2022年の年間日照時間が全国4位の名瀬測候所

奄美大島

佐渡島は全島が佐渡市で、対馬も全島が対馬市です。淡路島は3市に集約されていますが、奄美大島ではあまり合併が進まず、5つの自治体が残っています。島の人口の2/3を占めるのが奄美市です。

5,817人竜郷町たつごう-ちょう奄美空港(アメダ笠利)
41,390人奄美市あまみ-し名瀬測候所
1,364人大和村やまと-そん
1,621人宇検村うけん-そん
7,319人瀬戸内町せとうち-ちょうアメダス古仁屋
▲奄美大島の5自治体(左の数値は2020年国勢調査人口)

奄美市は2006年に名瀬市、笠利町、住用村(すみよう-そん)が合併して発足しました。島内に観測所は3か所あります。下の地図では名瀬測候所(青)が内陸にあるように見えてしまいますが、名瀬港の奥ですので堤防から200mの至近距離です。

奄美大島の観測所
奄美大島(地理院タイルを加工)

名瀬測候所は奄美市の中心部です。市役所まで徒歩6分ほど、島内随一の繁華街・やんご通りも徒歩6分ほどです。

気象庁サイトでは標高3mとされていますが、ストビュー画像(↓)のフェンスの右にある電柱には海抜2mの表示があり、奄美市のハザードマップでは2mで浸水する区域に入っています。屋上設置の風速計は20.8mだそうです。

名瀬測候所の温度計

測候所で残置

全国各地の測候所は無人化されていますが、帯広と名瀬は「測候所」のままで残っている有人観測所です。名瀬の日照時間がやけに短いことに気づいたのは、去年12月の観測値を集約した今年初めのことでした。

私は「まるで日本海側のような数値です」と記述しましたが、どうやら数値だけではないようです。名瀬と瀬戸内町のアメダス古仁屋、それに鹿児島地方気象台の月間日照時間の平年値を比較してみました。

名瀬、古仁屋、鹿児島の月間日照時間
気象庁>名瀬 平年値(年・月ごとの値) 主な要素など

7月と8月の日照時間は鹿児島とさほど遜色はありませんが、10月から5月は大差です。ついでに、降水量も比較してみます。

名瀬、古仁屋、鹿児島の月降水量
気象庁>古仁屋 平年値(年・月ごとの値) 主な要素など

冬になると大陸からの寒気が暖かい東シナ海に流れ込み、雲を生じさせるということのようです。そこはおおむね想像の範囲(まるで日本海側)ですが、それなら屋久島も種子島も牛深も福江も同じことです。名瀬(なぜ)が極端に少ないのはなぜなのかというのが私の疑問なのです。

2023年度移転予定

名瀬測候所は区画整理事業の関係で2023年度中に移転することが決まっているようです。

名瀬測候所の移転予定地
国土交通省>名瀬第2地方合同庁舎新規事業採択時評価資料

ちっとも珍しくありませんが、名瀬の年平均気温は右肩上がりです。

名瀬の年平均気温の推移
気象庁>観測史上1~10位の値(年間を通じての値)名瀬

ところが、最高気温は1960年7月9日に観測された37.3℃が更新されていません。60年以上前の最高気温記録が残っているきわめて貴重な観測所です。36℃オーバーも2001年が最後です。

名瀬の年最高気温の推移
気象庁>観測史上1~10位の値(年間を通じての値)名瀬

2020-2022年の観測値

名瀬測候所の2020年から2022年の観測値は次のとおりです(順位は降順)。年平均気温は3年連続で全国31位です。30位との落差があるのかもしれません。

年降水量3039.0ミリ133位/1293地点
年平均気温22.0℃31位/922地点
年最高気温34.4℃633位/922地点
年最低気温9.2℃27位/922地点
年較差25.2℃893位/922地点
年平均風速2.8m/s239位/921地点
年日照時間1275.5時間812位/841地点
▲2020年の観測値
年降水量2975.0ミリ124位/1293地点
年平均気温21.8℃31位/921地点
年最高気温34.2℃636位/921地点
年最低気温7.3℃29位/921地点
年較差26.9℃889位/921地点
年平均風速2.8m/s275位/920地点
▲2021年の観測値
年降水量3121.5ミリ56位/1285地点
年平均気温22.1℃31位/916地点
年最高気温34.8℃504位/916地点
年最低気温8.2℃33位/916地点
年較差26.6℃883位/916地点
年平均風速2.8m/s239位/915地点
年日照時間1175.9時間839位/842地点
▲2022年の観測値

去年の名瀬は日照時間が少ないほうから全国4位でした。

スギ花粉がほとんどない奄美

ところで、さる観光ガイドに「奄美は杉の木がない」との記述がありました。沖縄でさえコンマ何パーセントかスギの木があったはずです。いくら信頼度に欠けるのが相場の観光ガイドと言えども、「少ない」ではなく「ない」は聞き捨てならない話です。

スギの木の南限は屋久島とされています。屋久島は標高1936mの宮之浦岳を抱えています。奄美の最高峰は宇検村と大和村の境界に聳える湯湾岳で標高694mです。奄美大島は屋久島の南です。したがって、奄美大島には自生のスギはないはずです。ただ、植林されたものが残っているはずです。

【外部リンク】
■林野庁>奄美大島・徳之島におけるスギ人工林の広葉樹林復元の検討
■奄美マングースバスターズ ネイチャーカレンダー>奄美でアレルギーを引き起こす花粉の正体

やはりオール・オア・ナッシングなら「ある」ようですし、少量でしょうがスギ花粉も確認されています。

スギやヒノキの場合、冷え込む冬を越すと花粉が飛散するようです。そこまで寒くならない奄美大島の場合、スギやヒノキの木があっても、花粉を飛ばすことはほとんどないとされてはいます。ただし、ブタクサの花粉はあるそうですので、花粉症天国というわけではなさそうです。

沖縄を含めて南の島では花粉症から逃れる避粉地としてのロングステイを盛んに推奨しています。「元から住んでいる人で、花粉症になった人は1人もいない」もセールストークとしか思えません。

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