東京の新型コロナ検査数が1日2000人(週1.4万人)で固定されていたとしたら、陽性者数はどう推移したのかグラフ化してみました。あくまでも計算上の数値ですが、少しは安心感が得られるものかもしれません。
元になる数値は「都内の最新感染動向>モニタリング項目(4) 検査の陽性率」(7/10 19:30更新)です。この集約は1日遅れですので、7月10日に発表された243人はまだ反映されていません。また、判明日ベースですので、日々の発表数とは異なります。数値をExcelにコピーして1週間ごとに足し算しました。グラフの「7/9」とは7/9までの1週間の合計値です。グラフを作成した表も掲げておきます。
月日 | 週陽性数 | 週検査数 | 週陽性率 | 換算値 |
7/9 | 1,000 | 15,708 | 6.4% | 891 |
7/2 | 610 | 13,319 | 4.6% | 641 |
6/25 | 359 | 11,257 | 3.2% | 446 |
6/18 | 223 | 11,114 | 2.0% | 281 |
6/11 | 174 | 10,732 | 1.6% | 227 |
6/4 | 170 | 8,299 | 2.0% | 287 |
5/28 | 85 | 6,126 | 1.4% | 194 |
5/21 | 57 | 6,955 | 0.8% | 115 |
5/14 | 132 | 8,261 | 1.6% | 224 |
5/7 | 117 | 2,731 | 4.3% | 600 |
4/30 | 232 | 2,111 | 11.0% | 1,539 |
4/23 | 418 | 2,208 | 18.9% | 2,650 |
4/16 | 577 | 1,933 | 29.8% | 4,179 |
4/9 | 497 | 2,015 | 24.7% | 3,453 |
4/2 | 296 | 1,537 | 19.3% | 2,696 |
3/26 | 86 | 372 | 23.1% | 3,237 |
3/19 | 29 | 373 | 7.8% | 1,088 |
3/12 | 22 | 456 | 4.8% | 675 |
3/5 | 16 | 401 | 4.0% | 559 |
2/27 | 9 | 253 | 3.6% | 498 |
東京のもともとのピークは4月16日までの1週間ですが、この週の検査数は1933人で、陽性率は29.8%です。29.8%の陽性率のまま、もし検査数が1.4万人だったとすれば、4179人の陽性者が出たことになります。
7月9日までの1週間の検査数は1.5万人以上です。検査数が1.4万人だったとすると、ジャスト1000人の陽性者数は計算上891人となります。五輪延期が決まる前の3月3連休の数値にほぼ匹敵するわけです。
重傷者数は一桁ですが、陽性率がすでに危険水域に差し掛かっていることが問題になるわけです。当面注目されるのは、軽症者用の病床使用率ということになりますが、じわじわ上昇中です。
梅雨明けとともに熱中症患者が増えることは目に見えています。その際、救急車のたらい回しは当然のように増えることでしょう。東京の実効再生産数は6月以降1~2の間をキープしたままです。
兵庫県知事の発言は別にしても、東京(周辺)から全国に波及しているのは明白です。5月下旬から6月にかけて、東京(周辺)と北海道以外では散発的な発生でした。北海道はようやく落ち着いてきたところです。東京(周辺)の残り火が拡散したことは否定できません。
対応策はたぶん2つしかなく、(1)検査を増やして陽性者を隔離しながら経済を回すか、(2)補償のうえで休業を求めるかです。都知事の役割は毎日の感染者数を発表するだけのスポークスマンではありません。
感染状況 | 医療提供体制 |
感染が拡大している | 医療体制が逼迫している |
感染が拡大しつつある | 体制強化が必要である |
感染拡大の兆候がある | 体制強化の準備が必要である |
一定程度にとどまっている | 通常の体制で対応可能 |
医療提供体制の4段階コメントが引き上げられましたが、4段階の一番上に行かないような施策が求められているのは今です。都知事が目指す1日1万人の検査体制を近々に整えることができないのなら、もう1つの選択肢しかありません。総理から2万人とか3万人の検査能力という話を聞いたのは遠い昔のような気もしますが、これまでの1日の検査数のMAXは全国で1.2万人です。
菅官房長官の記者会見での発言 「政府としては体調の悪い方などには県をまたいだ移動は控えていただきたいと考えていますが、一律にそうした移動の自粛を要請する必要があるとは考えていない」(首相官邸 内閣官房長官記者会見7月7日の動画 7分13秒~)を受けて、都知事は8日の囲み会見で 「都外への外出等々については、特にお体の具合悪い方は出張等々あるかもしれませんけれども、どうぞそこはですね。気をつけていただいて、その上でお願いをしたいと思います」とスタンスを変えました。
不思議な話です。厚労省の新型コロナQ&Aには次のように記載されています。
一般的に、肺炎などを起こすウイルス感染症の場合は、症状が最も強く現れる時期に、他者へウイルスを感染させる可能性も最も高くなると考えられています。
厚労省Q&A「無症状病原体保有者(症状はないがPCR検査が陽性だった者)から感染しますか。」
しかし、新型コロナウイルスでは、症状が明らかになる前から、感染が広がるおそれがあるとの専門家の指摘や研究結果も示されており、例えば、台湾における研究では、新型コロナウイルス感染症は、発症前も含めて、発症前後の時期に最も感染力が高いとの報告がされています。
政府や都知事が言うように移動や外出自粛の目安を体調不良に求めるのなら、発症後の感染は防げても発症前の感染は防げないことになるはずです。つまり、ある程度は感染が広がっても構わないという論理構造にしかなりません。
実は厚労省のQ&Aは、QとAが噛み合っておらず、無症状陽性者に感染力があるともないとも示されていません。3~4割が無症状陽性者からの感染だと伝えられていた時期もありましたが、今はここがぼやけています。
無症状陽性者も感染力を持つのだとすれば、それは経済を再開するには明らかに邪魔な事実です。もともと無症状陽性者からも感染が広がるということで、各国が競い合うようにロックダウンに走ったのです。症例は豊富にあるはずなのに、今になって肝心要の部分がボカされています。
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