宝達志水町(ほうだつしみずちょう)の押しの清水伝説

アメダス宝達志水

アメダス宝達志水は、2020年1月13日と12月22日に日降水量全国1位でした。典型的な多雨地域というわけではなさそうですが、志水辰夫ファンとしてはその地名が気になります。所在地は石川県の宝達志水町坪山です。

中能登
中能登(地理院タイルを加工)

能登半島の付け根の日本海側になります。雨量のみの観測施設です。アメダス地点の周囲は畑です。

アメダス宝達志水

「宝達志水町」ですから、宝達町と志水町が合併したのだろうと思いたくなりますが、そういうわけではありません。2003年8月、羽咋市(はくいし)が志雄町(しおまち)と押水町(おしみずまち)に対して合併協議を申し入れ、双方の町で3市町合併に関する住民投票が実施されます。

羽咋市に隣接する志雄町では反対が6割に達し、押水町でも46.5%が反対でした。この結果を受けて、羽咋市を排除した形で志雄町と押水町が2005年3月に合併します。アメダス宝達志水は2003年に宝達山から移転しており、合併前の地点名は「押水」だったようです。

新町名が宝達志水町

合併後の新町名として、志雄町側は両町から1文字ずつとった「志水町」を、押水町側は能登最高峰の宝達山から「宝達町」を推していたそうです。協議が整わずに両町案を合体させた「宝達志水町」に落ち着いたことになります。

宝達山も宝達駅も押水町ですので、「宝達町」案は志雄町としては受け入れにくいものだったに違いありません。志雄町側の「志水町」案は全国的にありがちな合成地名です。押水町としても「おしみず」から「お」が抜けるだけです。まとまる可能性があるのは「志水町」案だったはずです。

2000年国勢調査では志雄町が人口7,348人、押水町が8,543人です。面積もわずかに押水町のほうが広いというほぼ対等な関係だったわけです。ただ、「ほぼ対等」とは微妙な関係でもあります。志雄町側が対等だと思っていても、押水町側ではそうではなかったのかもしれません。

宝達志水町の町役場は2010年4月から羽咋市との市町境に近い旧・志雄町役場を継承しています。庁舎と名前で実を取るか名を取るか痛み分けになるケースが多いことを考えると、名称に関しては押水町側の意向が強めに働いたものと思われます。

志雄町の町の花はヤマユリ、町の木はシイ、押水町の町の花はコブシ、町の木はクロマツでしたが、宝達志水町の町の花は桜で、町の木はブナです。まあ、そんなものでしょう。どちらもそれほどのこだわりはなかったはずです。それぞれ1校だった町立中学校は2015年に旧・押水中学校に集約され、宝達中学校に改称されています(形式的には新設)。

「志水」の地名は、京都、長野、愛知、福岡、熊本などにありますが、自治体名としての「志水」は宝達志水町が初めてです。

弘法大師伝説の旧・押水町

羽咋市千里浜から旧・志雄町北浜にかけての「なぎさドライブウェイ」は観光バスが走れる砂浜として有名です。このため、「なぎさ町」や「渚町」案も新町名の最終8候補に残っています。

さて、Wikipedia「押水町」には次のような記述があります。

町内の紺屋町地区には町の名称の由来ともなった、押しの泉と呼ばれる湧水がある。古くから飲用等にも利用されてきた清澄な水である。この湧水の由来として、弘法大師がこの地を通った時に水を求めたところ、老婆が一杯の水を恵んでくれた。その礼として大師が杖で岩を押したところ美味な清水が湧き出たという、いわゆる弘法水伝説がある。

Wikipedia>押水町

弘法大師とされる人物が杖で岩を押して水を出す能力を持っているのなら、わざわざ老婆に水を求める必要はないはずです。石川県教育センターのWebサイトには次のように記載されています。

「ばあさんや、のどがかわいてしかたがない。たのむから水を一ぱいよんで下され。」
と、たのみました。
「ようこそ、ようこそおいで下さった。まあここで休んで下され。ところで、ごぼさま、このへんはきれいな水のないところでねえ…、弱ったことじゃ。」
それを聞いた坊さんは、
「それは困ったことじゃなあ。」
と途方に暮れた風でした。
「そんならごぼさま、ちょっと待っとってくさんち、向こうの在所まで行ってもろうてくるさけ。」
待てどくらせど、おばあさんは帰ってきません。坊さんは、自分ののどのかわきも忘れて心配していました。
かなりの時間が過ぎ、やがて日も沈もうとするころ、汗だくになって手おけを持ち、小走りにやってくるおばあさんの姿が見えました。
坊さんは、合しょうしながらおばあさんを玄関先に迎えました。そして、この水をうまそうに飲み、心からお礼を言いました。

中能登地区の民話・方言>押の泉(おしのいずみ)

水を求められた老婆は僧侶を待たせて、隣村から「きれいな水」を汲んできたと言うのです。老婆の家に水の備えがまったくなかったとは思えません。いずれにせよ、出来のいいフィクションではありません。

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