稲尾和久1961年の全登板記録(鉄腕稲尾)

◆旧「セットポジション」の「プロ野球のページ」で2006年12月に公開した「権藤、権藤、雨、権藤」から稲尾関係の項目を再掲載します。

3連敗から4連勝

稲尾和久に「鉄腕」だけでなく「神様、仏様、稲尾様」という無二の称号が与えられたのは1958年の日本シリーズです。

第1戦(10/11)先発●4回3失点
第2戦(10/12)(登板せず)
第3戦(10/14)完投●9回1失点
第4戦(10/16)完投○9回4失点
第5戦(10/17)完了○7回0失点、自らサヨナラ弾
第6戦(10/20)完封○9回0失点
第7戦(10/21)完投○9回1失点
▲1958年日本シリーズ

「権藤、権藤、雨、権藤」のローテーションが実在したのかどうかを調べるために図書館にこもった私は、1961年5月の縮刷版を開いていました。もともとは1961年と1962年の権藤を調べるつもりでした。数字を拾っていくだけの単調な作業ですが、つい縮刷版を読み込んでしまい、やはり稲尾が気になります。

1961年の稲尾と権藤は最後の400イニング投手です。この当時のパ・リーグはセ・リーグより10試合多い140試合制ですが、稲尾が42勝のシーズン記録を樹立したのはこの年です。最多完投で最多完了も稲尾が最後です。

時間的な制約もあります。1962年の権藤を捨てて1961年の稲尾を選ぶか、予定どおり1961年と1962年の権藤にこだわるか、これは記録マニアを自称していた私の価値観が試される選択です。前者を選びました。自分が面白いと思うことをやるのが個人サイトにとっての正義です。

1961年の全登板記録

▼H=南海ホークス、F=東映フライヤーズ、O=毎日大毎オリオンズ、B=阪急ブレーブス、Bu=近鉄バファローです(近鉄球団は1962年からバファローズ)。項目の漢字1文字は板、発、投、中、完の略です。赤字は第1試合完投後の第2試合救援登板または完投翌日の救援登板です。

4月(9試合3先発2完投5勝1敗)

開幕戦は雨で流れましたが、翌日のダブルヘッダー第1試合にスライド先発して完封でスタートしています。22日からの南海戦では3試合とも登板です。

月/日 曜スコア間隔
04/08 土中止Bu          
04/09 日2○0Bu9 11 11  
ダブル11○8Bu          
04/10 月なし          
04/11 火4○0B          
04/12 水7○0B          
04/13 木4○3B5 中3日22    1
04/14 金なし          
04/15 土中止Bu          
04/16 日7○3Bu          
ダブル1●2Bu          
04/17 月なし          
04/18 火6○5F4 中4日3     2
04/19 水3●4F3 連投4 1   3
04/20 木2●4F          
04/21 金なし          
04/22 土11○3H7 中2日53 2   
04/23 日2△2H4 連投6     4
ダブル5●8H 0/3同日7     5
04/24 月なし          
04/25 火1●6O          
04/26 水中止O          
04/27 木5○4O9 中3日84 32  
04/28 金なし          
04/29 土2○1F          
04/30 日3●11F          
ダブル2○1F4 中3日95    6
▲4月の登板

5月(10試合6先発5完投5勝2敗)

5日からの対南海4連戦には2試合登板しています。

月/日 曜スコア間隔
05/01 月なし          
05/02 火10○1B          
05/03 水中止B          
05/04 木中止B          
05/05 金11○3H9 中4日106 4   
05/06 土3●4H          
05/07 日7○6H4 中1日117    7
ダブル2●13H          
05/08 月なし          
05/09 火なし          
05/10 水7●8O          
05/11 木3○2O9 中3日128 53  
05/12 金中止O          
05/13 土1●4F11/3中1日13    1 
05/14 日2●13F          
ダブル2△2F2 連投14     8
05/15 月なし          
05/16 火中止B          
05/17 水6●7B12/3中2日15 2   9
05/18 木0△0B9 同日16  64  
05/19 金中止B          
05/20 土なし          
05/21 日0●3F          
ダブル4○1F9 中2日179 75  
05/22 月なし          
05/23 火なし          
05/24 水0●3O          
05/25 木2●4O9 中3日18 386  
05/26 金なし          
05/27 土6○2Bu          
05/28 日中止Bu          
ダブル中止Bu          
05/29 月なし          
05/30 火5○2O9 中4日1910 97  
05/31 水中止O          
▲5月の登板

6月(12試合5先発5完投7勝0敗)

22日から27日までの6日間は雨や移動日の関係で登板がありません。それでも7勝というのは驚異的です。

月/日 曜スコア間隔
06/01 木中止O          
06/02 金なし          
06/03 土2○0H9 中3日2011 108  
06/04 日8●9H          
ダブル0●5H          
06/05 月11○2Bu          
06/06 火2○1Bu3 中2日21     10
06/07 水1○0Bu3 連投2212    11
06/08 木4●6Bu          
06/09 金なし          
06/10 土4○0H9 中2日2313 119  
06/11 日12○3H          
ダブル3○0H4 連投24     12
06/12 月なし          
06/13 火5○1B          
06/14 水8○3B9 中2日2514 1210  
06/15 木1●4B          
06/16 金なし          
06/17 土7○6Bu2 中2日2615    13
06/18 日9○7Bu01/3連投27     14
ダブル3○1Bu          
06/19 月なし          
06/20 火1●2B          
06/21 水2○0B9 中2日2816 1311  
ダブル4○3B02/3同日29    2 
06/22 木4●9B          
06/23 金なし          
06/24 土0●9F          
06/25 日中止F          
ダブル中止F          
06/26 月なし          
06/27 火なし          
06/28 水2○0B9 中6日3017 1412  
06/29 木5○0B          
06/30 金5●6O2 中1日31     15
▲6月の登板

7月(12試合4先発3完投7勝3敗)

南海戦7試合のうち5試合に登板しています。先発が少なくなり、リリーフ登板が多くなっています。

月/日 曜スコア間隔
07/01 土3●6O3 連投32 4  3 
07/02 日4○3O9 3連投3318 1513  
07/03 月5○3O          
07/04 火中止F          
07/05 水中止F          
07/06 木3●4F3 中3日34 5   16
07/07 金なし          
07/08 土4●5Bu4 中1日35    4 
07/09 日5○3Bu          
ダブル6○3Bu4 連投3619    17
07/10 月なし          
07/11 火8○7H2 中1日3720    18
07/12 水中止H          
07/13 木5○3H10 中1日3821 1614  
07/14 金なし          
07/15 土2●7O          
07/16 日4●9O51/3中2日39 617   
ダブル8○6O          
07/17 月なし          
07/18 火なし          
07/19 水なし          
07/20 木なし          
07/21 金なし          
07/22 土2○1H3 4022    19
07/23 日中止H          
ダブル中止H          
07/24 月なし          
07/25 火16○3Bu          
07/26 水中止Bu          
ダブル中止Bu          
07/27 木9○2Bu1 中4日41     20
07/28 金なし          
07/29 土2○0H9 中1日4223 1815  
07/30 日1●3H          
ダブル5○4H22/3連投4324    21
07/31 月なし          
▲7月の登板

8月(15試合2先発2完投6勝2敗)

8月の先発は2試合だけです。連投が4回ありますが、22日からの阪急4連戦は3日とも登板して3勝です。

月/日 曜スコア間隔
08/01 火0●12F          
08/02 水8○6F9 中2日4425 1916  
ダブル0●6F          
08/03 木中止F          
08/04 金なし          
08/05 土中止Bu          
ダブル2○1Bu11/3中3日45     22
08/06 日3○0Bu          
08/07 月なし          
08/08 火1●3B          
08/09 水14○2B9 中3日4626 2017  
08/10 木1●3B          
08/11 金なし          
08/12 土6○1O3 中2日47     23
08/13 日6○5O6 連投48     24
ダブル1●5O          
08/14 月なし          
08/15 火0●2H51/3中1日49 7   25
08/16 水1●2H          
08/17 木3●5H32/3中1日50 8   26
08/18 金なし          
08/19 土中止F          
08/20 日3●5F          
ダブル2●8F          
08/21 月なし          
08/22 火3○2B51/3中4日5127    27
08/23 水3○2B          
ダブル5○4B41/3連投5228    28
08/24 木4○3B1 3連投53     29
08/25 金なし          
08/26 土7○4O3 中1日5429    30
08/27 日0●2O31/3連投55     31
ダブル4○3O2 同日5630    32
08/28 月なし          
08/29 火4○2Bu          
08/30 水0●2Bu42/3中2日57     33
08/31 木3○2Bu31/3連投58     34
▲8月の登板

9月(13試合6先発6完投7勝4敗)

17日からの5日間が6連戦になっていますが、完投・連投・中1日で完投・連投で1勝3敗です。

月/日 曜スコア間隔
09/01 金なし          
09/02 土3●8O          
09/03 日6○3O9 中2日5931 2118  
ダブル1●2O          
09/04 月なし          
09/05 火9○4F32/3中1日6032    35
09/06 水1●8F          
ダブル0●1F82/3連投61 9   36
09/07 木6○4F          
09/08 金なし          
09/09 土2○1H9 中2日6233 2219  
09/10 日6○2H          
ダブル1○0H32/3連投6334    37
09/11 月なし          
09/12 火中止B          
09/13 水4○1B11/3中2日64     38
ダブル3○2B9 同日6535 2320  
09/14 木中止B          
09/15 金なし          
09/16 土中止O          
09/17 日4○0O9 中3日6636 2421  
ダブル2●10O          
09/18 月2●3F11/3連投67 10   39
09/19 火1●9F          
09/20 水2●3F8 中1日68 112522  
09/21 木3●4F32/3連投69 12   40
09/22 金なし          
09/23 土2●3H          
09/24 日2○0H31/3中2日70     41
ダブル3●5H          
09/25 月なし          
09/26 火中止Bu          
09/27 水8○2Bu9 中2日7137 2623  
09/28 木0●2Bu          
ダブル2○1Bu          
09/29 金なし          
09/30 土6○0B          
▲9月の登板

10月(7試合4先発2完投5勝2敗)

10月1日は1日2勝です。15日の最終登板は6イニング2失点でした。

月/日 曜スコア間隔
10/01 日10○3B7 中3日7238 27   
ダブル5○4B3 同日7339    42
10/02 月なし          
10/03 火なし          
10/04 水1●2Bu9 中2日74 132824  
ダブル3○0Bu          
10/05 木中止Bu          
10/06 金なし          
10/07 土2○1Bu2 中2日7540    43
10/08 日6○1F          
ダブル4○2F9 連投7641 2925  
10/09 月なし          
10/10 火なし          
10/11 水3○1B2 中2日7742    44
10/12 木なし          
10/13 金なし          
10/14 土1●11O          
10/15 日0●2O6 中3日78 1430   
ダブル3●4O          
▲10月の登板

登板間隔と対戦チーム別

登板間隔(暦日基準)は次のとおりです。ダブルヘッダーの1日2試合登板が6回で、うち1回は第1試合完投後の救援登板です。連投は20回(3連投2回)で、完投翌日の救援登板が5試合あります。

同日6
連投20
中1日12
中2日20
中3日12
中4日5
中5日0
中6日1
除外2
78
▲登板間隔

この年のパ・リーグは140試合制です。稲尾は優勝した南海には11勝2敗でした。2位東映には負け越しています。シーズン最多103敗を記録した近鉄戦には3試合しか先発していません。開幕カードの次がシーズン終盤の9月27日です。もはや眼中にないとでも言いたげな起用です。

回数勝率
18112175011962/3南海85496.629
145614428692/3東映83525.611
169409716962/3大毎72662.521
1611117618851/3阪急83843.389
1461033110552/3近鉄361031.261
78421433025543404
▲対戦チーム別の登板数

もし稲尾がいなかったら…

1961年の稲尾は最多勝で防御率1位で勝率1位でした。最多完投で最多完了という鉄腕ぶりです。

  • 78試合(登板試合78は6位タイ)
  • 404回(投球回数は今もパ・リーグ記録)
  • 25完投
  • 42勝(シーズン勝利数はプロ1位タイ)
  • 353奪三振(奪三振353はプロ2位、パ・リーグ記録)
  • 防御率1.69
  • 勝率.750

1961年ライオンズの投手成績は次のとおりです。稲尾はチーム試合数の半分以上に登板して、チーム81勝の半分以上となる42勝です。

登板勝利投球回奪三振防御率
ライオンズ1408112442/39432.83
稲尾和久78424043531.69
畑隆幸49132092/31662.87
若生忠男4191691232.82
55.7%51.9%32.5%37.4%3.38
▲1961年ライオンズの3本柱

稲尾以外の西鉄投手の防御率を計算すると3.38になります。防御率3.38の投手が404イニングを投げると、自責点は「152」です。稲尾の「76」のちょうど2倍です。ライオンズの失点は「485」でしたので、これに「76」を足すと、チーム得点の「545」を上回ります。

1961年のライオンズに稲尾がいなければ、西鉄は大毎オリオンズの後塵を拝してBクラスに甘んじていたことになります。

楽しい?想像としては、「もし権藤が地元のライオンズに入っていたとしたら…」というのがあります。単純に2人の勝ち星を足し算すると、実に77勝となります。ホークスは85勝で優勝していますので、これだけでもう「マジック」は一桁です。

もっとも、その場合には1戦目稲尾、2戦目権藤で、3戦目は2人がリリーフでスタンバイする布陣になり「権藤、権藤、雨、権藤」と呼ばれることはなかったわけです。のちに近藤貞雄氏が「投手分業制」を唱えることもなかったかもしれず、稲尾か権藤のどちらかがリリーフ専業に回って「8時半の男」を名乗ったかもしれません。確実に言えることは、近鉄球団の負けが「103」では済まなかっただろうということですが…。

こんな記事がありました。「インニング」は原文のとおりです。当時はそういう表記だったようです。

パ・リーグ中沢会長は<略>今シーズンつぎのことを実行すると6日発表した。<略>投手の投球回数に最高290インニングのワクを設ける。昨シーズンは杉浦(南海)の332、米田(阪急)小野(大毎)304、梶本(阪急)297インニング投げているが、過度の登板は投手の寿命をつめるから、今シーズンは290インニングを一応の制限目標とした。

1961(昭和36)年4月6日付「毎日新聞」

290イニングの根拠がよくわかりませんが(試合数の2倍なら280)、このシーズン前の「制限目標」は強制力のあるものではなかったようです。

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