「愛の無い」か「愛の内」か、北見市の相内(あいのない)

巣間内駅の画像はコラ

ネット上には古くから「巣間内(すまない)」という駅標画像が出回っています。出来がいいので騙されてしまう人も多いようですが、実在する名鉄小牧線「間内(まない)」駅標のコラージュ画像です。

名鉄小牧線間内駅
名鉄間内駅(地理院タイルを加工)

間内駅の駅舎所在地は春日井市牛山町です。東口は車が入れない環境にあります。消防車どころかタクシーさえ入れません。どうやって建築確認をとったのだろうと心配したくなる家もあります。東口にはなぜか浅井長政像があります。なんでも長政の子孫がこの地に移り住んで代々暮らしてきたものの、故あって神奈川に引っ越すので銅像を建てたということのようです。

赤線が市境でロータリーのある西口は小牧市北外山です。ここで疑問が生じます。地名としての「間内」は存在しませんが、なぜ名鉄さんは間内駅としたのでしょう? 今昔マップで調べてみると、1932年の地図で間内駅の春日井市側に「間内」と表示されています。その後、町域名が変更されて牛山町になったようです。

相内村(あいのないむら)

さて、昨日公開した「*別」と「*内」の市町村MAP掲載の87自治体のうち、もっともインパクトがあるのは、今は北見市になっている旧・常呂郡相内村(あいのないむら)だと思われます。間違っても新婚旅行先にはならないはずです。

相内町
相内町(地理院タイルを加工)

相内村の北見市への編入は1956年です。字としての「相内町」、「東相内町」、「西相内」が残り、相内保育園、相内小学校、相内中学校、相ノ内郵便局、相内駐在所、相内神社、相内川、相内橋などが現存します。相内駅もあります。2012年6月撮影のストビューです。

漢字のままでいいのに、わざわざ「相内」をひらがな表記にした「あいのない診療所」があります。もし旅行中に診察を受けることになれば、ちょっとためらいを感じるかもしれません。「愛の無い」と「愛の内(うち)」には相当の隔たりがあります。

相内駅徒歩7分の診療所ですが、隣接する飲食店は「あいの里茶房」です。店主は私と同様に「あいのない」を「愛の無い」に脳内変換したに違いありません。

青森と秋田の相内

北海道庁アイヌ政策推進局アイヌ政策課の「アイヌ語地名リスト」によれば、「アイヌオナイ」の音に「相内」の文字を当てたようです。現地語は尊重すべきでしょうが、そうだとしても「あいのない」はNGだったのではないかと思わなくもありません。

この地区のもう1つの医療機関は、相内駅の西側の「あいない歯科クリニック」です。「の」を省いたことで幾分やわらいだ印象があります。愛着と抵抗の葛藤が窺えるようなネーミングです。

相内(沢)の地名は北見市のほかに青森と秋田に3か所ずつあります。

北東北の相内
北東北の相内(地理院タイルを加工)
青森南部町相内(あいない)
青森田子町相内沢(あいないざわ)
青森五所川原市相内(あいうち
秋田小坂町相内(あいない)
秋田仙北市相内(あいない)
秋田仙北市相内沢(あいないざわ)
▲青森と秋田の相内

このうち五所川原市については読みが「あいうち」ですが、五所川原を含めて6か所ともすべて小規模な河川としての相内川や相内沢があります。五所川原の相内はもともと相内村です。

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