森友・瑞穂の国記念小学院(安倍晋三記念小学校)の今

2015年5月29日付の貸付合意書

学校法人森友学園が大阪府庁に小学校設置認可を申請したのは2014年10月です。これに先立つ2012年には森友側の要望を受け設置基準が緩和されています。

2015年5月29日に近畿財務局と籠池氏との間で豊中市野田町10の土地8770m2の貸付合意書が交わされ、6月8日に公正証書化されているようです。内容は次のとおりです。

(1)10年間の定期借地権、月額賃料は227万5000円(年額2730万円)
(2)10年以内に売買契約を締結する特約付き
(3)2016年3月31日までに小学校敷地に供さなければならないとする停止条件付き
(4)森友が地下埋設物を撤去した費用は有益費として森友に支払う

賃料については、3月の事前協議で財務局側が予定していた年額3300万に満たない額を森友側が提示したため、いったん物別れになっています。森友側は当該土地を軟弱地盤だとして減額を要求し、結果的に18%の減額で合意しているわけです。

売買ではなく定借になったのは、森友側に購入資金の持ち合わせがなかったからです。売買交渉自体は2013年から行なわれています。

停止条件がありますので、年度末までに校舎を建設したうえで小学校としての認可も取得する必要があります。周到に準備されていれば10か月でできないことではありませんが、児童の募集も同時並行で進行させなければなりません。

実際には、校舎の建築に先立って2015年6月30日から12月15日まで土壌改良と地中埋設物の除去工事が施工され、校舎の建築に入るのはその後です。3か月で建つはずがありません。2016年3月10日に期限は1年延期されています。

対策工事費用1億3176万円の支払い

この間、2015年9月には安倍昭恵氏が新設予定の小学校の名誉校長に就任しています(2017年2月に辞任)。

地図の青枠が森友の小学校用地です。近所の大阪音大は2011年に7億円で青枠土地の購入を交渉しますが、9億円の鑑定価格との折り合いがつかず破談になったそうです(aikoは短大OG)。ピンクは公園で、その隣の学校は庄内さくら学園中(当時は豊中十中)になります。

未開校の森友小学校
森友の小学校(地理院タイルを加工)

土壌改良と地中埋設物の除去工事について、森友側は2016年2月18日にその費用を1億3176万円として請求します。満額が認められ、年度を超えた4月6日に支払われていますが、その費用が適正であるかどうかのチェックはなされなかったようです。

たとえば対策工事費用が1億円で、その工事によって増加した土地の価値が8000万と算定されたなら、1億円の領収証が示されたとしても8000万の支払いになるわけです。土地所有者である大阪航空局は満額を認めて、財務局もこれを追認します。

なお、民法上は有益費の支払いは賃貸借契約終了後でいいことになっていますが、当事者間の契約が優先されるのは言うまでもありません。そういう契約内容だったようです。

第六百八条 賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。
2 賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第百九十六条第二項の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。

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必要費の「直ちに」に対して、有益費が「賃貸借終了の時」なのは、賃貸借終了時にその価値が残存していなければならないからです。売買予約付の賃貸借契約ですので、それほど不当ということでもありません。

売買契約

2016年3月、森友側は新たな地下埋設物が見つかったとしながら土地の購入を希望します。購入資金がないからこその定期借地だったはずなのに、です。要は、地下埋設物の撤去費用を差し引いた金額で購入したいという値引き交渉なのでしょう。

売買契約が交わされたのは2016年6月20日です。

鑑定評価額9億5600万円
地下埋設物除去費用-8億2200万円
払い下げ額1億3400万円
(厳密な数値ではありません)

(1)払い下げ額は上記のとおりで買戻特約付き
(2)売買代金は10年の分割払いで、国道交通省を抵当権者とする抵当権を設定
(3)地下埋設物の瑕疵担保責任を免除する特約付き

購入する土地を担保に金融機関から借入を起こして一括払いというのが通常の不動産取引です。小学校用地に供されない場合の買戻特約があり一番抵当が付いていれば、貸付する金融機関はないものでしょう。

国有地の払い下げで分割払いが認められるのはレアケースです。値引きはともかく、これだけでも怪しさ満点です。不動産取引業は俗に「千三つ屋(せんみつや)」とも言われますが、2013年度から2016年度までの4年間で1214件あった払い下げで分納は森友1件だけということです。千一レベルです。

校舎は現存

2017年2月、朝日新聞のスクープから森友問題はヒートアップして、連日の「籠池劇場」が繰り広げられます。3月には大阪府が学校設置の認可申請を取り消し、証人喚問もおこなわれ、4月21日には森友側が大阪地裁に民事再生法の適用を申請します。

負債額16億6500万円で同月28日に再生手続きの開始決定に至っています。校舎の新築工事は9割完成の状態で中断していますが、工事代金の支払いを一部しか受けられなかった建設会社が建物の所有権を主張して建物を管理しているようです。日中は社員1人が常駐しているということです。

6月に買戻特約が行使されて、土地の所有権は国に戻りました。国は土地を更地にして返還するよう要求しているようですが、誰も解体費用を捻出できるはずがありません。膠着したまま、もう5年が過ぎています。2020年11月のストビューです。

この事件は、財務省による文書改竄に発展し、自殺者を出し、その過労死訴訟では昨年12月に被告の国が原告の請求を認諾しました。「金は払うから、これ以上突っつくな」ということのようです。

さて、長期政権だった内閣はそれなりの実績を残しています。佐藤内閣は沖縄返還、中曽根内閣は国鉄の分割・民営化、小泉内閣は郵政改革です。功罪は併せ持つのだとしても、これらは内閣としての明らかな実績です。

翻って、安倍内閣は何もしなかった内閣かもしれません。拉致問題も北方領土も憲法改正も何ら進展していません。何も成し遂げないことこそがレームダック化を避けて、長期政権につながったのだという見方ができないわけではありません。

後世の評価は、いたずらに長かっただけの「やるやる詐欺内閣」で落ち着くかもしれません。在任期間が長いということは、パワーバランスの制御に優れていたというだけのことで、内閣としての実績ではありません。もちろん、悲劇的な最期も実績とは言えません。私は国葬に反対です。

【22/07/25追記】産経・FNNの世論調査では、意外にも賛成50.1%、反対46.9%でした。私がこの国葬に嫌悪感を持つのは、人が死んだことを利用しようとする姿勢があからさまに見えてしまうからです。もちろん、それが政治だと言ってしまえばそれまでです。要は、誰のための国葬なのか、です。

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