各務村（かかみ-）と各務原飛行場（かがみがはら-）の足し算

岐阜県の各務原については、（1）2音目を清音とするか濁音とするか、（2）「かがみ」と「はら」を直結させるか「が」を挟むかで4通りの読みがあります。表記としては「各務原」「各務ケ原」「各務ヶ原」の3通りがあります。

各務村（かかみ-むら）は1955年に鵜沼町と合併して（新）鵜沼町となり、古代の「各牟」や「加々美」から続く「各務」の地名が自治体名としては消滅します（各務郡も1897年消滅）。

この鵜沼町が1963年4月に那加町・蘇原町・稲羽町と合併して各務原市が発足しています。1度は消えた「各務」の自治体名は、いわゆる「昭和の大合併」から時期を逸して復活したのです。消滅した「各務」と、復活した「各務原」はその示す範囲が異なります。

各務原市には、各務おがせ町、各務西町、各務東町、各務船山町、各務山、各務山の前町などの町域名が現存します。旧・各務村のエリアはこれらに重なり、今の鵜沼各務原町、蘇原新生町、蘇原中央町の一部を含むようです。

各務山付近が各務村です。村役場は各務小学校の東にあったようです。「各務」の読みが「かかみ」であることには何の例外もありません。

明治中期の地図では今の航空自衛隊岐阜基地付近に「各務原」との記載があります。読みは2音目清音で「が」を含むAパターンです。

陸軍の各務原飛行場が完成したのは、大正に入った1917年6月です。当時の写真を見ると、滑走路は単なる草地であり、適当にフラットであればOKというレベルだったようです。この陸軍飛行場で各務原は一気に全国区になります。

国産飛行機開発の使命を帯びて三菱、川崎、中島（富士）の各メーカーも進出します。1920年11月、高山本線の各務ヶ原（かがみがはら）駅が開業します。今の名鉄駅が二聯隊前駅を名電各務原（めいでんかがみはら）駅に改称するのは1938年です。

大正時代の地図にも今の滑走路付近に「各務原」の記載がありますが、その読みは2音目濁音で「ヶ」付きのCパターンです。昭和初期の地図では「各務原飛行場」の記載に変わりますが、読みはCパターンです。

「各務（かかみ）」は各務山付近、全国区になった「各務原（かがみがはら）」は飛行場付近で別物です。「各務原」の読みは大正以降に濁音のCで定着したかに思えます。

昭和の大合併が一段落してから4町合併の機運が高まります。不思議な話です。市町村合併は簡単にまとまるものではありません。国が手を引いてから合併話が進展するのは誰かが強力に主導したからに違いありません。

各務原市の初代市長は武藤嘉一氏です。父親の武藤嘉門氏は4町合併が出てきたときの岐阜県知事です。現職の経産大臣・武藤容治氏は嘉門氏から数えると4代目になります。

4町の合併で新市名が「各務原市」になったのは、各務原飛行場による全国的知名度を考慮したもののようです。このとき、定着したかに見えたCではくAに落ち着いたのは、消滅した旧・各務村勢力がAを主張したからではないかと私は思っています。

4町合併を実現するには南部・木曽川沿いの「かがみがはら」をそのまま市名にするより、読みの部分で北部の意向を汲んだほうが丸く収まるということかもしれません。

名鉄の駅名は市の要請を受けて1965年にCをAに変更しています（各務原飛行場駅と名電各務原駅）。読みだけの変更であり、費用は市の負担です。

岐阜県立各務原高校の開校は1971年です。なぜBの読みにしたのか定かではありません。表記として「ヶ」や「ノ」が含まれていない場合、読みとしても含まないと解するのは別に不自然ではありません。「が」や「の」を付けて読めというのがむしろ不遜です。

島根県最西端の駅は飯浦（いいのうら）駅です。JR「西ノ宮駅」は市名と表記が異なるという要望を受けて「西宮駅」に改称されました。今では口頭で行き先を告げて切符を買う機会はほとんどありませんので、JR的にもあまり不都合はありません。

「ゆるキャン△」は2015年連載開始です。主役の1人・各務原なでしこやその姉・各務原桜はD読みです。短く言いやすいことから、実際には一番人気のようです。私もDが正しくないことは知っていますが、キーボード入力は「かがみはら」にしています。

各務原は人口順位では岐阜県内で大垣に次ぐ3位です。旧・統一教会（統一協会）の施設もあります。

最古2012年6月のストビューで、すでに教団施設です。

中古物件の買い取りではないかと思われますが、いつもナビでは「辻ビル」と表示されることから賃貸の可能性もありそうです。