自公維連立
維新の連立参加がにわかに取り沙汰されています。8月に維新が自公連立に加わり、馬場代表の入閣を口実にして岸田氏が内閣・党人事を断行し、あわよくば臨時国会を招集して冒頭解散というシナリオです。
前回2021年の自民党総裁選は9月17日告示で29日開票でした。岸田氏が「党役員任期の1期1年・連続3期まで」を掲げて出馬表明したのは8月26日です。総裁選前の3党連立はまったくの絵空事というわけでもないように思われますので、現実味があるかどうか検討してみます。
公明党は連立参加に際して時間をかけました。1998年7月の参院選で大敗した自民党は参議院で少数与党となり橋本内閣が引責辞任します。連立が実現したのは1999年1月ですが、交渉は1998年から始まっていました。
1998/07/30 | 小渕内閣 | 自民単独 |
1999/01/14 | 第1次改造 | 自民・自由 |
1999/10/05 | 第2次改造 | 自民・自由・公明 |
2000/04/01 | 〃 | 自民・公明・保守 |
当初は自民党と自由党との2党連立であり、公明党が連立入りするのは秋になってからです。党内を円満な形でまとめるのにそれだけの時間を要したわけです。
今の時期に維新が連立参加するのは自殺行為のようにも思われます。党内がすんなりまとまるとは思えませんが、多少の離脱者が出ても強行突破することは考えられないわけでもありません。とはいえ、執行部だけが前のめりに突き進むと代表交代という結末を迎えかねません。
他方、公明党にはさほど抵抗はないものと思われます。維新が連立に加われば、大阪の小選挙区4議席を「現職優先の原則」で維持できることになるはずです。ほかに強力なライバルはいませんので、公明の4議席は安泰です。
維新の小選挙区選出議員
維新の小選挙区選出代議士は次の16名(大阪15、兵庫1)です。第2列が維新の現職代議士、第4列は自民党の立候補予定者、数字は当選回数、丸囲みは現職です。
大阪1区 | 井上英孝 | ④ | 大西宏之 | 2 |
大阪2区 | 守島正 | ① | 佐藤章 | 5 |
大阪4区 | 美延映夫 | ② | 中山泰秀 | 5 |
大阪7区 | 奥下剛光 | ① | 渡嘉敷奈緒美 | 4 |
大阪8区 | 漆間譲司 | ① | 高麗啓一郎 | 0 |
大阪9区 | 足立康史 | ④ | 東田淳平 | 0 |
大阪10区 | 池下卓 | ① | 加納陽之助 | 0 |
大阪11区 | 中司宏 | ① | 大辻沙耶 | 0 |
大阪12区 | 藤田文武 | ② | 北川晋平 | 0 |
大阪13区 | 岩谷良平 | ① | 宗清皇一 | 3 |
大阪14区 | 青柳仁士 | ① | 塩川憲史 | 0 |
大阪15区 | 浦野靖人 | ④ | 島田智昭 | 0 |
大阪17区 | 馬場伸幸 | ④ | 岡下昌平 | 2 |
大阪18区 | 遠藤敬 | ④ | ? | |
大阪19区 | 伊東信久 | ③ | 谷川とむ | ③復活 |
兵庫6区 | 市村浩一郎 | ④ | 大串正樹 | ④復活 |
自公維の連立政権が成立すると、自民党の立候補予定者が割を食うことになります。ただ、次のような「片務的合意」も考えられなくはありません。この合意が成立すれば、自公プラス維新の3党連立が実現する可能性があります。
(1)公明の現職議員がいる小選挙区では、維新は候補者擁立を見送る。
(2)維新の現職議員がいる小選挙区では、自公が候補者を擁立することを妨げない。
(3)自民の現職議員がいる小選挙区では、維新が候補者を擁立することを妨げない。
政策より選挙の合意が先行するのは本末転倒ですが、(1)が整わないと公明党が、(2)が整わないと大阪の自民党が、(3)が整わないと維新が乗れません。
大阪の得票率
前回総選挙における大阪の得票率はすでにグラフ化していましたので再録します。
比例区の得票率では自公維で7割を超えます。単純計算では、与党3党から2候補が出ても野党側に議席を奪われる心配はありません。というわけで、選挙中心で考える限り3党連立にそれほどの障害はないと言えそうです。
自民党の意思決定の仕組みが壊れている今なら、総裁選前の3党連立はあり得るのではないかと思われます。自民党内に新しい派閥が加わると考えれば、あまり違和感もありません。派閥が解消された(ことになっている)今がチャンスだとも言えるわけです。
維新は4月の衆院3補選で自公候補が出ていない東京15区と長崎3区には候補者を出し、自公推薦候補が出た島根1区では擁立を見送っています。都知事選はどうやら見送りのようです。
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