引田(ひけた)と財田(さいた)

7月10日と11日の最大瞬間風速1位は東かがわ市南野の「引田(ひけた)」で、7月11日の最高気温1位は三豊市財田町の「財田(さいた)」でした。香川県の観測ポイントが1位になるのは、少なくとも今年は初めてです。

香川県東端の東かがわ市は2003年に引田町など3町の合併で市制施行しています。「引田」のアメダス観測ポイントは、標高12mで瀬戸内海から1km足らずです。最大瞬間風速は2日とも南東の風ですから讃岐山脈からの吹き降ろしです。

財田と引田(Google Earthプロ)

香川県西部の三豊(みとよ)市は2006年に三豊郡7町が合併して成立しています。「財田」の露場は標高65mで、道路からやや奥まったところにあります。財田川の北側です。

確定した死刑判決が再審で無罪に覆った冤罪事件は4例あります。財田川事件もそのうちの1つです。1950年に当時の財田村で起きた強盗殺人事件が発端ですが、事件そのものと財田川は無関係です。

冤罪事件は島田事件、松山事件、弘前事件のように地名で呼ばれるか、吉田岩窟王事件、加藤老事件、免田事件、袴田事件のように冤罪被害者の姓を冠するのが一般的です。

  • 1950年2月 財田村で強盗殺人事件発生
  • 1950年4月 隣村農協の強盗傷害事件で逮捕
  • 1950年6月 農協事件の有罪判決
  • 1950年8月 本件で起訴
  • 1952年2月 高松地裁丸亀支部で死刑判決
  • 1956年6月 高松高裁が控訴棄却
  • 1957年1月 最高裁が上告棄却(死刑確定)
  • 1958年3月 第1次再審請求棄却
  • 1964年3月 再度の再審を求める手紙を送るも裁判所内で5年間放置
  • 1972年9月 第2次再審請求を丸亀支部が棄却
  • 1974年12月 第2次再審請求の即時抗告を高松高裁が棄却
  • 1976年10月 最高裁が地裁に差し戻し
  • 1979年6月 高松地裁が再審開始の決定
  • 1981年3月 高松高裁が検察側の即時抗告を棄却(再審確定)
  • 1984年3月 高松地裁で無罪

Wikipedia「財田川事件」のページには次のように記述されています。再審を棄却した裁判官に確信はなかったわけです。

地名の「財田」ではなく川の「財田川」と呼称する由来は、1972年に再審請求を棄却した裁判所の文言で越智伝判事が「財田川よ、心あらば真実を教えて欲しい」と表現したことである。

Wikipedia「財田川事件」

実際には「心あらば」ではなく「心あば」だったようです。

2日連続で最高気温1位の尾鷲

三重県内のアメダス観測地点のうち気温が観測対象となっているのは、桑名、亀山、小俣(おばた)、粥見(かゆみ)、鳥羽、南伊勢、宮川、紀伊長島、熊野新鹿(あたしか)、四日市、上野、尾鷲の12地点です。

6月28日の日最高気温は、上位8地点のうち6地点を三重で独占しています。1位・尾鷲の観測ポイントは合同庁舎内に設置された尾鷲特別地域気象観測所です。

  • 35.0℃ 三重県尾鷲市 尾鷲
  • 34.2℃ 三重県熊野市 熊野新鹿
  • 33.5℃ 三重県松阪市 粥見
  • 33.0℃ 三重県伊勢市 小俣
  • 33.0℃ 千葉県茂原市 茂原
  • 32.7℃ 岡山県高梁市 高梁
  • 32.7℃ 三重県紀北町 紀伊長島
  • 32.7℃ 三重県津市 津

合同庁舎は市役所や簡易裁判所、新聞社の支局などが立地する尾鷲市の中心部にあります。尾鷲は人口2万人に満たない規模ですから、周辺にビルが林立しているわけではありません。

紀伊半島(Google Earthプロ)

雨で有名な尾鷲ですが、日最高気温1位になるのはかなり珍しいことではないかと思われます。尾鷲の観測開始は1938年ですが、38℃以上が記録されたのは過去8回(日)しかありません。いずれも1990年代以降です。

  • 38.6℃ 2016/07/03
  • 38.4℃ 1995/08/27
  • 38.2℃ 2013/08/11
  • 38.1℃ 2018/07/23
  • 38.0℃ 2016/08/22
  • 38.0℃ 2013/08/10
  • 38.0℃ 2009/07/13
  • 38.0℃ 1990/07/18

尾鷲は翌6月29日も34.7℃で2日連続の日最高気温1位でした。

さて、現在公表されている平年値とは1981年から2010年までの30年間の平均値です。尾鷲の年降水量は3848.8ミリで、屋久島(4477.2ミリ)、えびの(4393.0ミリ)、魚梁瀬(4107.9ミリ)に次いで全国4位、本州では1位です。

日照時間の平年値は次のとおりです。えびのと魚梁瀬は雨量のみの観測ですので、近接地の加久藤と大栃を調べてみました。尾鷲の日照時間は全国平均レベルであって、周辺との比較でも突出して少ないわけではありません。

  • 1946.9時間 尾鷲
  • 1900.8時間 熊野新鹿
  • 1972.5時間 鳥羽
  • 2089.0時間 津
  • 1960.4時間 四日市
  • 2091.6時間 名古屋
  • 1530.5時間 屋久島
  • 1954.3時間 加久藤
  • 1764.5時間 大栃
  • 1906.2時間 内海
  • 1876.7時間 東京
  • 1996.4時間 大阪

東京や雨の少ない小豆島の内海より尾鷲の日照時間は長くなっています。尾鷲は雨が多いと言うより、降り始めたらその量が多いということになるようです。

ところで、大雨警報には浸水害に対する警報と土砂災害に対する警報の2種類があります。浸水害については表面雨量指数が、土砂災害については上流域で降った雨も考慮した土壌雨量指数が発令の基準に用いられています。

いずれにしても、降水量だけが警報・注意報の判断基準になるわけではありません。警報発令時の基準は原則として市町村単位で次のように定められています。行頭の数値が表面雨量指数で、ハイフンの次が土壌雨量指数です。

  • 40-161 尾鷲市
  • 30-157 熊野市
  • 38-146 伊勢市
  • 31-113 津市
  • 33-129 四日市市
  • 23-130 名古屋市
  • 22-184 屋久島町
  • 19-213 えびの市
  • 22-259 馬路町
  • 16-140 小豆島町
  • 19-180 新宿区
  • 15-*** 大阪市(大阪市内には土砂災害警戒区域なし)

隣接する熊野と尾鷲で等しい雨量だったとしても、熊野は警報で尾鷲は注意報というケースはあり得るわけです。尾鷲は多量の雨が降っても、その雨を受け流すことができるということになります。

さつま町柏原(かしわばる)が出発点

5月30日の最高気温1位は鹿児島県の「さつま柏原」でした。鹿児島の観測地点が最高気温1位になるのは珍しいはずです。まったくのダークホースだけに「さつま柏原」がどこにあるのかということさえ知りません。離島ではなさそうです。

北薩内陸部の「さつま町」が成立したのは2005年です。人口1.7万人弱の宮之城町と人口4000人台の鶴田町、薩摩町の3町合併によるものです。新しい町名は薩摩郡の郡名をひらがな表記にしたものと思われます。

柏原(かしわばる)地区は旧・鶴田町に属していました。旧・宮之城町との境界付近です。柏原のアメダス観測所は、市街地から続く民家がちょうど途切れて畑が広がっていく辺りに設置されています。

北薩地方 © OpenStreetMap contributors

周辺の観測ポイントは、阿久根(あくね)、川内(せんだい)、大口(おおくち)です。かつての大口市は今の伊佐市です。ところで、「原」を「HARU」や「BARU」と読むのは九州ではスタンダードかもしれません。

ただし、島原市(長崎)、西原村(熊本)、西原町(沖縄)のように、「HARA」または「BARA」も混在しているため、妙に気を利かせると裏目に出てしまいます。上の地図からわずかに漏れている霧島市の「牧之原」もそのクチです。

さて、所在地に「柏原」を含むアメダス観測点は「さつま柏原」のほかに3地点あります。「柏原」の読みは、今確認できている範囲で10通りです。

  • 東根(山形空港) 山形県東根市大字羽入字柏原新林
  • 信濃町 長野県上水内郡信濃町柏原字小丸山
  • 柏原 丹波市柏原町柏原

5月だというのに39.5℃

5月26日の最高気温1位は北海道・佐呂間の39.5℃でした。北海道の最高気温は37.8℃がこれまでの記録で、まだ38℃台が記録されたことはありませんでしたが、昨日の10位が38℃ちょうどです。

  • 39.5 ℃ 北海道常呂郡佐呂間町 佐呂間(網走・北見・紋別地方)
  • 38.8 ℃ 北海道帯広市 帯広(十勝地方)
  • 38.8 ℃ 北海道中川郡池田町 池田(十勝地方)
  • 38.8 ℃ 北海道足寄郡足寄町 足寄(十勝地方)
  • 38.5 ℃ 北海道紋別郡湧別町 湧別(網走・北見・紋別地方)
  • 38.4 ℃ 北海道中川郡幕別町 糠内(十勝地方)
  • 38.1 ℃ 北海道河西郡芽室町 芽室(十勝地方)
  • 38.1 ℃ 北海道北見市 北見(網走・北見・紋別地方)
  • 38.0 ℃ 北海道河西郡更別村 更別(十勝地方)
  • 38.0 ℃ 北海道網走郡津別町 津別(網走・北見・紋別地方)

また、5月の最高気温としても大幅な記録更新です。1993年5月13日に秩父で記録された37.2℃がこれまでの5月最高気温です。昨日の佐呂間の39.5℃は、北海道新記録であり5月の新記録でもあります。

北海道の気温観測173地点中36地点で観測史上1位だったということですが、佐呂間の観測開始は1977年です。実は、大半の観測ポイントでは観測開始が1970年代から1980年代に集中しています。

「観測史上1位」と言っても、たかだか50年に満たない期間の中での1位に過ぎないわけですが、2位の帯広は測候所ですので観測開始が1892年です。きのうは「100年に1度」以上の猛暑だったことになります。

さて、北海道の観測ポイントが最高気温1位になるのは、4月17日の鶴居5月6日の湧別に次いで今年3度目です。佐呂間は湧別のときに触れてしまいましたので、6位の幕別町糠内(ぬかない)をストビューで訪れてみました。

糠内の観測地点は畑の中です。周辺には多少の建物がありますが、気象観測に影響が及ぶことはなさそうです。2位の帯広測候所から見ると、3位・池田は東、6位・糠内は南、7位・芽室は西に位置しています。

幕別町糠内付近(Google Earthプロ)

糠内の語源となる「ヌカン」はアイヌ語で小石だそうです。糠内付近の猿別川に架かる厳橋のストビュー(2014/06撮影)です。

たしかに小石はあります。どこの川でも中洲はこんなものではないかと思わなくもありませんが…。

北海道の「別」はアイヌ語の川

10連休最後の5月6日の最高気温1位は北海道紋別郡湧別町の観測ポイントでした。オホーツク海の海岸線から2km近く離れた畑の中に観測施設があります。この日の最高気温TOP10は次のとおりです。

  • 28.0 ℃ 北海道紋別郡湧別町 湧別(ユウベツ)
  • 27.7 ℃ 沖縄県宮古島市 下地(シモジ)
  • 27.7 ℃ 沖縄県石垣市 石垣島(イシガキジマ)
  • 27.5 ℃ 北海道常呂郡佐呂間町 佐呂間(サロマ)
  • 27.1 ℃ 沖縄県八重山郡竹富町 志多阿原(シタアバル)
  • 27.0 ℃ 新潟県上越市 高田(タカダ)
  • 27.0 ℃ 北海道紋別郡遠軽町 遠軽(エンガル)
  • 26.9 ℃ 沖縄県宮古郡多良間村 仲筋(ナカスジ)
  • 26.8 ℃ 沖縄県八重山郡竹富町 大原(オオハラ)
  • 26.7 ℃ 沖縄県八重山郡竹富町 波照間(ハテルマ)

4位の佐呂間と7位の遠軽も湧別近隣の観測ポイントです。いずれもストビューで風速計を確認できます。探すのが簡単なほうから、遠軽>湧別>佐呂間の順になるはずです。湧別、佐呂間、遠軽の位置関係は次のとおりです。

湧別町付近 © OpenStreetMap contributors

オホーツク紋別空港の発着便は、羽田発が12:35着、羽田行が13:15発です。空港売店の営業時間は10:00~15:00、軽食コーナーが11:00~14:00になっています。15:00まで人が残っているものなのか不安は尽きません。

湧別町と遠軽町はもともと同じ「湧別村」です。1910年に湧別村と「上湧別村」に分村され、その上湧別村から1919年に分離したのが「遠軽村」です。遠軽村から 1925年には「生田原村」が、1946年に「丸瀬布村」と「白滝村」が分離します。

2005年に遠軽町、生田原町、丸瀬布町、白滝村が合併して新しい遠軽町が発足します。湧別町は2009年に上湧別町と合併しています。1910年当時の湧別村は、ピーク時には5町1村に分かれて、今は2つの自治体に収まっているわけです。

ところで、「~別」の地名は北海道に多く見受けられます。この「別」はアイヌ語の「川」だそうです。私はこの話を聞いたとき、石狩川流域の上川町、旭川市、深川市、滝川市、砂川市の配置を思い出した次第です。

そこで、「~別」の自治体MAPをつくってみました。現存するのが20自治体、廃止されたのが9自治体で、北海道27の青森2という分布でした。同様にアイヌ語由来とされる「~内(ない)」もMAPに加えました。

「内」も小さな川や沢を意味するようです。「~内(ない)」は現存11自治体ですが、山形県庄内町と新潟県胎内市は2005年に成立しています。残りの9自治体は北海道8、青森1です。

「~内(ない)」の消滅自治体は少なくとも47あり、北東北についてはアイヌ語由来なのだろうと思われます。西日本の「~内(ない)」は荘園由来のものがほとんどです。

【外部リンク】
まぐまぐニュース>【豆知識】北海道に「別」という字が付く地名が多い納得の理由