夜の底が白くなった、信号のない高速で車が止まった

清水トンネル

1931年9月に開通したJR上越線の清水トンネルは全長9.7キロ、当時は国内最長のトンネルでした。測量だけで2年以上を費やし、1922年8月着工ですので工期は丸10年に及びます。48人が亡くなり、重軽傷者は2700人という、今ならとても労基署が黙っていないレベルです。

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった。

角川書店>雪国

川端康成「雪国」の冒頭「国境の長いトンネル」とは、この清水トンネルのことだと言われています。1964年に新清水トンネルが完成し、単線の清水トンネルは上り線として運用されています。1982年には新幹線の大清水トンネルが開通しています。

関越自動車道では1985年に開通した関越トンネルに相当します。関越自動車道の2000台に及ぶ立ち往生は、上り線では12月16日午後6時前、下り線では同日午後10時頃から発生したとされています。

下り線の場合、まさしく長いトンネルを抜けたところで立ち往生が発生しています。11キロのトンネルを抜けると雪国で、夜の底は白くなり、信号のないはずの高速で前の車が減速し、やがて止まるしかなかったわけです。高速ですから逃げ道はありません。

アメダス4地点(藤原、みなかみ、湯沢、津南)

この付近で積雪深を観測しているアメダス観測所は、ループ線がある湯檜曽駅(ゆびそえき)付近のアメダスみなかみ(オレンジ)、その利根川上流にアメダス藤原(緑)、トンネルの先の新潟県川のアメダス湯沢(赤)、信濃川沿いのアメダス津南(青)の4地点です。

国境の長いトンネル
群馬・新潟県境付近のアメダス(地理院タイルを加工)

ピンク▲が関越自動車道の六日町IC、紫▲は関越トンネルを抜けたところの土樽(つちたる)PAになります。

アメダス4地点の標高、風速計の高さ、これまでの最深積雪、去年(2019年8月-2020年7月)の最深積雪を調べてみました。湯沢と津南はストビューで風速計を確認できますが、群馬県側の藤原とみなかみはストビューでは確認できません(みなかみのフェンスは見えます)。

【2025/02/19追記】アメダスみなかみは2020年11月に移転しており、立ち往生発生時の2020年12月は移転直後でした。移転後の標高は524m、風速計の高さは10mです。

標高風速計最深積雪2019年
藤原700m10m301cm200cm
みなかみ531m8.5m275cm153cm
湯沢340m10m358cm185cm
津南452m10m416cm249cm
▲アメダス4地点の標高等

アメダス津南は畑の中にあります。アメダス湯沢は市街地です。アメダスみなかみは幹線道路沿いで、公的施設と思われる建物は撤去されているはずですが、ストビューには反映されていません。

アメダス藤原はダムに近い山中にあり、もっとも近い民宿でも500mほど離れています。集落のほうが標高は高くなっています。

積雪量の推移

4地点の12月15日から20日までの6日間の積雪量は次のとおりです。湯沢に関しては16日15時から17日05時までの間が欠測となっています。

藤原、みなかみ、湯沢、津南の積雪量

関越自動車道で立ち往生が発生したのは16日夕方からです。4地点の積雪はその前日15日からほぼ同じペースで増え続けています。つまり、それだけの降雪が続いていたわけです。だとすれば、予見は可能だったのではないかと指摘されても仕方はないはずです。

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