兵庫県知事を告発した元県民局長の「プライベートな問題」

【2024/11/07追記】立花氏らの主張は、(1)3/12の告発文書は公益通報には当たらない、(2)県民局長が内部通報した4/4以降は公益通報である、というもののようです。
 (1)について私は同意します。公益通報でない単なる誹謗中傷文書として犯人探しをしても問題はないという理解です。遡及しないというのも同意見です。(2)については見解が異なります。斎藤氏が「嘘八百」「公務員失格」と語った日(3/27)、局長は片山副知事に口頭で「文書を精査してくれ」と言い、副知事は「わかった」と応じたことが百条委員会で明らかになっています。
 副知事は内部通報窓口担当でもあることから、3/27時点で公益通報扱いできるというのが私の解釈です。4/4でも3/27でも犯人探し後であることに変わりありませんが、4月中に第三者委員会に委ねていれば展開は変わったかもしれないと思っています。停職処分は5/7、第三者委員会は百条委員会より3か月も遅い9月に開かれています。

告発者のスネをめぐるタレコミ

兵庫県知事選挙は11月17日投開票です。このサイトでは7月13日付で「斎藤元彦知事と党員資格停止中の西村康稔氏の深い関係」を公開しました。7月10日に県職員労組が辞職要求し、12日に片山副知事が辞任会見したことを受けたものです。

私のスタンスは、百条委員会の設置が決まったのならそこで調査すればよいというものでした。当時の状況下では、斎藤氏側に寄った少数派の意見だったかもしれません。これに対して、お盆過ぎにフォームメールを頂戴しました。

10月初めからネット上では話題になっていてマスコミが報じないその件についてでした(港湾利権の記述はありませんでした)。ひっそりと展開しているだけのサイトにタレコミがあるほどですから、きっといろんなところに送られたに違いありません。

メールの内容が真実だとすれば、百条委員会に出席の意向を示していた元県民局長が最終的にああした行動を取った理由をより合理的に説明できるかもしれません。ただ、墓場を漁る行為は慎重でありたいと私は理解しています。

そのメールは私にどうしろとは書いてありませんでしたし、返信を求められてもいませんでした。関心のない話ですので私はスルーしました。告発文書は私に言わせれば「怪文書」です。頂戴したメールも「怪文書」の域を出るものではありません。私が裏を取れる話ではありません。

マスメディアが沈黙するのは、新たな被害者を生む恐れがあるからでしょう。告発者の素行と告発そのものとは切り分けるべきという常識的な判断だと思われます。

第一義的な問題は、あくまでも知事サイドに不正行為や不当行為があったかどうかです。個人所有のスマホの提出はいざ知らず、公用PCは調査されても仕方のない性質のものです。公用PCが公務時間中に私的に使われていたなら処分されるのは当然のことです。

そこに看過することのできない内容が含まれていたとしても、知事側に不正行為や不当行為があればそれが免罪されることにはなりません。理屈はそうですが、互いの取引材料や脅しの材料にはなり得ます。局長の最後の行為をどう理由づけるかは推測にすぎません。

オール与党だった兵庫県政

先の衆院選では、淀川以東に限定すると立憲が比較第1党でした。

小選挙区

2桁の小選挙区を持つ9都道府県のうち兵庫12選挙区では与党が9議席獲得しています。維新はなかなか淀川を越えることができません(広島と福岡で取りましたけど…)。兵庫の大阪化を怯えているのは自民よりむしろ立憲かもしれません。

2001年初当選から5期20年続いた井戸元知事は非共産のオール与党体制でした。後発の維新は野党的なポジションにありました。前回2021年の知事選が動き出したのは「吉村寝ろ、井戸起きろ」の頃です。当時は菅首相であり、維新は松井代表でした。

2020年12月11日の県議会最終日に井戸知事が引退表明します。その日のうちに自民党県議団は金沢副知事の擁立を内定してゴングは鳴りました。

3/19 自民党会派に属する県会議員13人が金沢氏擁立の撤回を申し入れ
3/23 松井代表が斎藤氏支援表明
3/24 斎藤氏擁立派の自民11県議が「自民党県議団」を離脱(金沢派32人)
3/25 11人は新会派の「自民党兵庫県県議団」を結成して斎藤氏に立候補要請
3/28 「兵庫維新の会」も斎藤氏に立候補要請
3/31 斎藤氏が立候補表明
4/06 「日本維新の会」が斎藤氏の推薦を決定
4/07 谷公一自民党兵庫県連会長が斎藤氏推薦を党本部に申請
4/12 「自民党本部」が齋藤氏の推薦を正式決定
4/20 金沢氏後援会の設立総会で井戸知事が支持表明
4/23 立憲の県連が金沢氏支援を決定(推薦なし)
7/18 投開票

自民党県議団は副知事の推薦を党本部に上げようとしましたが、これをひっくり返したのが兵庫選出の自民党国会議員です。15名全員一致で県連会長の谷氏が党本部に斎藤氏の推薦を申請します。斎藤氏への立候補要請は自民が先ですが、党本部の推薦が出たのは維新が先です。

井戸派の逆襲?

菅-松井ラインが一貫して主導したのが斎藤候補です。立憲の県議会会派「ひょうご県民連合」は斎藤氏支持を表明していましたが、連合が金沢氏を推薦したことで混乱します。結局、立憲は金沢氏を支援するものの推薦は出さず二股かけた形になりました。

国民と公明も金沢氏支援(推薦なし)、共産は独自候補という構図で前回の知事選は戦われ、斎藤氏が金沢氏に25万票差をつけて勝っています。斎藤氏は自民と維新の推薦で当選したはずですが、7月頃は維新だけが叩かれていました。

元県民局長の告発文書は、「公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構」理事長を務める五百旗頭真(いおきべ まこと)神戸大学名誉教授が病死したのは同機構の副理事長2人に対する解任通告が原因であるかのような記述から始まります。

動かぬ証拠を突きつけてこその告発文書なのに、証明できないことを冒頭で記述するのはちょっと解せません。1977年生まれの斎藤氏は震災時には松山で寮生活をしていたわけで、80歳の五百旗頭氏のことはほとんど念頭にないものと思われます。

告発文書のタイトルは「斎藤元彦兵庫県知事の違法行為等について」です。人事権の行使が急性大動脈解離発症の要因だと言われると何もできなくなります。局長はその人事に不満があり理事長を慕ってもいたのでしょうが、これでは告発として成立しません。

私は兵庫県民ではありませんし、今は選挙中です。あまり言及したくありませんが、 「知事の自宅には贈答品が山のように積まれている」と言うならせめてその画像ぐらいは添えないと、ただの悪口です。TV公開された知事応接室はそれほどでもありませんでした。

おねだり疑惑は一部認められましたが「違法」レベルではなく、パワハラ疑惑は認定されても仕方がない事案もあります。それが辞職や不信任に値するかどうかは別の問題です。告発文書の主要な部分についてはまだ調査が進んでおらず、シロ確定でもありません。

もし前知事が再選され、その後に「違法行為」が発覚して失職すれば、また選挙になってしまいます。総選挙を有利に運びたい思惑や予算編成の絡みもあったでしょうが、仕留め切れないうちの不信任可決は早すぎたかもしれません。

辞職要求は県職員労組から始まり、不信任も「ひょうご県民連合」が言い出したことです。

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