地方自治体首長の不信任案可決、議会解散率は72%

44例目?

Wikipedia「不信任決議」のページには地方議会の不信任決議44例が掲載されています(2025年9月2日時点)。このページには公選制以後のすべての事例を網羅しているとの記述はありませんが、今回の伊東市を除く43例で議会解散は31例(72%)に及びます。

首長不信任の行方

議会を解散した31例には解散して辞職というケースも5例あります。解散後の新しい議会で不信任が再議決されたケースは17例です(再議決が見込まれることから提出された辞表を議会が受理せず不信任に持ち込んだ事例を含む)。

不信任事例再議決出直し選
議会解散26174勝8敗
解散して辞職50勝3敗
自ら辞職4
失職83勝4敗
43177勝15敗
▲地方議会での不信任

辞職で再選出馬する場合は残存任期ですが、失職を選択すると任期は4年となります。長野県知事だった2002年の田中康夫氏が失職の嚆矢であり、失職8例のうち7例は出直し選に出馬しています。辞職4例には出馬例はありません。

不信任された首長が出直し選に挑んだケースは全部で22例あり、その勝率は意外と高い7勝15敗です。不信任の理由はさまざまで、就任3日目で不信任(A)とか、合併をめぐる議論に巻き込まれた気の毒な例(B)もあります。

不信任事例

第5列「再」の★印は解散後の議会で不信任が再議決された首長、第6列「出」の◯✕は出直し選の勝敗です。

不信任議決日自治体首長選択
1959/02/20山口市長井秋穂解散
1964/09/10能登川町(東近江市)中村甚試解散
1967/04/01加須市中田重蔵解散
1969/10/17鳥栖市安原謙市解散
1969/12/22更埴市(千曲市)坂口登解散
1972/10/07堺市土師半六辞職
1973/12/20岩井市(坂東市)富山光男解散
1974/06/21松原市長谷川正彦解散
1976/12/14岐阜県平野三郎辞職
1978/10/23西有家町(南島原市)梶原菊千代解散
1981/02/17小金井市星野平壽解散
1985/08/08大西町(今治市)神野晏至解散
1991/04/02観音寺市今津礼二郎解散
1996/08/04益田市田中八洲男解散A
2002/07/05長野県田中康夫失職
2003/03/20徳島県大田正失職
2005/06/23奈良市鍵田忠兵衛解+辞
2006/04/25大治町伊藤義範辞職
2006/06/28新居町(湖西市)古橋武司解+辞
2006/08/18七ヶ宿町高橋国雄解+辞
2006/12/01宮崎県安藤忠恕辞職
2007/01/09松野町岡武男解散B
2007/03/29加西市中川暢三解散
2007/09/03東大阪市長尾淳三失職
2009/02/06阿久根市竹原信一解散
2009/03/24西尾市中村晃毅解散
2009/04/20尾鷲市奥田尚佳解散
2010/09/02草加市木下博信解散
2011/03/28白井市横山久雅子失職
2012/12/20双葉町井戸川克隆解散
2013/01/09西条市青野勝解散C
2013/06/10上郡町工藤崇解+辞
2015/03/16大衡村跡部昌洋解+辞
2015/08/03福島町佐藤卓也失職
2017/10/27太宰府市芦刈茂解散
2018/07/27みなかみ町前田善成解散
2020/03/24宇陀市高見省次解散
2022/06/17あきる野市村木英幸解散
2022/09/26太子町服部千秋失職
2024/09/19兵庫県斎藤元彦失職
2024/12/20岸和田市永野耕平解散
2025/01/30角館市関厚解散
2025/06/18石垣市中山義隆失職
2025/09/01伊東市田久保眞紀
▲地方議会による不信任決議

【2025/09/03追記】やはりWikiはすべてを網羅していないようです。同じ伊豆の松崎町では2019年に6対2で町長不信任が議決されて町長は議会を解散、町長派6人が当選したということです。これを加えると、解散率は44分の32で72.7%となります。

取り残された愛媛県松野町

(A)は、8月2日に就任したばかりの新市長に対して議会が8月4日に不信任を議決して、市長が8月12日に解散で対抗したという事例です。田中氏は市長を1期務めて2000年の任期満了選挙では落選しましたが、2003年から県議選5連勝です。

(B)の岡氏は2004年11月が初当選です。松野町は広見町と日吉村との2町1村による合併を進めていましたが、2003年末に合併協議会を離脱し宇和島市との合併方針に転換します。岡氏は58票差で当選した町長でした。

広見町と日吉村は2005年1月1日付で鬼北町として合併、宇和島市も同年8月1日付で3町と合併します。定数14の議会構成が7対7の同数だったこともあって、町長が議会を招集しても開会されないなどの理由で、2006年には町長リコールに発展します(住民投票で否決)。

松野町(地理院タイルを加工)

リコール不発後、板挟みの議長が自殺するという事態にも陥り、今度は議会リコールが始まります。岡氏に対する不信任案の可決は議会解散の口実だったのかもしれません。町議選の結果は町長派多数でした。

町議選後の2007年5月に行われた住民投票は合併先を選ぶものでした。1,702対1,400で鬼北町との合併が多数でしたが、岡氏は2008年町長選に敗れています。結局、松野町は合併していません。

(C)の青野氏も合併絡みです。東予市長だった青野氏は3期目途中で西条市との合併によって市長を退任して県議に転出します。西条市長選に122票差で当選したのは2012年11月です。新市庁舎建設「見直し」を掲げていたようです。

2013年1月の不信任を受けて議会を解散した青野氏ですが、市議選の結果は少数派でした。ただ、不信任の再議決は3分の2以上の出席が要件です。市長派は議会を欠席することで再議決を阻止したため、再度の不信任案は廃案になっています。

解散+辞職して市議選出馬という奇策

定数20の伊東市議会が解散された場合、不信任の再議決には15人の出席が必要です。田久保氏側が7人以上擁立して当選させれば。再議決されないことになります。実際には1議席とれるかどうかでしょうし、過大評価してもせいぜい2議席と思われます。

7人擁立できるか、そこからして現実味がありません。そこで、私が考える奇策があります。(1)田久保氏がまず議会を解散します。(2)そして自分も市長を辞職します。ここまではあり得る話ですが、(3)田久保氏は市長選ではなく市議選に出馬するのです。

現実問題としては、よほどの乱戦にならない限り市長選での再選は無理でしょう。市議選なら通るかもしれません。奈良や尼崎の実例があります。もちろん、市議に当選したところで除名はあり得ますし、1年経てばリコールの対象にもなります。

ただ、市長職は辞めたのですから一応は責任を取ったと言えなくもありません。そのうえで、選挙民の信を得たとも言えるわけです。いずれ公民権停止になるのだとしても、そこまで年単位の時間はかかります。市議の立場なら市長より確実に風当たりは弱まります。

このまま市長にとどまっていても、不信任を再議決されるだけです。議会を解散しただけでは状況の打開にはなりません。市長職として受けた不信任は市長を辞めたんだからチャラになるという論理を振りかざすことは、田久保氏なら可能と思われます。

むしろ、それでこそ田久保氏だと言えるのではないかというのが私の率直な評価です。

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