頑なに国会は開かない
国会は開かず総裁選出馬を見送り今はコロナ対策に専念しているはずの菅総理は、7月8日の記者会見で次のように述べました。
先行してワクチン接種が進められた国々では、ワクチンを1回接種した方の割合が人口の4割に達した辺りから感染者の減少傾向が明確になったとの指摘もあります。今のペースで進めば、今月末には、希望する高齢者の2回の接種は完了し、1度でも接種した人の数は全国民の4割に達する見通しであります。
首相官邸>令和3年7月8日 新型コロナウイルス感染症に関する菅内閣総理大臣記者会見
この翌日、東京五輪の原則無観客開催が発表されます。つまり、7月末には減少傾向に入るはずだという期待があって、強行開催に踏み切ったと見ることができるわけです。当時、全国の感染者は2000人台でした。7月12日には東京に緊急事態宣言が発出されます。東京はまだ800人台でした。
800人が宣言で600人ぐらいに収まればワクチン効果でさらに下がって、オリンピックが終る頃にはあっちもこっちも「めでたしめでたし」というストーリーが描かれていたものと思われるわけです。日本のワクチン1回接種が4割に到達したのは見込みどおりの7月30日です。
でも減らなかった
「4割」会見当日の新規陽性者数1週間移動平均は1,751人でしたが、五輪閉幕の8月8日には13,712人に増えていました。国民の4割が1回接種を終えても感染者数は減る兆候さえ見せませんでした。
初めての事態に対処しているわけですので見込み違いがあっても当然のことですが、見込み違いが起きたときに発動する次の手は何も用意されていなかったのが悲しい現実です。では、総理の楽観論を後押しした「4割」はどこから湧いたのでしょうか。
記者会見後の質疑応答で指名されなかった朝日新聞が文書で質問して回答を得ています。野村総研のレポートのようです。
【外部リンク】
■朝日新聞デジタル>「4割が1回接種で感染減少傾向」首相発言のネタ元は(2021年7月17日 6時00分)
イスラエル
イスラエルの1回接種率が4割に達したのは2月初旬です。
イスラエルではたしかに2月に感染者数が減少しています。
イギリス
イギリスの1回接種4割は3月20日でした。
黄矢印が3/21の週です。イギリスの場合、1回接種率がまだ1桁台の1月半ばには顕著な減少傾向が見られていました。
アメリカ
アメリカのワクチン1回接種が4割に達したのは4月21日です。
アメリカは3月と4月に揉み合いを続けていましたが、4月中旬以降は減少に転じました。イギリスは関係ありませんので、イスラエルとアメリカが根拠になったものと思われます。
チリ
朝日の記事では例示されていませんが、チリの1回接種が4割に届いたのは4月15日です。
チリは4月に下がり始めていますが、5月中旬には拡大基調に入ります。
明らかな見込み違いがあったものと思われますが、退陣表明した総理がそれを語ることはありません。首相官邸WebサイトのFAQには次のように記述されています(太字は原文のままです。赤字は私が施しました)。
臨時会は、臨時に必要があるとき、例えば、緊急を要する災害対策のための補正予算や法律案の審議を求めるときなどに、内閣がその召集を決定します。また、どちらかの議院の総議員の四分の一以上から要求があったときには、内閣はその召集を決定しなければならないことになっています。
首相官邸>国会に関するよくある質問
国会は野党の延長要求にもかかわらず当初の会期どおり6月16日に閉幕しました。野党は7月16日に憲法53条に基づき臨時国会を要求しましたが、政府・与党はこれも退けています。憲法の規定は「~ならない」ですが、実際に招集するかどうかはウチ次第なんだよと読めなくもありません。
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