官房長官が辞任するのは19年ぶり5人目

捜査の進展次第

官房長官が国務大臣になったのは佐藤内閣の1966年からです。途中辞任のケースは過去に4例しかありません。

官房長官内閣退任年月日
福永健司第2次佐藤内閣1967/06/22
山下徳夫第1次海部内閣1989/08/25
中川秀直第2次森内閣2000/10/27
福田康夫第2次小泉内閣2004/05/04
▲途中退任の官房長官

福永氏は病気によるもののようですが、山下氏と中川氏は愛人スキャンダル、福田氏は年金未納で官房長官職を辞しました。山下氏の場合、1990年には衆議院議院運営委員長として復権し、1991年の宮沢内閣で厚生大臣として4度目の入閣を果たします。

中川氏も小泉内閣で自民党国会対策委員長や政調会長を務め、第1次安倍内閣では幹事長に昇格します。福田氏は第1次安倍内閣の次の総理大臣です。つまり、政治生命を絶たれるほどのスキャンダルではないにしても、官房長官を続けていくのは困難なラインがあります。

松野博一氏の場合も、すでに辞任または更迭は不可避との報道がなされています。そうなると、後任は誰なのかという話になりますが、検察の捜査がどこまで及ぶのか見通しが立たないうちは後任も決められないわけです。

国会が閉じるのは来週13日です。再開される来年1月20日前後のおよそ1か月の間に捜査が進展することになります。内閣改造をやるにしても、安倍派5人衆で済むのかどうか捜査の進展を見極めてからになります。松野氏を晒し者にして時間を稼ぐことになるのでしょう。

【2023/12/22追記】松野氏は12月14日に辞任し、21日には地検特捜部から事情聴取の要請を受けたと報じられています。官房長官が「聴取中のため会見できません」という事態は免れたことになります。

後任候補は?

次の官房長官は誰なのか、軽量ではとても務まらないものと思われます。もともと今回の話は去年11月の赤旗の記事が発端で、神戸学院大の上脇博之教授が五大派閥を告発したことで捜査が始まっています。

清和研志帥会平成研志公会宏池会
記載漏れ1900万950万600万400万200万
▲2018~2021年の記載漏れ

五大派閥以外の森山裕・総務会長を官房長官に起用すれば収まりそうですが、この場合は総務会長の後任人事が必要になり、政調会長と国対委員長も交代するなら自動的に小規模改造になってしまいます。

無派閥組では野田聖子・前少子化相も後任官房長官候補の1人です。事態は切迫しており、野田氏では難局を乗り切れる人事になりそうもないと考えるなら、遠藤利明・元五輪担当相の安定感は貴重なものかもしれません。

いっそのこと、石破茂・元幹事長を起用するというウルトラCも5%ぐらいはあるのかもしれません。石破氏は菅&二階ラインの切り札ですが、ここで閣内に取り込んで動きを封じるという手もなくはなさそうです。支持率回復にもなるはずです。

見通しが立たないという混沌な状況は、手詰まりに近いのではなく逆にフリーハンドで人事に臨めるのではないかと思ったりもします。岸田氏にとっては舞い込んで来たチャンスなのかもしれません。

清和政策研究会

安倍派の終焉?

ところで、最大派閥の安倍派はパーティー収入が五大派閥最小です。人数的には2:1:1:1:1の比率のはずですが、収入がそれに比例しません。表の単位は億円です。

清和研志帥会平成研志公会宏池会
20182.082.171.442.611.73
20191.532.491.642.491.82
20201.022.271.812.171.55
20211.002.781.922.191.49
20220.941.881.812.331.83
▲五大派閥のパーティー収入

今回指摘されているいわゆる「裏金」の総額は(今のところ)5年間で約1億円とされています。上の表に「0.2」を足したところでギャップは解消されません。最大派閥なのに、なぜ収入はそれほどでもないのかという疑問は依然として残ることになります。

【19:50追記】新たな名前が出てきました。

大野泰正参・岐阜、当選2回5年で5000万
池田佳隆衆・愛知3区→比例復活、当選4回5年で4000万
谷川弥一衆・長崎3区、当選7回5年で4000万
▲裏金疑惑の安倍派議員

この3人だけで年平均0.26億円です。かなり埋まって来ましたが、まだ足りません。松野氏の1000万とは異なり、4000~5000万はもはや報告書の修正では済まないレベルです。薗浦健太郎・前代議士(麻生派)の議員辞職の意向が報じられたのは去年の12月18日でした。

薗浦氏は12月21日に議員辞職願と離党届を提出、翌22日には略式起訴され、罰金100万円と公民権停止3年の略式命令を受けています。不記載の総額は4900万だったはずです。これが基準になるなら、3人はお引取り頂くことになります。来春は補欠選挙です。

時限爆弾が投げ込まれているのに、誰もリーダーシップを取れずにトスを回し合っているのですから、安倍派の集団指導体制とは無責任体制でしかなかったわけです。もはや同時多発的な爆発を待つだけのようです。

さて、岸田氏は麻生氏を指南役としているようです。だとすると、石破氏の起用はないのでしょう。どこまで広がるかまだ見通せない以上、動きが取れない状況に変わりはありません。

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