◆旧「セットポジション」の「スコアのページ」で「最多ファウルは11本」と題していたページを焼き直しました。
ファウル20本
どういう経緯だったのかすっかり忘れてしまいましたが、2006年の社会人野球・都市対抗九州予選第2代表決定戦で1打席20本のファウルを打った打者がいるということを聞いた私は、所属チームに問い合わせました。
★ファウル20本(25球) 打者:久米、投手:江波戸
SFBFF FFFFF FFFFB FFBFF FFFFH(サードフライ)
▲「S」見逃し、「K」空振り、「B」ボール、「F」ファウル、「H」インプレイの打球。以下共通です。
20本のファウルを打った打者は(長崎日大高→国学院大→)三菱重工長崎の久米健、25球投げたのは(波崎柳川高→中央大→)ホンダ熊本の江波戸秀悟で、8回表無死三塁の場面だったそうです。おそらくメールで問い合わせたのでしょうが、そのメールも今は残っていません。
どうやら私をけしかけたのは、市原在住(当時)のH氏だったようです。コレクターとしての私の自負をくすぐったに違いありません。2006年ですから、手紙ではなくメールだったはずです。実は「セットポジション」には「三菱重工長崎の先攻と早打ち」というページもありました。
社会人野球は狭い世界です。対応していただいたマネージャーがそのページを読んでいる確率はかなり高いのです。内心は「お前か!」だったのかもしれませんが、快く応じていただきました。その節はありがとうございました。
ネット検索してみましたが、これを超える国内の記録は見つかりませんでした。超えないまでも迫るものは、きっとどこかに埋もれているはずです。掘り出した張本人としては、10数年経過した今でも上書きされず「日本記録」を保持してことに失望を感じないわけでもありません。
なお、2008年4月27日の阪神大学リーグでは、6回裏に(天理高→)天理大の9番打者・森田勇人が連続15本のファウルを打ったそうです。相手投手は(三本松高→)関西外国語大の水田憲です。こちらは情報提供をいただきました。
★15球連続ファウル 打者:森田、投手:水田
FBFFF FFFFF FFFFF FFS(三振)
プロ野球の記録
NPB公式戦ではファウルが15本、相手投手に投げさせた球数は19球が最高です。
1947/11/11 | 後楽園 | 松井信勝 | 太陽 | 対金星 | 重松道雄 | 13 | 19 | 四球 |
2012/07/07 | 札幌ド | 明石健志 | ソフトバンク | 対日本ハム | 乾真大 | 15 | 19 | 四球 |
2013/08/24 | 横浜 | 鶴岡一成 | DeNA | 対巨人 | 山口鉄也 | 14 | 19 | 三振 |
1962/10/21 | 甲子園 | 久保田治 | 東映 | 対阪神 | 小山正明 | 13 | 19 | 投ゴ |
最下段の久保田の事例は東映の3勝2敗1分けで迎えた日本シリーズ第7戦です。両チーム0対0で延長に入り、延長12回で東映が初優勝を決めています。投手の久保田は9回無失点で降板しています。相手投手の小山は163球で10回まで投げています。
連続ファウルは、1977年5月31日の対中日戦で新浦壽夫が戸田善紀から打った12球連続が最高のはずです。なお、1993年のオープン戦では巨人の後藤孝志がダイエーの足利豊に20球投げさせています。ファームにはもっと埋もれた記録があるのかもしれません。
MLBの公認記録(1988年以降)は1打席21球のようです。2018年4月にジャイアンツのブランドン・ベルトがドジャースのジェイミー・バリアの21球目を打ってライトフライです。フルカウントから11球連続ファウルということですので、ファウルの本数としては少なくとも16本以上になります。
メジャーの未公認記録としてはファウル24本、球数30球があります(宇佐美徹也『プロ野球 記録 奇録 きろく』文春文庫)。
★ファウル24本(30球) 打者:アップリング、投手:ラフィング
SSFFF FBFFF FFFBB FFFFF FFFFF FFFFB(四球)
首位打者2回のルーク・アップリング(ホワイトソックス)が、2年前に最多勝投手だったレッド・ラフィング(ヤンキース)から1940年9月19日に打ったという1打席24本です。
ファウル6本以上の出現率
私が球場で見た中ではファウル11本、相手投手の球数17球が最多です。連続ファウルとしては9本です。1打席に8本以上のファウルを打った打者は次のとおりです。
フ | 球 | 打席 | 年月日 | 打者(所属) | 順守 | 結果 |
8 | 14 | BSBSF FFFFF FFBB | 94/05/04 | 川相昌弘(巨人) | 2遊 | 四球 |
8 | 13 | SBFBF FFFBF FFH | 94/08/08 | 山*(関東一高) | 2二 | 遊ゴ |
9 | 14 | SFBFF FBBFF FFFK | 94/10/09 | 三沢興一(早稲田大) | 8投 | 三振 |
10 | 15 | BSBFB FFFFF FFFFK | 95/07/23 | 木村(松下電器※) | 5中 | 三振 |
9 | 15 | BKBBS FFFFF FFFFH | 95/10/21 | 伊藤修(帝京大) | 1中 | 右犠 |
10 | 13 | FFFFF BFFFF BFH | 96/07/13 | 小*(開成高) | 7中 | 三併 |
8 | 13 | BSBFB FFFFF FFH | 96/07/17 | イチロー(オリックス) | 1右 | 中3 |
11 | 16 | SBFFB FFFFF FBFFF H | 96/09/07 | 田口昌徳(日本ハム) | 捕 | 遊ゴ |
8 | 13 | SFFBF BFFBF FFB | 97/09/21 | 清水(九州共立大) | 7捕 | 四球 |
9 | 13 | BFFFB BFFFF FFB | 98/06/14 | 神戸(流通経済大) | 5右 | 四球 |
10 | 12 | FFBFF FFFFF FH | 98/08/10 | 山*(オ****) | 5一 | 中安 |
11 | 17 | SBSFF FBFFF FFFFB FH | 01/06/13 | 農山(東亜大) | 8二 | 左安 |
8 | 12 | BFSFB FFFFF FK | 01/07/22 | 根岸(三菱自動車水島) | 2中 | 三振 |
8 | 14 | SSBFF FFFBF BFFH | 01/09/01 | 吉田(東洋大) | 3中 | 中3 |
11 | 17 | SSFBF FFFFB FFFBF FB | 02/06/12 | 農山(東亜大) | 9二 | 四球 |
▲青字はバント(の構え)です。※印の木村は松下からデュプロへの補強選手です。
ファウル6本以上なら、10試合で1回ほどの出現率になります。高校野球で少ないのは、例の特別ルールで縛りがかかっているからです。
プロ | 7.8試合に1回 | 47例/368試合 |
社会人 | 11.3試合に1回 | 34例/384試合 |
大学 | 9.3試合に1回 | 52例/485試合 |
高校 | 37.4試合に1回 | 9例/337試合 |
必ずしも打者有利ではない
1打席にファウルを6本以上打った打者(計147例)の打率と出塁率は次のとおりです。
打率 .227=27安打/119打数
出塁率 .361=(27安打+26四死球)/(119打数+26四死球+2犠飛)
ファウルで粘ったからといって、その打席が必ずしも打者優位に展開するわけではありません。あくまでもカウントどおりです。
6本以上のファウルを打った次の打者の打率も調べてみました(同一イニングのみ)。
打率 .340=32安打/94打数
出塁率 .408=(32安打+14四死球)/(94打数+14四死球+1犠飛)
ファウル効果は次打者にもたらされるもののようです。
ただし、次のイニングまで影響を与えるものではないのかもしれません。
147例が属するイニングの平均得点(121/147)→0.82点
その次のイニングの平均得点(71/123)→0.58点
二番打者のワザ
147例を打順別・ポジション別に集約してみました(代打で起用されて守備についた選手のポジションはそのポジションでカウント)。2番打者が多く、ファーストが少ないというのは納得です。
18 | 1番 | 9 | 投手 |
26 | 2番 | 17 | 捕手 |
14 | 3番 | 11 | 一塁手 |
16 | 4番 | 14 | 二塁手 |
16 | 5番 | 17 | 三塁手 |
12 | 6番 | 16 | 遊撃手 |
11 | 7番 | 15 | 左翼手 |
12 | 8番 | 18 | 中堅手 |
9 | 9番 | 17 | 右翼手 |
8 | 代打 | 9 | 指名打者 |
5 | 守備 | 4 | 代打のみ |
私がスコアをつけるようになったのは1991年3月でした。当初はボールカウントは記入していませんでした。その年の4月11日、会社帰りに神宮に寄りましたが、スコアブックを持っていませんでした。
スワローズの宮本賢治は第2打席にファウルで粘ったあげくに四球で出塁しました。そのイニングの先頭打者でした。ラジオ中継のアナウンサーが、これが10球目と言ったのか、10本目のファウルと言ったのか、どちらかを語っていました(おそらく前者)。
ボールカウントまで記入すれば、そういうこともわかるわけです。やがて、私はボールカウントも書き入れるようになりました。
ファウルが何本か続くと、「前に飛ばせ」というお約束のヤジが、かなり高い確率で聞こえてきます。牽制球のときの「バッターに投げろ」も似たようなものです。ファウルや牽制球では試合は進みません。
スコアをつけていると、「もっとファウルを打て」と願っていることも少なくはありません。何本打ったか、何球投げさせたか、記録に残るからです。よそ様が苛立っているときに、悠然と余裕をかましていられるのは人間ができているからに違いありません(キッパリ)。
鶴岡と明石の映像を見ましたが、途中からスタンドの雰囲気が変わってくるのがよくわかります。打者にばかり焦点が当たりがちですが、ストライクを投げ続ける投手こそ、むしろ称賛されるべきではないかと私は思っています。
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