岡山県中央部の旭川水系
岡山県は東部が吉井川水系、中部が旭川(あさひがわ)水系、西部は高梁川水系です。いずれも中国山地から南流して瀬戸内海に注ぎます。蒜山(ひるぜん)高原を源流とする旭川は、真庭の市街地を経由して岡山市の中心部を通ります。
岡山城と対岸の後楽園を結ぶ月見橋は旭川に架かる橋です。北海道第2の都市・旭川ではペーパン川の堤防が決壊するほどの雨が降っているというのに、岡山の旭川では上流の湯原ダムの貯水率が18.1%です。昨夜22:00の時点では18.6%でした。
水系 | 所在 | ダム | 貯水容量 | 貯水率 |
吉井川水系 | 津山市 | 黒木ダム | 1,907 | 52.5% |
吉井川水系 | 津山市 | 津川ダム | 1,621 | 82.5% |
旭川水系 | 真庭市 | 湯原ダム | 15,212 | 18.1% |
旭川水系 | 岡山市 | 旭川ダム | 15,230 | 50.0% |
高梁川水系 | 新見市 | 三室川ダム | 3,999 | 97.4% |
高梁川水系 | 新見市 | 河本ダム | 4,854 | 64.8% |
高梁川水系 | 新見市 | 千屋ダム | 13,224 | 92.2% |
下流の旭川ダムも貯水率50%になりました。四国の早明浦ダムもそうですが、西日本では複数の水系で渇水のピンチを迎えています。あまり考えたくない三重苦の夏が迫っているのかもしれません。
▲【2022/07/19追記】7/19時点で湯原ダムの貯水率は45.6%に回復しました。旭川ダムを含めて他のダムはすべて100%です。
アメダス上長田
湯原ダム上流のアメダス観測所は上長田です。標高は430mになります。近畿以西の気温観測を伴うアメダス観測所は359地点ですが、アメダス上長田は標高の高いほうから19番目です。西日本には標高の高い観測所が多くありません(雨量観測所ならそこそこあります)。
アメダス上長田では1981年2月28日に最低気温マイナス20.2℃を観測しています(21世紀では2003年のマイナス15.5℃が最低)。同じ1981年2月に徳島の剣山でマイナス23℃台が観測されていますので西日本1位というわけではありませんが、現存する観測所ではマイナス20℃台は唯一かもしれません。
区画周囲の草刈りが適切に行われているのは駐車場になっているからのようです。蒜山高原の入口付近です。西日本はそもそも標高の高い山がそれほどありませんので、標高400m台でも相対的には「高原」です。
上長田に対する下長田は隣接しています。一般原則どおり旭川の上流・下流の関係です。
5月が少なかった
雨量を調べてみました。今年6月の雨量は29日時点ですが、どうせ30日は0ミリのはずです。
6月は極端に少ないわけではありませんが、5月が尾を引いているようです。5月と6月は平年値(1991-2020年)で計323.6ミリですが、今年は151ミリで平年値の46.7%です。
アメダス富は雨量観測のみです。支流の目木川から旭川に合流しますので、影響があるのは旭川ダムになります。同じように雨量を調べてみました。
やはり6月より5月が少なかったようです。5月と6月で計240ミリ、平年値の74.2%です。
2020年と2021年の観測値
アメダス上長田の2020年と2021年の観測値は次のとおりです。
年降水量 | 2291.0ミリ | 361位 | /1293地点 |
年平均気温 | 12.0℃ | 605位 | /922地点 |
年最高気温 | 34.0℃ | 675位 | /922地点 |
年最低気温 | -9.4℃ | 621位 | /922地点 |
年較差 | 43.4℃ | 406位 | /922地点 |
年平均風速 | 1.0m/s | 866位 | /921地点 |
年日照時間 | 1509.5時間 | 665位 | /841地点 |
年降水量 | 2125.0ミリ | 449位 | /1293地点 |
年平均気温 | 12.0℃ | 583位 | /921地点 |
年最高気温 | 33.4℃ | 737位 | /921地点 |
年最低気温 | -10.3℃ | 584位 | /921地点 |
年較差 | 43.7℃ | 447位 | /921地点 |
年平均風速 | 1.1m/s | 856位 | /920地点 |
風速計の高さは6.5mと低いタイプです。雨量計の高さは気温計と変わらないようです。最深積雪は2011年の137センチですので、1.5mで十分ということなのでしょう。
アメダス富の観測値は次のとおりです。
2020年 | 2249.5ミリ | 501位 | /1293地点 |
2021年 | 2055.5ミリ | 384位 | /1293地点 |
平年値 | 2055.8ミリ |
少雨のイメージが強い岡山ですが、山間部ではそんなことはないわけです。
湯原温泉の砂湯
湯原温泉の名泉砂湯は湯原ダムのすぐ近くの河川敷にある露天風呂です。ダムを眺めながら温泉に入れるわけです。放流時は更衣室などを撤収することになるはずです。
実は、10年ほど前に湯原温泉に宿泊したことがあります。予定どおり旅行には出ましたが、あいにく岩場を裸足で歩ける状態ではなく、私は旅館に引き籠もっていました。したがって、この景色を私は見ていません。
2011年には東屋が流されてしまったそうです。2013年7月15日のアメダス上長田の日降水量は222ミリです(観測史上3位)。2018年の西日本豪雨でも放流があったはずです。雨が降れば降ったで源泉が使えなくなってしまうのが湯原温泉です。
今のところ、7月4日から工業用水・上水道10%、農業用水30%の取水制限が予定されています。2002年以来ということですが、東北北部の前線が降りて来ないなら、台風を待つしかないという状況のようです。
ちなみに、アメダス下長田の蒜山高原は、1964年に亡くなるまで連続4期で岡山県知事を務めた三木行治知事の時代に「西の軽井沢」を目指して開発された地域です。
中山道の宿場町だった軽井沢に対して、出雲街道は津山-勝山-新庄-日野のルートですので蒜山高原を迂回します。新幹線が直結する軽井沢に対して、蒜山高原の最寄り駅となる中国勝山駅は特急が走らない姫新線の無人駅です。
標高が100m上がれば気温は0.6℃下がると言われています。軽井沢駅の標高は930m台です。5℃の差は涼を感じるのに十分ですが、2~3℃差は体感的には微妙なところです。
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