三重県と奈良県に挟まれた和歌山県北山村

飛び地の村

和歌山県北山村は村全体が飛び地です。

北山村
北山村(地理院タイルを加工)

和歌山県に属した理由は村のWebサイトに記載されていますが、仁坂知事も次のように記述しています。

北山村は、日本唯一の全体が飛地の村ですが、平成の大合併の時も、独自で行くと決めて、人口が少ないが故の不便を色々な工夫でしのいで、立派に村づくりをしている村だと思います。何故に飛地にまでして和歌山県にあるのだというと、北山村の主産業は林業だったのですが、北山川の水運を使って、その木材を新宮に搬出していたので、新宮市との関係が最も強かったためと言われています。昔の優良道路は川だったのです。

和歌山県>知事からのメッセージ 北山村村議会議員選挙

北山村を流れる北山川は南流して三重・和歌山県境の熊野川(新宮川)に合流します。下の地図の赤マーカーは北山川または熊野川の支流の源流です。青マーカーは熊野灘に直接注ぐ複数の河川の源流です。赤と青のマーカーの間に分水嶺があります。

北山川
北山川(地理院タイルを加工)

北山と熊野は直線距離で約13キロですから、東京駅起点なら蒲田の手前です。大阪駅起点なら甲子園球場の少し先になります。北山村役場の標高は130m台で、熊野との間にある天神丸山は標高784mです。三重県道34号線の新大峪(しんおおさこ)トンネルが開通したのは1983年、旧隧道は1930年代の竣工のようです。1870年代の廃藩置県当時は熊野に抜けるには峠を越えるしかなかったわけです。

熊野市と熊野三山の微妙な距離

意外にややこしいのが「熊野」です。自治体名としての「熊野」は三重県熊野市です。和歌山県熊野川町は2005年に新宮市と合併して、今では和歌山県に「熊野」を名乗る自治体はありません。

熊野

熊野三山は熊野本宮大社が熊野川中流の田辺市、熊野速玉大社が熊野川下流の新宮市、熊野那智大社は那智川上流の那智勝浦町です。いずれも和歌山県にあります。「熊野」と言うときは、三重県熊野市を指す場合と熊野三山を指す場合があります。

世界遺産としての「熊野」は、正式には「紀伊山地の霊場と参詣道」の名称で登録されており、和歌山の熊野三山と高野山、奈良県の吉野、そして参詣道が登録範囲です。三重県では尾鷲市から熊野市を経て新宮市に至る参詣道が部分的に指定されているだけです。

新宮駅はJR西日本とJR東海の境界駅です。名古屋駅-新宮駅間でルート検索すると、時間的な最短ルートは大阪経由です。名古屋駅-熊野市駅間でルート検索すると、大阪経由のルートは示されません。熊野三山に行くつもりで名古屋方面から熊野市を目指すと、熊野-新宮間の20キロが重くのしかかることもあります。

さて、「北山」です。「北山」と言う以上、北にある山のはずです。どこから見た北なのかと言えば、熊野三山付近から見たときの北になるのでしょう。熊野市街地からは一山越えた西山になってしまいます。

人口は400人

北山村広報誌「広報きたやま」の2021年1月号に掲載されている村長の新年挨拶では、北山村の人口は2020年国勢調査の時点で404人のようです。本州の自治体としては最少です。

北山村の人口の推移
北山村の人口の推移(北山村 人口データ

最新の村議選は2019年12月の投開票です。無投票にならないだけ健全です。当日有権者数が387人、投票率は89.41%ということです。選挙カーは誰も使わないそうです。

114票無新159歳
72票無現364歳
51票無現672歳
49票無新164歳
35票無現271歳
20票無新70歳
▲2019北山村村議選

「広報きたやま」では村内行事が紹介されています。2020年11月30日には「生前遺影撮影会」が開かれています。たしかに人口400人では写真店は成立しません。

終活という言葉が少しずつ浸透している中、下尾井地内で生前遺影撮影会が行なわれました。メイクや髪のセットも行ってもらい、プロのカメラマンに写真を撮ってもらい、参加者の皆さんは、そのきれない写真に喜んでいました。参加された方は約30名ほどでした。

広報きたやま2021年1月号>KITAYAMA TOPICS(3ページ)

特産じゃばら

屋内でも距離は確保できそうですが、1月3日の成人式は屋外開催でした。対象4人とは欠席しにくい成人式です。北山小学校と北山中学校は同一敷地内に併設されています。

下尾井のじゃばら神社の前で成人式が行なわれました。例年は村民会館で行なっていましたが、今年は新型コロナウイルス感染症対策のため野外で行われました。対象者4名のうち、●●●さん、●●●さん、●●●●さんが出席し、

広報きたやま2021年1月号>KITAYAMA TOPICS(3ページ)

「じゃばら神社」は比較的最近できた施設のようです。道の駅やおくとろ温泉と隣接しています。

 じゃばら(邪払)とは、古来より北山村に自生していた柑橘で世界でも北山村にしか存在していなかった品種です。
 名前の由来は、邪気を払うということから邪払と名付けられた縁起物で村では、お正月には、欠かせない果実でした。
 近年、花粉症に効果があることが判明、全国から脚光を浴び、貴重な特産物として、北山村の救世主となりました。
 じゃばら(邪払)の恵みに感謝をし、北山村の永遠の繁栄と住民の幾久しい幸せを願うとともに、世の中の邪気を払い幸せで平和な生活が実現することを願って邪払神社を建立しました。

石碑「じゃばら神社の由来」

特産の柑橘類「じゃばら」はかなり酸味が強く苦味もあります。払うのは邪気だけではないかもしれません。

おくとろ公園には筏師の河童がいました。2014年9月撮影のストビューです。この辺りの施設は2007年頃からオープンしています。

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