奈良地方気象台、2017年移転も旧庁舎の跡地利用なし

設立時は橿原(八木)

奈良地方気象台は、明治時代に橿原(八木)に設置された県立測候所が国営移管後の1953年に奈良市に移転したものです。

1897年明治30年1/01奈良県立八木二等測候所が設立
1942年昭和17年3/30橿原測候所に改称
1953年昭和28年4/01奈良市半田開町に移転して奈良測候所
2017年平成29年3/09西紀寺町(露場は東紀寺町)に移転
▲奈良地方気象台>奈良地方気象台の沿革

南北に長い奈良県ですから、最初の観測所を北和の奈良市または大和郡山市に置くか、中和の大和高田市・橿原市・桜井市辺りに置くかという綱引きはあったものと思われます。

奈良地方気象台
奈良地方気象台(地理院タイルを加工)

移転時は、橿原(八木)を残して奈良に新設するという選択もなかったわけではないのでしょうが、この距離に有人観測所2つはやはり否定されそうです。橿原(八木)時代の標高は62mで、観測値は公開されていません。

奈良市中心部
奈良市中心部(地理院タイルを加工)

移転後の半田開町(はんだびらき-ちょう)は鴻ノ池や聖武天皇陵の近くで標高104mです。ここは事務庁舎が木造平屋建て(現業庁舎はRC2階建て)でした。老朽化で2017年に新築再移転しています。

2017年、新築庁舎に再移転

移転先は合同庁舎ではなく単独施設です。近畿農政局奈良農政事務所の跡地だそうです。

奈良地方気象台の庁舎

観測露場は500mほど離れた学校の敷地内です。標高は102mで、ソメイヨシノの標本木もこの学校内ということです。

奈良地方気象台の観測露場

移転前の気象台敷地は更地になっているだけで、跡地利用されていません。建て替えを否定するものではありませんが、移転しなければならない必然性があったのかどうか疑問は残ります。

旧庁舎跡地

跡地利用しないのなら、せめて露場は残してもよかったのではないかという気もします。

年平均気温、最高気温、夏日など

奈良の年平均気温は次のように推移しています。2018年以降は16℃台、去年は初めて17℃台に達しました。もし同一露場なら移転の影響を吟味しなくて済むわけです。

奈良の年平均気温の推移

最高気温は1994年8月8日の39.3℃です。移転後の最高気温は2024年8月3日の38.4℃になります。猛暑日は2016年まで6.5日平均、2017年以降は22.4日平均です。2024年は47日でした。

最低気温は1977年2月16日のマイナス7.8℃です。21世紀のマイナス5℃台以下は2012年2月19日にマイナス5.3℃があるだけです。移転後のマイナス4℃台はありません。真冬日は1981年2月26日に1回だけ観測されています。

冬日熱帯夜は次のとおりです。市街地への移転ですので熱帯夜は増えるはずです。移転前は有意差がありましたが、移転後は白熱の攻防が展開されています。

奈良の熱帯夜と冬日

真夏日は2024年の93日、夏日も2024年の166日が最多です。

奈良の夏日と真夏日

最大積雪深は1990年2月1日の21センチです。近年では2014年2月14日の15センチがあります。

2022~2024年の観測値

2022年から2024年の観測値は次のとおりです。降水量少なめ、日照多めの瀬戸内気候です。

年降水量1216.0ミリ959位/1285地点
年平均気温16.2℃234位/916地点
年最高気温37.6℃103位/916地点
年最低気温-3.2℃222位/916地点
年較差40.8℃589位/916地点
年平均風速2.1m/s455位/915地点
年日照時間2043.1時間253位/842地点
▲奈良の2022年観測値(順位はすべて降順)
年降水量1358.0ミリ834位/1286地点
年平均気温16.6℃257位/917地点
年最高気温37.5℃173位/917地点
年最低気温-3.9℃174位/917地点
年較差41.4℃679位/917地点
年平均風速2.0m/s505位/916地点
年日照時間2094.5時間286位/847地点
▲奈良の2023年観測値
年降水量1683.5ミリ734位/1285地点
年平均気温17.2℃241位/916地点
年最高気温38.4℃99位/916地点
年最低気温-2.1℃166位/916地点
年較差40.5℃598位/916地点
年平均風速2.1m/s476位/915地点
年日照時間1929.7時間397位/843地点
▲奈良の2024年観測値

最大瞬間風速は1979年9月30日の台風16号による47.2m/sです。室戸岬に上陸して大阪に再上陸した台風です。

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