減を求めています。このため、社会増減については本当の社会増減なのか、統計上の処理の問題なのか吟味する必要があります。

ウクライナ

ウクライナの人口増減

チェルノブイリ(チョルノービリ)原発事故は1986年5月です。ウクライナの合計特殊出生率が「2」を切ったのは1989年で、人口が自然減に転じたのは原発事故から5年後の1991年からです。2001年の合計特殊出生率は「1.08」まで下がっています。

社会減は2015年が顕著ですが、これはクリミアが統計から除かれたものと思われます。マイダン革命とクリミアのロシア併合は2014年です。また、すでに2021年の段階で30万人近くの社会減が生じています。

ベラルーシ

ベラルーシの人口増減

原発事故は異常値に気づいたスウェーデンがソ連に問い合わせて発覚しました。南東の風だったことからチェルノブイリが疑われたわけです。ホットスポットは北西側にあり、汚染はウクライナよりベラルーシのほうが深刻だったとされています。

ベラルーシの合計特殊出生率が「2」を切ったのは1990年、人口が自然減となるのは事故から7年目の1993年です。ベラルーシの独立宣言は1990年で、ソ連崩壊が1991年です(独立承認も1991年)。中東からの難民を受け入れているのかどうかはわかりません。

なお、私はベラルーシのコロナ統計には「テキトー疑惑」を感じています。他国にくらべて変動が少ない丸いグラフだからです。もちろん、だからといって人口統計もそうだとは言えません。

リトアニア

リトアニアの人口増減

ベラルーシの北東にあるのがリトアニアです。リトアニアの合計特殊出生率は1992年以降「2」を切っています。人口が自然減に転じるのは1994年です。2021年は自然減を社会増で補っています。リトアニアは2004年にNATOとEUに加盟しています。

ポーランド

ポーランドの合計特殊出生率が「2」を切ったのは1992年で、人口が自然減に転じたのが2002年です。最近は2年連続で10万人以上の自然減で、死亡率も上がっていますが、何に起因するのかはわかりません。東欧一帯はコロナの死亡率が高い地域でもあります。

2001年は40万人の社会減、2010年には30万人の社会増です。この理由はわかりませんが、どこまでカウントするかという統計上の問題ではないかと思われます。「GLOBAL NOTE」のデータでは、両年ともに上のグラフのような極端な変動はありません。

ポーランドのEU加盟は2004年、NATO加盟は1999年です。

ルーマニア

ルーマニアの人口増減

ルーマニアのNATO加盟は2004年、EU加盟が2007年です。ルーマニアでは1990年に合計特殊出生率が「2」を切り、1992年に人口が自然減に転じています。

グラフ化した英語版Wikiの数値では1992年、2002年と2008年前後に社会減がありますが、「GLOBAL NOTE」のデータではこれほどの減少になっていません。たとえば1年限定の滞在者をカウントするかどうかという統計上の問題ではないかと思われます。

モルドバ、トランスニストリア

モルドバは1991年に独立しますが、ウクライナに接するドニエストル川東岸地域が「トランスニストリア(沿ドニエストル共和国)」としてモルドバからの独立を宣言し、交戦が始まります。民族的にはモルドバがルーマニア系、トランスニストリアはロシア・ウクライナ系です。

ロシア、モルドバ、トランスニストリアの3者間で停戦が成立し、トランスニストリアには今もロシア軍が駐留しています。トランスニストリアを承認している国連加盟国はありません(ロシアも未承認)ので、国際的にはモルドバの一部として扱われ、地図には載りません。

モルドバ政府の実効支配は及ばす、モルドバ通貨もトランスニストリアでは使えません。Wiki英語版の人口統計も1998年以降は別建てになっています。

モルドバの人口増減(-1999)

合計特殊出生率は1994年に「2」を切り、1998年から人口の自然減に転じています。

モルドバの人口増減(1998-2020)

モルドバ側では2014年に70万人の社会減があります。本当に70万人が転出したとすれば、行き先はルーマニアが多くなるはずですが、ルーマニアの人口は増えていませんので、統計処理上の数値変動と思われます。自然増はありません。

トランスニストリアの人口増減

トランスニストリアでは2004年に7万人の社会減が生じています。2004年はウクライナのオレンジ革命です。ウクライナに戻った可能性はありそうですが、2004年の人口は55万人です。ウクライナ系住民は3割とされていますので、その3分の1に相当します。

2015年にも2万6000人の社会減が生じています。2014年がマイダン革命ですので、流出したのかもしれませんが、やはり統計処理上の数値変動ではないかと思われます。

ロシア軍は「赤い森」に塹壕を掘らせるという人体実験を行ったようです。東欧の人口減少やコロナ死亡率の高さに原発事故が影響しているかどうかは慎重に判断されるべきですが、せっかく自爆的な実験に挑んで頂いたわけですから、その後の健康状態を継続的にチェックしてほしいものだと思う次第です。

【外部リンク】
■英語版Wikipedia>Demographics of Ukraine
■英語版Wikipedia>Demographics of Belarus
■英語版Wikipedia>Demographics of Lithuania
■英語版Wikipedia>Demographics of Poland
■英語版Wikipedia>Demographics of Romania
■英語版Wikipedia>Demographics of Moldova

生のデータは固定ページ(↓)に掲げました。

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