与論島(よろんじま)とヨロン島(よろんとう)

鹿児島県最南端の島は与論島(よろんじま)です。和泊町のある島は口永良部島(くちのえらぶじま)ですが、同じ鹿児島県の口永良部島より沖縄本島のほうが距離的には近いという位置関係にあります。

私は「よろんとう」と「島」を音読みするものだと思っていました。この歳になって初めて気づくことも多いようです。ただ、私が「よろんとう」と覚えていたのは無理からぬことではあるのです。

「水曜日のダウンタウン」の挨拶シリーズで、春日が浜田に仕掛けた “「よ」で始まり「す」で終わる言葉”のレベル6は「与論島は鹿児島最南端の島です」でしたが、 ナレーションも春日自身も紛れもなく「よろんとう」と読んでいます。

ヨロン島観光協会のWebサイトには次のような記述があります。「ヨロン島(ヨロントウ)の読み方」と題する項目です。

ヨロン島の観光の歴史をさかのぼると沖縄が日本復帰した昭和47年頃、他の島と差別化をしてイメージアップを図る為に、カタカナ表記で「ヨロン島」読みを「ヨロントウ」としてプロモーションを行いました。
<略>その頃から継続して観光面ではカタカナ表記で「ヨロン島」読みを「ヨロントウ」として使用し、現在に至っております。

ヨロン島観光協会>ヨロンについて

たしかに、オアフ島、クレタ島、セイロン島、セブ島など外国の島は、ことごとく音読みの「とう」です。一方、国内では国後島、択捉島、色丹島の北方領土3島が「島」を「とう」と音読みするだけで、訓読みの「しま」が圧倒的多数です。

呼称が揺れていた硫黄島については、2007年に小笠原村議会で故障の統一を求める決議が採択され、これを受けて国土地理院や海上保安庁などが「いおうとう」で足並みを揃えています。南硫黄島や北硫黄島も同様です。

いずれにしても、日本の島で「○○とう」はかなり特殊なケースであることに違いはありません。与論島の場合、「よろんじま」が正式名称で「よろんとう」は俗称ということになるのでしょう。

もっとも、当事者こそが俗称の仕掛け人であって、俗称ウェルカムのスタンスですから、俗称が広まったところで目くじらを立てることもないわけです。およそ50年前からの優れた戦略が功を奏していることになります。

いったい誰の発案なのか、そっちのほうが気になります。さて、与論島へのアクセスは、空路が鹿児島、奄美大島、沖縄の3路線、海路は鹿児島と沖縄の2路線で、それぞれ毎日就航しています。与論島のアメダス観測地点は空港内です。

八森MAP

私は太平洋側の八戸と日本海側の八森をワンセットで覚えていました。非常に唐突ですが、「八森MAP」を作ってみました。

今年に入って最大瞬間風速1位を3回記録しているのが秋田県北西端の八峰町にある八森の観測ポイントです。2006年に八森町と峰浜村が合併して八峰町が成立していますので、「八森」とは元の自治体名でもあります。

山は「○○山」や「〇〇岳」や「〇〇峰」の名称が一般的ですが、主に北東北のそれほど高くない山では「〇〇森」が使われることがあります。森林限界を超えない山なら山頂も森の中です。「○○山」=「○○森」は納得できます。

「八森」の地名は東北では比較的よく見かけます。「鉢森」や「鉢盛」の亜種を加えてMAP化したところ、興味深い分布になりました。「鉢森」は国道4号線周辺が多く、「八森」を「やつもり」と読むのは宮城、「鉢盛」は東北以外です。

私はてっきり「鉢盛」が「八森」に転じたのだろうと思っていましたが、この分布からすれば、その見解はかなり微妙なものになりました。そもそも「鉢盛」自体が少なすぎます。

なお、八森のアメダス観測点は青森県境近くの日本海を見下ろす灯台に隣接しています。そういう立地ですから、やはり風は強いはずです。

日本一は徳島県の京上

標高西日本2位の剣山を抱える徳島県三好郡の旧・東祖谷山村(ひがしいややまそん)は、2006年に池田町など5町村と合併して、今は三好市になっています。アメダス観測点の京上(きょうじょう)は旧・東祖谷山村の中心部です。

祖谷山は平家落人伝説の地であり、豊臣時代と徳川時代の一揆の地です。秘境スポットとして脚光を浴びた近年は、旧・西祖谷山村の祖谷渓やかずら橋に外国人観光客が盛大に訪れているようです。

京上は最寄り駅の土讃線大歩危(おおぼけ)駅から車で40分弱です。空港は高知空港が最寄りになります。京上で最大瞬間風速の観測が始まったのは2008年です。観測史上1~10位は、いずれも冬から春にかけて記録されています。

  • 15.6m/s(2016/04/17)西北西
  • 14.6m/s(2012/12/08)南
  • 14.5m/s(2016/04/16)南西
  • 14.2m/s(2016/01/19)南東
  • 14.0m/s(2015/12/04)東南東
  • 14.0m/s(2010/03/15)西南西
  • 14.0m/s(2009/05/27)北東
  • 13.9m/s(2010/12/03)南東
  • 13.7m/s(2009/11/02)南
  • 13.6m/s(2017/01/15)南東

残念ながらストリートビューでは観測ポイントを確認することはできませんが、南斜面に設置されているはずです。「2018年の最大瞬間風速ランキング」の928地点のうち15.6m/sより数値が小さいのは京上以外には3地点です。

島根県・赤名の観測史上1位は19.8m/s、山口県・広瀬は18.2m/s、福岡県・添田は19.6m/sです。京上は2018年だけでなく通算でも最大瞬間風速がもっとも小さい観測ポイントということになります。

2017年台風18号は鹿児島を経て9月17日16時半頃に高知県西部に再上陸、四国を横断して22時頃に明石に再上陸しています。京上付近を通過したわけですが、この日の京上の最大瞬間風速は21時10分の10.8m/sに過ぎません。

台風から温帯低気圧に衰えた翌18日正午過ぎには八戸で41.7m/sの最大瞬間風速を記録してますので、けっして弱い台風だったわけではありません。室戸岬でも40m/s超を観測しています。

また、雨台風だった2015年台風11号は熊野川の氾濫により新宮市などで床上浸水を引き起こしましたが、進路としては高知県室戸市に上陸して岡山県倉敷市に再上陸しています。この台風も京上付近を通過したわけです。

2015年7月16日から17日にかけての各地の最大瞬間風速は次のとおりです。

  • 42.6m/s 室戸岬
  • 32.0m/s 徳島
  • 27.9m/s 高松
  • 27.9m/s 新居浜
  • 26.8m/s 池田(青)
  • 23.6m/s 木頭(黄)
  • 22.5m/s 高知
  • 21.1m/s 倉敷
  • 19.9m/s 安芸
  • 19.9m/s 福山
  • 09.9m/s 大栃(緑)
  • 08.7m/s 京上(赤)

京上という地名の由来にも心惹かれるものがありますが、膠と関係があるのかどうかを含めてまったくわかりませんでした。

風速計の設置高さ

連日の猛暑に今日はどこで40℃を超えたのかと、半ば楽しみに気象庁のサイトを開いていたのは2018年の夏でした。毎日見ているうちに、不思議なことに気づきました。多くの場合、県庁所在地の風速の数値がやけに大きいのです。

たとえば、2018年10月1日の台風24号襲来時の神奈川県内5地点の最大瞬間風速は次のとおりです。神奈川の風速測定点はこの5か所だけです。

  • 38.5m/s 横浜(観測史上2位)
  • 36.8m/s 辻堂(観測史上1位)
  • 36.5m/s 三浦(観測史上3位)
  • 29.8m/s 海老名(観測史上1位)
  • 29.0m/s 小田原(観測史上1位)

台風の進路に近かったのは海老名ですが、吹き返しの南方向からの風で記録が出ています。そうすると、相模湾に面した辻堂、三浦、小田原のほうが強くてもよさそうな気がします。

また、10月6日の佐賀県内6地点の最大瞬間風速は次のとおりでした。韓国に上陸した台風25号の影響で記録ラッシュとなった日です。この日の午前中、私が乗っていた新幹線は小倉-博多間で20分ほど運転を見合わせました。

  • 32.4m/s 佐賀(観測史上3位)
  • 26.9m/s 嬉野(観測史上1位)
  • 26.2m/s 伊万里(観測史上1位)
  • 26.2m/s 川副(観測史上1位)
  • 24.2m/s 白石(観測史上1位)
  • 23.2m/s 唐津(観測史上5位)

佐賀だけ突出しています。これらの現象は、風速計の地上からの高さに起因するものと思われます。佐賀は56.1m、横浜は19.8mです。しかも、横浜地方気象台は港の見える丘公園より高いところにあります。

「2018年の最大瞬間風速ランキング」の928地点のうち、風向風速計の高さ10m未満が276地点で29.7%、10mジャストは431地点で46.4%、10m超が221地点で23.8%です。上位100地点と下位100地点の内訳は次のようになります。

  • 上位100地点(10m未満27、10m22、10m超51)
  • 下位100地点(10m未満41、10m52、10m超7)

広島や八王子でも庁舎の屋上に風向風速計が設置されています。広島や八王子の数値が高いからといって風が強い街だとは言えないわけです。

宝運丸の関空連絡橋衝突

最大瞬間風速の2018年アメダス最大値は、9月4日13時38分に関空島で観測された58.1m/sです。ジェット燃料輸送船「宝雲丸」が走錨の末、関西空港連絡橋に衝突したのもほぼ同時刻です。

2018年台風21号は、9月4日火曜日の正午頃に阿南市付近に上陸、淡路島を経て、14時頃に神戸に再上陸し若狭湾へ抜けました。ほぼ進路予報どおりです。上陸時の中心気圧950hPaは1993年台風15号以来の25年ぶりでした。

JR西日本は3日正午前に4日午前10時をメドにした計画運休をリリースし、京阪神の主要な商業施設も3日のうちに4日の終日休業を発表していました。公立学校の休校やUSJの休業も前日のうちに決まっていました。

出勤したところで帰りの足は確保されていません。不要不急の外出を控えるように自宅待機とした一般企業も多かったわけです。大阪都心部の4日の昼間人口は1週間前の6割減だったとも報道されています(末尾外部リンク)。

220万戸にも及ぶ停電被害にくらべて、人的被害が死者13名にとどまったのは、強い警戒感の帰結だったのかもしれません。車を立体駐車場に預けたり、ベランダのものはすべて仕舞い込んだという話も聞いています。

さて、関空島の9月3日の最大瞬間風速は9.3m/sです。9月4日当日は朝7時50分まで5.1m/sが最大瞬間風速です。とりわけ未明の3時10分から4時10分までの時間帯は1.5m/sしかありません。

午前9時台にようやく最大瞬間風速が10m/sを超えますが、これは関空島では平常値の範囲内です。11時20分に初めて最大瞬間風速が20m/sに達し、12時40分に30m/sを超えています。足の早い台風でした。

13時20分以降の10分ごとの最大瞬間風速は、40.1m/s、52.5m/s、58.1m/s、57.1m/sと推移しています。午前中は主に東北東の風でしたが、台風が淡路島を通過し関空島に最接近すると風向きが変わります。

13時30分から14時にかけては南南西の風です。風向きの変化で横風を受けたのが走錨の出発点なのかもしれません。宝運丸は3日夜にジェット燃料を降ろして、4日は高石の製油所で積み込みの予定だったそうです。

高石は堺市浜寺地区の南に隣接する小さな市で、市域の約半分を占める埋立地にはガスタンクが林立しています。台風の日にジェット燃料の積み込みという屋外作業ができるはずがないことは想定できます。

宝運丸を所有する会社の社長は、「台風を想定した、できうる限りの対応をしていた」(末尾外部リンク)と主張しています。損害賠償の可能性があり海難審判を控えている当事者ですから、ある意味では当然の発言です。

船員の立場からこの主張を擁護する意見もありますが、私には違和感を拭えない部分が残ります。台風21号の最大瞬間風速は、神戸で41.8m/s、明石で31.6m/s、姫路で26.8m/s、小豆島の内海で20.8m/sです。

台風21号は早くから「今年最強」とアナウンスされていました。時速15ノットとしても1時間少々で明石海峡を抜けて播磨灘に出ることが可能です。危険が迫る大阪湾を脱出して姫路沖や小豆島まで退避する余裕は十分にありました。

瀬戸大橋でもトラックは横転していますので、播磨灘なら安全だったとは言えませんが、大阪湾よりはるかに危険度は少なかったわけです。並の台風であれば宝運丸の空港付近での錨泊は「最善」だったのかもしれません。

台風21号が並の台風でないことは最初からわかっていました。想定外をも想定すべきでした。暴風域から出ないまでも、危険半円を避けるという選択肢はあってもよかったのではないかと思われます。

西宮市の鳴尾川河口付近の動画です。流されているのは釣り船のようです。漂流物が堆積しているスロープの先が船着き場であろうと思われます。

【外部リンク】
NETIB-NEWS>【社長インタビュー】台風21号で関空連絡橋に激突した「宝運丸」船主~「閉じ込めの原因になった」と謝罪(前)
ライ麦畑で倒れ伏す>関空連絡橋に衝突した「宝運丸」船主、清水 満雄氏の弁明は船員から見れば妥当なものだ
気象庁>過去の気象データ検索>関空島 2018年9月4日(10分ごとの値)
ウェザーニューズ>9月4日、近畿地方に暴風や高潮をもたらした台風21号について
日本経済新聞>台風21号直撃時 大阪都心の昼間人口6割減