内陸の鼻と2つの釈迦岳に偽りの看板、アメダス椿ヶ鼻

アメダス椿ヶ鼻

赤のマーカーは筑後川(支流)の源流です。周防灘や別府湾のほうがはるかに近い地点もありますが、地勢の関係でここに降った雨は西に流れて有明海に注ぎます。

椿ヶ鼻と筑後川源流
アメダス椿ヶ鼻と筑後川源流(地理院タイルを加工)

ピンクのマーカーはアメダス観測地点の椿ヶ鼻(つばきがはな、日田市前津江町)です。2020年7月7日の降水量は437.5ミリで全国1位でした。これは2020年の日降水量1位でもあります。7月3日から7月11日までの期間降水量(降り始めからの総雨量)では全国3位です。

所在観測地点期間降水量
1高知)馬路村魚梁瀬1353.5mm
2長野)王滝村御嶽山1236.0mm
3大分)日田市椿ヶ鼻1230.5mm
4熊本)湯前町湯前横谷1220.5mm
5和歌山)田辺市護摩壇山1208.0mm
6鹿児島)鹿屋市鹿屋1156.0mm
7宮崎)えびの市えびの1108.0mm
8熊本)五木村五木1097.0mm
9鹿児島)鹿屋市吉ケ別府1067.5mm
▲7/3から7/11までの期間降水量

椿ヶ鼻は2019年の年間降水量が2775.5ミリですので、今回の降り始めからの総雨量はその44%に相当します。結局、アメダス椿ヶ鼻は2020年の年間降水量が4558.5ミリで全国8位でした。

2020年4558.5ミリ8位/1293地点
2021年3079.5ミリ106位/1293地点
2022年2490.5ミリ188位/1285地点
▲アメダス椿ヶ鼻の年降水量

内陸にある「~鼻」の地名

「~鼻」の地名は、一般的には小規模な岬につけられています。たとえば、本州の最西端は下関市の毘沙ノ鼻(びしゃのはな)です。

毘沙ノ鼻
毘沙ノ鼻(地理院タイル

付近に指宿温泉、開聞岳、池田湖などの観光名所が揃う薩摩半島最南端の長崎鼻が一番有名なのかもしれません。「~鼻」は西日本に多いという印象はあります。

長崎鼻
長崎鼻(地理院タイル

「瀬戸」が陸地の地名でも使われるように、「~鼻」も内陸地名に転用されています(あるいは内陸地名が岬に転用されたのかもしれません。先後関係について確認したわけではありませんが、「~鼻」90%以上は沿岸部です)。椿ヶ鼻から40~50キロの阿蘇市には「~鼻」地名が3つあります。

象ヶ鼻、卯の鼻、妻子ヶ鼻
象ヶ鼻、卯の鼻、妻子ヶ鼻(地理院タイル

2つの釈迦岳

椿ヶ鼻のアメダス観測所は旧・前津江村の区域で、雨量のみの観測所です。雨量計の設置箇所をストリートビューで確認することはできません。2004年11月4日から観測が始まっています。標高は843mとされています。

椿ヶ鼻
椿ヶ鼻(地理院タイルを加工)

2012年7月の九州北部豪雨では、雨量計設置場所の地盤が流出したようで、1週間ほどの欠測期間があります。しばらく仮設装置で観測を継続し、崖から少し離れた今の場所に移設したようです。

2004年以前は、釈迦岳に雨量計が設置されていたようです。アメダス釈迦岳は標高1200mということですので、ほぼ山頂に近い場所になります。東峰(普賢岳)の山頂には国交省のレーダ雨量観測所があり、360度の展望所も設けられています。

2つの釈迦岳

一方、アルピニストにとっての釈迦岳とは、車では行けない福岡県最高峰の本釈迦であり、こちらには釈迦石像とともに「釈迦岳山頂1231m」という偽り!の看板が設置されています。

釈迦岳と呼ばれる山には2つのピークがあり、本釈迦は福岡・大分県境で山頂三角点が標高1229.5mです。この数字が曲者で、四捨五入すると1230mになります。一方、レーダ観測所がある東峰(普賢岳)の標高1231mは写真測量によるもののようです。

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