ワクチン接種が進んだ8か国
引き潮のときは海外に目を転じておくのが賢明です。ワクチン先進国8か国と日本の感染状況を比較してみました。元データは、ワクチン接種率がOur World in Dataの「Coronavirus (COVID-19) Vaccinations」、感染者数と死亡者数はJohns Hopkins大、陽性率がOur World in Dataの「Testing for COVID-19」、人口は「GLOBAL NOTE」です。
接種率は必要回数終了者のワクチン接種率です。直近4週間の感染者数を累積感染者数数で割りましたので、この数値が大きければ流行期、小さければ収束期ということになります。
接種率 | 4週感染 A | 累積感染者 B | 4週比率 A/B | 4週死亡 C | 累積死亡 D | 4週比率 C/D | |
UAE | 81.0% | 25,654 | 731,307 | 3.5% | 59 | 2,069 | 2.9% |
ポルトガル | 80.7% | 48,776 | 1,058,347 | 4.6% | 281 | 17,882 | 1.6% |
シンガポール | 78.6% | 7,604 | 73,938 | 10.3% | 12 | 58 | 20.7% |
カタール | 78.3% | 5,139 | 235,054 | 2.2% | 3 | 604 | 0.5% |
デンマーク | 74.3% | 19,829 | 354,940 | 5.6% | 55 | 2,619 | 2.1% |
チリ | 73.7% | 14,402 | 1,645,233 | 0.9% | 805 | 37,261 | 2.2% |
ウルグアイ | 73.7% | 3,511 | 387,156 | 0.9% | 33 | 6,045 | 0.5% |
イスラエル | 61.5% | 240,019 | 1,202,212 | 20.0% | 729 | 7,452 | 9.8% |
日本 | 52.8% | 451,680 | 1,659,229 | 27.2% | 1,466 | 16,994 | 8.6% |
南米はおおむね収束期にありますので、チリとウルグアイは直近4週間の感染者数が累積感染者数の1%未満です。一方、イスラエルは20%に達しています。接種率6割ではある程度の感染拡大を覚悟する必要があります。要はそれに耐えられる医療体制が整備されているのかという問題になります。
接種率8割近いシンガポールは、直近4週間の死亡者数の比率が20%に及んでいます。これを日本に当てはめると1月に3000人以上の死亡者が出ることになります。おそらくは受け入れられないレベルでしょう。
シンガポールとチリ以外はA/BがC/Dより小さくなっています。これがワクチン効果ということになります。シンガポールの場合はもともとの母数が圧倒的に少ないためもう少し様子を見る必要がありそうですが、チリの状況がやや不安です。
カギは陽性率?
同じ9か国の直近4週間の致死率、通算の致死率、直近4週間の人口10万人当たり死亡者数、通算の人口当たりの死亡者数、直近4週間の人口10万人当たりの感染者数、通算の人口当たり感染者数、直近1週間の陽性率です。
4週致死 C/A | 致死率 D/B | 4人口比 C/人口 | 人口比 D/人口 | 4感染率 A/人口 | 感染率 B/人口 | 陽性率 | |
UAE | 0.230% | 0.283% | 0.06 | 2.09 | 25.9 | 739.4 | 0.3% |
ポルトガル | 0.576% | 1.690% | 0.28 | 17.54 | 47.8 | 1037.9 | 2.6% |
シンガポール | 0.158% | 0.078% | 0.02 | 0.10 | 13.0 | 126.4 | 0.8% |
カタール | 0.058% | 0.257% | 0.01 | 2.10 | 17.8 | 815.9 | 2.8% |
デンマーク | 0.277% | 0.738% | 0.09 | 4.52 | 34.2 | 612.8 | 1.1% |
チリ | 5.590% | 2.265% | 0.42 | 19.49 | 7.5 | 860.7 | 0.9% |
ウルグアイ | 0.940% | 1.561% | 0.09 | 17.40 | 10.1 | 1114.4 | 1.8% |
イスラエル | 0.304% | 0.620% | 0.84 | 8.61 | 277.3 | 1388.9 | 6.7% |
日本 | 0.325% | 1.024% | 0.12 | 1.34 | 35.7 | 131.2 | 8.3% |
死亡者数を感染者数で割った「致死率」も、C/AがD/Bより小さくなっていなければなりません。シンガポールとチリが例外です。シンガポールはそれでも0.15%ですが、チリの5%台は歓迎されることではありません。感染者数の桁が違うのではないかと再確認してみましたが、間違っていませんでした。
去年ならいざ知らず、いまどき致死率5%の国がほかにあるのだろうかと調べてみると、ワクチン接種率55.4%と日本より進んでいるエクアドルも5%台でした。エクアドルは陽性率が高く、直近1週間こそ11%ですがおおむね20%台ですから実際の感染者はもっと多いものと思われます。
チリの陽性率は直近1週間で0.9%です。7月9日から陽性率5%未満を堅持しています。チリは6月半ばから感染者数が減り始めており、7月あたりの感染者が8月・9月に亡くなっているということかもしれません。
高くても陽性率2%台のアラブ首長国連邦
「人口比」は人口10万人当たりの死亡者数です。中東はファクターXの庇護を受けない地域だと思われますが、UAEやカタールとイスラエルの差は陽性率に起因するのかもしれません。とりわけUAEの陽性率は高いときでも2%台です。
ワクチンパスポートを導入するなら、ワクチン接種できない人のために検査のハードルを低くすることが不可欠です。気軽に検査を受けられる体制を整える必要があるわけです。私は2回目の接種が終わったその日のうちに接種証明書のシールをスマホ画像で保存しましたが、活用する機会がほとんどないのが実情です。
ポルトガルの規制緩和
「感染率」は人口10万人当たりの感染者数です。第5波によって日本はシンガポールより多くなりました。感染率が増えるのは抗体保有者が増えることでもあります。そういう意味ではワクチン接種率80%のポルトガルは、感染率10%を足して世界最強の抗体を所持していることになります。
ポルトガルの緩和措置第1段階は8月1日に始まっています。
1.第1段階:8月1日開始(人口の57%にワクチン接種完了)
在ポルトガル日本国大使館>新型コロナウイルス関連情報(災害事態宣言の延長及び段階的緩和措置の新方針)(7/30)
(1)23時以降の公道移動制限の撤廃
(2)公共保健衛生上の規制(むやみに外出しない義務、マスク着用、体温管理、感染検査
推進等)や空路・水路・陸路による水際措置は現状維持
(3)収容人数66%までの観劇の開催
(4)ディスコ、ダンスサロン、祭事場、民俗的祭事、仮装行列を除いて、これまで閉鎖さ
れてきた施設の全面的再開
(5)バー及び(ショーのない)類似の飲酒店舗は保健総局規則に従う限り営業を再開
(6)テレワークを義務化から推奨へ(これは島嶼部も含む全国)
(7)レストラン、類似店舗並びに文化・スポーツ施設は午前2時まで営業可能(入店は午
前1時まで)
(8)飲食店舗における最大着席人数は、店内6名/テーブル、テラス10名/テーブル
(9)金曜19時以降、週末及び祝祭日における飲食店内の利用に際する、陰性証明又はE
Uデジタル証明の提示義務(注:現行では昂リスク及び高昂リスクに指定された大陸部自治
体のみ。)
(10)カジノ・ビンゴ等の賭博場及び温泉・スパ等の浴場への入場並びに宿泊施設のチェ
ックイン時における、陰性証明又はEUデジタル証明の提示義務
(11)大陸部全土において、屋内外での体育活動・スポーツは解禁。但し、グループ授業
では陰性証明又はEUデジタル証明の提示が必要。
(12)収容人数50%までの結婚式及び洗礼式の開催
緩和措置第2段階は9月5日からの計画でしたが、ワクチン接種が順調に進んだことで前倒しされて8月23日に始まっています。
1.段階的緩和措置(第2段階):8月23日開始
在ポルトガル日本国大使館>新型コロナウイルス関連情報(緊急状態宣言の発令及び段階的緩和措置の適用)8/23
(18日現在、人口の70%にワクチン接種が完了したため、従来の予定を前倒し第2段
階の措置を適用。なお、第3段階は同接種率が85%に達した後に適用の予定。)
(1)飲食店舗における最大着席人数は、店内8人/テーブル、テラス15人/テーブル
(2)収容人数75%までの文化興業観劇の開催
(3)収容人数75%までの結婚式及び洗礼式の開催
(4)公共交通機関における定員制限の撤廃
(5)9月1日からは行政サービス対面業務(lojas de cidadao)の予約制撤廃
第3段階は接種率85%に設定されています。月内に届くかどうかは微妙なところですが、当初の計画では10月1日開始予定です。
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