白鳥型遊覧船が猪苗代湖で復活、国内に残るは5隻

◆2020/06/28付で「白鳥型遊覧船は残り4隻(相模湖、諏訪湖、榛名湖、山中湖)」と題して公開しましたが、猪苗代湖で復活しましたのでアップデートのうえ改題しました。

猪苗代湖復活で5隻

2021年10月30日、猪苗代湖の白鳥型遊覧船「はくちょう丸」が運行を再開しました。コロナ禍の2020年6月に当時の運営会社が自己破産して運行が途絶え廃船のピンチを迎えていましたが、新会社が引き継いで1年4か月ぶりの運行再開です。

猪苗代湖は国内有数の白鳥飛来地です。白鳥型遊覧船と本物の白鳥との世界的にはレアなツーショットが期待できるのは諏訪湖と猪苗代湖だけです。ピーク時には全国に10隻以上あった白鳥型遊覧船ですが、私が確認している範囲ではほかに榛名湖と相模湖と山中湖で運行されているだけです。

白鳥型遊覧船が就航している湖
白鳥型遊覧船の湖(地理院タイルを加工)
猪苗代湖(福島)はくちょう丸嘴がオレンジ、王冠あり、蝶タイなし
榛名湖(群馬)はくちょう丸2世号嘴が黒と黄、王冠なし、蝶タイなし
相模湖(神奈川)ニュースワン丸嘴がオレンジ、王冠なし、蝶タイあり
山中湖(山梨)白鳥の湖嘴がオレンジ、王冠あり、蝶タイなし
諏訪湖(長野)すわん嘴が黄色、コブ付き、王冠あり、蝶タイなし
▲日本国内の白鳥型遊覧船

榛名湖はリアリズム重視、諏訪湖はコブ付き

日本で見られる白鳥は3種類です。オオハクチョウコハクチョウの嘴は先端が黒く、鼻と目の間は黄色です。榛名湖の白鳥型遊覧船はまあまあ忠実にこれを再現しています。近くで見ると少し不気味なまつ毛がありますが、王冠はかぶらず蝶ネクタイも締めていません。

リアリズム重視ですが、面白みには欠けるかもしれません。榛名湖の遊覧船は定時運行ではなく、数人集まれば運行するという気軽なスタイルです。榛名湖は白鳥渡来地というわけではありません。

オオハクチョウとコハクチョウは渡り鳥で、日本で越冬します。コブハクチョウは飼育されていた個体が野生化して北海道から鹿児島まで定着してしまった外来種です。コブハクチョウの嘴はオレンジ色で、先端部がほんの少し黒くなっています。その名のとおり、鼻の上に黒いタンコブがあります。

諏訪湖には2隻の白鳥型遊覧船がありましたが、現在は1隻のみです。現役の「すわん」はコブ付きですのでコブハクチョウをモデルにしているようです。嘴は黄色でまつ毛があり、赤い蝶ネクタイを締めています。別会社が運行していた「おやこはくちょう丸」は2017年に引退していますが、嘴は赤く頭上には王冠をかぶっていました。

諏訪湖で白鳥型遊覧船が就航したのは1969年です。諏訪湖では1974年からコハクチョウの渡来が確認されています。遊覧船に招き寄せ効果があるとはとても思えませんが、チャンス到来とばかりに餌付けしたに違いありません。なにしろ諏訪湖の「すわん」ですから…。

元祖の相模湖、口を開いている山中湖

1966年に相模湖で就航した「スワン丸」が日本最初の白鳥型遊覧船だそうです。現在の「ニュースワン丸」は1974年就航の二代目で、とりわけリニューアル後はえらくカラフルになっています。白鳥の姿をしているだけで、船体の色彩は幼稚園の遊具並みかもしれません。嘴は赤く、首には蝶ネクタイを施しています。初代の「スワン丸」に蝶ネクタイはありませんでした。

芦ノ湖の海賊船は「湖なのに賊?」というツッコミが必ず入るはずですが、箱根観光のシンボル的存在です。メルヘンあるいはファンタジーに理屈は必要ないのでしょう。相模湖にはブラックスワンやピンクのペダル式足漕ぎスワンボートもあります。本物の白鳥はコブハクチョウのようです。

山中湖の白鳥型遊覧船「白鳥の湖」(←プリンセス・オデット号)はオレンジ色の嘴を軽く開いているところに特徴があります。嘴を開けている白鳥型遊覧船は山中湖以外にはないはずです。王冠はかぶっていますが、蝶ネクタイは締めていません。山中湖もオオハクチョウやコハクチョウの飛来地ではありませんが、コブハクチョウはいるようです。

白鳥型遊覧船が復活した猪苗代湖には、その名もズバリ白鳥浜という砂浜があります。猪苗代湖畔駅近くの志田浜には白鳥の湖のブロンズ像もあります。「はくちょう丸」はオレンジ色の嘴で王冠を戴いています。山中湖タイプですが嘴を閉じていますので区別できます。やはりバレエに寄せると王冠が必需品になるもののようです。

日本で独自の進化を遂げたと思われる白鳥型遊覧船は、私が確認している範囲では、長野の野尻湖と白樺湖、兵庫の東条湖、徳島の池田湖(2隻)に就航していた時代があったようです。さすがに九州は白鳥になじみがなく、北海道は通年運行が難しいのでしょう。

宍道湖の遊覧船「はくちょう」

島根県の宍道湖では「はくちょう2号」と「はくちょうⅢ」と名付けられた遊覧船が就航しています。名前だけで、白鳥型の遊覧船というわけではありません。

宍道湖は白鳥渡来地です。宍道湖の白鳥はコハクチョウが多いようです。実は、オオハクチョウとコハクチョウは遠目ではまず区別できません。名前のとおりのサイズ差がありますので、一緒にいれば大小の区別が可能かもしれませんが、1羽だけならサイズで特定できません。

オオハクチョウ嘴の黄色が広い首に茶褐色が混じり長い
コハクチョウ嘴の黒が広い首は白く比較的短い
▲オオハクチョウとコハクチョウ

嘴と首でも判別できるそうですが、あくまでも相対的なものです。一般人としては首の色で見分けるのが妥当のようです。

2.コハクチョウ
 ラムサール条約湿地中海・宍道湖のシンボルマークにもなっている水鳥です。ハクチョウの仲間には、オオハクチョウやコブハクチョウなどがいますが、山陰地方で見られるハクチョウの多くはコハクチョウです。
 ロシアの北極海沿岸部から10月中旬に宍道湖・中海周辺に飛来し、3月中旬にこの地を去っていきます。
 日中は、池で水草を食べたり、水田地帯で落ち穂を食べ、夕方になると宍道湖や能義平野のねぐらに帰っていきます。

島根県>宍道湖で見られる代表的な水鳥

島根県に飛来するのはコハクチョウが多いようです。

島根県を代表する鳥は「ハクチョウ」です。
<略>昭和39年5月10日の愛鳥週間初日に、「県の鳥」として「オオハクチョウ」を指定しました。
以来、県の鳥「オオハクチョウ」は、県民の皆さんに親しまれてきましたが、県内にはオオハクチョウとコハクチョウの両方が飛来しているものの、近年オオハクチョウはほとんど見られないことから、県議会において県鳥の見直しが提案されました。
これにより自然環境保全審議会に諮問したところ、オオハクチョウ、コハクチョウの総称としての「ハクチョウ」を県鳥とすることが適当との答申を受け、平成12年1月1日から変更いたしました。

島根県>島根県のシンボル

たやすく区別できないのがオオハクチョウとコハクチョウです。島根では数の少ないオオハクチョウが県鳥に指定され、数の多いコハクチョウはその栄誉に預かれなかったわけです。その不憫な状態が解消されたのは平成12年(西暦2000年)です。

島根県観光連盟のWebサイトに気になる記述があるのを見つけました。観光連盟は社団法人です。事務局は県庁観光振興課内にあります。

 島根県を象徴する県花はボタン、県鳥はオオハクチョウ、県木はクロマツ、県魚はとびうおである。<略>
 オオハクチョウは古来飛来していたようで、『出雲国風土記』にも白鵠(くぐひ)という名で出ている。現在は中海に多いが、かつては宍道湖の北から西にかけての水域に姿を現していたようである。昭和39年(1964)に愛鳥意識の普及のため、古くから愛されていたオオハクチョウが県の鳥に指定された。

しまね観光ナビ>県の花・鳥・木・魚(2021/11/25閲覧)

いまだに観光連盟さんは誤った情報を発信し続けているようです。ハクチョウは青森県の県鳥でもあります。青森県では最初(1964年)から「ハクチョウ」で指定しています。

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