慧眼か楽観論か、涼しくなればたぶん収まる感染拡大

別の地平から「明かりははっきりと見え始めて」

もし総理会見をライブで見ていた人がいるなら、きっと一斉に突っ込んだだろうと思われるのが「明かりははっきりと見え始めています」です。8道県に緊急事態宣言を、4県に重点措置を適用するという8月25日の会見でした。

感染力の強いデルタ株のまん延によって、感染者を押さえ込むことはこれまで以上に容易ではなくなっています。しかしながら、現在進めているワクチンの接種がデルタ株に対しても明らかな効果があり、新たな治療薬で広く重症化を防ぐことも可能です。明かりははっきりと見え始めています。

首相官邸>令和3年8月25日 新型コロナウイルス感染症に関する菅内閣総理大臣記者会見

私は「薄ぼんやりと見え始めている」という認識です。「はっきりと」「見え始めている」は結びつかないのではないかと考えています。一般的には「はっきりと」に続くのは「見えてきました」です。「明かりが見え始めてきました」なら同意できなくはありません。

そこは盛るところではないはずです。五輪担当大臣の「全く別の地平から見てきた言葉」がよぎりましたが、ひょっとすると深い意味があるのかもしれません。今の支持率なら第2次内閣にはならないでしょうから、その意味でも「薄ぼんやりと見え始めている」ことになります。

東京など一部はピークアウト?

第5波は東京起点で始まりました。その東京はとりあえずピークアウトしたと見てもいいようです。東京都のモニタリング項目で私が重視しているのは「7119における発熱等相談件数」と「救急医療の東京ルールの適用件数」(救急隊による5医療機関への受入要請又は選定開始から20分以上経過しても搬送先が決定しない事案の件数)です。この2つに発症日別感染者数を加えてグラフ化してみました。グラフの縦軸は発症日別感染者数については10分の1になります。

東京の発熱相談件数などの推移
▲東京の発熱相談件数、発症日別感染者数、東京ルール適用件数の推移

オレンジの発症日別感染者数はオリンピックとともに増加してオリンピックともに下がっているようにも見えますが、青の相談件数とオレンジは数日遅れで連動していますので、相談件数で増加傾向にあるか減少傾向にあるかを先取りすることができます。

問題はピンクの東京ルール適用件数です。避けなければならないのは、コロナ以外の救急搬送が渋滞してしまうことです。1日50件でも多いはずですから、この数値の推移は見守る必要があります。

また、今の陽性者数は雨が続いたために一部交通機関がストップして、はからずも人流が抑えられたお盆期間に感染しているわけです。この傾向がこのまま継続するのか、それとも反転してしまうのか、まだ見通せる段階ではありません。

Google予測(8/29)

Google予測では東京の新規陽性者数は横ばいです。

Google予測(東京、8/29)
Google予測(東京、8/29)

東京のほかに横ばいまたは減少が予測されているのは、青森、岩手、福島、茨城、栃木、群馬、神奈川、新潟、石川、福井、奈良、鳥取、島根、長崎、熊本、沖縄です。全国的にはまだ増加局面で、とくに東海は依然として厳しい予測になっています。ここまではないと思われますが、愛知は9月17日に1万人突破の予測です。

Google予測(愛知、8/29)
Google予測(愛知、8/29)

岐阜、三重、岡山、広島、高知、佐賀、大分、宮崎、鹿児島も指数関数グラフです。西日本が厳しい状況です。大阪は角度がかなり緩やかになっていますが、それでもまだ増えるという予測です。

Google予測(大阪、8/29)

今日8/28のGoogle予測による28日間の死亡者数は2,165人ですので、年換算すると2万8222人になります。

実効再生産数

東洋経済ONLINE特設サイトの実効再生産数は次のとおりです。

8/258/268/278/28
北海道1.111.071.020.97
青森1.391.391.371.33
岩手0.840.780.710.80
宮城1.161.151.060.96
秋田1.561.361.221.11
山形1.281.221.100.95
福島0.840.940.950.94
茨城1.041.031.010.99
栃木1.251.151.041.00
群馬1.201.131.081.05
埼玉1.040.970.950.93
千葉1.071.040.970.93
東京0.970.940.920.88
神奈川1.101.081.051.02
新潟1.151.111.161.12
富山1.281.101.000.88
石川0.910.890.880.89
福井1.291.291.241.27
山梨1.091.050.970.96
長野1.171.041.000.92
岐阜1.461.351.241.14
静岡1.301.171.111.04
愛知1.521.521.491.42
三重1.781.701.511.34
滋賀1.211.151.111.05
京都1.191.221.191.14
大阪1.261.231.171.13
兵庫1.261.191.171.12
奈良1.351.311.251.20
和歌山1.451.291.141.06
鳥取1.031.201.191.04
島根1.061.061.021.13
岡山1.151.101.030.99
広島1.491.351.251.15
山口1.171.000.930.91
徳島1.731.511.551.37
香川1.221.111.031.03
愛媛1.020.910.890.85
高知1.941.711.541.33
福岡1.131.111.061.02
佐賀1.101.000.930.85
長崎1.130.980.900.87
熊本1.111.060.980.96
大分1.501.331.191.05
宮崎1.481.371.311.07
鹿児島1.141.050.960.89
沖縄0.990.980.960.97
全国1.131.091.061.02
▲実効再生産数

赤字の4都県が4日連続「1」未満です。減少傾向に転じた県も少なくはありませんので、いくつかの県では9/12で宣言を解除できそうです。どうやら第3波が暖かくなったら収まったように、第5波も涼しくなれば収まっていくもののようです。

今後、涼しくなるのはわかりきっていますので、その意味では間違いなく「明かりははっきりと見え始めて」いるわけです。総理の慧眼と言えなくもありません。

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