キリマンジャロの雪、台湾の玉山
南緯3度のキリマンジャロは標高5895mです。日本人的には赤道直下と言っていいと思われますが、頂上付近は氷雪地帯です。この氷雪はあと20~30年後には消えてしまいかねないペースで縮小しているそうです。

台湾最高峰の玉山(ユイシャン、旧日本名は新高山)は標高3952mです。2020年1月には積雪25センチ程度だったようです。玉山の山頂近くには台湾中央気象署が玉山気象站を設けています。百葉箱が現役なのか機能性を喪失したシンボルなのかは知りません。

沖縄より南の台湾でも、標高1000mなら手のひらサイズの雪だるまが作れる程度には雪が降ります。去年も降りましたし、今年も降っています。
沖縄では4回あった降雪日
屋久島から台湾まで1000mクラスの山は途切れています。奄美大島の最高峰は694mの湯湾岳(ゆわん-だけ)、沖縄県最高峰は石垣島の於茂登岳(おもと-だけ)で標高は525.5mです。そもそも高地がないのですから、標高40mを超える観測所もありません。
屋久島以南の雪観測を伴う観測所は次のとおりです(第6列は寒候年)。厳密には積雪計による観測はもう行われていません。那覇の沖縄気象台でも去年の冬が最後でした。
緯度(北緯) | 標高 | 観測所 | 最深 積雪 | 雪日 総数 | 積雪計観測 |
30度32.1分 | 37.3 | 屋久島 | 2 | 85 | 1953~2009 |
28度23.1分 | 3.3 | 名瀬 | 0 | 2 | 1953~2020 |
27度25.9分 | 26.8 | 沖永良部 | 0 | 1 | 1969~2009 |
26度35.6分 | 6.2 | 名護 | 0 | 1 | 1967~2002 |
26度20.2分 | 4.6 | 久米島 | 0 | 3 | 1958~2005 |
26度12.4分 | 28.1 | 那覇 | 0 | 0 | 1953~2024 |
25度49.7分 | 15.3 | 南大東 | 0 | 0 | 1953~2020 |
24度47.6分 | 38.5 | 宮古島 | 0 | 0 | 1953~2020 |
24度28.0分 | 30. | 与那国島 | 0 | 0 | 1957~2009 |
24度25.6分 | 10.3 | 西表島 | 0 | 0 | 1955~2002 |
24度20.2分 | 5.7 | 石垣島 | 0 | 0 | 1953~2020 |
0センチも立派な観測値だという考え方もあるでしょうが、1度も活躍する機会がなかった積雪計にお引き取り頂くのは仕方のないことかもしれません。
2016年1月24日の名護
沖縄本島の観測所で唯一の雪日観測は2016年1月24日の名護です。

●は雨マーク、*は雪マーク、これを上下に足して「みぞれ」を示すのが気象庁記号です。「みぞれ」は雪に含まれるというのが気象庁の見解です。この日の名護では、22時26分からの16分、23時50分からの10分、23時41分からの3分、合わせて約30分「みぞれ」が観測されたのでした。
車のボンネットにふわっと積もるのが「雪」、ベチャッと落ちてすぐ溶けるのが「みぞれ」、粒が跳ねるのが「あられ」、ヘコミを心配をしなければならないのは「ひょう」というのが私の理解です。標高100m付近で撮影された当時の映像を見ると、小さな固体が跳ねています。
目視では明らかに「あられ」です。名護市街では「みぞれ」で降ったということなのでしょう。22時の気温が5.7℃、湿度は76%です。4℃60%なら本当の「雪」で降ったかもしれません。名護の最低気温のレコードは3.7℃ですから、純粋な「雪」が降る可能性はあります。
この年の名護は積雪計が撤去されたあとです。降水量からして、もし積雪計が残されていたとしても1センチには満たないものだっただろうと思われます。
久米島は1977年にも
同じ日の久米島では18時半過ぎから翌25日の午前3時前まで断続的に「みぞれ」が降りました(暦日で2日、久米島2回目と3回目)。

気象の教科書的には地表気温5℃なら湿度50%が正真正銘の「雪」圏内です。久米島のように小さな島は、ダウンバースト以外はどこから風が吹いてもどのみち海風ですから、そんなに湿度は下がりません。
それでも大陸寄りにある久米島は沖縄本島より寒気に巻き込まれやすく、1963年にはいまだに破られない沖縄県最低気温2.9℃を観測しています。このときに降水モードに入っていれば、本当の「雪」になった可能性は高そうです。
久米島では1977年2月17日にも雪日がカウントされています。沖縄県で20世紀唯一の降雪記録です。当時の久米島測候所は有人観測です。日最低気温6.7℃、日最小湿度42%でよく雪日になったものです。

1時間ごとのページを開いてもスカスカです。3時間あるいは6時間ごとの定時観測だった項目もあるようです。深夜3時の気温が8.1℃、6時が7.2℃、9時が8.3℃ですから、公開されているデータだけでは朝のうちということしかわかりません。
新聞記事によれば、午前0時35分から40分の間に「みぞれ」を目視で観測したということです。1時の降水量は「0.0ミリ」とされており、この日の「0.5ミリ」は13時の観測です。時間的にも短かった「みぞれ」は量的にもごく微量だったようです。
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