アメダス加久藤とアメダスえびの、12キロ離れて1.7倍の雨

年間降水量のトップ9(2019年時点)

宮崎県えびの市のアメダスえびのは、アンタチャブル・レコードを保持しています。1993年に年間降水量8,870ミリを観測しているのです。

年降水量観測所所在観測年
8670ミリえびの宮崎県1993年
7194.5ミリ魚梁瀬高知県2018年
6624ミリ船戸高知県1999年
6294.5ミリ屋久島鹿児島県1999年
6174.5ミリ尾鷲三重県1954年
6141ミリ天城山静岡県1998年
6113ミリ魚梁瀬高知県2004年
6102.6ミリ屋久島鹿児島県1949年
6018.5ミリ魚梁瀬高知県2011年
▲年降水量6000ミリ以上(2019年時点)

私が調べた範囲では、年6,000ミリ以上は同一地点の重複を含んで過去9回しか観測されていません。1993年のアメダスえびのでは6月から8月までの3か月間で6,258ミリですので、この期間だけでも4位相当です。

アメダスえびのはリゾート地、アメダス加久藤は市街地

アメダスえびのは雨量のみの観測所です。風速計がないことから、探すのは難しいだろうと思っていましたが、発見することができました。次の360度写真の中に観測施設は映っています。

市街地ではなく観光施設が並んでいる一帯にあります。観測所の標高は1,150mです。このスケートリンクから1キロ少し離れた硫黄山ではまだ入山規制が継続されています。えびの市役所の近くにあるアメダス観測所は、合併前の町名の「加久藤(かくとう)」で標高は228mです。

アメダスえびのと加久藤
えびのと加久藤(地理院タイルを加工)

赤マーカーが「アメダスえびの」で、青マーカーが「アメダス加久藤」です。地図上では「韓国岳(からくにだけ)」の文字のすぐ近くですが、韓国岳は1700mの三角点のところです。紫のマーカーは先日取り上げた菅原神社です。アメダスえびのとアメダス加久藤は地図上の直線距離では12キロ弱離れています。

降水量の比較

1993年6月1日から9月8日までの100日間について、えびのと加久藤の降水量をグラフ化してみました。1993年はいったん発表された梅雨明けが撤回された年です。930hPaで薩摩半島に上陸した台風13号も通過しています。竜ヶ水駅が土砂崩れに巻き込まれた8・6豪雨もこの年です。

1993年6月1日から100日間の降水量

この100日間の総雨量は、えびのが6,729ミリ、加久藤は3,978ミリです。えびのは加久藤の1.6915倍になります。100日間で加久藤が多かったのは7日だけで、ドローが35日でした(両者0ミリは34日)。

両地点で観測が始まった1976年以降の年間降水量についても、同じようにグラフ化してみました。

年間降水量の比較

もちろん加久藤の44連敗ですが、総雨量は山間部のえびの198,692ミリ(平均4,515.7ミリ)に対して加久藤が117,244ミリ(平均2,540.6ミリ)です。えびのは加久藤の1.6946倍です。わずか12キロ弱の水平距離に922mの標高差を掛け算すると、1.7倍もの雨量差になるもののようです。

というわけで、「アメダスえびの」の降水量が全国有数だからといって、えびの市街地がそれに匹敵するということではありません。むろん加久藤も多雨ではあります。「アメダスえびの」はあくまでも集落のないリゾート地の観測所です。

2020年の観測値

2020年のアメダスえびのは年降水量が6,158.5ミリで全国1位でした。年間降水量としては歴代6位ということになります。上位10地点の月別降水量をグラフ化してみました。

2020年の月別降水量

2020年のアメダスえびのは累積では6月に屋久島をかわして全国1位となり、7月には魚梁瀬にやや詰められますが、9月のダメ押しで逃げ切りました。

一方のアメダス加久藤の2020年の観測値は次のとおりです。

年降水量3872.0ミリ24位/1293地点
年平均気温16.2℃241位/922地点
年最高気温39.4℃22位/922地点
年最低気温-5.3℃424位/922地点
年較差44.7℃315位/922地点
年平均風速1.9m/s540位/921地点
年日照時間2048.3時間149位/841地点
▲アメダス加久藤の2020年観測値

加久藤の年降水量は全国24位です。最高気温も22位だったりします。降水量が多いのに日照時間も長めですので、降るときはドカンと降るということになります。

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