漢字なら「葡萄野市」の宮崎県えびの市

川内川水系のえびの市

宮崎県えびの市は逆三角形(▽)の形状をしています。北は熊本県、南西は鹿児島県、東は小林市に接しています。2020年10月1日現在の人口は17,637人で、ピーク時の半分以下です。行政上は宮崎県ですが、水系上では市内のほぼ全域が東シナ海に注ぐ川内川水系です。1871年(明治4年)の廃藩置県では鹿児島県に属していました。

えびの市周辺の水系
えびの市(地理院タイルを加工)

赤マーカーは仙台川の支流の源流、黄色は八代湾に注ぐ人吉川支流の源流、青は太平洋に注ぐ大淀川の源流、緑が鹿児島湾に注ぐ天降川(あもりがわ)の源流です。地理院地図で鹿児島県湧水町(ゆうすいちょう)との県境が切断されているのは境界未確定地域だからです。国の機関ですからデリケートな問題に深入りできないのでしょう。

市制施行に先立つ1966年に飯野町、加久藤町(かくとうちょう)、真幸町(まさきちょう)が合併して「えびの町」が成立しています。えびの高原からの命名だと思われます。市のWebサイトには「えびの高原」に関して次のような記載があります。

かつてはいたるところで火山ガスが噴出しており、過酷な環境では生育できる植物も限られ、ススキが一帯を占めていました。このススキが火山ガスの影響で「えび色」に変わったことが、「えびの高原」の地名の由来だといわれています。

えびの市>えびの高原

「えびの」を漢字で書けば「海老野」ではなく「葡萄野」です。市旗の背景色が「葡萄色」のはずです。

えびの市の市章
えびの市の市旗

「ぶどういろ」ではなく「えびいろ」が古来からの読み方です。

3番目のひらがな市

えびの市の市制施行は1970年で、1960年のむつ市、1966年のいわき市に次ぐ老舗の「ひらがな市」です。名称にひらがなを含む市は29あります。なかには、幼稚園のクラス名のような名前もないわけではありません。

1960/08/01青森県むつ市大湊田名部市から改称
1966/10/01福島県いわき市14市町村で合併
1970/12/01宮崎県えびの市えびの町が市制施行
1984/11/01茨城県ひたちなか市2市が合併
1987/11/30茨城県つくば市4町村が合併
1995/09/01東京都あきる野市2市町で合併
2001/05/01埼玉県さいたま市3市が合併
2002/04/01香川県さぬき市5町が合併
2002/04/01香川県東かがわ市3町が合併
2003/12/01三重県いなべ市4町が合併
2004/03/01石川県かほく市3町が合併
2004/03/01福井県あわら市2町が合併
2005/01/11兵庫県南あわじ市4町が合併
2005/02/11青森県つがる市5町村が合併
2005/03/20福岡県うきは市2町が合併
2005/03/28茨城県かすみがうら市2町が合併
2005/03/28栃木県さくら市3町が合併
2005/04/01沖縄県うるま市4市町が合併
2005/10/01秋田県にかほ市3町が合併
2005/11/07鹿児島県南さつま市5市町が合併
2005/10/01埼玉県ふじみ野市2市町が合併
2005/10/01兵庫県たつの市4市町が合併
2005/10/11鹿児島県いちき串木野市2市町が合併
2005/12/05千葉県いすみ市3町が合併
2006/03/27茨城県つくばみらい市2町村が合併
2006/03/27群馬県みどり市3町村が合併
2007/01/29福岡県みやま市3町が合併
2010/01/04愛知県みよし市三好町が市制施行
2010/03/22愛知県あま市3町が合併
▲ひらがな市

「葡萄野市」ではなかなか読めませんし、書くのも面倒です。合併時点ではもう「えびの高原」が定着していたのかもしれません。

菅原神社と天神橋がセットで2キロ以内に2か所

田んぼの中に赤い鳥居があります。2013年12月撮影のストビューを埋め込みました。突き当りが菅原神社です。「天神様の細道」感には欠けますが、これはこれでなかなかの光景です。

菅原神社には、はりまや橋より短い用水路を渡る太鼓橋があり、境内の鳥居の前には阿吽の「なでなで仁王」が構えています(→Google Map菅原神社の投稿画像)。看板には「なでなで仁王様 心をこめてなでてください。喜ばれます。そこがなおります。からだがすごく元気になります。」と記されています。撫でるのは牛だけではなかったようです。

2つの菅原神社
近接する菅原神社(地理院タイルを加工)

川内川の支流・湯の川に架かる橋が天神橋(赤▲)です。赤マーカーが田んぼの中の鳥居です。神職が常駐する神社ではありません。実は、私は右上にまず天神川を見つけて、天神橋(紫▲)と菅原神社(紫囲み)を発見したのでした。両社の距離は2キロありません。

紫の菅原神社には石段の途中に仁王なのか相撲取りなのか埴輪なのか苔むした石像が立っています(→Google Mapの投稿画像=威徳天神)。なお、これだけ近接していますので、Google Mapでは赤の菅原神社の画像が紫のほうに投稿されていたりします(報告済みです)。

画像から読み取った市教育委員会の説明板によれば、紫のほうは「威徳天神と称し、北野、太宰府天神と共に日本三天神の一つと伝承され」ているそうです。さすがに「三天神」は盛りすぎかと思われます。本殿から300m以上離れた県道102号線沿いに一の鳥居があります。神明鳥居です。

こちらの菅原神社では高さ50センチの丸太を牛に飛び越えさせる「牛越祭」が開かれるようですが、7月28日ということで一般的な天神祭の25日とは微妙にズレています。豊作と家畜の無病息災を願う祭りということですから「牛越え」は「牛肥え」を掛けているはずです。普段は無人の神社です。

住所としては、紫が「えびの市西川北」、赤は「えびの市水流(つる)」で、いずれも旧・真幸町になります。

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