どちらが勝っても混乱は不可避の兵庫県知事選挙

告発文書の7項目

3/12付「齋藤元彦兵庫県知事の違法行為等について」と題する告発文書において、亡くなった元県民局長が指摘したのは次の7項目です。
(1)五百旗頭先生ご逝去
(2)知事選挙に際しての違法行為
(3)選挙投票依頼行脚
(4)贈答品の山
(5)政治資金パーティ関係
(6)優勝パレード
(7)ハラスメント

(4)と(7)については、これまで百条委員会で調査されましたが決定的な事案が出ていません。(7)は20mの件などは確認されており、百条委の職員アンケートではパワハラ目撃・体験が全体の2.1%に当たる140人、目撃・体験者から聞いたが800人です。

(1)については、もともと違法性が問われる話ではありません。百条委員会に提出された「陳述書」でも、局長は「道義的責任があるので取り上げた」としています。

陳述書
兵庫県>第3回文書問題調査特別委員会陳述書(全体の7ページ目)

70代半ばの副理事長2人の解任を80歳の理事長に通告しているだけです。電話で済ませているのではなく、わざわざ副知事を訪問させているわけで礼儀を欠いているとも思えません。

残る4項目がもともとの本線です。
(2)の選挙公約作成は井戸氏や金沢氏にも波及しかねない話でスルーされるに決まっています。
(3)はグレーゾーン案件であり、都知事メッセージ付き防災ハンドブックのようなものです。
(5)も証言は出てこないだろうと思われます。

当初の告発文書でもっとも有力視されていた(6)については、先月の総選挙直前に秘密会として開かれた百条委員会で但陽信用金庫の理事長と片山前副知事がともは否定したということです。詳細が公表されるのは知事選後です。

誰が勝ってもカオス

陳述書
兵庫県>第3回文書問題調査特別委員会陳述書(全体の13~14ページ目)

元局長の陳述書は、誰から聞いたのか「思い出せない」の一点張りです。本当に思い出せないのではなく、情報提供者に累が及ばないように庇っているのか、最初からフィクションなので語れないかのどちらかだろうと思われます。

私は当初は(2)(3)(5)(6)に蓋をするために(4)と(7)で知事を辞めさせようとしているのではないかと疑っていましたが、単純に維新を叩いて与党に復帰したい勢力が企図したもののようです。今後も決定的なものは出てきそうにありません。

もし稲村氏が当選して、百条委も第三者委も「クロでないものはシロ」という結論になった場合、斎藤氏に対する全会一致の不信任は何だったのかということになってしまいます。正統性が問われかねません。

立憲系の県民連合と公明だけでは少数与党です。維新は乗れそうにありません。自民会派が丸ごと稲村氏でまとまれるものなのか、当面は乗るとしてもいずれは離反するのではないかとも思われます。

兵庫県議会の会派

逆に斎藤氏が再選された場合、全会一致で不信任決議を可決した以上、各会派ともそう簡単に掌を返して斎藤与党には戻れません。もし百条委や第三者委で一部クロの結論が出ると、再び不信任案提出の展開になってしまいます。

危機管理

告発した元局長への処分が出た直後だったはずですが、第三者委員会の要求で各会派の足並みが揃った時期があります。知事側がこれを突っぱねたために百条委員会が設置されました。

斎藤氏側は危機管理の問題だと発言していたように記憶していますが、危機管理としては第三者委員会に委ねてしまうのが正解だったと思われます。告発された側だけで告発した者を処分するという絵柄が美しくありません。

自信があるなら第三者委に投げて、結論が出たあと「ほらね」で済ませれば混乱は起きなかったはずです。第三者委を拒めば、後ろめたいことがあるのではないかと疑われる流れになってしまうのは避けられないことです。

9月19日に全会一致で可決された不信任決議案は次のように結ばれています。

これ以上の県政の停滞と混乱、県益の損失は許されるものではなく、県民本位の健全な県政と職員が安心して働ける職場を一日も早く取り戻し、来年度予算は新たに県民の信任を得た知事の下で編成されるべきである。よって、本県議会は、斎藤元彦兵庫県知事を信任しない。

不法あるいは不当な行為があったからではなく、停滞と混乱を招いているから辞めろと言っているだけです。混乱を招いている一方の当事者は県職員組合と議会側です。断罪するのが早すぎたことで逆に混乱が長期化することになりました。

百条委員会は今月が総括、12月は取りまとめというスケジュールですので、この先は大きな進展はなさそうです。

選挙後のお楽しみ

さて、選挙後に楽しみがないわけでもありません。「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した場合」(刑法230条)に成立するのが名誉毀損罪です。

名誉毀損は示された「事実」が真実であっても成立するのが原則ですが、「公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない」(刑法230条の2)との例外規定があります。

飛び入り参加した一部候補者の議論は推測としては成り立ちますが、それが真実であることを候補者側が証明できるとはとても思えません。もちろん、名誉毀損は親告罪ですので遺族次第です。

ところで、元局長は公用PCとともに私物のUSBメモリを提出しています。懲戒処分の処分理由には「個人情報を不正に取得し持ち出した」とありますので、不当な提出要請ではなさそうです。

世間的には会社のPCでは個人のUSBを使えないよう設定しているケースが多いと思われます。10年ほど前からそうなっているはずです。PC経由で私用スマホに充電できない会社も少なくないでしょう。兵庫県庁では少なくとも今年3月まで公用PCと私物USBとの間でデータ移動できたようです。

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