ハドソン川の奇跡
ハドソン川に架かるジョージ・ワシントン橋は上下2層式の吊橋で計14車線です。主塔の高さは184mあります。世界でもっとも交通量の多い橋として知られています。年間1億台以上ということです。
ストビュー画像は上流からジョージ・ワシントン橋を見ていますので、左がニューヨーク州で右がニュージャージー州になります。
2015年1月15日15時24分54秒にラガーディア空港管制から離陸許可を受けたUSエアウェイズ1549便は第1滑走路を北東方向に飛び立ちます。
離陸直後の左旋回中に植物園上空付近で鳥の大群に遭遇して、バードストライクにより両エンジンの出力を失いグライダー状態になったのは15時27分11秒です。
気温氷点下6℃、水温2℃
推力喪失を伝えた管制官とのやり取りでは
(1)ラガーディア空港2番滑走路に北西側から着陸
(2)ラガーディア空港1番滑走路に南西側から着陸
(3)テターボロ空港1番滑走路に南から着陸
などが検討されています。
いずれも不可能と判断した機長はハドソン川への不時着水を試みました。幸いにもジョージ・ワシントン橋はハドソン川を渡るマンハッタン島唯一の橋です。これより下流にはトンネルがあるだけで橋はありません。
ジョージ・ワシントン橋ニューヨーク側の主塔を回避してハドソン川上空に進路をとった1549便はスムーズな体勢で着水に成功します。気温は氷点下で水温は2℃という状況ながら、機体分解が避けられたことで乗客乗員155名は5名の負傷者だけで人的被害は回避されました。
ニューヨーク側からは10本以上の埠頭がハドソン川に突き出しています。水上交通の要所であったことから動ける船が多く、迅速な救助によって「奇跡」を実現しました。
務安国際空港事故
昨年末のチェジュ航空2216便事故も(今のところ)バードストライクが原因とされています。事故機は滑走路南側から着陸する予定でしたがゴーアラウンドを指示され、旋回中にメーデーが発せられて北側から車輪が出ないまま「強行着陸」しています。
【2024/01/07追記】メーデーが発せられたのは着陸態勢に入ってからで、ゴーアラウンドは管制の指示ではないとの報道もあるようです。
燃料を消費することはおろか、機体のコントロールもままならない状況だったのではないかと推測されますが、焦点の1つが機体が衝突炎上した「壁」の存在です。盛土による着陸誘導措置の土台ということで、ご丁寧にコンクリート補強されているそうです。
初期の報道では「壁」に激突したという話でしたので、私はてっきり空港の外壁のことだと思っていました。飛行機を受け止めてしまうようながっしりした壁は必要なかろう、よく飛び出さなかったものだと思ったものです。
航空機がオーバーランすることはあり得ることでしょう。この土台にあの速度で激突すれば乗客乗員181人中179人死亡も納得できてしまいます。まるで巨大な車止めです。
北側にはない
高知空港北西側の着陸誘導装置です。
日本の空港では滑走路の延長線上にある装置はおおむねこのような構造で、外壁自体もフェンスです。山形空港北側も同じような作りです。
務安国際空港でも北側には「車止め」がありません。外壁はブロック塀?ですけど…。
もし当初の予定どおり南からの着陸だったらと考えると、やはり複数の要素が重なってこうした事故は起こるもののようです。
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