千葉の九十九里、茨城の百里、栃木や北信越の五十里(いかり)

九十九里浜と茨城の百里

九十九里浜はチーバくんの後頭部から背中です。北は旭市の刑部岬(ぎょうぶ-みさき)から南はいすみ市の太東岬(たいとう-みさき)まで海岸延長は約66キロとされています。

九十九里浜

源頼朝の時代の1里は6町です。1町は約109mですので、1里はその6倍の約654mです。654✕99=64.746キロですから、66キロととほぼ変わりません。

一方、水戸と潮来を結んでいたとされるのが百里海道(街道)です。Googleマップで水戸から潮来をルート検索すると、道のりとしては53~54キロです。1里=6町では10キロ近くショートします。ちょっと誤差の範囲とは言えません。

百里街道

1里=36町では100里は約393キロですから、完全に誇大表示のレベルです。

各地の五十里(いかり)

「五十里」の地名は複数箇所にあります。

栃木)那須町いかり福島県境、国道4号
栃木)日光市いかり五十里ダム、五十里湖、アメダス五十里
長野)長野市河川名「五十里沢」、戸隠の近く
長野)長野市いかり「上~」と「下~」、五十里ふれあい公園
新潟)佐渡市椿川北の小河川「北五十里川」
新潟)佐渡市いかり「沢根五十里」
富山)入善町いかり西入善駅の日本海寄り
富山)高岡市いかり「~東町」「~西町」「~」、高岡北IC
石川)能登町いかり北河内ダム、五十里浄水場
▲各地の五十里
五十里
五十里(地理院タイルを加工)

那須町の栃木&福島県境に五十里集落があります。黒川が県境です。白河の関は9キロほど下流になります。

福島県境の五十里
那須町の五十里(地理院タイルを加工)

Googleマップでこの付近から東京の日本橋までルート検索すると175キロです。これは1里=36町で計算したときの50里(約196キロ)相当の範囲内です。

日本橋から50里なのか?

同じ栃木県の日光市にはアメダス五十里があります。男鹿川(おじか-がわ)の河畔です。男鹿川は川治温泉付近で鬼怒川に合流します。

アメダス五十里

会津西街道の五十里宿は、1889年に町村制が全国施行されたとき藤原村に属し、1950年に着工された五十里ダムの建設によってダム湖に沈むことになりました。この日光市五十里について、AIは日本橋から50里というのが由来だと主張しています。

日本橋から50里だそうた

アメダス五十里から日本橋までルート検索すると154キロ(せいぜい40里相当)です。当時の街道と今の道路網は同一ではありませんが、宝運丸船主の社長ほどではないにせよ、「50里」は大げさです。168センチ後半で170センチと言うのは許容範囲ですが、160センチ前半で170センチを嘯くようなものです。

室生一里塚

同じ日光市内で今市の市街地に入る手前に設けられた一里塚は日本橋起点で28里112キロだそうです。

室瀬
室瀬一里塚(地理院タイルを加工)

室瀬一里塚は標高350m台で、アメダス五十里は標高620mです。室瀬から奥は山岳コースに入るため、曲がりくねった道にしかなりません。とはいえ、いくらなんでも五十里が日本橋から50里だとするのは盛りすぎというものです。

長野県の五十里は50里か?

千曲市杭瀬の千曲川本流沿いに「五十里公園」があります。

千曲市の五十里公園

この公園から日本橋までルート検索してみると、旧中山道経由で207キロです。これは江戸から50里相当として認容できる範囲内です。長野市内に2か所見つかった「五十里」も江戸起点と考えてよさそうです。

では、富山や能登や佐渡の「五十里」はどうなのでしょうか。氷見高岡道の高岡北ICは「高岡市五十里」所在です。江戸は遠すぎるので京都御所までルート検索してみましたが、国道8号+琵琶湖西回り(=湖西線)の最短コースでも266キロとなります。

これらの「五十里」に「50里」の意味があるとは思えません。あるのかもしれませんが、私にはどこから50里なのか想像できません。ただ、「五十」を「いか」と読むのは三条市の五十嵐神社(いらし-じんじゃ)や信濃川支流の五十嵐川(いらし-がわ)に見られます。

「五十子」の読みも「いかご」「いかっこ」「いがっこ」「いらこ」など迷うところですが、「五十」を含む鉄道駅は全国に8つあります。

JR北海道釧網線五十石駅ごじっこく-
JR東日本磐越西線五十島駅しま-
JR四国内子線五十崎駅ざき-
JR東日本羽越本線五十川駅がわ-
JR西日本山陰本線五十猛駅たけ-
JR九州日豊本線五十市駅いち-
JR東海参宮線五十鈴ヶ丘駅いすずがおか-
近鉄鳥羽線五十鈴川駅いすずがわ-
(廃駅)赤谷線五十公野駅みの-
▲「五十」のつく鉄道駅

姓としての五十嵐は中村雅俊夫人や3代目キャプテンがそうだったように8割方「いがらし」の読みです。本来は濁音ではなく静音なのだそうです。「五十」は「いか」あるいは「いが」とも読めるわけです。

また、「五十路」や「山本五十六」のように常識的教養があれば「五十」を「いそ」とも読むことができます。伊勢神宮の五十鈴川はいすゞ自動車の社名でもあります。この場合の「五十」は2文字で「い」1音です。

山形県鶴岡市の「いらがわ」は河川名でもありますが、これはかなりレアです。同じ山形県でも長井市では「いかがわ」ですし、全国的多数派は「いそかわ」であり、福岡市南区五十川は「ごじっかわ」です。

私は30年ほど前に新潟県新発田市の「五十公野公園野球場」に行くか北九州市民球場に行くか前夜まで悩んで後者を選んだことがあります。おかげさまで、行ったことのない「いじみの」は何の抵抗もなく読めます。一般的には難読地名のはずです。

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