BCGワクチン接種の有無と新型コロナの死亡率

Wikipedia「BCG」のページに「世界のBCG接種状況」の表が示されています。

アジア諸国 現在基本的に全員接種。
 オーストラリア 1980年半ばに全員接種停止。
 ニュージーランド 1963年から段階的に全員接種停止。
 イスラエル 1982年に全員接種停止。
アフリカ諸国 現在基本的に全員接種。
中南米諸国 現在基本的に全員接種。
 エクアドル 全員接種なし。
 米国 全員接種なし。
 カナダ 全員接種なし。
東欧諸国 現在基本的に全員接種。
西欧諸国 現在全員接種なし
 スエーデン 1975年に全員接種停止。
 デンマーク 1979年に全員接種停止。
 スペイン 1981年に全員接種停止。
 スイス 1987年に全員接種停止。
 ベルギー 1989年に全員接種停止
 オーストリア 1990年に全員接種停止。
 アイルランド 1996年に全員接種停止
 ドイツ 1998年に全員接種停止。
 フランス 2004年に全員接種停止。
 イギリス 2005年に全員接種停止。
 フィンランド 2006年に全員接種停止。
 ノルウェー 2009年に全員接種停止。
 チェコ 2010年に全員接種停止。
 ポルトガル 現在基本的に全員接種。
 ギリシャ 現在基本的に全員接種。

Wikipedia「BCG」(2020/05/23時点)

出典の「THE BCG WORLD ATLAS 2nd Edition」と突き合わせてみたわけですが、下線部の5か所が違うようです。もっとも深刻なのはアイルランドです。出典元サイトではアイルランドは「Current national BCG vaccination policy for all」のカテゴリーで接種率94%です。

今回は致死率(死亡者/感染者)ではなく、人口比(人口1万人当たりの死亡者数)でBCGワクチン接種状況との関係を探ってみます。表の右端「BCG」の項目で「current」が原則全員接種の国です。年号が入っているのは全員接種をやめた年です。「past」や「specific」は全員接種の国ではありません。シンガポールと香港は「THE BCG WORLD ATLAS」の地図で選択できませんが全員接種です。

国・地域感染者死亡者人口比BCG
ベルギー56,5119,1867.961specific
スペイン233,03727,9405.9781981年
イタリア228,00632,4865.3652001年
イギリス252,24636,1245.3492005年
フランス181,95128,2184.3332007年
スウェーデン32,1723,8713.8571975年
オランダ44,9005,7943.389specific
アイルランド24,3911,5833.243current
アメリカ1,577,75894,7292.879specific
スイス30,6941,8982.2091987年
エクアドル35,3062,9391.692past
カナダ82,7506,2671.67560-70年代
ポルトガル29,9121,2771.249current
ドイツ179,0218,2120.9831998年
デンマーク11,3805610.9721986年
ペルー108,7693,1480.968current
ブラジル310,08720,0470.950current
イラン129,3417,2490.874current
オーストリア16,4046330.7071990年
ルーマニア17,5851,1590.599current
フィンランド6,4933060.5532006年
メキシコ59,8676,5100.510current
スロベニア1,4681060.5102005年
トルコ153,5484,2490.509current
ハンガリー3,6784760.491current
シンガポール30,426230.040全員接種
ノルウェー8,3092350.4372009年
イスラエル16,6902790.328current
チリ57,5815890.311current
チェコ8,7573060.2862010年
ポーランド20,3799730.257current
アラブ首長国連邦26,8982370.243current
クロアチア2,237990.240current
ロシア326,4483,2490.223current
ベラルーシ33,3711850.196current
ギリシャ2,8531680.160current
ウクライナ20,1485880.134current
コロンビア18,3306520.130current
サウジアラビア65,0773510.102current
フィリピン13,5978570.079current
エジプト15,0036960.069current
南アフリカ19,1373690.063current
日本16,4247770.061current
韓国11,1422640.052current
スロバキア1,502280.0512012年
パキスタン50,6941,0670.049current
ニュージーランド1,504210.044past
オーストラリア7,0951010.04080年代
インドネシア20,7961,3260.036current
中国84,0794,6380.032current
バングラデシュ30,2054320.026current
インド119,4193,5990.026current
香港1,06340.005全員接種
台湾44170.003current

たしかに全員接種の国の死亡率は相対的に低いわけですが、それは結局、欧米とそれ以外の国の差異でしかありません。人口1万人当たり死亡者数の上位はヨーロッパと北米で独占されているのです。

イギリス VS アイルランド

イギリスとアイルランドは隣国です。イギリスは全員接種ではなく、アイルランドは全員接種です。イギリスの新型コロナ死亡者数は1万人当たり5.349人で世界4位、アイルランドは3.243人で世界8位です。

ただ、人口密度はイギリスが250人台で、アイルランドが64人台です。人口集中地区の感染率が高いわけですので、必ずしもBCG接種の有無が反映されているとは言えないと私は判断しますが、BCG有効説に1票入りました。

ドイツ、チェコ、スロバキア VS ポーランド

全員接種でないドイツの死亡率は0.983人、チェコは0.286人、スロバキアは0.051人です。この3か国に接するポーランドは0.257人です。2012年に全員接種をやめたスロバキアより全員接種を続けているポーランドのほうが死亡率が高くなっています。

人口密度はドイツ230人台、チェコ130人台、スロバキア110人台、ポーランド120台です。この4か国の中では、死亡率の順番は人口密度の順番と一致します。顕著な差はないように思われます。

オーストリア付近

オーストリア、スロベニア VS ハンガリー、クロアチア

オーストリアとスロベニアは全員接種ではありません。ハンガリーとクロアチアは全員接種です。死亡率はオーストリア0.707人、スロベニア0.510人、ハンガリー0.491人、クロアチア0.210人です。

人口密度に大差はありません。オーストリア99人台、スロベニアも99人台、ハンガリー107人台、クロアチア78人台です。クロアチアはともかく、全員接種で人口密度の高いハンガリーがオーストリアやスロベニアより死亡率が低いことからBCG有効説2票目です。

スペイン VS ポルトガル

1981年と比較的早い時期に全員接種をやめたスペインの死亡率は5.978人です。隣国ポルトガルは全員接種を続けており死亡率1.249人です。スペインの人口密度は88人台、国土の狭いポルトガルは116人台です。

この両国の比較ではBCGワクチンが新型コロナが有効だと言えそうです。これで有効説3票目になります。まあ、スペインの医療崩壊をどう評価するかという問題はあるものと思われます。

アメリカ VS メキシコ

全員接種でないアメリカの死亡率は2.879人、全員接種のメキシコは0.510人です。人口密度はアメリカ32人台、メキシコ55人台です。アラスカを含むアメリカの人口密度が高いはずはありませんが、BCG有効説は4票となりました。

エクアドル VS ペルー、コロンビア

エクアドルは欧米以外でもっとも死亡率の高い国です。全員接種でないエクアドルの死亡率は1.692人、全員接種の隣国ペルーは0.968人、コロンビアは0.130人です。人口密度はエクアドル48人台、ペルー22人台、コロンビア40人台です。エクアドルがいつ全員接種をやめたのかわかりませんが、有効説はこれで5票です。

…というわけで、BCGワクチン有効説が5勝1分けでしたが、話がこれで終わるわけでもありません。死亡率を左右しているのは高齢者のはずです。イギリスが全員接種をやめたのは2005年です。新型コロナで亡くなったイギリスの高齢者はBCG接種を受けていたことになるはずです。

また、オーストラリア0.040人、ニュージーランド0.044人のように日本や韓国より死亡率が低い国があることをどう説明できるのかという問題も残ります。ただ、BCG有効説に立つと、本来なら死亡率が高くなるはずの幼年者が新型コロナに強いことと符合するわけです。

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