中国の偵察気球はどこから飛ばしたのだろうか?

ハイブリッド型スパイ気球

アメリカ大陸を横断した気球は現地時間2月4日午後にサウスカロライナ州沖のアメリカ領海内で撃墜されました。F-22戦闘機は一撃でバルーン部分を撃ち抜いていますので、気球に搭載されていた機器類はミサイルによっては破損しなかったわけです。アメリカは何としてでも回収するはずです。

スパイ気球はアメリカ大陸を横断

1月28日にアリューシャン列島で確認された気球は、アラスカからカナダに入り、ICBM基地などの上空を通過して大西洋に抜けています。

マルムストローム空軍基地

中国サイドは、民間の気象観測用の気球で制御能力に限界があり、偏西風で流された不可抗力による不測の事態だという寝ぼけた説明をしています。会社の名前なり観測目的なりは示されておらず、信憑性を伴うものではありません。中国のものということは認めたのですから、あとは回収を待つだけです。

気球はバス3台分の大きさと報道されています。アメリカのバスのサイズがわかりませんが、10m前後と考えていいはずですので、直径30mクラスとなります。なお、一般的な熱気球は直径15~20mで、日本の気象庁のラジオゾンデは放球時で直径1.5~1.6mほどです。

鹿児島、仙台、青森の気球

戦艦大和の全幅は39mです。中国の現役空母「山東」は38mだそうです。艦船上からの放球は無理ではないのでしょうが、衛星に監視されているはずです。いずれにせよ夜間作業は難しそうです。やはり中国本土から放球されたと考えるほうが自然です。

そうなると、撃墜された気球が実は1月寒波の日本上空を通過していた可能性はかなり高いわけです。日本で近年目撃されていた「正体不明」の白い球体も中国発と考えてよさそうです。「正体不明」で片付けられていたのは、まだ公表できない段階だったということにしかなりません。

2019/11鹿児島
2020/08山形、福島、仙台
2021/09岩手、青森、小笠原
▲謎の白い球体

仙台のときは県警のヘリが出動しましたが、気球は高度3000m以上とされていました。鹿児島でも3000~5000mと言われていました。県警案件でないことは当時から明白でした。今回、撃墜されたときの気球高度は18~20キロとされています。宮城県の最高峰は1825mの屏風岳です。

【2023/02/19追記】2022年1月には屋久島で、4月には嘉手納基地から50キロ弱の沖縄・座間味島で目撃されているようです。

どうやら米軍が撃墜したのは今回が初めてというわけではないようです。気球のバルーン部分はレーダーに映らないはずですが、機器類は金属製でしょうからレーダーが反応するはずです。今回はかなり以前から(ひょっとすると放球時から)マークしていたに違いありません。

もう偵察気球だとバレてしまったわけです。再び日本上空に現れたとき、日本政府としてどう対応するのか問われることになります。

日本軍の紙風船爆弾

偵察気球はアメリカの南北戦争でも北軍が使ったそうです。太平洋戦争では日本軍が和紙にコンニャク糊の風船爆弾を放球しています。直径10mだそうです。福島県の勿来(なこそ)、北茨城の五浦(いずら)、千葉県の一宮にそれ用の陸軍基地があったということです。

風船爆弾の放球地(勿来、五浦、一宮)
風船爆弾放球地(地理院タイルを加工)

1944年11月から1945年3月まで約9300発が放球され、アメリカに届いたのは300発とも1000発とも言われています。気球は焼夷弾や爆弾を積んでおり、オレゴン州で木に引っかかっていた不発弾を触った10代の学生5人を含む6人が亡くなっているようです。

焼夷弾により複数の山火事が発生したそうですが、雪の関係でそれほど深刻な被害には至らなかったという話もありますし、本土への攻撃ですから心理的には効果があったという話もあります。どちらも情報統制したわけですから、幅があっても当然です。

【外部リンク】
■明治大学平和教育登戸研究所資料館>山田朗 紙と戦争―登戸研究所と風船爆弾・偽札―
■小笠原陸域専門ガイド マルベリー>茨城県北茨城市風船爆弾放球基地跡
■ダイニック>まるふの生産(風船爆弾製造会社の社史)

北茨城市大津町五浦

勿来の基地跡です。左端に石碑があります。紙風船製造に従事したのは主に動員の女生徒だったそうですが、ノルマを達成したときの表彰状には気球紙の切れ端が使われたようです。

勿来の風船爆弾基地跡

五浦では放球作業初日の事故で3人亡くなっているということです。大津町は1956年の合併で北茨城市になっています。

五浦海岸の「わすれじ平和の碑」

上空1万メートルのジェット気流に乗せて丸2日でアメリカに到着させる計算ですが、夜に気温が下がり高度が落ちるとジェット気流から外れてしまうため、気圧計と連動させた装置であらかじめ搭載した砂袋を切り離して高度を保つ仕組みです。風任せで到達率3~10%とはいえ、歴史上初めての大陸間攻撃でした。

【2023/02/18追記】私は上海以北で偵察用気球を飛ばしたものと思って探していましたが、海南島の空軍基地で放球されたということです。海南島には空軍基地が少なくとも3か所あります。

【2023/02/23追記】海南島の東岸から発射されたようです。

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