無理スジ?
福岡高裁は3月12日、特定危険指定暴力団・工藤会の野村悟総裁に対する死刑の一審判決を破棄して、無期懲役を言い渡しました(被告側が上告)。この裁判では次の4件が問われています。
(A)1998年2月 | 元漁業組合長刺殺事件 | |
(B)2012年4月 | 元警部銃撃事件 | |
(C)2013年1月 | 女性看護師刺傷事件 | |
(D)2014年5月 | 男性歯科医師刺傷事件 |
実は、下の3つは組織的殺人未遂罪であり、被害者が亡くなったわけではありません。殺人罪はAのみです。Bの事件は工藤会担当だった退職警官が銃撃されたものですが、撃たれたのは太腿と脇腹であり、胸から上には被弾していません。
初代 | 工藤組 工藤会(1970) | 工藤玄治 | 1946~1987年 |
二代目 | 草野一家 工藤連合草野一家 | 草野高明 | 1987~1990年 |
三代目 | 工藤連合草野一家 工藤会(1999) | 溝下秀男 | 1990~2000年 |
四代目 | 工藤会 | 野村悟 | 2000~2011年 |
五代目 | 工藤会 | 田上不美夫 | 2011年~ |
工藤組の草野若頭が「草野一家」を結成し、1970年代末から工藤組と草野一家で抗争を繰り広げたようです。1987年に和解統合し、「工藤連合草野一家」として工藤総裁&草野総長体制になります。名称を「工藤会(工藤會)」に改めたのは溝下総長のときです。
工藤名誉総裁が初代、草野総裁が二代目、溝下会長が三代目という「系譜」は、「工藤会」誕生のときに作られたものです。
Aは「工藤連合草野一家」時代の事件です。被告の野村総裁は上部団体では若頭でした(実行犯は野村被告率いる二次団体・田中組の組員)。Aで共謀共同正犯認定できないと、罪としては殺人を犯していないことになります。その罰が死刑では罪と罰のバランスに欠けます。
一審の死刑判決後、野村被告は裁判長に向かって「あんた生涯後悔するよ」と恫喝したそうです。この4件に対する裁判で死刑は重いと言えますので、私は高裁判決を支持します。4件以外も加味すれば別の考え方があるでしょうが、問われたのはあくまでも4件です。
四代目本家
Googleマップを「野村悟」で検索すると、なぜか三代目本家を含む一画が表示されます。そこには赤枠の張り紙がありません。四代目本家は山田緑地の手前です。
重厚な門扉の左側に赤枠張り紙が覗いています。この門構えを突破するには2トン車クラスでは歯が立たないものと思われます。
ここを襲撃しようとするなら、北側の裏山を爆破させて土砂崩れを起こすのが有効かもしれません。ところが、川が天然の堀の役割を果たしています。そのうえ裏山はどうやら自衛隊用地のようです。絶妙の立地です。
野村邸から300m西に山田緑地があります。キャンプ場ではありませんので、ペット禁止、火気厳禁、ゴミは持ち帰れですが、こんな規定もあります。
モデルガンの持ち込みNGは理解の範囲内です。本物のピストルは銃刀法の問題であって「利用上の留意点」ではないように思われます。ロシア製ロケットランチャーが押収された団体だけに、妙にリアルです。
五代目本家と工藤會会館
一審・二審ともに無期判決の五代目本家は市街地です。配管にも有刺鉄線を巻く徹底ぶりです。このトゲトゲ具合では鳥たちが羽を休めることができません。猫も傷つきそうです。
4階建てだった旧本部事務所(工藤會会館)の跡地です。工藤会から福岡県暴力追放運動センターを経てNPO法人が入手した土地です。売却金はBとDの事件の被害者への賠償金に充当されたということです。
過去ストビューでは2014年12月から2019年7月まで赤枠張り紙があります。「SUBACO」と名付けられたプレハブ小屋の外壁を描いたのは、イラストレーターの黒田征太郎氏だそうです。
旧本部と現本部
工藤會会館が売却されたことで、官報上の工藤会本部は矢坂組事務所に移りました(外見的には「山本商事」)。玄関の防カメが撤去されたのは2020年11月以降のストビューです。
矢坂組事務所は2021年7月に民間会社に所有権が移り、2020年11月と2021年4月撮影のストビューで確認できる「使用制限命令」の赤枠張り紙も外されています。玄関前に置かれている駐車場案内の矢印看板は山本商事時代からの使い回しです。
今の工藤会本部事務所は高架沿いの田中(十)組本部になるようです。
「KT-10」とは、工藤会の「K」と田中十四春(としはる)組長の「T-10」と思われます。どうせなら「KT-14」のほうがいいのでないかという意見はありそうです。
2008年のピーク時には1210人だった工藤会の勢力は昨年末で240人となり、県内第2勢力に転落しました。野村総裁と田上会長が逮捕されたのは2014年です。意外としぶといものかもしれません。
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